外資系企業ITマネージャーが教える!外資系のクビの実情

外資系企業に就職あるいは転職する際、やはり一番気になることのひとつは、「自分の意志に反して会社をクビになることが頻繁にあるのかどうか」ということだと思います。
答えは、「ある」です。

企業間の競争が激化し、製品のライフサイクルも短くなってきている今日、人材もますます流動化していることは、読者のあなた自身が感じていることでしょう。定年になるまで同じ会社に勤めることは、日系企業で働いていても今後は、ほとんどないでしょう。ただ外資系企業の方が日系企業に比べて、人材の流動化が激しい傾向があると言えます。

今回は、外資のIT企業でエンジニア・マネージャーも経験した筆者が、外資系企業のクビの実態についてご紹介します。

外資系企業では“クビ”があり得る

いわゆる会社が従業員を「クビ」にするやり方は、日本で仕事をしている限り、多少の違があるものの外資系企業でも日本企業でも同じと思います。

「クビ」という言葉は、一方的に、会社から従業員が解雇されることを想像させます。しかしながら、実際は、両者合意の上、従業員が会社を辞めることです。もちろん「辞めた方がいいよ」というようなメッセージ(暗示)は会社からありますが、能力のある人なら、そんな将来性のない会社は、さっさと辞めて転職した方がいいですね。

ここでは、日本企業から外資企業への転職、外資企業から日本企業へ転職した経験をベースに、実際に見聞きしたことをお話します。特に、営業のような職種ではなく、エンジニアのような理系の職種、製造業のケースだと思って読んでいただければと思います。今や外資系企業に勤めていようが、日系企業に勤めていようが、業務職であろうが、技術職であろうが、いつ会社からいわゆる「クビ」になるか分かりません。しかし、外資系はその判断が早い傾向にあるということは言えるかと思います。

外資系企業でクビになる時

外資系会社で、海外で働いている場合(例えば、米国)、突然、上司のオフィスに呼び出され、「今日が、あなたがこの会社に勤める最後の日です」と言われます。そこで、必要な書類にサインをさせられ、解雇されることがあります。

社員証と引き換えに、段ボール箱を渡され、「これに私物を入れて、出て行って下さい!明日から会社に来なくていい」と言われます。多くの人が外資系企業のクビというと、そういったイメージを思い浮かべるのではないでしょうか。しかしながら、たとえ外資系企業でも日本で働いている限り、こんなことはありません。

必ず予兆はあり、ここまでドライではありません。外資系企業で会社を辞めなければならないケースは、主に次の2つのケースが多いと思います。

  1. ビジネスの縮小・撤退による人員削減(リストラ)
    これまで順調に伸びていた日本でのビジネスが競合他社に取られて、日本でのビジネスが縮小、あるいは日本撤退で、従業員の削減が必要となる時です。その他、他の会社に合併吸収されて、人員が削減される時もあります。
    実際に働いていれば、会社の日本での売上や業績が悪くなっていくことは、肌で感じるものです。能力がある人ならリストラになる前に、さっさと会社を辞めて、競合他社等へ転職します。
    リストラの場合は、自由応募で退職者を募る場合や、予め必要数の就業員を選んで、退職依頼をする場合もあります。もちろん自己都合で退職する場合より、退職金は多く出ます。さらに、退職までに数カ月間の猶予があり、出社しなくても給与等が保証されたり、会社負担で転職エージェントの再就職サービスを受けたりすることができることもあります。
    条件は、企業毎、また従業員の勤続年数等によって違います。また外資系企業の場合、日本でビジネスがなくなっても、他の国で、ポジションがある場合もあれば、日本の他の事業部にポジションがある場合もあります。自分自身の将来のキャリアパスを考えて、冷静に、決断しましょう。
  2. 個人の業績が悪く報酬にみあう成果がない
    外資系企業でのボーナス/インセンティブは、必ず、個人業績が評価され、反映されます。上司は、部下のパフォーマンスが悪いとPIP(Performance Improvement Plan=業務改善計画)を実施し、部下にパフォーマンスの改善を要求します。企業によっては、毎年の定期評価で下位10%程度の従業員に対して、必ずこれを実施するところもあるようです。
    具体的には、まず定期的な個人評価とは別に、上司(人事を含む)と部下の両者合意の上、期間(例えば半年)と数値で評価できる目標(例えば現在10日かかっているxxプロセスを8日にする)を2~3項目決定します。その進捗を定期的に(例えば、隔週毎)両者でレビューし、必要に応じて上司がアドバイスし、最終的に目標を達成できるかどうか評価するものです。
    PIPをポジティブに考えれば、上司が部下を定期的に指導して、部下のパフォーマンスを改善するのが目的です。ネガティブに考えれば、その一定期期間中に部下のパフォーマンスが改善しなければ、職務グレードを下げる(つまり給与を下げる)、さらには、会社を辞めて下さいというメッセージ(暗示)を部下に送ることです。
    もちろんPIPで目標をクリアし、そのままのポジションに留まる人もいますし、また、職務グレードが下がっても(当然、給与は減る)会社に留まる人はいます。さらには、目標を全く達成できず、会社を辞めなければならないこともあります。私が知る限り、ほとんどの人は、PIP期間中に新しい職場を探して転職していきます。

クビ対象にならない!!外資系企業で働くための3つのヒント

1、柔軟な思考

変化を恐れずに、柔軟に対応し、新たなことに挑戦する気持ち、向上心を持ち続けましょう。
現在の仕事のやり方、ビジネス・モデルが永遠に続くことはありません。同じやり方、考え方に固執するのではなく、柔軟に新しい方法、考え方を受け入れるようにしましょう。

2、アンテナを張る

グロバールな観点で、今後自分の携わっているビジネスがどの方向にいくのか、自分の市場価値も含め、広くアンテナをはって情報収集しましょう。

特に、エンジニアは、狭い世界に閉じこもりがちです。社内外の色々な人と情報交換し、次のステップを考え、業界の最新情報をつかんでおきましょう。転職エージェントのコンサルタントとも情報交換して、自分の状況を伝えておくのも、ひとつの方法です。時には、思わぬ会社から引き抜きの声がかかることもあり、客観的な自分の市場価値を知ることもできます。

チャレンジ精神を持つ

上記にも関連して、特に、エンジニアであれば、日本人エンジニアの悪い点を捨て、常にオープンで、他のエンジニアに影響を与えましょう。

外資系企業の日本人エンジニアにも少なからずいますが、次のようなエンジニアはいませんか?
自分で身につけた技術や情報、最新の情報を自分のものだけにして、他のエンジニア等には、教えない。聞いても最小限の聞いたことしか教えない。きちんと文書化のされていないことが多い。

私が知る限り、外資系企業の外人エンジニアはそんなことはありません。少なくとも業務に関することであれば、技術情報も文書化され公開されています。社内で技術を身につけ、自分の習得した技術はさっさと他の人に任せて、自分は新しいことに挑戦することをお勧めします。今の技術にいつまでも執着しないようにしましょう。新しい挑戦は、他社にあるかもしれません。

会社を辞める時は感情的にならず、冷静に判断・行動

上司、人事から「あなたのポジションはもうこの会社にないですよ」と、面と向かって言われる。ましてや、初めての経験となると、「なぜ私が?こんなに会社のために働いてきたのに」などなど感情的になり、その場で泣いてしまう人もいます。また、逆上する人もいます。最後までもめて、裁判になる場合もあります。もちろん、不当解雇ということもあるかもしれません。個人的な意見を言えば、冷静に判断しましょう。同じ業界にいれば、この上司、人事担当の人と将来、また同じ会社で働く可能性もあります。

まとめ

日系企業でも外資系企業でも、会社の業績が右肩上がりで伸びれば、それに従って自分自身の仕事の範囲も広がり、ポジションが上がるとともに責任も重くなっていきます。当然、自分のやりたりことも、自由にできる可能性が高くなりますが、ひとつの会社でそれができる人(特に、エンジニア)は、ひとにぎりにすぎません。

技術革新もめざましく、製品のライフサイクルもますます短くなっています。そんな中で、ひとつの企業が、つねにトップを走り続けることは難しくなってきています。日々の業務に追われ、社内に目を奪われがちですが、目を外に向けて、技術の動向や、自分の市場価値を考えながら、現在勤めている会社をいつ辞めてもいいように心がけましょう。

会社のリストラやPIPにビクビクするのではなく、会社を辞めて「(競合)他社に行きます」と言った時に、「思いとどまってくれ!」と引き止められるような人材になりましょう。

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