最近では、どの職種でも有効求人倍率が上がっている傾向があります。そんな中で、今後はますます人材確保が難しくなることが予想されます。そして、採用企業は、これまでの採用手法の見直しを迫られているでしょう。自社採用活動を効率化するための一環として、面接業務を採用代行サービスにアウトソーシングする動きが一部の企業で見られます。
採用代行サービスの中の「面接代行」とは、通常であれば社内の採用担当者が行う面接を、採用代行サービスを提供している企業が、採用企業に代わって行うサービスをいいます。
今回の記事では「面接代行」とはどういうものか、そして採用担当者のみなさんに知っておいていただきたい、その活用のノウハウについてわかりやすく解説していくことにしましょう。
そもそも「面接代行」とは?
「面接代行」とは本来社内の採用担当者が行う面接を、外部の面接のエキスパートに委託することをいいます。
現在の採用市場は、人材不足が深刻な中で多くの企業が、従来の個人面接やグループ面接だけでなく、多様な面接手法を取り入れて優秀な人材を獲得しようという動きが活発です。
例えば「コンピテンシー面接」「ロールプレイング面接」「ディベート面接」「プレゼンテーション面接」「インシデントプロセス面接」「心理面接」など、求人内容に合わせてさまざまな「新しい面接手法」があります。
スキルが必要な面接手法もありますが、そうしてでも優秀な人材を見極めたいという企業のニーズが面接手法の多様化につながっているのです。
そういう採用市場の変化が、面接代行の活用を助長しています。新たな面接手法をすぐにでも取り入れることができる「面接代行」の活用が注目を集めているのです。
「面接代行」がカバーする業務内容
「面接代行」は大きいカテゴリーとしての採用代行(RPO:リクルートメントプロセス・アウトソーシング)の中の、業務領域のひとつです。
さまざまな採用プロセスの中で、面接活動試験に特化した代行サービスになります。その面接代行がカバーできる業務内容を見ていきましょう。
面接代行サービスに依頼をすれば対応可能な業務は、主に以下のとおりです。
・従来の面接評価基準の見直し作業
・従来の面接(通常・グループ)や「新しい面接手法」(前出)等を含めての面接代行
・ダイレクトソーシングでの面談代行
面接にあたっての基本となる「従来の面接評価基準の見直し作業」は、まず依頼企業の社内での精緻なヒアリングなどによって情報収集を行います。ヒアリングを通して、その企業においての優秀な人材像を明確化し、共有を行う作業です。
その後、明確になった人材像に即した評価項目・評価基準を徹底的に見直し、最終段階では面接時の具体的な質問項目にまで落とし込みます。
この作業をきめ細かく行うことにより、面接担当者が複数であっても、あるいは内部外部のどちらであっても、担当者ごとの評価のズレを極力抑えられるようにします。結果として、面接活動自体の精度向上とクオリティの均一化が図れます。
また、さまざまな面接の手法がありますが、いずれも代行業者に委託可能です。
「面接代行」を活用するメリットとデメリット
面接代行を活用する際には、メリットもあれば当然ながらデメリットもあります。双方を認識した上でデメリットへの対策が打てるのであれば、活用する価値はあるといえるでしょう。
ここでは具体的なメリットとデメリットを確認しておきたいと思います。
「面接代行」を活用するメリット
まずは面接代行を活用することによる主なメリットとして、以下の3つが挙げられます。
・誰が面接しても評価基準を一定に保てる
・工数が抑えられ社員がコア業務に集中できる
・工程の短期化で候補者の意欲維持と内定辞退防止に役立つ
それぞれを見ていきましょう。
誰が面接しても評価基準を一定に保てる
自社の面接担当者が経験の浅い人物であった場合に、候補者にとって自社が第一志望ではないことや自己PRの誇張などを、見抜けないケースがあります。また、面接担当者の個人的な好みや価値観、既成概念や先入観による評価のばらつきが生じることもあるでしょう。
面接代行サービスを活用すれば、事前に評価基準のすり合わせや見直しを通して、評価項目および基準を再定義したものを言語化して臨みます。それによって、社内外の誰が面接を行っても 統一された評価基準のもとでの業務が期待できるでしょう。
工数が抑えられ社員がコア業務に集中できる
採用業務には本来、多くのプロセスがあります。膨大な応募書類のチェックから選考は始まり、面接も2回~3回程度行われることが多いです。そのため、人事部門は問い合わせへの対応や面接日時の連絡、会場の手配、日程調整ほか煩雑な業務がたくさんあって多忙です。
それでも、求める人材を見極めたり入社のモチベーションを与えたりするのは、自社の社員による面接のほうが有効である可能性が高いでしょう。
そこで、書類選考や一次面接などの、基準さえ明確であれば必ずしも社員でなくとも問題がない部分をアウトソーシングすることが可能です。
一定基準に満たない候補者の絞り込みは外部委託し、自社の社員は会社説明会や2次以降の面接などのコア業務に集中できます。
工程の短期化で候補者の意欲維持と内定辞退防止に役立つ
面接関連業務のスペシャリストである面接代行の活用により、煩雑な業務の処理速度は飛躍的に上がり、採用活動全体がスピードアップします。
採用事務の対応が遅いと、他にも志望先がある場合はそちらに気持ちが傾くこともあります。まして他社が先に内定を出すと、後から内定を出した場合に自体されることもあるでしょう。
そういう面を考慮して、合否連絡作業などを速やかに進めることにより、候補者のモチベーションの維持や内定者の辞退防止などに役立つでしょう。
「面接代行」を活用するデメリット
次に「面接代行」を活用することによるデメリットに、目を向けておきましょう。主に以下の3つが挙げられます。
・内定するまで候補者との関係が構築しにくい
・代行業者と認識がズレる場合もある
・代行業者の選定が難しい
個別に見ていきましょう。
内定するまで候補者との関係が構築しにくい
選考プロセスの中で、候補者とのコミュニケーションを取る機会が、代行業者が入る部分が増えるほど自社社員との接触が少なくなりがちです。そのため、候補者との関係性を構築することが、従来ほどはできなくなるおそれがあります。
極端な例では何度かの面接をまるごと代行業者に任せてしまうと、選考中に本来の社員と言葉を交わす機会が少なくなり、内定してから初めて話す可能性があります。
候補者としては、面接過程を通して気心が知れた人がいないことに不安や不審を感じないともかぎりません。悪くすれば内定辞退というリスクもあるので、候補者との関係性構築を内定までの段階で、工夫して行う必要があります。
代行業者と認識がズレる場合もある
代行業者を信頼して業務を任せることは大切ですが、任せっきりになると徐々に求める人材像の認識のズレが生じるリスクがあります。そのズレが大きくなると、求める人材を確保できなくなるおそれもあるでしょう。
基本的には、コンスタントに認識の行き違いがないかをチェックし、緊密な連携を取りましょう。
代行業者の選定が難しい
採用代行を含む「面接代行」サービスを提供している代行業者は多数あり、いずれもそれほど長い歴史や膨大な数の実績を持っているわけではないので、選定が難しいです。代行業者を選ぶポイントに関して後述しますので、それに沿って選ぶことをおすすめします。
「面接代行」の活用が適している企業
「面接代行」を活用するのが適している企業について、触れておきましょう。
求人広告等での母集団の形成がうまくいかないという問題を抱えている企業なら、どちらかといえば人材紹介サービスの活用が適しています。そうではなくて、主に以下のような課題を持つ企業であれば、「面接代行」の活用を検討する価値があるかもしれません。
・人事部門自体が人手不足な企業
・面接の精度が不十分な企業
それぞれを見ていきましょう。
人事部門が人手不足な企業
面接関連の業務が多いので、現在の人事部門のスタッフだけでは処理が追いつかないという、人員不足の課題を抱えている企業もあります。
すると面接関連の業務スピードが遅くなり、選考工程の長期化につながって優秀な人材確保にとっての足かせとなってしまいかねません。
そんな場合に、部分的にでも面接代行業者に依頼することで、選考工程のスピードアップが図れます。なおかつ、社員は会社説明会の充実や候補者の評価、2次面接以降の重要な面接に集中することができて、優秀な人材確保の可能性を高められるでしょう。
面接の精度が不十分な企業
面接の評価基準が担当する者によってばらつきがあったり、人柄や経験、スキルの十分な掘り下げができていなかったりなどの課題を抱える企業もあります。そのように、面接の精度が不十分であれば、求める人材の確保に支障をきたすでしょう。
そういう企業は、「面接代行」業者に面接基準の見直しによる求める人材の明確化を行ってもらい、場合によっては面接自体も任せることにより、面接の精度を上げることがおすすめです。
「面接代行」業者を選ぶポイント
「面接代行」業者を選ぶ際の主なポイントは、以下のとおりです。
・対応できる面接手法
・公的な許可を持っているか
・情報が速やかに共有できるか
・意向を真摯に理解してくれるか
・過去の実績
各項目を見ていきましょう。
対応できる手法を確認
複数ある面接手法(個人面接、グループ面接、グループディスカッション他多数の手法)の中で、自社で採用したい方法を対応できるのか、確認しておきましょう。
公的な許可を持っているかを確認
「面接代行」は「募集委託」にあたるので、代行業者も依頼する企業もどちらも公的な許可が必要です。その「面接代行」業者が厚生労働大臣の許可を取得しているかは、念のため確認しておきましょう。
また、自社の募集委託許可の申請も代行してもらえる場合が多く、任せておくと便利です。そのため、許可申請の代行を行なっているかどうか確認しておくのが賢明です。
ちなみに、委託募集と混同される場合がある人材紹介業(転職エージェントなど)は、委託募集ではなく「職業紹介」にあたります。事業者は人材紹介事業の許可を取得して運営しており、依頼するクライアント企業側は何の許可も必要ありません。
情報が速やかに共有できるかを確認
代行業者との情報共有の行いやすさや頻度は、ぜひ確認すべきです。スムーズに採用プロセスを進めるためにも、先方の担当者との緊密な連絡と情報共有は重要となります。
例えば、面接を対応してもらった候補者の評価情報の共有が遅れると、内定を出すタイミングが遅れ、優秀な人材を逃してしまうおそれがあるでしょう。
意向を真摯に理解してくれるかを確認
面接の基準について代行業者がヒアリングを真摯に行い、自社の考える人材像の微細なニュアンスまで共有でき、望む費用の範囲内で最善を尽くしてくれる業者かどうかを確認しましょう。
過去の実績を確認
「面接代行」というカテゴリー自体が歴史は浅いですが、その中でも認知度がある企業との取引実績があるか、何社との取引実績があるかなどを参考に確認しておきましょう。
まとめ
「面接代行」は数ある面接関連の業務の一部または全部を外部委託するサービスで、人材不足の時代に採用力を向上させるための選択肢の一つです。
人材紹介サービスなどの有効な選択肢もあるなかで、人事部門の人材不足や面接の精度に問題がある企業であれば活用を検討する価値があります。自社の人事部門の状況をよく考慮して、採用活動のビジョンを考えていきましょう。