採用業務にKPIを導入し、目標達成へ!【設定方法と運用のポイント】
KPIは営業やマーケティングの分野で用いられる指標というイメージがありますが、近年、人事・採用分野においてもKPIを導入する企業が増えています。なぜなら、定量化しづらい採用業務を定量化して、目標達成までのプロセスを可視化できるため、採用を成功させる鍵と目されているからです。
今回は、採用業務でKPIを設定すべき理由から、設定方法、運用のポイントまでを徹底解説します。KPIの導入を検討している採用担当者はもちろん、「採用活動にKPI……?」となんだか腑に落ちない人にとっても必見です。
なぜ、KPIなのか?
KPIを設定すべき理由を見ていく前に、まずは言葉の定義を明確にするところから始めましょう。というのも、一文字違いで似たような言葉があるからです。
それがKGI——KPIを正しく活用するために知っておきたい概念ですから、それぞれの定義を確認しておきましょう。
そもそも、KPIとは?〜KGIとの違いを明確に〜
KPIをスッキリ理解するには、KGIから攻めていくのが近道です。なので、先に KGIについて説明します。
KGIとは、Key Goal Indicatorの略称で、日本語では「重要目標達成指標」と訳されます。Goalという言葉からも察しがつくように、KGIは企業や事業が設定する<最終目標>です。目標といっても、単に「売上をアップさせる!」という漠然としたものや「今年度は売上高を前年度の100倍にする!」といった突拍子もないものでは意味がありません。
「売上高を前年比125%」といった具合に、努力や創意工夫で実現可能な数値を用いて設定するのが原則です。
では、次にKPIを見ていきましょう。KGIが<最終目標>ならば、KPIは<中間目標>です。もう少し踏み込んだ言い方をすれば、「最終目標の達成度合いを計測・評価するための指標」。Key Performance Indicatorの略称で、日本語では「重要業績評価指標」と訳されます。
先ほど、KGIの例で出した「売上高を前年比125%」という仮定を使ってKPIを設定すると、「営業部は各月100万の売上をつくる」「マーケティング部は各月100人集客する」という具合になります。KGIと同じく実現可能で具体的な数値を用いて設定します。「いついつまでに」という期限を設けるのもポイントです(詳細は次章で解説します)。
上記を簡単に視覚化してみると、以下のようになります。
KGI<最終目標> 今年度は売上高を25%アップさせる(対前年比125%)!
↑ ↑
KPI<中間目標> KPI<中間目標>
営業部 マーケティング部
各月100万円の売上 各月100人集客
採用業務にKPIを設定すべき3つの理由〜KPI導入のメリット〜
それでは、いよいよKPIを設定すべき理由についてです。「目標達成までのプロセスを可視化できる」「客観的な評価が行える」「組織全体の能力向上につながる」という3つの視点から見ていくことにしましょう。
①目標達成までのプロセスを可視化できる
KPIは、誰が見てもわかりやすい数値目標です。そのため、進捗状況を把握しやすく、チーム内の情報共有なども容易になります。
②客観的な評価が行える
これは可視化できるからこその産物といえますが、数値で見ることができるため、客観的な分析がしやすくなります。そこで、こまめな軌道修正ができるというわけです。
③組織全体の能力向上につながる
全社共通の目標が定められ(KGI)、その目標を達成するために各部署でKPIが設定されるわけですから、従業員の意思統一、モチベーションの向上が図れます。ひいては、組織全体の能力向上に。
採用業務にKPIを設定するには
この章では、KPIの具体的な設定方法について解説します。あわせて、設定する際のポイントもいくつか紹介しますので、参考にしてみてください。
具体的な設定の手順
KGIを設定してから逆算してKPIを設定するというのが大原則です。なぜなら、前述のとおり、KPIは中間目標であり、最終目標のKGIなしには設定できないからです。
【KGIの設定】
KGIの設定では、「採用人数」と「人材の質」という2つの視点が求められます。どちらに重きを置くか、また、その比重についても各社の事情により異なりますから、自社の状況に合わせて判断していくことになります。
-ワンポイントアドバイス-
・「採用人数」を重視した場合
事業計画を基に、各部署で人員がどのくらい必要なのかを明確にします。その際、退職者数も考慮して算出するようにしましょう。
・「人材の質」を重視した場合
各部署で、どのような経験・スキルを持つ人材を求めているかなど、求める人材像を正確に把握しておかなければなりません。
【KPIの設定】
KPIは以下の3つのステップを踏んで設定します。
〜ステップ1〜 採用フローを確認し、KPIとなる項目を検討する
一般的な採用の流れは次のようになります。
・求人を出す
・説明会の実施
・書類選考・適性検査
・面接
・最終面接(最終選考)
・内定
・内定承諾
・入社
この流れから、以下のような、数値化できる項目がKPIになり得ます。
・書類選考の応募者数:説明会の申込数×参加率×選考応募率×書類の提出率
・書類選考の通過者数:書類選考の応募者数×通過率
・書類選考通過率:書類選考通過者÷エントリー×100
・面接設定率(通過率):面接に進んだ人数÷書類選考通過者×100
・内定率:内定者÷面接に進んだ人数×100
・内定承諾数:内定数×内定承諾率
・内定承諾率:内定承諾者数÷内定者数
・入社人数:内定承諾数×内定承諾からの入社率(1-承諾後辞退率)
など。
〜ステップ2〜 重視したいKPIを厳選する
ステップ1で見たとおり、KPIとして設定できる指標は数多くあります。あれもこれもと選びたくなるところですが、設定しすぎても結局なにをすべきかがわからなくなってしまい、意味をなしません。妥当といわれる設定数は3個程度。いま一度、KPIの日本語訳「重要業績評価指標」を思い出し、「重要」な指標を選ぶようにしましょう。ひとつの目安として、下記を参考にしてみてください。
・「採用人数」を重視する場合
この場合は、大量採用が目標なので、「面接設定数」や「(面接した人数から見た)入社率」が重要な指標となります。
・「人材の質」を重視する場合
人数よりも経験やスキルのある人材を採用することが目標なので、「(書類選考からの)面接設定率」や「内定承諾率」、「内定辞退率」が重要な指標となります。
〜ステップ3〜 歩留まり率を設定する
歩留まり率とは、ステップ率ともいい、採用フローで、前のステップから次のステップに進んだ人の割合のこと。現在の歩留まり率から、目標とする歩留まり率を導き出します。ただ、歩留まり率は高ければいいというわけではなく、あえて低く設定する場合も。下記を参考にしてみてください。
※歩留まり率の計算式:選考通過数÷選考対象数×100
・歩留まり率を低く設定することが考えられるケース
少人数のチーム、最小の工数で採用活動を終わらせたい
→書類選考で絞り込まなければならないため、書類通過率(目標)を低く設定する。
・歩留まり率を高く設定することが考えられるケース
とにかく多くの人員を採用したい
→書類選考で応募者のほとんどを通過させるため、書類通過率(目標)は高く設定する。
採用業務にKPIを設定するときのポイント
KPIは適切に設定しなければなりません。そこで、KPIはもとよりKGIにも活用できる、目標設定の際によく用いられる「SMARTの法則」を紹介します。
「SMARTの法則」とは、目標を達成するための5つの成功因子で構成されるフレームワークで、5つの成功因子の頭文字をとってSMARTと呼ばれています。
Specific(具体性)
Measurable(測定可能な)
Assignable(割当設定) → 近年はAchievable(達成可能な)
Realistic(現実的) → 近年はRelevant(関連性)
Time-related(期限) → 近年はTime-bounded(期限を定めた)
*Specific(明確な)
KGIやKPIは組織全体やチームで共有していく必要がありますから、曖昧な表現ではなく具体的な数値を用いて、誰にでもわかりやすく設定することが重要です。
*Measurable(測定可能な)
あとどれくらいで達成できるかを計測できるようなKPIを設定します。状況が把握しやすくなるばかりか、改善点や問題点なども見つけやすくなります。
*Achievable(達成可能な)
設定されたKPIやKGIが高すぎると、モチベーションが下がってしまう恐れがあります。目標にたどり着くまでのプロセスを具体的にイメージできるような設定を心がけましょう。
*Relevant(関連性)
KGIとKPIは関連してなければなりません。KGIを達成するプロセスとしてKGIを設定する必要があります。
*Time-bounded(期限を定めた)
目標を達成するには、各業務に期限を設けるのは必須です。期限を定めることで、業務の効率化も図れます。KGIの期限から逆算してKPIの達成期限を設けましょう。
この5つの要素が、設定したKPIにあれば、それは適切なKPIといえます。さっそく運用してみましょう。
採用活動におけるKPI運用のポイントと目標達成のヒント
ここでは、KPIの運用方法のポイントを紹介するとともに、目標達成のヒントについても見ていきましょう。
運用ポイント①リアルタイムで数値を管理
刻々と変化する採用状況。常に最新の数値を確認することが大切です。問題点を把握しやすくなるだけでなく、いま注力すべき点や優先事項なども見えてきます。
運用ポイント②PDCAサイクルの徹底
採用活動においてスピード感は非常に大切です。優秀な人材を逃さないために、問題を発見した場合はすぐに対処、改善していかなければなりません。改善後もしっかりと検証し、採用活動の精度を高めていく必要があります。
目標達成のヒント
KGIに大きく影響する「面接設定率」と「内定承諾率」がKPIに達しないという失敗は、じつは珍しいことではありません。目標達成のヒントを紹介します。
・「面接設定率」が未達
原因として設定したKPIの「評価項目が曖昧」「選考基準が厳しい」などが考えられます。まずは、評価項目や選考基準を見直してみましょう。
・「内定承諾率」が未達
この場合は「自社の魅力を伝えられていない」「対応スピードが遅い」などの原因が考えられます。そのため、「採用ブランディングを行う」「選考スピードを上げる」「内定後のフォロー」などの改善策をとりましょう。
採用業務におけるKPIに困ったときのプロ頼み
ここまで見てきたように、KPIを適切に設定し、スムーズな運用ができれば、採用活動そのものに弾みがつくというもの。ところが、管理に手間取り、実務がおろそかになるようでは、本末転倒です。採用担当の人員不足や経験不足により、どうしてもうまくいかない場合は、採用代行会社などプロに委ねるという手もあります。
タリスマンのRPO(採用代行)サービスなら!
きめ細かいサポート体制に定評がある、タリスマンのRPO(採用代行)サービス。採用業務に精通したスタッフが、クライアント企業の採用課題を洗い出し、解決に向かうようなKPIの設計を行っていきます。クライアント企業は専門的な支援を受けられると同時に、業務負担も軽減でき、効率的な採用活動が可能となります。
採用業務には適切なKPIの設定と運用を!
近年、採用業務にKPIを導入する企業が増えています。それは、採用活動の成否を分けると考えられているからです。KPIは、「みんなで頑張って売上をアップさせよう」という曖昧な目標ではなく、「わが部署は各月100万円の売上をつくる」という具体的な数値と期限を定めた目標。誰が見てもわかりやすく、目標達成までのプロセスが可視化されるため、リアルタイムで進捗状況が把握でき、いますべきことが明確になります。なので、課題や問題も見つけやすく、こまめに軌道修正ができ、着々と目標に向かえるというわけです。