成功の秘訣を探る逆登山【中途採用の新人教育コーチング7】

元アマゾンジャパン合同会社に在籍していたプロコーチがお届けする、中途採用後の新人をどう成長させるか?全8回シリーズ第7回目。

前回、ミッションの具体的な方向性と、自身のなりたい姿をはっきりさせ、意気揚々としていた篠原ですが、今日のOne on Oneではまた不安に駆られています。

不安というのは実体がないように思うかも知れませんが、不安の中身を見ていくことはコーチングでよく行われる事です。

どうすればいいかわからないという言葉が出てきますが、菅沢は落ち着いて、復唱し、ある事を提案します。

背景:
彼らはオミヤゲドットコムという会社のプロジェクト推進部の社員です。
プロジェクトマネージャーの佐久間はチームメンバーの成長のためにOne on Oneをコーチングで行っています。今回部下の菅沢に新しい中途採用者が入社しました。篠原のミッションはMade in Japan以外の製品をより分けるEXOシステムの改修案のとりまとめです。

主な登場人物:
佐久間省吾 35歳 プロジェクトマネージャー
菅沢莉子  32歳 プロジェクトリーダー 佐久間にレポート
東堂聡志  28歳 プロジェクトリーダー 菅沢にレポート
篠原大輝  29歳 プロジェクトメンバー 菅沢にレポート

第1回目はこちらから

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<成功の秘訣を探る逆登山>

※①等の番号が入った箇所については、セッションの後にコーチングのポイント解説をお読みいただけます。

「今日、5回目のコーチングですね。篠原さん。またちょっと元気なさそうに見えますが、大丈夫ですか? お腹痛いんですか?」
菅沢
篠原
「はい。来週、各部署を集めての電話会議だと思うと、胃が痛くて。資料も準備もできてるんですが」
「準備はできているけれど、胃が痛いんですね。それってどんな感じですか?」
菅沢
篠原
「なんか不安で」
①(でた、篠原さんの不安……。でもむやみに励ましてはダメだ……どうしよう)
菅沢
篠原
「菅沢さん?」」
「あ、ごめんなさい。不安なんですね。というと?」」
菅沢
篠原
「漠然としていて、とりとめないんですけど。なんか、ミーティングの間に根底を覆されるのではと、特に、具体的に誰かからとかは思い浮かばないんですけど」」
「具体的に思い浮かばないけど、根底から覆されるような気がするんですね」」
菅沢
篠原
「どうしたらいいんでしょう」」
②どうしたらいいんだろうと思ってるんですね
菅沢
篠原
「自分にもう少し豊かな想像力があれば、相手のことがわかって、どう準備すればいいかわかると思うんですが」」
「つまり、不安の内容を具体的に想像して、本当にそれが対処すべきことであれば、対処方法を考えたいということを言っていますか?」」
菅沢
篠原
「はい、まさに、そうです」」
「篠原さん。③『逆登山』という方法を使ってみましょうか
菅沢
篠原
「『逆登山』ってなんですか?」」
「会議が上手く運んで、合意が取れることを登頂と見立てて、どんな困難がそこに待っていて、どんな方法で乗り越えたかを想像して、ご自身で言葉にしてみる方法です。手法は簡単。私が篠原さんにインタビューする形をとるんですけど。つまり想像と現実を織り交ぜて話をしてもらうことになります」」
菅沢
篠原
「そうすると、つまり、自分には想像できていなかった困難と乗り越える手法を思いつくかもしれないということでしょうか」」
「そうです。飲み込みが早いです」」
菅沢
篠原
「やってみたいです。お願いします」」
「じゃあ、始めましょう。えっと、篠原さん、会議無事終わってよかったですね。ほぼ各部署からの合意が取れましたし、これで予定通り、改修案の精査に入れますね」」
菅沢
篠原
「あ、ありがとうございます」」
「成功の秘訣は何でしたか?」」
菅沢
篠原
「えっと、相手の立場に立った受け入れやすさを追求した点にあると思います」」
「どんな点を追求されたんでしょうか」」
菅沢
篠原
「まずは、FAQを整備しておき、予算と法務面からの制約をはっきりさせておいたことです」」
「それから?」」
菅沢
篠原
「えっと・・・・・・そうですね。全体像が分かるようにしました。このマトリックスを使えば、今集まっている案件で、どれくらいが採用されて実現できるか。そして、同じような案を合体させられて効率よく採用できるかという資料を作ったことです」」
「あ、え? そうなんですね。他にはありますか?」」
菅沢
篠原
「えっと・・・・・・マトリックス値の高い順に採用した場合の売り上げ予測を作って見てもらった点でしょうか。あくまで予測ですが、数値を見てもらったことで、より具体的にこのマトリックス指標による精査の意義を感じてもらえたと思います」」
「いいですね。他にはありましたか?」」
菅沢
篠原
「えっと・・・・・・そんなところです。・・・・・・菅沢さん!」」
「ええ、いったん、インタビュー終わりますね。篠原さん。どうですか?」」
菅沢
篠原
「すごいです。全体像と採用される予定の案件のシミュレーションは頭ではありましたが、図にしてみてもいいかもと思いました。きっとビジネス側も運営側もその方が納得しそうです」」
「そのようですね」」
菅沢
篠原
「それに、売り上げ予測です。安易な数字は出したくないと思って手を付けていませんでしたが、予測を出せれば、このマトリックスを信じて精査しても皆が納得すると思いました」」
「納得! それは、篠原さんが望んでたことでしたね」」
菅沢
篠原
「ええ、そうですね。たとえばギフトカードのバリエーションなどの改修案を例にとって、あきらめて買わずに帰っていく人を拾えた場合の売り上げプラスを計算できると思います」」
「具体的になってきましたね」」
菅沢
篠原
「はい、すぐにでも手を付けたいです」」
「篠原さん、ひとつアドバイスしてもいいですか?」
菅沢
篠原
「はい。お願いします」」
「売上予測のあたりは、数値の取り方とまとめ方は東堂さんが上手です。頼んでみてはいかがでしょう」」
菅沢
篠原
「はい。そうしてみます!」」
「どうですか? 漠然とした不安があるとおっしゃってた件ですが」」
菅沢
篠原
「はい、コーチングしてもらう前よりずっと減りました。準備を厚くすれば、もっと減ります。そうだ、プレゼンの練習もアクションプランに入れます。菅沢さん指導してもらえますか」」
「私もプレゼンは毎回、佐久間さんに見てもらうので、じゃあ、佐久間さんにも頼みましょう」」
菅沢
篠原
「ありがとうございます」」

セッションのポイント

1、コーチングをしている際に、コーチには様々な心の声が上がってきます。これがフィルターです。フィルターを通してコメントされると、コーチされる側は、話を受け入れて聞いてもらっていない気がして、潜在意識から遠のきます。フィルターの中には、「いい」、「悪い」を判断しようとする声や、「そうだそうだ」と同情する声など様々です。相手の言葉にフィルターが出てきても、声に出さない、影響されないことがコーチにとって、とても大事です。あくまで、出てきた言葉を復唱し、相手に返していきます。

2、コーチされる側が途方にくれて、どうしたらいいのかわからないといっても、アドバイスを求めていると勝手に判断してはいけません。相手が本当に八方ふさがりだと思っていても、このように、どうしたら良いんだろうと思ってるんですねと返します。

3、逆登山という方法は、山頂をゴール達成に見立て、挫折しそうになったり、越えられない壁にぶつかったりしたとき、どう対処したのか、誰かに助けを求めたのかなどを成功体験として語ってもらい、これから起こる困難とその解決策を自ら想像して話をし、前に進むアクションプランにつなげるという方法です。

コーチングのチェックポイント

フィルターが出てきても、言わない、表現しない、引っ張られない。
相手が八方ふさがりだと言ったとしても、コーチングはもう無理だとは思わない。
相手から出てきた言葉をひらって丁寧に、復唱して返し、突破口を見ていく。

まとめ

中途採用の新人が経験し、真価が問われるもののひとつが、他部署へのプレゼンテーションでしょう。
本人のみならず、上司もチームメンバーも緊張する場面です。

また内容の完成度というのは、会社によって変わったりもします。おそらく、篠原の口にしている不安というのは、どれほどの資料があれば、自分のやりたいことが伝わり、相手にメリットがあると思ってもらえるのかが計り兼ねた不安だったようです。

菅沢の逆登山インタビューで篠原が出した追加の資料案は彼のプレゼンテーションの質を上げるのに役立ちそうです。

次回最終回は、菅沢と彼女の上司、佐久間とのセッションです。

最後までお読みいただきありがとうございます。
コーチングや今回のポイントのご質問など、ぜひFacebookやメールでメッセージください。お待ちしております。

*この物語に登場する人物名、団体名、システム等はすべて架空のものです。

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