ITエンジニアになってまだ日が浅い方や、これからITエンジニアとしての転職を考えている方にとって、将来のキャリアパスが気になりますよね。人材が強く求められる職種であるうえに経済や社会のデジタル化が加速度的に進んでいるので、エンジニアのキャリアパスの選択肢はさまざまに広がっています。
この記事では、エンジニアおよびエンジニアを目指す方々が考えるべき、エンジニアのキャリアパスについて掘り下げて解説しましょう。現状を変えたい・将来を考えてキャリアアップをしたいと願っているみなさんは、ぜひ参考にしてください。
目次
そもそもエンジニアにはどんな職種があるのか?
まずは、基本的なことですが今一度「エンジニア」としてはどのような「職種」が存在するのかを確認しましょう。ひと口にエンジニアといっても、現代のそれは専門分野が細分化しており、厳密な分類をすればおそらく20種類を超えます。
ただし、大分類するとメインの開発系以外に、インフラ系および営業系の3領域に縦分けることができます。この領域ごとの仕事内容を紹介しておきましょう。
開発系エンジニア
開発系エンジニアはその名の通り、コンピューターシステムやソフトウェアの開発に携わります。いわゆるITエンジニアという言葉からイメージされるのが、この開発系エンジニアです。
開発系エンジニアの中での細かい職種としては、以下のようなものがあります。
- プログラマー
- コーダー
- SE/システムエンジニア
- テストエンジニア
- フロントエンドエンジニア
- マークアップエンジニア
- バックエンドエンジニア
- サーバーサイドエンジニア
- データベースエンジニア
- AI/IoTエンジニア
- 制御・組み込みエンジニア
- ブリッジSE
- Dev Opsエンジニア
開発系エンジニアの仕事内容は、クライアントもしくはユーザーが求めるシステムやアプリケーションを開発することです。そのため、開発系エンジニアではプログラミングのスキルは必須です。また職種やポストによっては、開発に関るリソースのマネジメント、クライアントおよびステークホルダーとの対応、ビジネススキルも求められることがあります。
インフラ系エンジニア
インフラ系エンジニアとは、主としてサーバー管理やネットワーク構築および保守運用などを専門として担当するグループです。
クライアントやユーザーがシステムやWebサービスを快適に利用できるバックボーンを支えているのがインフラ系エンジニアといえるでしょう。表面には出てきませんが、裏で非常に大切な役割を担っています。
インフラ系エンジニアをさらに分けると、以下のようになります。
- インフラエンジニア
- サーバーエンジニア
- ネットワークエンジニア
- セキュリティエンジニア
- 社内SE
インフラ系エンジニアの主な仕事内容としては、サーバーの選定です。クライアント企業が自社サーバーを持つのか、クラウドサーバーを活用するならどのサービスを使うのがベストなのかを判断できる専門性が求められます。そしてネットワークにつながりやすく、トラブルが起きない環境を維持・改善するパフォーマンスの向上も重要な作業です。
また、セキュリティに欠陥があると大きな被害を生むおそれがある現代では、ネットワーク構築においてセキュリティの安全性を最優先で確保するのもインフラ系エンジニアの重要な仕事です。ただし、従来のサーバーを所有するオンプレミス型やレンタルサーバー方式から、クラウド化を導入する企業が増えつつあるので、インフラ系エンジニアの業務は影響を受けています。それは、企業に常駐してサーバーを管理する業務の需要はどんどん減少しているのです。
そのため従来のインフラ系エンジニアのままでは、やがて活躍の舞台はなくなっていくので、変化への対応を迫られています。今後は物理サーバーに関連する知識をベースに、ネットワークの仮想化に関するスキルを身につけ、クラウド技術の知見を深めていかなければなりません。
営業系エンジニア
営業系エンジニアとは、ITの知識やスキルを活かして、営業やサポート部門に関係する仕事を行うエンジニアです。営業系エンジニアをさらに細分化すれば、以下のような職種になります。
- プリセールス
- フィールドエンジニア
- サポートエンジニア
- ヘルプデスクエンジニア
具体的には営業部門のサポートとして、営業からのアプローチに興味を持ったクライアントに、営業マンではできない突っ込んだ技術的な説明を行います。あるいはユーザーからのトラブルや苦情に対応する、技術力があるカスタマーサービスのような業務などもあります。
そのため、営業系エンジニアはエンジニアとしての基本スキルと営業スキルを併せ持つ人材が求められます。このため、技術者の視点を持ちつつ、クライアントの要求を捉える営業センスやコミュニケーションスキル、ビジネススキルが必要となります。
エンジニアにとってのキャリアパスの分類
ここまではエンジニアの職種という観点から紹介しましたが、ここからはその職種をベースとして、一体どういうキャリアパスが描けるかについて解説しましょう。
※キャリアパスの考え方はこちらでも解説しています
2つのベクトル、スペシャリストとジェネラリスト
まず、スペシャリストとジェネラリストという方向性の違う2つのベクトルをについて触れておきましょう。
スペシャリストは「一芸に秀でる」だけじゃない
携わる業務の分野を絞って、そこを徹底的に極めるエンジニアがスペシャリストです。極める対象としては特定のプログラミング言語や業界、あるいはソフトウェアなど数多くあります。特化した対象に関しては、誰よりも深い知見とスキルを誇るようなエンジニアこそスペシャリストといえるでしょう。専門性が高くスキルが明確なだけに、市場価値が非常に高いのが特徴です。
とはいえ、ある分野を極めたいからといってそればかり研鑽してはいけません。優秀なスペシャリストは関連分野にも興味を持ち、常に新しいトレンドも理解し取り入れる柔軟性と積極性があります。スペシャリストに求められるのは、決して「一芸に秀でる」ことだけではなく、幅広い知見とスキルを持つことがセットです。それでこそ、誰にも真似できない効率の良いパフォーマンスが可能になるでしょう。
ジェネラリストとは
何か特定の分野や技術に特化するのではなく、全体を理解してプロジェクトを進めることのできる人材がジェネラリストです。プロジェクトマネージャー やプロダクトマネージャー、ITコンサルタントなどが挙げられます。
システム開発でいえば上流工程から下流工程までを理解し、俯瞰しつつより良いものにするために工夫をしたり現場に提案をしたり、あるいはクライアントとの調整や交渉をしたりする役割といえるでしょう。
ジェネラリストはマーケットのニーズをシステムに反映するためのデータ分析もできれば、アプリケーションの開発もできます。市場が求める成果物を目指して、プロジェクトをマネジメントできるのがジェネラリストです。
そのため、ジェネラリストには基礎以上応用レベルのITスキルやマーケティングスキル・ビジネススキルが必要です。加えて、さまざまなステークホルダーと良い関係を構築するためのコミュニケーション力も求められるでしょう。
キャリアパスを描く際には分野もあわせて考えよう
キャリアのベクトルとは別に、進むべき分野の選択肢についても触れておきましょう。
キャリアパスを描く際には仕事の内容や立場、やりがい、報酬などを考えあわせますが、それに加えてどういう分野に進むかということも大切です。それをあわせて考える方が、より現実的なビジョンを描くことができます。
IT関連は基本分野であるシステム開発以外にも、さまざまな分野がある世界です。分野によってはマーケットが縮小していくものもあるので、注意が必要になるでしょう。当然ながら、おすすめできるのはマーケットが広がる方向にある分野です。ここでは基本であるシステム開発以外の、将来性があるふたつの分野を紹介します。
最新技術とともに伸びる分野
最新技術によって伸びていく分野は、将来性と仕事としての面白さにあふれています。IT関連での最新技術の中で、もっとも注目されている分野は「AI」です。
機械学習およびディープラーニングを主軸とするAIブームは加熱しています。特に近年のビッグデータを活用する技術の進展を背景に、AIの認知度が高まって適用できる領域も広がる一途です。また、AIの作動のためには膨大なコンピューターリソースを必要とします。それがクラウド技術の進化や、機械学習機能を提供するOSS(オープンソースソフトウエア)の普及にも大きく寄与しています。
もちろん、専門性が非常に高く難しい分野であることは間違いありません。それでも、常にIT業界の最先端で仕事に取り組みたい方は、報酬面も最も高い水準となるこのAIの分野に進むキャリアパスを検討しましょう。
成熟するも需要が拡大する分野
AI関連のような、まだまだ進化するであろう分野とは別に、すでに成熟した分野ではあっても、マーケットが依然として広がりつつあるものもあります。それは「モバイル通信技術」や「情報セキュリティ」、そして「クラウドサービス」などの分野です。
モバイル通信技術の分野では、5G(次世代移動通信システム)のサービスがリリースされ、AR(拡張現実)やVR(仮想現実)、超高精細映像などによってマーケットの規模は目覚ましく広がっています。情報セキュリティの分野に目を向けると、深刻な個人情報漏洩事件が何度もメディアを賑わせる中で、多くの企業にとってセキュリティ強化が喫緊の課題です。
また、クラウドサービスもインターネット経由でさまざまなリソースを利用できます。それだけでなく、従来のようなハードウェアの導入に伴う初期投資や維持コストの削減、メンテナンスや容量計画などの作業がなくなることでのリソースの削減が可能です。それゆえ、多くの企業で導入されマーケットが拡大しています。これらの分野では既存技術をベースに(もちろんアップデートは必要ですが)マーケットの拡大に応じて仕事が尽きないので、進むべきキャリアパスの分野としてはおすすめです。
スペシャリストを目指す場合のキャリアパスと求められるもの
システム開発以外にも将来性がある分野を紹介したところで、前出のスペシャリストを目指す場合の、具体的なキャリアパスと求められるものについて触れておきましょう。
SE/システムエンジニア
従来では、エンジニアのスタートであるプログラマーとして経験を重ねて、キャリアアップとしてSE (システムエンジニア)を目指すケースがキャリアパスの典型的なパターンでした。現在はエンジニアの職種も非常に多様化していますが、それでも王道的なキャリアパスとしてのSEは健在です。スペシャリストのわかりやすい例でもあります。
SEはクライアントへのヒアリングに始まり、システム開発の大元になる提案をし、要件定義や設計、開発からテストまでの流れにほぼ一貫して携る責任があります。成果物をどこまでクライアントの要望に近づけることができるかは、SEのレベルによるところも大きいので、やりがいもあるでしょう。
SEに求められるものは高いITスキルだけでなく、開発に関わる多くのスタッフと良好な関係を構築できるコミュニケーションスキルも必要です。システムエンジニアに関連する資格は、国家資格である「基本情報技術者試験」や「応用情報技術者試験」などがあります。それがないとSEになれないわけではありません。しかし取得しているとSEとしての資質を客観的に裏付けるものとなり、転職活動では多少なりとも有利になるでしょう。大手企業では資格手当が支給されることもあります。
IoTエンジニア
IoTエンジニアは、間違いなくこれからますます普及するIoT(Internet of Things)に関する技術、IoT製品を利用したシステム開発などに従事します。背景としてIoTの商品化が急速に各産業で進む一方で、それに携わってリードできる高い専門性と深い知見を持ったエンジニアは確実に不足しています。そのためIoTエンジニアはスペシャリスト系職種の中でも、AI関係と並んで最高水準の報酬があります。
IoTエンジニアに求められる知識やスキルは非常に広く深く、ネットワークやセキュリティ、AIなどの極めて専門性が高いものです。加えてデータサイエンスやIoTでよく使われるプログラミング言語を学び、多岐に渡る業務に対応できる資質が求められます。まさに、最先端の知識が求められるでしょう。
将来的にもIoTは医療や教育、交通、農業などのあらゆる分野で、人びとの暮らしを豊かにするために提供されるでしょう。それによって、IoTエンジニアが必要とされる機会はさらに増える可能性があります。
ITストラテジスト
経済活動のデジタル化が進む中で、ITストラテジストがじわじわと認知度を高めてきています。企業において、経営戦略の要になるシステムの改善に着手する動きが加速度的に広がっています。そのため、システム開発や改善を経営戦略と絡めながら推進できる人材が求められているのです。ITストラテジストは、そういった業務内容が非常に多岐にわたるニーズに応えられる人材として、注目されています。
ITストラテジストに求められるのは、まず情報処理に関する高い専門性です。それに加えて、開発に精通したエンジニアとしての確かなスキルとコンサルタントとしての視点とスキルも求められます。
開発企業でコンサルティング的な仕事を経験したり、まさにコンサルティングファームで経験を積んだりする中で必要なスキルを身につけましょう。
また、ITストラテジストを目指すなら国家試験「ITストラテジスト試験」に挑戦することを通して学べることも多いでしょう。これは最高難易度の試験で、ITテクノロジーを用いる経営戦略や企画力、コンサルティングスキルやプロジェクトマネジメントスキルなどが包括的に問われます。もちろん、取得できれば選考に有利です。
ITアーキテクト
ITアーキテクトとは、企業を経営戦略とシステムの開発の両面からサポートする、スペシャリストの中でもハイレベルのキャリアパスです。ITアーキテクトは企業のシステム導入において、主に上流工程に関わります。詳細に挙げられた課題を解決できるようにオプティマイズ(最適化)されたシステムのアーキテクチャ(構造)を作り出すことが主たる役割です。
ITアーキテクトになりたいと思ってもネットワークやデータベースなどに精通し、なおかつ経営的視点を持っている必要があるので、簡単になれるものではありません。それだけ難しい仕事なだけに報酬もかなりの高額になる場合が多く、プロジェクトの中核となって関われるやりがいが大きいといえるでしょう。
ITアーキテクトに必要なスキルを、独学で取得するのは至難の業です。多くの場合、プロジェクトの実践経験を経てITアーキテクトとして必要なスキルを身に付けていきます。
またITアーキテクトを目指す方が持っていると有利な国家試験は、最高難易度といわれる「システムアーキテクト試験」です。取得すれば一目置かれる資格で、なにより挑戦を通して良い学びができるでしょう。
CTO
CTO(Chief Technology Officer)とは最高技術責任者を意味する、技術のスペシャリストです。元々はアメリカの企業で、研究開発における最高責任者としての役職でした。
現代では主にIT系企業の技術部門の最高責任者を指すことが多いです。所属企業の中で技術的に最高水準の知見があり、なおかつ企業経営にも関与する重要な立場です。プログラマーやSEがスペシャリストを目指して開発経験を積み技術研鑽に励む中で、現場の技術リーダーであるテックリードやプロジェクトリーダー、プロジェクトマネージャーなどを経てCTOを目指す人も見られます。技術を極めることに意欲を持つ人にとって、向いているキャリアパスです。技術的な知見が現場にいる誰よりも優れていて、スタッフをリードできる人材でなければ務まりません。
CTOに求められるものは、圧倒的に高い水準のITスキルといえます。具体的には適切なコードレビューやソースコードの品質管理、部署の生産性向上の工夫ができることなどです。リーダーシップをもっている必要もありますが、マネージャーと違うところは人の管理ではなく技術水準の管理という面です。経営戦略の実行のために、自社の技術水準を確認して、不足しているのであれば対策を講じます。あるいは経営戦略が技術水準に照らして現実的ではないという判断を下す場合もあります。
ジェネラリストを目指す場合のキャリアパスと求められるもの
スペシャリストとしてのさまざまなキャリアパスをみてきましたが、次にジェネラリストの方に目を向けて、具体的なキャリアパスと求められるものについて触れておきましょう。
プロジェクトリーダー
プロジェクトリーダーは、開発プロジェクトにおける現場にて作業するスタッフを管理する仕事です。ジェネラリストとしては入門編的な仕事といえます。プロジェクトの基本情報や要件定義および詳細設計などを理解し把握した上で適切にシステムが構築されているか確認するテストも行い、進捗を管理する仕事です。
現場でトラブルが発生した場合には速やかにフォローに入り、進捗に支障がないようにすることが求められます。また、メンバーのモチベーションを維持する気配りや士気を鼓舞することなどもプロジェクトリーダーの役割です。
このキャリアの経験を経てプロジェクトマネージャーにキャリアアップするケースもよく見られます。
プロジェクトマネージャー
プロジェクトマネージャーは、プロジェクト全体の責任者です。開発企業の中では、典型的なジェネラリストともいえるでしょう。システム開発において顧客へのヒアリングをベースに、システムの機能や構造に応じて開発に必要なスタッフや機材などのリソースを想定し、予算を設定してチームを編成してプロジェクトを進めるキーマンです。納期や予算、成果物の品質など、全体を俯瞰した立場でプロジェクト全体の責任を持ちます。プロジェクト規模が小さい場合はプロジェクトマネージャーがプロジェクトリーダーを兼任する場合もあります。
プロジェクトマネージャーのスキルを客観的に裏付けする、持っていると選考やアサインに有利な資格には「プロジェクトマネージャ試験」「PMP」「PM2資格試験」などが挙げられます。おすすめは国家資格である「プロジェクトマネージャ試験」です。プロジェクト責任者として必要な知見を問われる資格で、IT関連の技術や知識はもちろん、経営戦略の関する知見も必要な最高難易度の試験です。
ITコンサルタント
ITコンサルタントはIT企業というよりは主にコンサルティングファームに所属しているか、プロジェクトマネージャーが独立起業してなる場合が多いです。ITの導入や活用で経営をサポートするコンサルティングを行い、やりがいのある仕事といえます。
提案から派生したプロジェクトの管理やシステムの最適化、動作検証まで携わる多岐にわたる仕事で、まさにジェネラリストです。ITコンサルタントに求められるものは多く、幅広いITの知見と提案力、プレゼンテーションスキル、ビジネススキル、コンサルティングスキル、マーケティングスキルなどになります。
まとめ
エンジニアのキャリアパスに関して、さまざまな角度から解説し、具体的なキャリアパスの例も紹介しました。IT関連のキャリアは分野も職種も、とても選択肢が多くて迷うでしょう。
ぜひ今後も成長する分野において、納得できるキャリアパスを歩みましょう。この記事も参考に、あなたの適性や価値観に合うキャリアパスを描いてください。