医療・ヘルスケア業界は、一説には市場規模が40兆円に上るともいわれています。ヘルスケアコンサルティングは、そんな医療・ヘルスケア業界の企業をクライアントとしてコンサルティングサービスを展開します。
今回の記事ではヘルスケアコンサルティングに興味がある転職志望者の方に向けて、種類別に企業の業務概要と年収事情をご紹介します。
目次
ヘルスケアコンサルティングとは?
ヘルスケアコンサルティングは医療機関や介護事業者、製薬会社や器量機器メーカーなどの医療・ヘルスケア系のクライアント企業にコンサルティングサービスを提供する仕事です。
経営戦略やマーケティング戦略、IT導入などが業務の根幹であるのはほかの分野のコンサルティングと基本的には同じですが、クライアントが扱う対象が健康や医療にかかわるものなので、高い専門性や厳格なコンプライアンスへの対応が必要です。
そういう意味では、特殊なコンサルティング分野のひとつといえるでしょう。
ヘルスケアコンサルティングの種類
ヘルスケアコンサルティングを手掛けるコンサルティングファームの、主な種類は以下のとおりです。
- 医療・介護系ファームのヘルスケアコンサルティング
- メディカル系ファームのヘルスケアコンサルティング
- 戦略系ファームのヘルスケアコンサルティング
それぞれの「業務の概要」と「年収事情」「主要なファーム」をご紹介します。
医療・介護系ファームのヘルスケアコンサルティング
医療・介護系ファームは主として病院やクリニック、介護事業者を中心に法人経営のコンサルティングサービスを提供します。
病院・クリニック向けとしては病院経営の戦略およびビジョン策定、経営改善、病院統合やM&Aのサポート、院内の人事コンサルティング、医療情報システムの導入支援などに取り組みます。
介護事業者向けとしては、従事する人材の確保と育成などの人材マネジメント面やマーケティングの精度向上、ブランディング、運営上の改善などを包括的にサポートする案件が多いです。
加えて新規で開業する事業者の開業支援として、診療圏の調査や立地選定、事業計画のブラッシュアップ、資金調達、院内レイアウトの構築などを支援します。
医療・介護系ファームの年収事情
医療・介護系ファームは、外資系が多いコンサルティング業界の中では日系ファームが多く、また病院・介護事業者の経常利益額は医薬品や医療機器メーカーと比較して小さいため、年収の目安はほかのヘルスケアファームよりも控えめです。
- アナリスト:400〜600万円
- コンサルタント:600〜800万円
- マネージャー/シニアマネージャー:800〜1,200万円
- ディレクター/パートナー:1,200〜2,000万円
ヘルスケアコンサルティングを扱う主な医療・介護系ファーム
【株式会社ユカリア】
2005年に創業した、日系のヘルスケア分野に特化したコンサルティングファームです。医療・介護の現場の課題を解決するために、幅広いヘルスケアバリューチェーンを活かし、産官学のダイナミックな連携を通じてヘルスケア分野の成長をサポートしています。
【野村ヘルスケア・サポート&アドバイザリー株式会社】
2006年に設立された、野村グループの中でヘルスケア分野に特化したファームです。医療機関や介護施設が抱える課題やニーズに対して最適解を提供するために、医療やヘルスケア、ファイナンスの専門家が検証・分析・提案を手掛けています。
【KPMGヘルスケアジャパン株式会社】
英国が本拠地の154ヶ国で事業展開するコンサルティングファームの、ヘルスケア分野に特化した日本法人です。ヘルスケア関連企業に戦略立案、ビジネススキーム構築などのサポートを行い、M&Aやファイナンスのアドバイザリーサービスも提供しています。
【株式会社グローバルヘルスコンサルティング・ジャパン】
アメリカのヘルスケアに特化したコンサルティングファームの日本法人です。アメリカ流の実践的な病院経営改善手法「ベンチマーク」を日本に初めて導入し、800院以上のベンチマークデータの分析から浮上する課題に対して実行支援型コンサルティングを提供します。
【株式会社メディヴァ】
日系の医療・介護専門のコンサルティングファームです。医療機関に対しては医療系ライセンスをもつコンサルタントが経営をサポートします。介護事業者には新規開業から事業再生、ICT活用による生産性向上など介護現場の先進テーマを解決します。
メディカル系ファームのヘルスケアコンサルティング
メディカル系コンサルティングファームは、主に医薬品メーカーおよび医療機器メーカー向けにコンサルティングサービスを展開します。
基本的な経営戦略や事業のグローバル展開における戦略策定、M&Aのサポートやマーケティング戦略、営業組織の改善、プライシング戦略などを手掛けます。
経営戦略においては、中期的な視点での事業環境やステークホルダーの変化を視野に入れた戦略策定や、将来に向けて投資すべき疾病領域や医薬品領域のポートフォリオ戦略策定などに取り組みます。
データ解析のノウハウを競争力として掲げ、営業やマーケティングの戦略・プライシング戦略といった領域での存在感を示すファームも多いです。
メディカル系ファームの年収事情
メディカル系コンサルティングファームは、外資系ファームが多いこともあり、平均年収は比較的高めです。
- アナリスト/アソシエイト:500〜800万円
- コンサルタント/シニアコンサルタント:800〜1,300万円
- マネージャー/シニアマネージャー:1,200〜2,000万円
- ディレクター/パートナー:2,000〜3,000万円
ヘルスケアコンサルティングを扱う主なメディカル系ファーム
【L.E.K.コンサルティング株式会社】
英国で設立され、世界10ヶ国以上で事業展開するコンサルティングファームグループの日本法人です。2002年に東京で開設されて以来、バイリンガルのスタッフによる高度な分析、深い知識とストラテジーを組み合わせて重要な意思決定をサポートしています。
【IQVIAソリューションズ ジャパン株式会社】
アメリカのIQVIAソリューションズの日本法人です。ブランディングやポートフォリオの最適化、MRの効率化、投資収益率を向上させヘルスケア事業の経営改善を行うソリューションなどを提供しています。
【株式会社CDIメディカル】
日系のメディカル系に特化したファームです。質の高い安全な医療の提供をコンセプトとして掲げ、病院経営安定をミッションとして設立されました。医療の発展に必須と同社が考える「医学と経営の調和」や「公共性と営利性の調和」を目指しています。
戦略系ファームのヘルスケアコンサルティング
戦略コンサルティングファームにおけるヘルスケアチームは、外資系の大手製薬メーカーや大手医療機器メーカー、大手日系医薬品メーカーなどに積極的に戦略コンサルティングを提供しています。
また、主要医療機関に対してコンサルティングサービスを提供しているファームも存在します。経営全般、事業、価格、営業、マーケティングなどのさまざまな切り口から戦略面のサポートを行っています。
戦略系ファーム・ヘルスケアチームの年収事情
戦略系コンサルティングファームは、業界の中で最も平均年収が高いといわれており、ヘルスケアチームもほかのチーム同様に高額です。
- アナリスト/アソシエイト:500〜900万円
- コンサルタント/シニアコンサルタント:900〜1,500万円
- マネージャー/シニアマネージャー:1,500〜3,000万円
- ディレクター/パートナー:3,000〜5,000万円
ヘルスケアコンサルティングを扱う主な戦略系ファーム
【ボストン・コンサルティング・グループ合同会社】
世界50ヶ国に拠点を持つ世界的ファーム、ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)の日本法人です。マッキンゼー、ベインとともに3大戦略ファームMBBと呼ばれ、グローバル企業の上位500社の6割以上がクライアントという業界のモンスターグループです。
【マッキンゼー·アンド·カンパニージャパン】
日本ではコンサルといえばマッキンゼーを思い浮かべる人がおそらく最も多いといわれる、世界最大級戦略系ファーム、マッキンゼーの日本法人です。コンサルティング業界の草創期から活躍し、現在は先端的なデジタルコンサルティングで業界を牽引するファームです。
【ZSアソシエイツ】
アメリカ経営コンサルティングファームの日本法人です。母体は、2019年にフォーブス誌において、全米における最優秀経営コンサルティングファームの1つとして選出された実績があります。
総合系ファームのヘルスケアコンサルティング
総合系コンサルティングファームではありとあらゆる産業分野で経営コンサルティングサービスを提供しますが、ヘルスケアユニットでは主に医薬品・医療機器メーカーを対象とするケースと、病院などを対象としたケースがあります。
医薬品・医療機器メーカーに対しては、研究開発やサプライチェーン・マネジメント、営業、マーケティング戦略など幅広くコンサルティングサービスを提供しています。
臨床開発プロセス早期化のために、医薬品の安全性を確保するファーマコビジランス(副作用などの医薬品の有害な作用や諸問題を検出・評価したり、有害な作用を予防する活動)に関する組織を整備するなどのプロジェクトも手掛けます。
病院を対象としたコンサルティングでは、特にデジタル活用が重要なテーマであり、デジタル活用による組織の効率化や働き方の柔軟化などのプロジェクトも多く見られます。
総合系ファーム・ヘルスケアユニットの年収事情
総合系コンサルティングファームのヘルスケアユニットでは、医薬品・医療機器メーカー向けと、病院などの医療機関や介護事業者向けのファームが存在します。ほかのインダストリーと同等の給与水準に設定されており、比較的高めです。
- アナリスト:450〜700万円
- コンサルタント/シニアコンサルタント:700〜1,000万円
- マネージャー/シニアマネージャー:1,000〜1,500万円
- ディレクター/パートナー:1,500〜2,000万円
ヘルスケアコンサルティングを扱う主な総合系ファーム
【アクセンチュア株式会社】
世界でもトップクラスの総合系コンサルティングファームであるアクセンチュアの日本法人です。あらゆる産業分野をターゲットに経営課題の解決や広告プロモーション、業務改善、ITシステムの導入、DX推進のサポートなどを包括的に提供しています。
【PwCコンサルティング合同会社】
世界規模のコンサルティンググループPwCグループの日本法人です。国内最大規模のコンサルティングファームとして、グローバルベースのネットワークとスキルを活かして経営課題の解決に当たり、国際競争力をもたらすサポートで定評があります。
【デロイト トーマツ コンサルティング合同会社】
世界4大会計事務所の一角を担うデロイト トウシュ トーマツのメンバー企業であるデロイト トーマツ コンサルティングの日本法人です。経営戦略を大局的な見地から立案し、包括的に実行をサポートすることで、クライアント企業の躍進をサポートします。
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まとめ
ヘルスコンサルティングの領域は、医療・介護系ファーム、メディカル系ファームという特化型のコンサルティングファームのほかに、戦略系ファームと総合系ファームもそのセクションを持っているケースがあります。
それぞれが優位性を持つリソースを活かしたアプローチで、医療・ヘルスケア分野の企業や医療機関の経営や事業革新をサポートしています。
転職先としてヘルスケアコンサルティングの領域に興味があるみなさんは、ここで紹介した情報を参考にしていただくとともに、この領域にしっかりしたパイプを持つ私たちタリスマンにぜひお気軽にご相談ください。