転職を制する職務経歴書と自己PR

転職の成否の鍵を握る書類が、履歴書と職務経歴書です。履歴書は、いわゆる就活で散々書いたことでしょう。
しかし、職務経歴書はなじみがないかもしれません。

これは読んで字のごとく、「職務」に関する「経歴」をまとめた「書」類であり、一般的には勤務経験のない新卒者が書くものではないのです。
転職を考えたとき、はじめて書く必要に迫られます。

では、何をどのように書けばいいのでしょうか。

大まかには、職歴と自己PRを記載します。ただ、この自己PRが悩みどころ。
自分のセールスポイントを的確に把握して、文章にするのは、意外と難しいものです。
そもそも、企業はなぜ職務経歴書の提出を求めるのか、そのなかでなぜ自己PRをさせるのか。
そこから、採用へと結びつく職務経歴書と自己PRについて探ります。

1.職務経歴書とは何か

職務経歴書には、職歴と自己PRを書けばいいことがわかりました。
重要なのは、採用担当者の目に留まること。この人物に会いたい、一緒に働きたいと思わせる内容でなければ、書類選考は通過できません。
まず、職務経歴書の目的を知り、記載するべき内容と適切な書式を確認していきましょう。

1.1. 職務経歴書の目的

採用担当者は、職務経歴書を採否の判断材料の一つとします。
つまり、企業が職務経歴書の提出を求める目的は、応募者の経験や能力を見極めることです。
一方、応募者が職務経歴書を書く目的は、転職を成功させること。
どれだけ実績や実力をアピールしても、それが企業の求めるものでなければ、採用には至りません。職務経歴書は、企業や求人ごとに内容を調整すべきであり、使い回わせないと心得ましょう。

1.2. 記載するべき内容

職務経歴書に記載する内容は、「職歴」と「自己PR」です。具体的には、下記の6要素を盛り込みます。
①タイトル「職務経歴書」・日付・氏名
②経歴の概要
③職歴(勤務先、在籍期間、所属部署、仕事の内容、実績、受賞歴など)
④資格・スキル
⑤自己PR
⑥志望動機
詳細であればあるほど、採用を勝ち取る〈よい職務経歴書〉になるわけではありません。
大事なのは、採用担当者が見て、「どのような仕事に、どのように取り組み、どのような成果をあげたのか」が理解しやすいことです。

1.3. 適切な書式

職務経歴書には、規定の書式はありません。用紙が「A4、縦置き、横書き」であれば、文字サイズやレイアウトは自由です。
そのぶん、個人差がでるところ。内容はさることながら、きれいに読みやすくまとめて、パソコンスキルや資料作成力、プレゼンテーションスキルなどもアピールしましょう。
職歴のまとめかたは、「編年体式」「逆編年体式」「キャリア式」の3スタイルが一般的です。
最もオーソドックスなのが「編年体式」。時系列に職歴を記載する方法です。
ビジネスパーソンとしての成長過程を見せられるため、配置換えがなく、同じ業務を続けてきた人に向いているでしょう。

編年体式とは逆に、直近の仕事から遡って職歴をまとめる方法が、「逆編年体式」です。
最近の仕事や実績がアピールしやすくなるため、キャリアチェンジした人に向いています。

「キャリア式」とは、時間軸にこだわらず、仕事の内容でまとめる方法です。
通年の経験年数やスキル、得意分野などが一目でわかり、仕事の習熟度をアピールできます。同じ業界や職種での転職回数が多めの人に向いているでしょう。
それぞれの特長を知り、自分の経歴を輝かせるスタイルを選ぶことが、機能する〈よい職務経歴書〉への近道です。

2.なぜ職務経歴書に自己PRが必要なのか

職務経歴書に自己PRを書くのはなぜでしょうか。理由は2つあります。
1つ目は、転職者の「思い」を伝えるためです。仕事内容や実績で構成される職歴によって、「何ができるのか」といった能力は測れます。
しかし、それだけでは、「経験や実績をどのように生かすのか」あるいは「何を目指して転職したいのか」といった転職の意欲や仕事への熱意、向上心は読み取れません。
採用担当者に「熱意のある期待できる人物」として認識されるためにも、自分を採用するといかにメリットがあるのかをしっかりと伝えるようにしましょう。

2つ目は、自己PRは、人物像をより明確にするためです。
職歴からは、性格や人柄はもちろん、強みや考え方、価値観などもなかなか見えてきません。
しかし、共に仕事をするうえでは知っておきたいポイントでしょう。
そのため、採用担当者は、応募者の能力だけではなく、企業風土に合っているのかを含めて採否を判断しています。
自己PRには、自己紹介の要素もあるのです。

3.採用担当者の心を動かす自己PR

採用担当者の厳しい目をパスして、会って話を聞いてみようと思わせる自己PRとは、どのようなものでしょうか。
それは、自分の言葉で書かれた自己PRです。
内容としては、転職の目的が明確であり、経験や実績を生かして何に貢献できるのかまで書かれていると、やはり採用担当者は興味を持ちます。
どのような仕事を任され、どのような姿勢で取り組み、どのような成果をあげたのかをまとめたうえで、それを生かすために転職を決めたことや転職先で何をしたいのかをしっかりと書きましょう。
そこから、採用担当者は、転職者の「思い」を読み取ります。転職マニュアルや自己PR事例集の丸写しやアレンジでは、採用担当者の心は動かせません。
また、職務経歴書は書式の自由度が高いぶん、総合的なビジネススキルが露わになります。読み手を意識して、きちんと整理した内容を読みやすくレイアウトしていると、仕事ぶりも信頼できるという評価につながるでしょう。

4.職務経歴書の自己PRは3つのステップで書ける

職務経歴書を前にして、いきなり自己PRを書こうとしても書けるはずがありません。文章にするためには、それなりの準備が必要なのです。次の3つのステップを踏めば、自ずと書くべき内容が整理されます。

4.1. ステップ1:キャリアの棚卸しをする

自己PRは、自分のアピールポイントを知らなければ書けません。
そこで、1つ目のステップとして、「キャリアの棚卸し」をします。
料理に例えると、食材を選ぶ作業です。採用担当者の心を動かす〈よい自己PR〉には、よい材料を用意する必要があります。
まず、いままで経験した仕事を洗いざらい書き出しましょう。
どのようなポジションで、どのような業務を担ったのか、そして、どのような成果をあげたのかを一つずつ、具体的に列記していくのです。
その一つひとつがアピールポイントの素となります。
このステップを怠ると、あとのステップにも支障が出てしまうので、自分のたどってきた道を振り返り、しっかりと向き合うことが大事です。

4.2. ステップ2:応募先のニーズを把握する

2つ目のステップは「応募先のニーズの把握」。これは、自己PRの成否をわける重要な作業です。
誰が見ても素晴らしいアピールポイントでも、応募先の必要としていない経験や能力であれば、それはただの自分語りであり、押し売りになってしまいます。
レストランで、注文していないおすすめメニューを勝手に提供されたら、戸惑うでしょう。
自己PRも、相手の要望にマッチしてこそ、〈よい自己PR〉となり得るのです。
まずは、きちんと求人情報を読むこと。
職種や資格は言うまでもなく、具体的な仕事の内容、求める人物像などから、応募先が必要としている人材を読み解きましょう。

4.3. ステップ3:応募先のニーズに合う自己の強みを選び出す

最後のステップは、「応募先のニーズに合う強みの選択」。これは、自己PRの調理法を決める作業です。
そろえた食材の中から、相手の望むメニューに必要なものを選び、調理法を考えます。
まず、ステップ1で列記したアピールポイントの素と、ステップ2で把握した応募先のニーズを見比べて、共通項を選び出しましょう。
それが自己PRの骨子となります。そこに、具体的なエピソード——仕事面での信条や価値観、仕事の取り組み方、同僚との協働、周囲からの評価などで肉付けしましょう。
さらに、その経験を応募先でどのように生かせるのかといった今後の展望を加えます。
あとは300〜400文字程度に文章を整えれば、自分の言葉で語る唯一無二の自己PRは完成です。

5.短い在職期間と短所の生かし方

キャリアの棚卸しをすると、短い在職期間や短所など葬りたくなる過去や自分に出くわすかもしれません。
しかし、それをなかったことにしてしまうのは早計です。
短い在職期間や短所は、必ずしもマイナス評価になるとは限らず、採用担当者の心を動かす〈よい自己PR〉になる可能性を秘めています。

5.1. 短い在職期間をアピールポイントに変える方法

あまりにも短い在職期間を見ると、採用担当者は「入社してもすぐに辞めてしまうのではないか」と不安を覚えます。
しかし、それだけで不採用とはしません。何らかの事情で在職期間が短くても、実績があれば、評価の対象となります。
在職中に得た経験やスキルが、応募先のニーズに合っていれば、自己PRに書くべきです。キャリア式で職歴をまとめると、実績を上手にアピールできます。
また、短期間で退職した場合、会社都合でも自己都合でも事実を記しつつ、転職への前向きな思いが伝わるように工夫するとよいでしょう。

5.2. 短所を長所に変える方法

よく言われることですが、短所は視点を変えると長所になり得ます。
つまり、「優柔不断」や「スピード感に欠ける」という短所は「慎重」という長所であり、「飽きっぽい」という短所は「好奇心が旺盛」という長所かもしれないのです。
もし、自分には誇れる長所がないと悩んでいるとしたら、思い込んでいる短所を長所に変換してみましょう。そのなかには、応募先のニーズや企業風土に合う長所が見つかるかもしれません。短所を長所として見直すことで、新たなアピールポイントが発見できるはずです。

6.効果的な自己PRの3つのポイント

採用担当者の心を動かす〈よい自己PR〉には、3つの要素が含まれています。自己PRを完成させたら、総仕上げとして、次の3つのポイントをチェックしながらブラッシュアップしましょう!

6.1. 応募先のニーズに合う強み

1つ目のチェックポイントは「応募先のニーズに合う強み」が書かれているかどうかです。これは、自己PRの骨子となるもの。
先述した自己PRを書くための3つのステップを踏めば、漏れることはないはずです。
自分のアピールポイントが、応募先の求める仕事内容・経験・実績にマッチしているかどうかをしっかりと確認してください。

6.2. 裏付けとなる行動

2つ目のチェックポイントは「裏付けとなる行動」が盛り込まれているかどうかです。
これは、強みを説明するエピソードであり、骨子に肉付けした部分になります。
仕事の内容に加えて、どのように取り組んだのか、その仕事を進めるうえで何を大事にしたのかなどを書くことで、強みに納得感が出るはずです。

6.3. 成果と評価

最後は、行動の結果としての「成果と評価」が書かれているかどうかをチェックします。
「応募先のニーズに合う強み」と、それの「裏付けとなる行動」だけでは、まだ弱いのです。
それが、成果として結実し、どのように評価されたのかをしっかりと書きましょう。
成果と評価があってこそ、強みは、独りよがりのセールスポイントではなく、採用担当者を惹きつける魅力となります。

7.転職のプロに相談するという選択

職務経歴書の自己PRは転職者泣かせ。いきなり書き始めるのではなく、3つのステップを踏み、3つのチェックポイントを押さえると、採用担当者の心を動かす〈よい自己PR〉はスムーズに書けるものです。
しかし、それでも悩むかもしれません。はじめての転職はもちろん、転職の経験があっても、自己PRに自信が持てなくても当たり前です。そもそもキャリアの棚卸しはきちんとできたのだろうか、これは強みと言えるのだろうか、応募先のニーズに本当にマッチしているのだろうか……と、考えだすと切りがない不安に襲われることもあるでしょう。
そのときは、転職のプロに相談するのもよい方法です。タリスマンでは、コンサルタントが、キャリアの棚卸しから自己PRの書き方まで、さまざまなサポートをしています。強みを引き出し、上手にアピールするためのアドバイスを受けて、〈よい自己PR〉を手に入れましょう。

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