面接で「尊敬する人」を訊くのはタブー?質問されたときの適切な対処法

面接で「尊敬する人」を訊くのはタブー?質問されたときの適切な対処法

企業の採用面接において、面接官が候補者に尊敬する人は誰かと訊く場合があります。
この質問は以前では一般的な質問でしたが、現在はタブーとされているのをご存知でしょうか。

タブーであっても、そうとは知らない面接官から訊かれる場合があるかもしれません。
今回の記事ではこの質問がタブーとされる背景を説明し、万が一訊かれた場合の適切な対応の仕方を紹介します
転職活動中、あるいはこれから活動に臨むみなさんはぜひ参考にしてください。

尊敬する人を訊くのが面接タブーな理由

昔は採用面接で当たり前のように訊かれてきた定番的な質問ともいえる「あなたが尊敬する人は誰でしょうか?」は、現在では採用面接におけるタブーのひとつとされています。
その理由は厚生労働省による「公正な採用選考の基本」というガイドラインにあります。

それによれば、適性と能力に関係がない「尊敬する人物に関すること」という本来自由であるべき事項の把握に関して、就職差別につながるおそれがあるので配慮すべきであるとしています。
厳密には、その質問を禁止しているわけではありません。

とはいえ、就職差別につながるおそれがある質問なので配慮すべきという意味を企業が解釈すれば、あえてリスクを冒すような質問は避けようというのが妥当な考え方でしょう。
そして実質的にタブーである現状を知らずに、質問されるケースもありますが、おそらく今後は少なくなっていくと考えられます。
ちなみに、その件も含めて「公正な採用選考の基本」に記載されている「採用選考時に配慮すべき事項」は3系統あります。
参考までに挙げておきましょう。

<本来自由であるべき事項の把握>
●生活信条・人生観に関すること
●宗教に関すること
●支持政党に関すること
●思想に関すること
●尊敬する人物に関すること
●社会運動や学生運動に関すること
●労働組合に関すること
└活動歴や加入状況など
●愛読書・雑誌・購読新聞などに関すること

<本人に責任のない事項の把握>
●家族に関すること
└地位・職業・学歴・続柄・健康・病歴・資産・収入など
●出生地・本籍に関すること
●家庭環境・生活環境などに関すること
●住宅状況に関すること
└住宅の種類、部屋数、間取り、近郊の施設など

<採用選考の方法>
●客観的・合理的に必要と思われない健康診断の実施
●身元調査の実施

出典: 公正な採用選考の基本|厚生労働省

訊かれたら面接官が知らない人を答えるのが賢明

もしタブーとされる質問「尊敬する人は誰?」と訊かれた場合には、答えないわけにはいきません。
その場合、その面接官が何かしら偏った考え方をするタイプの人に感じられる場合は、有名な人物を挙げることに多少のリスクがあるでしょう。
面接官の好みで、印象が左右されかねないからです。
その際には、面接官が知らない人を答えれば、偏見を持たれるリスクを避けられます
両親や恩師、先輩などを挙げておけば問題はないでしょう。
ただし、どういう点で尊敬しているのかを補足しておくほうが賢明です。
そのほうがイメージしてもらいやすくなり、印象がよくなるでしょう。

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尊敬する人が親の場合のポイントと回答例文

親をあなたの尊敬する人に挙げる際のポイントは、感謝からくる言葉だけでは浅くなるので、具体例に尊敬できる点を挙げて、客観的に伝えるようにしましょう。

【回答例文①】
私は父を尊敬しています。
今は引退して兄が継いでいますが、父は小さな町工場を営んでいました。私が子供の頃でも父が仕事に誇りを持っていることが働く姿や表情を見て伝わってきたものです。
従業員の方を大切にし、私生活で困っている人がいれば、仕事以外でも何かと世話を焼いていたと記憶しています。
街で買い物をしている際に、父の工場で作った部品が使われている製品を見つけたら嬉しそうに教えてくれたものです。
私も常に自分の仕事に誇りを持ち続け、関わる人たちと親身になって向き合える人間になりたいと思っています。

【回答例文②】
私は母を尊敬しています。
父の設計事務所を手伝いながら私を含めて3人の子供を育て、成人させてくれました。
基本的に多忙で疲れているはずなのに、常に元気いっぱいで笑顔を絶やすことなく、少しでも時間が空けば趣味の短歌を詠むために頭をひねっています。
気分が落ち込んでいるときも母の太陽のような笑顔と、少しの時間も大切にして人生を楽しんでいる姿勢を見て、励まされます。
私も母のように、忙しさに流されることなく常に快活で時間を大切にするような人でありたいと思います。

尊敬する人が恩師の場合のポイントと回答例文

尊敬する人が高校や大学で世話になった恩師の場合のポイントは、その人の美点だけを上げても説得力はありません。
それが自分にどう影響したのかを、エピソードで語りましょう。

【回答例文】
私は大学受験を控えた高校3年生のときの、担任の先生を尊敬しています。
先生は進学の方向性に迷っていた私を心配して、親身になって何度も相談に乗ってくれました。その時期、一方的に助言してくれる大人はたくさんいましたが、その先生はちょっと違いました。
私の話をまさに傾聴してくれて、適切なタイミングで質問してくれるのです。その絶妙な質問によって、いつも自分の頭の中が次第に整理されていきました。
そして先生は何も押し付けないまま、私が話し始めたときには持っていなかった結論や意思にたどり着いているのが常でした。
そうやって悔いのない受験ができ、願っていたとおりの学生生活を送り、思い描いていた仕事に就きました。そこからさらに上を目指す過程でこの面接の場にいるのも、先生の存在があってこそです。

尊敬する人が先輩の場合の回答例文

尊敬する人が先輩の場合のポイントは、年齢が近い人なので尊敬に至るには普通とは違う何かがあるはずと面接官は思うでしょう。
それに応えるべく、インパクトがあるエピソードを語りましょう。

【回答例文】
私は大学時代に在籍していた陸上部のある先輩を尊敬しています。
先輩は私と同じく長距離ランナーでしたが、競技会のレースに出場した際にアクシデントで靭帯を損傷し、それ以降走ることが難しくなりました。
おそらく絶望の淵に立たされたと想像できるのですが、悲嘆を感じさせるような振る舞いは一切せず、自分は走れなくてもメンバーを懸命にサポートするトレーナーとして部活動に打ち込んでいる先輩の姿に、私の心は震えました。
そしてサポートしてくれる先輩への恩返しも込めて、私もそれまでになかったほど努力しました。
私が大きな競技会で好成績を叩き出した際には、先輩は我がことのように泣いて喜んでくれました。
そんな先輩から、私はいつでも希望を胸に抱き続けることの大切さを教わりました。

尊敬する人が歴史上の人物の場合の注意点と回答例文

尊敬する人に歴史上の人物を挙げるのは、同じ人物でも評価が分かれることも多く、また史実でない逸話も喧伝されていることが多いので、取り上げるのには慎重さが必要です。
例えば徳川家康や織田信長のような歴史の上で非常に重要な人物の場合は、以下のような2つのリスクがあります。

①まず、あまりにも知名度が高すぎてインパクトに欠けたり、安易にとられたりしかねないでしょう。
「今さらその人物か」と思われてやむを得ません。

②また、そこまで有名になると伝説が多様化していて、諸説紛々としていることが多く見られます。
そのため、よかれと思って尊敬する点として挙げたエピソードも、そうではない真逆のような説を面接官が支持しているとしたら印象を悪くするかもしれません。

よって、歴史上の人物を選ぶのであれば、それほど皆が深く知らないくらいの「知る人ぞ知る」ような人物のほうが賢明です。
そして伝説化したあいまいな話ではなく、歴史的な事実としての証拠や背景が客観的に存在する、信憑性があるエピソードを挙げ、それに対して自身の意見や感想、感慨を加えましょう。
具体的には教科書には載るくらいの知名度で、実は歴史的に重要な役割を果たしていて、史実として挙げられるエピソードがある人物を、きちんと調べて掘り下げてから回答を組み立てましょう。

【回答例文】
私は日露戦争の講和条約、いわゆるポーツマス条約の全権大使を務めた小村寿太郎を尊敬しています。
当時の戦況は日本優勢でしたが財政事情にはもはや余裕がなく、3倍の国力を持つロシアとの戦争継続は確実に敗戦に向かう道でした。
そのため戦況が良いうちに、妥協した内容であっても早く講和に持ち込むのが最善の選択だったでしょう。
そんな事情を知らない国民からの腰抜け外交との激しい怒りの中での交渉は、まさに命懸けだったと思われます。
事実講和成立直後に激怒した民衆による日比谷焼き討ち事件が起こり、死者が出たくらいです。そんな背景の下で、ひしひしと生命の危険を感じながらもその大役から逃げず、交渉をまとめ切った小村寿太郎に、私は感銘を受けました。
人にどう思われても、命をねらわれても、国の存続と平和を守るための交渉をやり切る勇気と責任感は、小柄で痩せた貧弱な彼の見かけとは正反対に、とてつもなく大きなものだと私は思います。

尊敬する人が芸能人の場合の注意点と回答例文

尊敬する人に芸能人を挙げるのは、面接官によっては軽薄に思われるリスクがあります。
そこで、芸能人の中でも「芸術家」「指導者」「文化人」のような要素を持っている人を選んで、それが伝わるエピソードを織り込みましょう。

【回答例文】
私が尊敬する人は俳優の仲代達矢です。
日本映画の草創期から活躍し、多くの黒澤作品でも名演を残すほか、さまざまな話題作を世に出しています。
90歳近い年齢で今なお現役であることも素晴らしいですが、長きに渡って後進の育成のための無名塾を運営し、すでに大御所となっている役所広司や今後の活躍が期待できる滝藤賢一ほか、数多くの名優や演出家を輩出しているところにも感銘を受けています。

尊敬する人がスポーツ選手の場合の注意点と回答例文

尊敬する人にスポーツ選手を挙げる場合、単にスポーツ選手としての成績だけにフォーカスするのではなく、その選手が結果を出すために行った努力やどのような価値観を持っているのかなどについて掘り下げましょう。
【回答例文】
私が尊敬しているのは野球のイチロー選手です。
彼はさまざまなエピソードを残していますが、最も感銘を受けたのは彼が中学校のときのエピソードです。
毎日のようにバッティングセンターで速球をジャストミートで打ち返すための特訓に励んでいたそうですが、本来のバッターボックスよりも3メートルほどもピッチングマシーンの方に近づいて130キロの速球を打つ訓練をしていたということです。
中学生の頃から、アメリカのメジャーリーグでの勝負をイメージしたような特訓を発想し、そんな特訓の日々を重ねて十数年後には本当にメジャーリーグの打席に立ち、大活躍を果たしました。
私もイチロー選手のように、遠くの栄光を鋭く見据えながら、目の前の仕事に全力で取り組む人でありたいと願っています。

尊敬する人がいない場合の対処法

尊敬する人が特にいない場合もあるかもしれません。
それでも、そういうことを訊く面接官は、当然誰かいるはずだという認識で訊いているので、「いません」というのは避けたいところです。

そこで、以下の手順で尊敬する人を探しましょう。

フェーズ1:自分の人生の節目と思える出来事を、あるだけ書き出してみる
高校でクラブ活動を始めたときや、記憶に残るイベント、進学先を決めたとき、社会人となって働く喜びを初めて感じたとき、上からの目標とは別に自分の目標を持ったときなど、大小さまざまな節目を書き出しましょう。

フェーズ2:節目で自身が影響を受けた人がいなかったか思い出してみる
それぞれの節目の記憶をたどってください。忘れていた人物がいろいろといるはずです。
励ましてくれたバイトの先輩、受験を心から応援してくれた先生、初の営業成果を喜んでくれた上司、ビジネスのあり方を教えてくれた取引先の社長など、影響を受けた人がいるのではないでしょうか。
身近な人だけでなく、感動して生き方の指針となった小説の著者、もしくは映画監督、本で読み感銘した「偉業」をなした人などもいるかもしれません。

フェーズ3:影響を受けた人の、自分にない尊敬できる点を書き出しみる
人生の節目で影響を受けた人が持っていて、自分にはない尊敬できる点があれば書き出しましょう。
それが書き出せた人について、現在の自分の立場から見て素晴らしい人物だと思えるなら、その人を対象としましょう。

まとめ:面接で「尊敬する人」を質問されたときの対処法

転職活動にあたっては、面接において問われることが減ってきた、タブー視されている「尊敬する人は誰?」の質問があった場合も答えられるようにしておくことが得策です。
できれば面接官が知らない人を答えることで、偏見による評価から逃れられます。
歴史上の人物や芸能人、スポーツ選手でも注意点さえ押さえておけば問題はありません。
転職活動中やこれからのみなさんは、ここで紹介した情報を参考に、万が一に備えて尊敬する人物についてまとめておきましょう。

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