ティーチングかコーチングか?【中途採用の新人教育コーチング1】

中途採用の新人社員は即戦力が求められるため、どれほど環境の違った会社から転職してきても、会社に適応しながら、成果をだしていかなくてはいけません。

中途採用の新人社員には大きく二つのことが求められます。

・部内外のメンバーとの円滑なコミュニケーションと信頼関係の構築
・素早い仕事の成果の提示と高いアピアランス(存在の重要性など)

少しでも遅れを取ると、周りからの評価を気にしすぎて、自分自信を追い込んでしまいます。新人を上手に始動させるには、上司と部内からのケアが大事です。

そのためには、会社に溶け込むための適切な指導とコーチングが必須です。

コーチングとは、傾聴、承認、質問といったサイクルのコミュニケーションで相手の潜在意識の中から考えを引き出し、最終的には自発的なアクションプランを導き出す手法です。

しかし、コーチングとティーチングの違いがよくわからない。コーチングをどう実業務に活用したらいいかわからないという方も多いのではないでしょうか。

今回のシリーズではコーチングを活用し、中途採用で入社してきた社員が、できるだけ早く職場環境に順応し結果を出すための方法をご紹介しています。
ストーリーはフィクションですが、実際にコーチングで改善を行ってきた経験をもとにしています。

ここではある会社のプロジェクト推進部を舞台に、中途採用の新人社員がトレーニング後、ミッションを通じて会社になじみ、貢献して行く課程を見ていきます。
具体的な手法として、中途採用新人をOne on One (一対一の面談)でコーチングを行っていく様子をシナリオ形式で、八回に分けて解説します。

数値を伴うゴール達成だけでなく、会社での信頼関係を得るための方法や、もやもやとした気持ちで前に勧めないときの対処法を考える事もコーチングでは可能です。

下記はこの面談の舞台の背景と登場人物についてです。

彼らはオミヤゲドットコムという会社のプロジェクト推進部の社員です。
プロジェクトマネージャーの佐久間はチームメンバーの成長のためにOne on Oneをコーチングで行っています。今回部下の菅沢に新しい中途採用者が入社しました。篠原のミッションはMade in Japan以外の製品をより分けるEXOシステムの改修案のとりまとめです。

主な登場人物:
佐久間省吾 35歳 プロジェクトマネージャー
菅沢莉子  32歳 プロジェクトリーダー 佐久間にレポート
東堂聡志  28歳 プロジェクトリーダー 菅沢にレポート
篠原大輝  29歳 プロジェクトメンバー 菅沢にレポート

<ティーチングかコーチングか?>

※①等の番号が入った箇所については、セッションの後にコーチングのポイント解説をお読みいただけます。

初回は菅沢の上司、佐久間とのOne on Oneです。菅沢は中途採用で新人の篠原に対してコーチングとティーチングの使い分けについて佐久間に聞いています。

佐久間
佐久間
「菅沢さん。篠原君の様子はどうですか? 入社して1ヶ月になりましたか」
「はい、ほぼトレーニングも終りましたので、本格的に各部署とのミーティングにも参加し始めました。インドの開発者とも電話面談してもらいました。システムの概要の理解については、本人に復習のために先日要約してもらった様子では、ちゃんと理解してもらえていると判断できます」
菅沢
菅沢
佐久間
佐久間
「技術面での理解には問題なさそうですね。よかったです」
「はい。あれば尚よいと書いておいたスキルはほとんどお持ちか、独学でも習得済みでしたので、仕事の立ち上がりは早いのではないかと思います」
菅沢
菅沢
佐久間
佐久間
「日本の大手電気メーカーのご出身でしたね」
「はい、さすがに大手のメーカーにいらしただけあって、新入社員時のトレーニングはしっかりしていたようです。うちの会社はどちらかというと、手薄でしたから。助かります」
菅沢
菅沢
佐久間
佐久間
「そうですか。①今日のOne on Oneはどのように使いますか
「そうですね。えっと、コーチングのテーマという意味でですよね」
菅沢
菅沢
佐久間
佐久間
「はい、仕事の進捗ではなく、菅沢さんの今、気になっていることについて話をしてもらえるとうれしいです」
「はい。え、とっとJD、ジョブディスクリプション(職務記述書)をしっかり作らせてもらったことで、今回篠原さんの採用はとてもスムーズでした。人事の藤崎さんからも、採用手順がスムーズだったといわれました」
菅沢
菅沢
佐久間
佐久間
「それはよかったです」
「はい、ありがとうございます。でも、入社されてからのフォローアップが何より大事だと思っているので、中途採用の新人教育のためのコーチングについて考えたいです」
菅沢
菅沢
佐久間
佐久間
「中途採用の新人教育のためのコーチングについてですね。②詳しく話をしてください
「はい。全くの新入社員と違って、中途採用の方に、なんでもかんでもティーチングをしてしまうのは、返って伸びを抑制してしまうのではないかと思ったり、最初はやはり何でも教えてさしあげたほうがいいのかと思ったり。本人にとって、ティーチングとコーチングの割合をどのようにすればよりよく立ち上がってくれるかと思って悩んでいます」
菅沢
菅沢
佐久間
佐久間
③ティーチングとコーチングの割合について悩んでるんですね
「はい。これって、すみません。自分で考えないといけないのはわかってるんですが、法則はあるんでしょうか」
菅沢
菅沢
佐久間
佐久間
「私に聞いてるんですね。今日はコーチングですので、④私のアドバイスは最後にしてもいいでしょうか
「はい」
菅沢
菅沢
佐久間
佐久間
「菅沢さんが⑤明確にしたいと思っていることは、篠原さんへどの部分をコーチングで対処すべきかということでしょうか
「そうですね。そうなりますね。ちょっと心配なのは、今のもう一人の部下の東堂さんのように、人から教えられるのは好きでもないし、自分からどんどん情報を取りに行くというタイプには見えないのです。遠慮がちというか」
菅沢
菅沢
佐久間
佐久間
「遠慮がちに見えるんですね」
「はい、ただ、それが今、新人段階だからなのか、もともと遠慮がちなのかがわからないのです。もし、遠慮がちな性格だとしたら、この会社の面々はどの部署も前のめりな人が多いので、今後、つまずくのではないかと心配もしています。ただ、あまり過保護にしすぎても、自分から学べないかなと思っていて」
菅沢
菅沢
佐久間
佐久間
「つまり、性格を考慮しながら、コーチングの導入を考えた方がいいのではなかいと思っているということでしょうか。⑥どうなるのが理想でしょうか
「そうですね。……理想は、教えてほしいところとコーチングしてほしいところを本人から聞き出せて、ご本人の納得のいくように指導とコーチングを決めたいです。あと、今話をしていて思いました。そんなにお若い方でもないし、コーチングについてどの程度知ってらっしゃるかについても確認しつつ、コーチングを積極的に取り入れていってもいいかなと」
菅沢
菅沢
佐久間
佐久間
「そうですね。では、本人の希望でティーチングとコーチングを分けていくということですね。いつまでにどうしたいですか?」
「今、毎日十五分という時間で質問がないか聞く時間があるので、そこで確認して、さっそく決めたいです」
菅沢
菅沢
佐久間
佐久間
「では、⑦本日の時間でティーチングとコーチングの部分について本人と話し合うがアクションプランですね。また、どうなったか教えてください
「はい、ご報告します。あの、佐久間さんからのアドバイスももらってもいいでしょうか」
菅沢
菅沢
佐久間
佐久間
「そうですね。ティーチングとコーチングの割合ですね。まだ一ヶ月ですから、正直知識として無いところはすべてティーチングで良いと思います。ただ、解決策や、仕事の手順、目標達成などの関わるところはすべてコーチングで聞いても良いと思いますよ。ただし、急いで結論を出さないといけない時以外はということですが」
「なるほど。自分でも少しイメージがはっきりしてきました。今日、話をして早速明日から、One on Oneを一部コーチング形式に変更していきたいと思います」
菅沢
菅沢
佐久間
佐久間
「それはよかった。頑張ってみてください」
「あと、一つお願いがあるのです」
菅沢
菅沢
佐久間
佐久間
「何でしょう」
「篠原さんへの⑧スキップレベルOne on Oneを佐久間さんにお願いしたいのです
菅沢
菅沢
佐久間
佐久間
「それは、直属の上司のその上、つまり私と彼とのOne on Oneですね」
「はい、ほぼトレーニングが終わり、少し気を張ってる頃だと思うので、部署のこれからの展開などの話をしてもらえると、全体がみえてくるかなと」
菅沢
菅沢
佐久間
佐久間
「わかりました。お引き受けいたします。私から彼に連絡します」
「ありがとうございます」
菅沢
菅沢
佐久間
佐久間
「それも、よりよいティーチングの方法だと思ってるんですね」
「そうですね。全体方針や、部署の今後について、責任者から直接話を聞けるのは、会社の帰属意識、エンゲージメントを強くして、会社に大事にされていると思ってもらえると思いますから」
菅沢
菅沢

セッションのポイント

1 コーチングはいつもどんな時間の使い方をしたいかはコーチされる側が決めます。
2 テーマがコーチされる側から提示されたら、まずは広げて詳しく話をしてもらいます。
3 どんな場合も、コーチはコーチされる側の言葉を要約し、鏡となって相手に返していきます。
4 コーチングはカウンセリングでもアドバイスでもありません。コーチングはコーチされる側が答えを導き出す手助けをするスキルですので、途中でアドバイスを求められているなと思っても、アドバイスは最後にしましょう。上司部下で行う場合にはよく起こり、線引きして、コーチングを行わないと、コーチングではなく、アドバイスやティーチングで終わってしまうことになります。
5 コーチされる側の話を要約し、今日明確になればいいことを確認していきます。
6 理想の形、目標としている形を聞いていきます。できれば、達成した時にお互いが確認できる事象も一緒に聞きましょう。
7 コーチされる側の行動が出た場合、アクションプランとしてまとめ、相手にフィードバックしましょう。アクションプランがでて、フォローアップ(どうなったか教えてくださいなどの)が終ったら、コーチされる側の希望でアドバイスは可能です。
8 スキップレベルOne on One は、自分の上司の上司以上の責任者との面談をさしています。責任のレベルが上がれば上がるほど、より広範囲の部門の将来設計を立てる側にいます。組織が大きければ、その分、自分の立ち位置や、今後を考えるためにも、会社の考えや期待されていることを聞くいい機会となります。

コーチングのチェックポイント

コーチングのテーマは数値や何かを達成したいことばかりではありません。悩んでいる。不安の中身を確認したい。人間関係で悩んでいるなどもテーマになります。しっかり話を聞いてどうなるのが理想かなどでなりたい姿を確認します。

ティーチングとコーチングの使い分けは新人度や、仕事の内容、緊急度によって変わってきます。見極めて使い分けます。

まとめ:

中途採用の新人教育にはぜひともコーチングでのOne on One を導入してみてください。

新卒採用とは違って、どこまでを教えてどこから自分で考えてもらう、もしくはコーチングを導入するのかを迷う点ですが、菅沢のように、本人と話し合って決めてもいいと思います。

その際にも、まずは、本人にコーチングの知識がどれほどあるのかを確認しましょう。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。コーチングや今回のポイントなど
ご質問は、ぜひFacebookやメールでメッセージお待ちしております。

*この物語に登場する人物名、団体名、システム等はすべて架空のものです。

Talisman編集部

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