分析や戦略構築に役立つ!フレームワーク思考とその使い方ガイド

分析や戦略構築に役立つ!フレームワーク思考とその使い方ガイド

経営戦略や市場分析、マーケティングなどのための思考ツールである「フレームワーク」というものが、昔からたくさん存在します。これらを使うと、ビジネス上で迷った時に考え方を整理したり、視点を変えたり、視野を広げたりするのに役立つ場に違いありません。

この記事で新旧の代表的なフレームワークを使う、場面も踏まえて紹介していきます。ぜひ、ビジネスでのフレームワーク思考の使い方をマスターしましょう。

フレームワークの役割とそのメリット

フレームワークとは論理モデルであり、思考するためのツールです。もともとフレームワークの言葉の意味としては「枠組み」や「構造」を指しており、ビジネスにおいて「知的生産を実現する効率的な考え方の枠組み」といえるでしょう。

※詳しくはこちらの記事へ

Webフレームワークとの混同を避けるために、「ビジネスフレームワーク」と呼ばれる場合も少なくありません。フレームワークは対象のテーマに対する考え方や情報、状況をわかりやすく図式化したものが多いです

そしてこのフレームワークが、実際にビジネスで役に立つ考え方やメソッドが落とし込まれています。フレームワークは効率的に考え方や発想を整理して、答えを見出しやすくする手助けとなります。そのため、フレームワークにそって考えると、分析や思考が効率的に進むでしょう。

フレークワークを使うことでの具体的なメリットをまとめると、以下のとおりです。

●複雑化した考え方を整理できる
●仕事の効率をアップさせる
●他者にとってわかりやすい資料作成に役立つ
●戦略を立てるときの指針となる
●企画立案するときの判断基準になる
●状況を分析する際のヒントになる

これらの効果があるビジネスフレームワークの中から代表的なものを、使用する目的別に紹介していきましょう。

考えをまとめる際に使えるフレームワーク

まずはあらゆる場面で使える、汎用性が高いフレームワークを紹介しましょう。考え方を整理したりまとめたりするために使える代表的なものとして、以下の2つがあります。

●ロジックツリー
●MECE(ミーシー)

ロジックツリー

ロジックツリーでは中心のテーマが「木の幹」で、そこから「枝分かれ」するようにどんどん関係がある項目を書き足していきます。これにより、テーマの全体像を俯瞰できるようになります。

たとえば、枝分かれする中で、別の系統の枝葉から同じ項目が出現することがあります。また、一見別に見える項目が実は底流でつながっていることが発見できるような効果もあるのです。そうやって進めていくと、問題の本質がどこにあるのかが見極めやすくなるでしょう。

そして、解決策としてどの部分にどういう手を打てばよいか、あるいはここをこうすればあの部分は自動的に解決するだろうとか、対象を大局的に捉えて思考することが可能です。何より図に表しながら考えを整理し発展させていくので、頭のなかだけで考えるよりもすっきりと論旨を進められます。とてもシンプルで使いやすく、ビジネスに限らずちょっとした課題でも使える利便性が高いフレームワークです。

MECE

MECEは「Mutually」「Exclusive」「Collectively」「Exhaustive」の頭文字をとったもので「ミーシー」と読みます。それぞれの単語は「互いに」「重複がない」「集合的に」「漏れがない」という意味で、要するに「漏れなくダブりなく」するためのフレームワークです。

ビジネスはもちろんとして、何か物事を整理する場合に漏れていたりやダブっていたりすると適切な判断ができなくなります。そこで、正確な状態を認識するためにMECEを使います。このフレームワークは情報の整理において重複、抜け落ちを避けるため、リストアップする際の確認によく用いられます。

実際に「その分類はMECEか否か?」という観点で、ビジネス現場でよく話題に上がることもあります。また、ロジカルシンキングにおいても基本になる考え方のひとつなので、身につけて損はないでしょう。

仮にロックとポップスに特化した音楽配信サービスで、マーケティングの戦略を立てるためにターゲットを分類するとしましょう。単に列挙するだけでは漏れやダブりが起こりがちです。以下の3つのカテゴリーはMECEでしょうか?

●Jポップファン
●洋楽ファン
●ロックファン

残念ながら、この分類はMECEではありません。なぜなら、これらのカテゴリーで2つないし3つとも好きな人が存在し、そのぶんダブりが発生するためです。また、Kポップなどのアジアンポップス系が漏れているので、実際よりポップスファンを見落とすことになるでしょう。

頭の中だけで考えると難しくなりますが、このようにMECEの考え方で図にしていくと、とてもわかりやすくなり、モレやダブりをチェックできるのです。

環境を分析する際に使えるフレームワーク

ビジネス環境や経済環境、業界環境などを分析する際に使えるフレームワークの代表的なものとして、以下の5つを紹介します。

●SWOT
●TOWSマトリクス
●PEST
●AIDMA
●AISAS

SWOT

SWOTは、企業が直面しているビジネス環境を、外部環境と内部環境に分けて分析を行うフレームワークです。このフレームワークは、アメリカのヘンリー・ミンツバーグという経営学者が提唱しました。これをビジネス環境の分析に活用したのは、ハーバード・ビジネス・スクールのケネス・R・アンドルーズという教授が1965年に著した『Business Policy: Text and Cases』が最初であるとされています。

サービスや組織などの外的環境を「Opportunities(機会」「Threats(脅威)」に分類し、それらが持つ内的環境を「Strengths(強み)」と「Weaknesses(弱み)」に分類して評価する手法です。この分析アプローチは、企業のマーケティングや広報などの分析に用いられます。ただし、この分析で出てくる強みや弱みはあくまで相対評価によるもので、比較する対象によって変わります。よって、分析の軸が明確になっていなければ評価が難しくなる可能性があります。

TOWSマトリクス

TOWSはSWOTを発展させ、SO戦略・WO戦略・ST戦略・WT戦略という4つの戦略が導き出せるようにしたフレームワークです。1982年にサンフランシスコ大学ビジネス&マネジメント・スクールのハインツ・ワイリック教授が発表した、『The TOWS Matrix – A Tool for Situational Analysis』という論文で提唱されました。

サービスや組織の外的環境に潜む「Opportunities(機会」「Threats(脅威)」と、それらが持つ内部環境の「Strengths(強み)」と「Weaknesses(弱み)」を掛け合わせる部分はSWOTと同じです。評価の軸が曖昧になりがちなSWOTの課題は残りますが、方針が具体的に立てやすい点で利便性が高いツールという評価を得ています。

PEST

PESTとは、企業を取り巻くマクロな環境についてどのような要素があり、それぞれ現在から将来にかけてどのような影響を与えるかを予測するフレームワークです。
もともとはフィリップ・コトラーが外部環境を分析するためのツールとして使っていました。

構成要素は以下の4つです。

●Economy(経済):経済成長や景況などの要素
●Technology(技術):ITサービス・デジタルデバイスなどの要素
●Politics(政治):市場や業界に影響を与える規制などの要素
●Society(社会):人口数、構成比などの要素

PESTは、主に製品開発の企画段階やグローバルな戦略を立てる場合、ターゲットの範囲が広いマスマーケティングに取り組む場合などに用いられます。マクロ環境からの発想を展開したり、基本的な制約事項を把握したりするのに有効といえるでしょう。

マーケティングに使えるフレームワーク

企業が消費やサービスを世に出すために智慧を絞る、マーケティングにおいて役立つ代表的なものとして、以下の4つを紹介します。

●4P
●7P
●STP
●ビジネスモデル・キャンバス

4P

アメリカのエドモンド・ジェローム・マッカーシーというマーケティング学者が1960年に著した、『Basic Marketing: A Managerial Approach』の中で提唱されている、フレームワークの古典です。
4Pでは企業のマーケティングにおいて、自社で管理可能な以下のような要素を定義しました。

●Place:流通
●Product:製品
●Promotion:販売促進
●Price:価格

当時のマーケティングの主流は、商品のコストを下げて市場競争力を高める手法であり、コスト削減のアイデアを生み出すためにこのフレームワークが開発されました。現在ではこの考え方は「プロダクトアウト(供給側の論理)」であるとして、現代的な「マーケットイン(消費者の立場に立った論理)」を引き合いに出して批判する声もあります。

とはいえ、マーケティングのフレームワークの基本としての意味合いは薄れていません。今なお、マーケットにおける自社のプライオリティやウィークポイントを把握し、自社のスタンスを決定するために用いられています。

7P

7Pは前出の製造業向けのフレームワーク4Pを情報産業や金融業向けに発展させたものです。4Pが提唱された製造業が全盛の時代から、1970年代に入ると情報や金融などのサービスを対象としたマーケティングのニーズが高まり始めました。

そのような時代に、アメリカのフィリップ・コトラーという経営学者が提唱したフレームワークが7Pです。彼はサービスの特性を、以下のように特徴づけました。

●同時性/不可分性:消費と生産が同時発生する
●消滅性/非貯蔵性:蓄えることが不可能
●非均一性/変動性:品質の標準化が困難
●無形性/非有形性:無形である
このような考え方に立って、4Pに以下のような3つを加えました。
●Process:顧客にサービスを提供する方法
●Personnel:顧客にサービスを提供する主体者
●Physical Evidence:安心・安全を顧客に提供すること

時代の潮流に沿って、前時代の優れたフレームワークをカスタマイズして進化させたものが7Pといえるでしょう。

STP

STPは、主に顧客のセグメントに役立つフレームワークです。このフレームワークの始まりは、ゼネラルモーターズのレジェンド経営者であるアルフレッド・スローンによる「顧客セグメンテーション」であるといわれています。

フィリップ・コトラーという学者が提唱したことで、一躍有名になりました。1930年代にゼネラルモーターズは、T型フォードの同じ車種を量産する手法での価格優位性による競争に敗退しましたが、所得階級によって車のニーズが変化することを発見したのです。顧客ニーズに応じたさまざまな車種を量産する手法で、ゼネラルモーターズはフォードを業界トップの座から引きずり下ろしました。

フィリップ・コトラーがこの戦略のプロセスをベースに、1967年に著した『マーケティング・マネジメント』にて以下のように定義しています。

●S/セグメンテーション:共通ニーズに着眼して市場内で意味のある集団を分類
●T/ターゲティング:狙うべきターゲットを選択
●P/ポジショニング:ターゲットに自社を認知してもらう手法を決定

このツールは古くから存在しつつ、現在でもマーケティングの基本として使用されています。ただしSTPのそれぞれの要素を明確にするのは難しいので、STPを指針としつつ、現実的には事業を推進しながら暫定的に調整していくことが多いです。

ビジネスモデル・キャンバス

アレックス・オスターワルダーというスイスのビジネス理論家と、イヴ・ピニュールというベルギーのコンピューターサイエンティストが2012年に著した、『ビジネスモデル・ジェネレーション』で提唱されているフレームワークです。

この「ビジネスモデル・キャンパス」は、ビジネスモデルを、可視化するために役立ちます。サービスやプロダクトの根幹を成す「価値提案」を中心にして、収入の流れや顧客の状況、自社のコストなど合計9つの要素を整理することによって、そのビジネスモデルの課題や市場優位性を検証するアプローチです。

ビジネスモデル・キャンバスから派生した、一部の構成要素をスタートアップ向けに変更した「リーンキャンバス」というものも存在します。課題や核となるバリューを整理して考えるのに役立ちますが、競合などの要素が含まれていません。また、時間の推移による変化に対応し難いという面があります。そのため、このツールだけでビジネスモデルを完全に表現するのは難しいでしょう。このフレームワークを使う際はほかのツールと併用しましょう。

AIDMA

AIDMAはアメリカのサミュエル・ローランド・ホールという広告実務書の著作者が1920年代に提唱した、有名な消費者心理モデルです。消費者というものは、以下のような5段階のプロセスを経て消費に至るとされています。

●Attention:存在を知る
●Interest:興味を持つ
●Desire:欲しくなる
●Memory:覚える
●Action:購入する

この考え方は時代の変化に伴う消費スタイルの多様化で、必ずしも有効とはいえなくなりました。とはいえ、消費者の基本的な行動を掴むのにはおすすめです

AISAS

AIDMAに対して電通がネット時代の消費行動モデルとして2005年に提唱したのがAISASです。こちらでは、以下のように解釈されています。

●Attention:存在を知る
●Interest:興味を持つ
●Search:検索する
●Action:購入する
●Share:ネットで共有する

2020年代に入ってさらに多様化している消費スタイルを表現するにはさらなる論理モデルが必要との意見もありますが、AISASは現代人の平均的な消費行動を理解するために役立ちます。

戦略を立てる際に使えるフレームワーク

企業がビジネス戦略を考えるにあたって用いる、フレームワークの代表的なものとして以下の4つを紹介します。

●バリューチェーン
●VRIO
●ファイブフォース
●アンゾフ・マトリクス

バリューチェーン

マイケル・ポーターという学者が著した『競争優位の戦略』で提唱したフレームワークです。企業が提供する価値を2つに分けて「主活動」「支援活動」とします。主活動は製品そのものの流通に直接関係する活動です。支援活動は製品の流通には直接関係せず、主活動をサポートするさまざまな活動を意味します。

主活動を構成する要素は以下のとおりです。

●マーケティング
●製造
●販売
●サービス
●購買物流
●出荷物流

また、支援活動の構成要素は以下のとおりです。

●技術開発
●企業インフラ
●調達
●人材リソース管理

このように企業活動を分類することで、価値を構成する方法とプロセスを構造的に理解します。そして企業全体の価値の向上と、市場競争力の強化につなげる目的で使います。

VRIO

これはアメリカのジェイ・B・バーニーという経営学者が、1991年に発表した経営戦略に関する論文の中で提唱したフレームワークです。それまでの経営戦略は、外部環境に対するポジションが優位性に影響するとされていました。それに対して、内部環境の経営リソースが優位性に影響するとした考え方です。彼は経営資源を以下の4つで整理しています。

●Value:経済価値
●Rarity:希少性
●Imitability:模倣困難性
●Organization:組織

この分類によってそれぞれの課題を浮き彫りにし、競争力強化の検討を行うのです。

ファイブフォース

1979年にアメリカのマイケル・ポーターという経営学者が著した、世界的ベストセラー『競争の戦略』で提唱された競争要因分析のためのフレームワークです。業界の競争構造を「売手」「買手」「競合」「新規参入」「代替製品」という5つの観点から分析して、収益性から競争力のポテンシャルを見極めます。

通常、ビジネス戦略を考える際に前提としがちなのが顧客と競合他社、そして供給業者だけです。しかしこのフレームワークを使うと、代替品や新規参入者といった視点が追加されます。

代替品の存在は価格降下圧力を誘い収益性に影響を及ぼし、新規参入者の存在は業界内でのシェア争いに影響を及ぼします。これらのただちに競合しなくとも、中長期的により大きな影響を及ぼしかねないものに注目しているところが優れているといえるでしょう。

アンゾフ・マトリクス

これは1957年に、イゴール・アンゾフというロシア系アメリカ人の経営学者が発表した論文で提唱されました。縦軸に「市場」、横軸に「製品」を取って、それぞれを2区分して「既存」と「新規」に分類した、合計4象限のマトリクスを用いて経営戦略を検討するものです。
第二次世界大戦下の戦時経済を経て、多くの企業が事業を多角化して成長しました。イゴール・アンゾフはそのような企業のために、戦略的な意思決定の要素を以下のように整理しています。
●製品と市場分野:どの市場を事業領域とするか
●成長ベクトル:成長のためのアクション
●競争優位:市場優位性の源をどこに持つか
●シナジー:複数の事業領域による相乗効果
アンゾフ・マトリクスはこの中で、特に成長ベクトルを検討するために開発されました。現在でも、企業の成長戦略を検討するために用いられているフレームワークです。

業務を実行・改善する際に使えるフレームワーク

ビジネスにおいて実際に業務を実行し、改善する際に使えるフレームワークの代表的なものとして、以下の2つを紹介します。
●PDCAサイクル
●プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント(PPM)

PDCAサイクル

PDCAは、Plan(計画)・Do(実行)・Check(評価)・Action( 改善)の頭文字をとったものです。昨今ではあらゆるビジネスにおいて、業務やプロジェクトの推進や改善において用いられています。

実際にビジネスパーソン同士の会話でも、「PDCAを回す」という言い方で頻出しているので、もしかしたら聞いたことがある方もいるかもしれません。この4つのフェーズを何度も繰り返すサイクルによって、確実にゴールに近づく改善がなされるとされています。

プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント

これは1970年代にボストン・コンサルティング・グループが、経営資源の最適な配分方法を考えるためのものとして提唱しました。市場を想定して「成長率」を縦軸に、「シェア」を横軸に取ったマトリクスで、商品やサービス、あるいは事業そのものを以下の4つのフェーズに分類します。
●花形
●金のなる木
●問題児
●負け犬

「花形」は成長率もシェアも、ともに高いフェーズですが、競争に巻き込まれやすいとされます。「金のなる木」はシェアが低いので競争も少なく、シェアは高いために収益性が安定しているフェーズです。
「問題児」は利益を出しにくいうえに、競争が激しいフェーズです。シェアを高めることで、「花形」や「金のなる木」に変貌する可能性があります。「負け犬」は成長率もシェアも低く、もはや取り組むべきではない状態といえるでしょう。

分かりやすいPPMによる分類ですが、市場の定義を明確しなければ意味がないので客観的な評価は難しいといえます。ほかにも多角化から起こり得るシナジー効果を表現できなかったり、完全なる新規事業は評価しにくかったりなどの課題があるのです。

そのためこのフレームワークを使用する際は、そこを認識して用いるようにしましょう。

まとめ

戦略構築や市場分析などのために使える「フレームワーク」を紹介しました。古典的なものも、ビジネスの基本自体が変わらない限り有効な場合があります。

しかし、時代とともに変化する要素を盛り込んだ、現代的なフレームワークがいくつも生まれました。完璧なものはなかなかないので、それぞれの有効性や弱い部分などの特徴を理解して、組み合わせて使うのが妥当な使い方です。

興味があるみなさんは、実際にビジネス上の課題で、試しに使ってみましょう。

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