IT業界は、AI技術の急速な進化とDXの加速により、2024年には業界全体の市場規模が20兆円を突破しました。「2025年の崖*」と呼ばれる問題も指摘される中、従来からのIT人材の需要に加え、新たなスキルセットを持つ人材の需要も高まっています。
*2025年の崖とは、経済産業省が提起した問題で、日本企業がデジタルトランスフォーメーション(DX)を進めないと、2025年以降に大規模な経済損失が発生する可能性を指します。
東京ハローワークが発表している「職種別有効求人・求職状況」によれば、2024年4月以降、エンジニアを含むIT技術関連職の有効求人倍率が3倍を下回ることはありませんでした。
人材不足が深刻化する中で、企業間の人材獲得競争は激化しており、転職という市場においてもキャリアアップや年収アップを目指すうえで多くの機会が供給されています。
今回の記事では、転職志望者にとっては売り手市場であるIT業界の、職種別の平均年収事情や企業別の社員の平均年収ランキングTOP30を紹介します。2025年においてIT業界での転職に興味があるみなさんは、転職ビジョンを描く参考にしてください。
目次
IT業界の概況
IDC Japanの最新の調査結果によると、2024年の国内IT市場規模は前年比7.2%増の23兆4,589億円に、2023年から2028年までの年間平均成長率は4.9%で、2028年には市場規模が27兆8,650億円に拡大すると見込まれています。
この成長は、多くの企業がデジタル化やデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進していることが主な要因です。特に、既存システムの見直しや新規ビジネス展開を目的としたIT支出が増加しています。
産業分野別では、2024年はすべての分野でプラス成長が予測されていますが、特にデータセンター需要が好調な情報サービス分野が11.0%の高い成長率を示しています。
業績が拡大する中での課題として、人材確保の競争が激化しています。IT業界の有効求人倍率は全体の平均値を大きく上回る水準に達しており、企業は特に高度なスキルを持つ人材の確保が急務となっています。
近年のIT業界を取り巻く環境とAIの影響
最近では、生成AI技術の進化が企業のビジネスモデルや業務プロセスに大きな変革をもたらしています。2022年11月にChatGPTが公開されて以来、生成AIは急速に普及し、多くの企業がその活用を進めています。
2023年は生成AI元年とも呼ばれ、JEITAによると日本における生成AI市場は、2023~2030年まで年平均47.2%増で成長し、需要額で約1.8兆円に拡大すると予測されています。
特に、生成AIは開発支援ツールや業務効率化において重要な役割を果たすと期待されており、企業はこの技術を活用して競争力を高める必要があります。
AIを使えない開発者は今後通用しないと言われるほど、生成AIの利活用は不可欠な要素となっています。このように、IT業界はAI技術によって新たな市場機会を得ており、今後も成長が期待されています。
IT業界の職種ごとの年収事情
IT業界の職種別の年収事情についても、見ておきましょう。この業界は技術職であるエンジニアの比率が多いですが、営業や顧客サポートなどのフロントオフィスとバックオフィスもすべて含めて、平均年収が高い順に並べると以下のとおりです。
- ITコンサルタント/971.2万円
- プロジェクトマネージャー/932.5万円
- Webプロデューサー・ディレクター/829.4万円
- 営業・マーケティング/819.3万円
- ITアーキテクト(基板設計担当)/814.0万円
- ITスペシャリスト(DB・NW・セキュリティ等)/793.1万円
- Web関連営業・マーケティング/713.5万円
- IT講師・インストラクター/680.9万円
- IT運用・管理(顧客向け情報システム/636.6万円
- 顧客向け情報システムの開発・実装(SE・PG)/621.0万円
- 顧客向け情報システムの保守・サポート/619.4万円
- Webエンジニア・プログラマー/619.4万円
- ソフトウェア製品の開発・実装(SE・PG)/594.7万円
- Webデザイナー・コンテンツクリエイター/429.9万円
- Web関連顧客サポート・ヘルプデスク/323.2万円
IT関連産業の給与等に関する実態調査結果|経済産業省(2017) をベースに2023年までの平均賃金の増加率を加味し編集部で算出
これを見るとわかるとおり、技術者として高い収入を得るためには、2つのパターンが見られます。
1つめはITアーキククトやデータベース、ネットワーク、セキュリティなどの専門性が高いスキルレベルを身につけている場合です。2つめはエンジニアとしてのスキルに、マネジメントやマーケティング、Webプロデュースなどの関連するビジネススキルも身につけている場合となります。
IT業界を目指し、かつ高額収入をねらうためにはITの知見だけでなく、関連するビジネスの知見をしっかり身につけるのが賢明でしょう。
IT業界年収ランキング30〜21位
ここからはIT業界の企業別での、社員の平均年収ランキングTOP30を、10社ごとに3段階に分けて、企業プロフィールも添えて紹介します。
ただしこのランキングは、上場企業のIR(Investor Relations)情報を基に作成したものです。非上場企業は含まれていませんので、ご了承ください。また、子会社などの給与を平均したものではないので、あくまで参考資料としてご覧ください。情報は2024年末までに公開された最新IR情報から取得しています。
まず第30位から第21位までを紹介します。
※凡例 順位:社名/平均年収(平均年齢)<上場市場|業種> ※平均年収は千円単位を四捨五入
同額第29位:エムスリー株式会社/936万円(34.6歳)
<東証プライム|サービス業>
エムスリー株式会社は、2000年に創業された医療関連のプラットフォームを運営する企業で、ソニーグループの持分法適用関連会社です。主な事業内容には、医師向け情報サイト「m3.com」の運営や、治験支援事業を含むエビデンスソリューション、医師・薬剤師向けの求人支援サービスを提供するキャリアソリューション、医院経営のサポートを行うサイトソリューションがあります。また、新薬開発やAI技術の医療応用に関するエマージング事業や、米国、欧州、アジアでの医療従事者向けポータルサイト運営を通じた海外事業も展開しています。
同額第29位:株式会社日立製作所/936万円(42.9歳)
<東証プライム|電気機器>
株式会社日立製作所は日立グループの中核企業で、世界有数の総合電機メーカーです。社会インフラ、産業、ITの3つの主要セグメントで事業を展開しており、IT事業では、金融ソリューション、ITプロダクツ、デジタルITインフラソリューション、サーバ&ソリューションなどを提供しています。特に、クラウド、ビッグデータ、仮想化、SOA、省電力などの分野に積極的に取り組み、サービスプラットフォームを提供しています。
第28位:株式会社大塚商会/937万円(41.7歳)
<東証プライム|情報・通信業>
株式会社大塚商会は、1961年に設立された大手ITサービス企業です。システムインテグレーションから保守まで一貫したサービスを提供し、中堅・中小企業に強みを持っています。主な事業には、コンピューターや複合機、通信機器の販売、受託ソフトの開発が含まれます。また、オフィス通販サービス「たのめーる」も展開しています。
第27位:株式会社プレイド/955万円(35.1歳)
<東証グロース|情報・通信業>
株式会社プレイドは、2011年に設立された日本のSaaS企業です。主にCX(顧客体験)プラットフォーム「KARTE」を中心としたサービスを提供し、企業や組織のデジタルトランスフォーメーション(DX)を支援しています。また、感情データ解析技術を活用した「EmotionTech」や、広告データの効率化を図る「Databeat」など、多様なソリューションを提供しています。
第26位:任天堂株式会社/963万円(40.2歳)
<東証プライム|その他製品>
任天堂株式会社は、主としてコンピュータゲームや玩具の開発から製造、販売までを行う企業です。1970年代後期に家庭用ならびに業務用のコンピュータゲーム機の開発を手がけ始め、「スーパーマリオブラザーズ」の世界的ヒット以来、ゲーム機およびゲームソフト開発会社として広く認知されるようになりました。現在もゲーム事業を中心に成長を続けており、全世界で成功を収めたNintendo Switchの後継機、Switch2の2025年発売も予定されています。
第25位:株式会社アバントグループ/964万円(44.6歳)
<東証プライム|情報・通信業>
株式会社アバントグループは、1997年に設立された企業グループの持株会社で、主に連結会計や経営管理に関するソフトウェア開発、コンサルティング、BPOサービスを提供しています。連結会計システム「ディーバ」では首位級の地位を築いており、経営情報管理ソフト「アバント」とDX推進支援を中心に事業を展開しています。
第24位:富士通株式会社/965万円(43.6歳)
<東証プライム|電気機器>
富士通株式会社は、1935年に設立された日本の大手IT企業で、主にICT分野で、システムインテグレーション、クラウドサービス、セキュリティ、データセンターなどのサービスを提供し、国内外で広範な顧客基盤を持っています。近年はコンサル機能を強化し、DX推進にも注力しています。
第23位:AnyMind Group株式会社/970万円(35.1歳)
<東証グロース|情報・通信業>
AnyMind Group株式会社は、マーケティング、EC、広告収益化を支援するテクノロジーカンパニーです。2016年にシンガポールで創業し(現在は本社東京)、13か国・地域に展開しており、海外売上比率は50%を超えています。特に東南アジアを中心としたグローバル展開に強みを持ち、多国籍な企業体制を構築しています。
第22位:株式会社プラネット/979万円(47.6歳)
<東証スタンダード|サービス業>
株式会社プラネットは、一般消費財の流通に携わる企業向けにEDI(電子データ交換)サービスを提供する企業です。近年はビッグデータの活用に注力しており、データ分析プラットフォーム「DataDiver」を導入し、自社データの分析や会員企業向けのデータ分析サービスの展開を検討しています。システム運用代行やヘルプデスク業務など、BPOサービス事業も手がけており、今後は、蓄積したデータと分析技術を活かし、流通業界のDX推進に貢献することを目指しています。
第21位:株式会社構造計画研究所ホールディングス/986万円(41.7歳)
<東証スタンダード|情報・通信業>
株式会社構造計画研究所は、日本初の大学発ベンチャー企業で、国内の構造設計事務所として長い歴史を持っています。コンピュータユーザーの先駆けとして、エンジニアリング向けソフトウェア開発を開始し、1980年代には設計支援用CADソフトウェアの販売も手がけました。2000年代に入ると、高層および特殊形状建築の構造設計を事業の軸とし、2002年の六本木ヒルズ計画に参画しました。2024年には持株会社体制に移行し、株式会社構造計画研究所ホールディングスとして新たな展開を図っています。
IT業界年収ランキング20〜11位
次に、IT業界の企業別平均年収ランキングTOP30の中の、第20位から第11位までを紹介します。
第20位:KDDI株式会社/987万円(42.2歳)
<東証プライム|情報・通信業>
KDDI株式会社は、日本の大手電気通信事業者で、「au」ブランドを中心とした携帯電話サービスや、光回線サービス「auひかり」を展開しています。近年は通信事業に加えて、決済・金融、エネルギー、コンテンツ、コマースなどの非通信事業(ライフデザイン領域)の拡大に注力しています。
第19位:PHCホールディングス株式会社/999万円(48.0歳)
<東証プライム|電気機器>
PHCホールディングス株式会社は、グローバルに展開するヘルスケア企業グループの持株会社です。主要な事業領域には、医療機器、ヘルスケアIT、ライフサイエンスがあり、開発、製造、販売、サービスを行っています。特に、血糖値センサーや電子カルテ、超低温冷凍庫などの製品に強みを持っています。
第18位:株式会社CAC Holdings/1,012万円(50.2歳)
<東証プライム|情報・通信業>
株式会社CAC Holdingsは、ITサービスを展開するCACグループの持株会社です。国内および海外でシステム関連事業(システムインテグレーション、コンサルティング、システム開発・保守・運用管理、BPOサービスなど)を提供しています。
第17位:日本電信電話株式会社(NTT)/1,024万円(41.9歳)
<東証プライム|情報・通信業>
日本電信電話株式会社(NTT)は、NTTグループの持株会社であり、移動体通信事業や有線通信事業、情報システム・情報処理事業、インターネット関連事業などの情報通信分野を中心に事業を展開しています。近年は電力エネルギー事業や都市開発、さらにはグローバル市場での情報システム構築事業にも注力しています。
第16位:伊藤忠テクノソリューションズ株式会社/1,029万円(40.7歳)
<東証プライム|情報・通信業>
伊藤忠テクノソリューションズ株式会社は伊藤忠商事グループの主要子会社で、システムインテグレーター(SIer )です。コンピュータやアプリケーション、ネットワークに関連するコンサルティングからシステム開発、保守運用および管理、アウトソーシングなどを包括してサポートします。
第15位:株式会社ベイカレント・コンサルティング/1,074万円(31.4歳)
<東証プライム|サービス業>
株式会社ベイカレント・コンサルティングは企業の経営戦略や業務改善をITの導入によって解決するIT系コンサルティングファームです。日系では最大級で、デジタル技術を活用した経営戦略の立案と実行支援に強みがあります。
第14位:株式会社オービック/1,078万円(36.1歳)
<東証プライム|情報・通信業>
株式会社オービックは、独立系システムインテグレーターとして、30年以上にわたり連続で営業最高益を更新し続けている企業です。主力製品は統合業務ソフトウェア「OBIC7」シリーズで、企業の会計、人事給与、販売管理、生産管理などの業務を横断的に管理するERPソリューションを提供しています。
第13位:三菱総合研究所/1,080万円(41.1歳)
<東証プライム|情報・通信業>
株式会社三菱総合研究所は、シンクタンク・コンサルティングサービスとITサービスの2本柱で事業を展開しています。シンクタンク部門では、政策立案や事業戦略に関する調査研究、コンサルティングを行い、ITサービス部門では、ソフトウェア開発から保守運用、情報処理アウトソーシングサービスまでを提供しています。官公庁、金融機関、一般産業とバランスの取れた顧客基盤を持ち、特に官公庁や金融分野に強みを発揮しています。
第12位:ソニーグループ株式会社/1,113万円(42.4歳)
<東証プライム|電気機器>
ソニーグループ株式会社はソニーグループを統括する事業持株会社です。祖業のエレクトロニクスをはじめ、音楽、映画、金融など複数の事業領域に関連会社を展開。主力はゲームやネットワークサービスのエレクトロニクス分野とAV機器分野です。IT領域では、AIを用いた需要予測や感性分析、IoTを活用したエンターテインメント体験の向上に注力している他、センシングデバイスやエッジAIシステムの開発も進めています。
第11位:リクルートホールディングス/1,119万円(39.8歳)
<東証プライム|サービス業>
株式会社リクルートホールディングスはリクルートグループの持株会社で、人材派遣や求人広告や、ITソリューション、販売促進などのサービスを手掛けています。海外売上高比率が40%を超えるグローバルな企業です。事業としてはHRテクノロジー、人材派遣、メディア&ソリューションの3つの軸ごとに統括会社を設置した経営体制を取っています。
IT業界年収ランキング10〜1位
最後に、IT業界の企業別平均年収ランキングTOP30の中の、第10位から第1位を紹介します。
同額第9位:株式会社シグマクシス・ホールディングス/1,134万円(45.9歳)
<東証プライム|サービス業>
株式会社シグマクシス・ホールディングスは、DX支援等のコンサルティングサービスを提供する企業グループの持株会社です。2021年4月に伊藤忠商事株式会社と資本・業務提携を開始して以降は、伊藤忠グループの国内外ネットワークとシグマクシスの能力を活かし、様々な産業のDX化を推進しています。
同額第9位:株式会社電通総研(旧:株式会社電通国際情報サービス)/1,134万円(40.6歳)
<東証プライム|情報・通信業>
株式会社電通総研(旧社名:電通国際情報サービス)は、電通グループの一員として、システムインテグレーション、コンサルティング、シンクタンクの3つの機能を連携させ、企業や生活者、社会全体の進化を総合的に支援する企業です。2024年1月1日に社名を変更し、従来のシステムインテグレーションに加え、コンサルティングとシンクタンク機能を拡充しました。
第8位:日本オラクル株式会社/1,161万円(44.2歳)
<東証スタンダード|情報・通信業>
日本オラクル株式会社は、アメリカのオラクルコーポレーションの日本法人として、クラウドサービス、ソフトウェア・ハードウェア製品、コンサルティングサービス、教育事業などを展開しています。主力製品であるデータベース「Oracle Database」に加え、近年はクラウドインフラストラクチャ(OCI)の提供に注力しています。AIやビッグデータ分析などの先端技術を活用したサービスの拡充も進めており、2024年にはAI関連の大型顧客契約を多数締結しています。
第7位:株式会社メルカリ/1,167万円(36.0歳)
<東証プライム|情報・通信業>
株式会社メルカリは、フリマアプリ国内首位の「メルカリ」の運営会社で、国内でのアプリダウンロード数は6000万を超えています。米国での事業や、スマホ決済サービス「メルペイ」の他、2024年にスタートした隙間バイトサービス「メルカリハロ」も好調です。
第6位:株式会社SRAホールディングス/1,178万円(57.0歳)
<東証プライム|情報・通信業>
株式会社SRAホールディングスは、独立系システム開発企業グループの持株会社です。金融や製造業、研究期間といった様々な分野へITサービスやコンサルティング、ソフトウェア開発支援などを提供しています。Linux等オープンソース系に強く、海外展開も積極的に行っています。
第5位:GMOフィナンシャルゲート株式会社/1,186万円(39.5歳)
<東証グロース|情報・通信業>
GMOフィナンシャルゲート株式会社は、店舗等対面領域でキャッシュレスプラットフォーム提供する企業です。主なサービスには、多様な決済手段に対応したマルチ決済端末の提供や、自動精算機、無人化機器などへの組込型決済ソリューションがあります。
第4位:株式会社野村総合研究所(NRI)/1,272万円(40.2歳)
<東証プライム|情報・通信業>
株式会社野村総合研究所(NRI)は、野村グループ系の企業で、日本を代表する情報サービス企業です。シンクタンク、コンサルティングファーム、システムインテグレーターとしての機能を併せ持っています。流通業界および金融業界に強みがあり、官公庁や産業界のトップ企業にもサービスを提供しています。
第3位:株式会社スクウェア・エニックス・ホールディングス/1,314万円(47.1歳)
<東証プライム|情報・通信業>
株式会社スクウェア・エニックス・ホールディングスは、スクウェア・エニックスグループを統括する持株会社で、傘下にはタイトーやスクウェア・エニックスなどのゲームソフトウェア会社があります。主力製品には「ドラゴンクエストシリーズ」や「ファイナルファンタジーシリーズ」があり、これらのゲームに加えて、アニメや映画など多岐にわたるコンテンツ展開を行っています。
第2位:ソフトバンクグループ株式会社/1,360万円(41.5歳)
<東証プライム|情報・通信業>
ソフトバンクグループ株式会社は、ソフトバンクグループを統括する持株会社です。「Beyond Carrier」戦略の下、通信事業の成長を図りながら、AI・IoT・FinTechなどの最先端テクノロジーを活用したビジネスの拡大を目指しています。国内傘下には「LINEヤフー」や、キャッシュレス決済サービス「PayPay」などがあります。最近では、2023年にアイルランドのコネクテッドカー関連の新興企業キュービックテレコム、2024年に英国のAI向け半導体メーカーのグラフコアを買収しました。
第1位:株式会社ジャストシステム/1,428万円(38.9歳)
<東証プライム|情報・通信業>
株式会社ジャストシステムは、ワープロソフト「一太郎」や、日本語入力システム「ATOK」などのソフトウェアを開発・販売するソフトウェア開発企業です。創業時点から官公庁や教育施設に強みを持っており、教育向けのタブレット通信教育サービス「スマイルゼミ」なども展開しています。
2021年のランキングを表示
ここからはIT業界の企業別での、社員の平均年収ランキングTOP30を、10社ごとに3段階に分けて、企業プロフィールも添えて紹介します。
ただしこのランキングは、上場企業のIR(Investor Relations)情報を基に作成したものです。非上場企業は含まれていませんので、ご了承ください。まず第30位から第21位までを紹介します。
※凡例 順位:社名/平均年収(平均年齢)<上場市場・業種>
<東証JASDAQスタンダード|情報・通信>
日本初の大学発ベンチャー企業で、国内の構造設計事務所として長い歴史を持っています。創設者服部正氏は1960年に渡米してコンピューターの重要性を認識し、帰国するや通産省に申請して当時最新鋭のIBM1620を導入しました。
コンピュータユーザーの先駆けとしてメーカーのOS開発を支援し、エンジニアリング向けソフトウェア開発を開始します。2000年代に入ると高層および特殊形状建築の構造設計を事業の軸にし、2002年の六本木ヒルズ計画に参画しました。近年は、国内および海外のベンチャー企業とのタイアップによる新規事業を積極的に展開しています。
<東証1部|電気機器>
東芝は製品製造からITサービスに至るまで、多種多様な子会社や関連会社を持つ東芝グループの中核となる巨大企業です。
その事業従来の家電製品や通信端末、PCなど消費者向け製品から、企業間取引による電子部品や原子炉、軍事機器、鉄道車両などの重工業分野に事業の軸をシフトしており、日立製作所や三菱電機と合わせて「大手重電3社」と呼ばれています。
<東証1部|情報・通信>
都築電気株式会社はメーカー(富士通)系システムインテグレーターです。情報機器やネットワーク製品、通信回線サービスを扱います。ソフトウェア部門では人事給与システムや会計システム、CADシステムやe-Learning、電子カルテ、各種サポートサービスなどを幅広く取り扱っています。
<東証マザーズ|情報・通信>
2020年12月に東京証券取引所マザーズへ新規上場したばかりのプレイドは、インターネットに欠けているユーザーデータを蓄積して提供し、情報価値を最大化するサービスを標榜しています。
具体的にはネット上のさまざまなサイトの情報を解析し、リアルタイムに可視化するサービスなどを提供しています。
<東証1部|情報・通信>
JBCCホールディングス株式会社は、企業がDX(デジタルトランスフォーメーション)を進めるための基幹システムの刷新をサポートする企業です。クライアント企業の環境に合わせたクラウドおよびセキュリティ、データ連携などのITサービスを提案します。
<東証1部|情報・通信>
伊藤忠テクノソリューションズ株式会社は伊藤忠商事グループの主要子会社で、システムインテグレーター(SIer )です。コンピュータやアプリケーション、ネットワークに関連するコンサルティングからシステム開発、保守運用および管理、アウトソーシングなどを包括してサポートします。
<東証1部|電気機器>
株式会社日立製作所は日立グループの中核企業で、世界有数の総合電機メーカーです。グローバル展開にて製造および販売拠点を広げゆく多国籍企業でもあり、収益の約半分は海外からもたらされているほどです。
<東証1部|電気機器>
サクサホールディングス株式会社は企業のためのさまざまなシステムを開発・販売する企業です。例えば、入退場車両ナンバー管理システムや中堅・中小企業のテレワークをサポートできるリモートルーターを扱っています。他にも、脈波測定・解析技術の応用による脈波センサ搭載マウスなどのユニークな製品を開発しています。
<東証1部|情報・通信>
トレンドマイクロ株式会社は、コンピュータやインターネットのセキュリティ関連製品を開発および販売する企業です。主力の総合セキュリティ対策ソフト「ウイルスバスター」は有名で、国内シェアは首位を保っています。創業の地はアメリカですが本社は現在、日本の東京にあります。
<東証1部|情報・通信>
株式会社オービックは、独立系システムインテグレーターです。主力製品は統合業務ソフトウェア「OBIC7」シリーズで、企業の会計や人事給与システム、販売管理や生産管理などの各セクションの業務を横断するソフトウェアです。
次に、IT業界の企業別平均年収ランキングTOP30の中の、第20位から第11位までを紹介します。
<東証1部|情報・通信>
日本電信電話株式会社はNTTグループの持株会社です。企業グループとしてのNTTは移動体通信事業および有線通信事業や情報システム・情報処理事業、インターネット関連事業などの情報通信関係がメインです。最近は電力エネルギー事業や都市開発、また国外のマーケットに進出して情報システム構築事業などにも力を入れています。
<東証1部|情報・通信>
KDDI株式会社は、携帯電話事業を中心としつつ、多種多様な関連事業を手掛ける大手電気通信事業者です。1953年に旧・電電公社から国際通信網整備のために分離・設立された旧ケイディディが前身企業で、事実上はNTTの兄弟企業です。
そういう経緯があるので、国内外で通信ケーブルおよび海底ケーブル、衛星通信などのNTTに肉迫するインフラ資産を擁しています。
<東証1部|その他製品>
任天堂株式会社は、主としてコンピュータゲームや玩具の開発から製造、販売までを行う企業です。1889年創業の老舗企業で花札やトランプは創業当時から現在まで製造、販売を継続しています。
1970年代後期に家庭用ならびに業務用のコンピュータゲーム機の開発を手がけ始め、「スーパーマリオブラザーズ」の世界的ヒット以来、ゲーム機およびゲームソフト開発会社として広く認知されるようになりました。
<東証1部|その他製品>
ヤマハ株式会社は、楽器や音響機器からスポーツ用品、自動車部品、半導体ネットワーク機器まで多角的に開発・製造発売を手がけるメーカーです。主力のピアノ生産台数において1969年に世界一となり、現在でも販売額ベースで世界首位を維持しています。
<名証セントレックス|サービス業>
株式会社バルクホールディングスは、セキュリティ事業およびマーケティング事業をメインで展開する企業です。
セキュリティ事業としてはサイバーセキュリティトレーニングサービス、脆弱性診断サービスなどのサイバーセキュリティソリューションを提供しています。マーケティング事業の内容は、新製品等開発のためのユーザーニーズやブランドイメージ、顧客満足度やCM浸透度などの調査と分析サービスの提供です。インターネットやインタビュー、街頭および訪問面接調査などの各種手法によるオーダーメイド型の調査分析サービスでクライアントのニーズに応えています。
<東証1部 / サービス業>
株式会社リクルートホールディングスはリクルートグループの持株会社で、人材派遣や求人広告や、ITソリューション、販売促進などのサービスを手掛けています。海外売上高比率が40%以上を超えるグローバルな企業です。事業としてはHRテクノロジー、人材派遣、メディア&ソリューションの3つの軸ごとに統括会社を設置した経営体制を取っています。
<東証マザーズ|情報・通信>
Kudan株式会社は2011年にイギリスで創業され、2014年に日本で法人として設立された企業で、カメラ向けの人工知覚アルゴリズムの研究開発に取り組んでいます。事業領域はAR(拡張現実)やVR(仮想現実)の応用領域、ロボティクスやIoTの領域、自動車や地図向けの応用領域の3つの領域を主軸に顧客層を広げてきました。
また、AP(人工知覚)の基幹技術SLAM、ALAM、VIO、SfMに加え、AIやIoTとの技術統合を見据えた機械知覚や深層知覚、知覚ニューラルネットワークに関する研究開発を進めています。
<東証JASDAQスタンダード|サービス業>
株式会社プラネットは小売業や飲食業の店舗を対象にDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進するサポートを提供する企業です。他に手がけているのは、BPOサービス事業としてシステム運用代行や運用・開発要員の派遣、ヘルプデスク業務の代行などです。
また、データセンターの運営やITインフラの診断や構築支援、情報システムの設計から開発・運用などのシステムインテグレーター的なコンサルティング業務などにも携わっています。今後は、卸売業と小売業をつなぐEDIサービスの展開を視野に入れています。
<東証1部|情報・通信>
株式会社三菱総合研究所は、シンクタンクとシステムインテグレーターの2つの領域で事業展開をしています。前者は政策や事業に関する調査研究やコンサルティングを行います。後者はソフトウェア開発から保守運用、情報処理アウトソーシングサービスなどです。この第12位から、社員の平均年収が1,000万円を超え始めます。
<東証1部 / サービス業>
株式会社ベイカレント・コンサルティングは企業の経営戦略や業務改善をITの導入によって解決するIT系コンサルティングファームです。あらゆる業界、あらゆる企業の経営課題を解決するための戦略立案から業務改革、実行までの一連のプロセスを包括的にサポートします。
最後に、IT業界の企業別平均年収ランキングTOP30の中の、第10位から第1位を紹介します。
<東証1部|情報・通信>
株式会社電通国際情報サービス(略称:ISID)は、電通グループの一員でシステムインテグレーターです。メインとする事業は業務プロセスの改革やITの活用に関するコンサルティングサービスやソフトウェア製品の販売およびサポート、受託システム開発、運用保守サービス、アウトソーシング、情報機器販売などです。事業領域は金融ソリューション、ビジネスソリューション、製造ソリューション、コミュニケーションITの4つとなります。
<東証1部|電気機器>
ソニーグループ株式会社はソニーグループを統括する事業持株会社で、主力はゲームやネットワークサービスのエレクトロニクス分野とAV機器分野で、他には映画と音楽の分野にも注力しています。また、生命保険業や損害保険業、銀行業、不動産業、電気通信事業、放送業など多様な子会社を有しています。
<東証1部|情報・通信>
日本オラクル株式会社は、アメリカのオラクルコーポレーションが1985年に設立した日本法人です。情報システム構築のためのクラウドサービスやソフトウェア・ハードウェア製品、コンサルティングサービス、教育事業などを展開しています。データベース「Oracle Database」が主力製品です。ソフトウェア企業やハードウェア企業のM&Aによって、製品のバリエーションを拡充しています。
<東証1部|情報・通信>
Zホールディングス株式会社はポータルサイト「Yahoo! JAPAN」を運営している企業です。1996年のサービス開始以来、広告事業やネットオークション事業、ブロードバンド事業やECサイト事業など、IT関連の事業カテゴリーを拡大してきました。ソフトバンクグループの一員で、子会社としてはアスクルやIDCフロンティア、一休、GYAO、カービューなどがあります。
<東証1部|情報・通信>
株式会社ジャストシステムは、一太郎や花子、ATOKなどのソフトウェアを開発・販売しているソフトウェア開発企業です。創業時点から官公庁や教育施設に強みを持っていました。ホームページ・ビルダーは日本IBMより取得しています。最近では通信教育事業にフォーカスしており、「スマイルゼミ」(小中学生向けサービス)が好調です。
<東証1部 / サービス業>
株式会社シグマクシス・ホールディングスは三菱商事系のコンサルティングファームとして、経営戦略立案や業務改善、そのためのシステム構築と運用を包括的にサポートします。2021年4月に伊藤忠商事株式会社との資本・業務提携を開始しました。多様な事業や投資先、そして海外コネクションを持つ伊藤忠商事とそのグループ企業とのコラボレーションを通じて互いの強みを発揮しています。
<東証1部 / サービス業>
株式会社アイ・アールジャパンホールディングスはBCG出身の鶴野史朗氏が、1984年に創業し、これを寺下史郎氏がマネジメント・バイアウトして2015年に設立した企業です。ビジネスコンサルティング事業を手掛けるとともに、日本政府から委託を受け、国外投資ファンドの動向調査なども請け負っています。
<東証1部|情報・通信>
株式会社野村総合研究所は野村グループ系の企業で、シンクタンクでありコンサルティングファームやシステムインテグレーターでもあります。NRI、野村総研などの略称で呼ばれる事が多いです。流通業界および金融業界に強みがあり、事業領域は公共分野にも拡大しています。
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ソフトバンクグループ株式会社ソフトバンクグループを統括する持株会社です。主要事業は、インターネット関連事業、携帯電話などの通信事業で、傘下にソフトバンクやヤフーなどがあり、プロ野球の福岡ソフトバンクホークスの親会社です。近年では海外企業のM&Aを積極的に行っており、2013年にスプリント(アメリカ携帯電話業界3位)、2016年にはARMを(英半導体設計大手)のM&Aに成功しています。
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株式会社スクウェア・エニックス・ホールディングスは、スクウェア・エニックスグループを統括する持株会社で、傘下にタイトーやスクウェア・エニックスなどのゲームソフトウェア会社があります。大ヒット商品である「ドラゴンクエストシリーズ」や「ファイナルファンタジーシリーズ」が主力で、ゲーム以外のコンテンツも多岐にわたり展開しています。
年収ランキングから見るIT業界の今後の展開
2024年の最新のIR資料からされたIT業界における年収ランキングを見ると、国内企業におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)の進展が、業界構造に引き続き影響を与えていることがわかります。ランキング上位には、ソフトウェアメーカーやシステムインテグレーターに加え、コンサルティングやソリューション提供を行う企業も並んでおり、技術提供に加え、企業の課題解決や効率化を支援するサービスが引き続き求められている現状を反映しています。特に、AIやクラウド技術の進化を背景に、企業ごとにカスタマイズされたソリューションのニーズが高まっており、これがコンサルティング業務の需要拡大を後押ししています。その結果、システムインテグレーション企業がコンサルティング機能を持つ、また、ITコンサルティング企業がシステムインテグレーション機能を持つなど、それぞれの領域の垣根が曖昧になってきている状況があります。
富士通はITコンサルティング機能の強化を中期経営計画(2023~2025年度)に盛り込んでいますし、博報堂はNTTデータと共同出資会社を2025年2月に設立し、コンサルティング事業に本格的に参入すると発表しました。まだ発展途上にある日本のDXが本格化する中で、こうした動きはさらに加速する見通しです。
IT業界は、技術革新が進む限り、成長を続けることが確実視されています。企業が次々と新しい技術を取り入れる中で、IT業界が他産業に与える影響力はますます強まっていくでしょう。
まとめ
IT業界は将来性と人材不足の両面から、転職した場合の年収額の充実が考えられます。より高い年収を目指すには、職種の面ではAIを含めた幅広いITの知見プラス「チームマネジメント」「マーケティング」「プロダクトマネジメント」などの知見を持ち合わせると有利です。
企業タイプでは、クラウドやAIを駆使したコンサルティングを提供する企業を選ぶと高い年収が得られる可能性があります。IT業界への転職を検討しているみなさんは、ここで紹介した情報も参考に、転職ビジョンを描いてください。