エンジニアの起業の種類やその際必要なものは?独立時の注意点も解説

エンジニアの独立起業が最近注目されています。起業すると業務の自由度や収入面も変化し、会社勤めの時と比べて柔軟な働き方が可能です。
そんなエンジニアの独立起業ですが、必ずしも華々しいスタートアップ企業を立ち上げるようなものばかりではありません。むしろそれは一握りの人たちです。
多くの場合は独立したがゆえに発生する手続きや業務をこなしつつ、仕事を獲得しなくてはならない大変な面もあります。けっして甘い幻想ではない起業ですが、やりがいや魅力も当然あるといえるでしょう。
この記事ではエンジニアの起業について、フリーランスとの違いなどにも触れつつ解説していきます。

エンジニア起業の種類

まずはエンジニアの独立企業には、どのような種類があるのかを確認しておきましょう。

スタートアップを立ち上げる

一般的なイメージとして、エンジニアの起業で思い浮かべられるのは「スタートアップ」ではないでしょうか。株式公開を目指して、VC(ベンチャーキャピタル)から出資を受け、革新的なサービスやプロダクトで成功を目指すようなイメージです。
ニュースなどで目立ちやすく、いかにも起業という感じですが、実際にそういう華々しいパターンで事業展開していく人は、極めて少ないのが現実といえます。
もちろん、成功すれば億単位で資産を形成できるチャンスとして夢があるのも起業です。しかしながら、そこまで行くには想像を絶する努力と研究、労苦が必要となります。努力すれば叶うという保証もありません。
VCから投資を受ける起業家の年収に関しても、成功するまでは会社勤めの時代より低い場合も多いのです。
そういう現実を認識した上でそれでも挑戦したい気概に溢れ、明確なビジョンがない限りは、到底実現し難い「茨の道」といえます。
ここから先は範囲を広げて、より現実的な起業について見ていきましょう。

「個人事業主」としての開業=起業なのか?

会社勤めをしていたエンジニアにとって、個人事業主として開業し、直接仕事を受けるいわゆる「フリーランス」という独立の仕方があります。もっとも現実的で実際に数も多い独立のスタイルといえるでしょう。
また、必ずしも独立しなくとも、会社勤めのまま副業としてのフリーランスもありえます。ともあれ、広義ではこういう個人事業主としての開業も、ひとまずは「起業」です。
しかし、多くのフリーランスエンジニアは企業から受託開発や企画、ディレクションなどの業務を請負って、リモートあるいは在宅で仕事をこなしていくパターンが一般的となります。
つまり、すでに存在する仕事の一部を、企業から切り出してもらって請負い、その対価として報酬を得るものです。その仕事自体はもともと存在するものなので、企業からみると外部委託=アウトソーシングになります。
そういう意味では業務委託を行うフリーランスは、「起業」と縦分けて考えることが一般的です。

新しい価値やサービスを生み出すのが「起業」

すでに存在している仕事ではなく、仕事そのものをゼロから生み出す=新たな価値を創造するような仕事に取り組む場合は、個人事業主であれ「起業」といえます。
つまり起業とは個人か法人かという形式の問題ではなく、あるものを請け負うのか、無いものを作り出すのかという創造性の違いともいえるでしょう。
個人事業主であれ、この世にまだないサービスやプロダクトを提案・創造する仕事に取り組むエンジニアこそ起業家と呼べます。
また、同じ意味から個人事業主のコンサルタントも、クライアントに対してコンサルティングで新たな価値を生み出すという意味で、起業に属すると考えてよいでしょう。

起業家としてのコンサルタント

ITのコンサルタントは、クライアントの持つ問題に対してITによって解決策を提案する仕事です。システムの設計からプロジェクトマネジメントも行うITコンサルタントは、SEの業務と重なる部分が多く、SEから転身する場合も少なくありません。
ITコンサルタントに転身することで、より大きい舞台で仕事が行えることは魅力といえるでしょう。
SEは、クライアントが示す課題に対して、解決策を提示することがメインの仕事です。コンサルタントは何が問題になっているのかが分からないクライアントに対して、その問題を発見し、それに対して解決策を提示します。
このようにコンサルタントは、今までと同じような業務もありながら、違う視点での仕事にも関われることでより高いスキルを手に入れられます。上昇志向の強い人に向いた起業といえるでしょう。
ただし、クライアントが気付かなかった問題を発見して解決できればいいですが、もし解決法が間違っていればクライアントに損害を与えてしまうリスクがあるのです。当然ながら、SEよりも大きな責任を負う立場を覚悟しなければなりません。

エンジニアの起業で必要なこと

ここではエンジニアが起業するにあたって、新たに必要になると考えられることを挙げてみましょう。

営業力

かつては会社のブランドや営業力で獲得された仕事をやってきたのが、独立すれば自分自身で営業をしなければなりません。いつでも仕事があるという保証はなくなるのです。
悪くすれば仕事がない事態も起こりえることを、念頭に置く必要があります。もはやかつてのように、コードを書くことやディレクションだけでは立ち行かないのです。
仕事が途切れないように受注を獲得する、営業サイクルやタイムマネジメントが欠かせません。仕事を獲得するためにネットワーキング・パーティや営業エージェントの活用など、いくつかのチャネルを使い分けて収支バランスを保つ必要があります。

マーケティング

技術やプロダクトに重きを置き、受注のためのマーケティングを軽視するとよくありません。ビジネスである限りは、実際にユーザーに使ってもらって、キャッシュフローが生まれてこそ回っていきます。そのためには市場の動向を読む、マーケティングが必要です。
また、ある業界のソフトウェアサービスを作っているのに、その業界の事を研究しない、といったケースも案外多く見受けられます。ビジネスに継続性をもたらすためには、対象の業界に関するマーケティングも重視すべきでしょう。

事務作業

起業しても軌道に乗るまでは、なかなか事務員を雇うわけにはいきません。請求書発行や経費の精算、納税申告等さまざまな事務作業も自分でやらなければならないのです。
起業するということは、分業化されていた業務を一旦すべて自分で背負い込み、そのうえでクライアントを獲得していくことになります。

健康管理

仕事を獲得し過ぎてしまって自分のキャパシティを超え、身動きが取れなくなって激務の果てに体調を崩すようなケースもまれにあります。健康管理は自分の責任において行わなければ、なりません。
よくいわれる「体が資本」とは起業した者ほど、より当てはまる言葉です。

資金周りの整備

独立開業をしたら、資金周りの整備が必要です。税務申告や売上の把握のために仕事用の口座を開設する必要があります。プライベートと仕事用の口座を明確に分けておかないと、収支が混同してしまってよくありません。
また、自宅を事務所として運営する場合には、光熱費や通信費も経費として計上できるので、仕事用の口座から自動振替されるようにするとよいでしょう。
クレジットカードやビジネスローンも、運転資金を補強するために登録しておけば、初期の赤字を補填する役に立ちます。

前職の会社との良好な関係

独立起業したいといくら意気込んだとしても、勤めている会社のことを配慮せずに辞めてしまうような形はよくありません。それは道義的に当然ですが、それだけではないのです。
そもそもその会社は、今後自分が独立した後に優良顧客になる可能性が高いといえるでしょう。互いのことを理解しているので、取引や契約もスムーズに行えるうえ、仕事のクオリティが安定していれば顧客を紹介してくれることもありえます。
会社を辞める時には、むしろ慰留されるくらいの信頼関係を築いたうえで、迷惑の掛からない辞め方をするのが望ましいでしょう。

契約上のトラブルを避ける慎重さ

起業すると、未払いなどの金銭トラブルが発生した際に、護ってくれる存在は自分以外にありません。仕事が無駄にならないように、契約や支払い関係は慎重に進めなくてはならないのです。
たとえば高額な報酬になる場合には一部を前払いでもらう、契約書は細部まで確認するなどの慎重さが大切となります。せっかく仕事をしたのにお金をもらい損ねるというような事態に陥らないよう、細心の注意を払いましょう。
また、開業して仕事を始めた頃は相場が分からず、相手の言い値で受けてしまうことがあります。それが市場価格より相当安かったことに気づいたとしても、後からの価格修正はほとんどできません。
起業したてという部分に付け込んで、安く仕事を受けさせようとする会社も中にはあります。自分が携わる仕事の相場は、できるだけこまめにチェックしておくことが必要です。

投資する感覚

エンジニアの独立は、現場の感覚が身についているのでその視点に寄りがちで、工数を意識し過ぎることがあるようです。つまり、なまじっか工数見積もりができてしまうと、すぐに利益に直結しない機能追加などに大胆な投資をしにくい面があります。
しかし、ビジネスをストレッチさせるためには現場の感覚以上に、ビジネスを俯瞰したうえで投資する感覚を持ち込むことも必要であるといえるでしょう。

起業のタイミングについて

エンジニアとして独立するタイミングは、一体いつ頃がよいのでしょうか。あるいはフリーランスが法人化するタイミングはいつがよいのでしょう。ここでは、エンジニアが独立起業をするタイミングについて、触れておきましょう

年齢的なタイミング

エンジニアが起業するには、年齢は若ければ若いほどスキルや能力の伸び代もあり、最先端のテック事情に精通することができて有利です。
業務を発注する企業側にしても、若いエンジニアほどテック動向や最新技術を吸収しやすいと期待し、歓迎すると考えられます。
また、若いと多少の無理をこなすだけの体力があるため、ほどよい負荷が掛かって、さらに能力が高まるという好循環に転じやすいともいえるのです。
逆に40歳を超えて独立すると、敬遠される傾向にあります。会社組織であればエンジニアの40歳以降は、一般的にマネージャー職につくことが多いのです。現場からは離れ気味になり、最新テックに触れる機会は減っていきます。
起業自体に本来年齢は関係ないのですが、IT関連では時代の潮流や企業側の業界のトレンドに合ったスキルを求められるのです。年齢が上がると業務を受注することが難しくなってしまうので、起業をする意志があるのなら少しでも早い方が有利でしょう。

法人化のタイミング

個人事業主として独立してフリーランスで業務をこなす中で、新しい仕組みを作るアイデアや技術があれば法人化して、組織で仕事を進める方がよくなります。
会社を設立することで、出資を受ける機会も生まれる可能性があり、他にも税務上や信用性も含めていろいろと有利になるといえるでしょう。
また、特に新しいことをやるのではなく業務委託であっても、ゆくゆくは組織で規模感を持って仕事を進めたいという気持ちが湧いてきたなら、それも法人化をするタイミングといえます。
フリーランスにはひとりで仕事を完結する自由さはありますが、チームで仕事に取り組むことで可能になるアクションは格段に増えるのです。
やることはフリーランス時代と同じであっても、組織で成果を生み出す体制を作り上げる法人化も立派な起業といえます。
法人化に必要な手続きは、登記費用や登記書類などだけです。半月あれば会社は立ち上がります。
法人化は手続きそのものよりも、収益が上がるビジネスモデルに到達できるかどうかが課題です。そのために事業計画があると考えるべきでしょう。
もちろん事業計画をどれだけ練っても、実際にその通りに行くことはまれです。完璧な事業計画などはなかなか作れるものではなく、方向性を考えるための大切な叩き台といってよいでしょう。

まとめ

エンジニアにとっての独立起業について、多面的に見てきました。フリーランスと起業の違いは、端的には受託か創造かということになります。そのうえで組織化して受託する起業の形があることもご紹介した通りです。
個人事業主であっても起業家として価値を生み出すことはできますが、法人化することのメリットも大きいといえます。スタートアップまではいかなくともダイナミックな展開を考えるのであれば、組織での取り組みを検討する価値があるでしょう。
独立や起業を視野に入れているエンジニアのみなさんは、ここでの情報も参考にしていただきながら、ぜひとも実現可能な夢を描いてチャレンジしてください。

Talisman編集部

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