転職活動で履歴書を作成する際、「扶養家族」や「配偶者」の欄で手が止まってしまった経験はありませんか?
「そもそも扶養家族って誰のこと?」「共働きの場合はどう書くの?」「選考に影響したらどうしよう…」など、多くの疑問が浮かぶ項目です。
この記事では、履歴書の扶養家族欄の正しい書き方を、具体的な見本を交えながら分かりやすく解説します。企業がなぜこの情報を必要とするのか、選考への影響といった気になるポイントから、迷いやすいケース別の対処法まで網羅しています。
目次
履歴書の「扶養家族」欄、なぜあるの? 選考への影響は?
まず、なぜ企業は履歴書で扶養家族の情報を求めるのでしょうか。その主な理由は、入社後の社会保険や税金の手続きに必要なためです。
- 健康保険証の発行
- 所得税や住民税の計算
- 会社によっては家族手当の支給
これらの手続きをスムーズに行うために、企業は事前に情報を把握しておく必要があります。
ここで多くの方が心配されるのが、「扶養家族の人数が選考に影響するのではないか?」という点でしょう。結論から言うと、扶養家族の有無や人数が、採用の可否に直接影響することは基本的にありません。 これは応募者の能力やスキルとは無関係の情報だからです。安心して、正確な情報を記入しましょう。
「扶養家族」の基本知識
履歴書を書く上で、まず「扶養家族」の定義を正しく理解しておくことが大切です。扶養には「税法上の扶養」と「社会保険上の扶養」の2種類がありますが、履歴書では一般的に「社会保険上の扶養」に該当するかどうかで判断します。
社会保険上の扶養家族とは、主にあなたの収入によって生計を立てている家族を指し、一般的に年収が130万円未満であることが条件となります。
区分 | 扶養家族の定義・条件 |
---|---|
社会保険上 |
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税法上 |
|
健康保険における扶養家族
健康保険は、組合ごとで被扶養者になれる条件が異なります。そのため、一般的な協会けんぽを例に挙げて説明しましょう。
健康保険の制度上、扶養家族のことは「被扶養者」と呼び、扶養する人のことを「被保険者」と呼びます。被扶養者の条件は、大きく分けて4つです。
条件1:3親等以内の同居親族または扶養可能な別居親族であること
同居していなくても扶養家族の対象になる人
- 内縁関係を含む配偶者
- 養子を含む子ども
- 孫
- 兄弟姉妹
- 養父母を含む父母や祖父母などの直系尊属
同居していれば扶養家族の対象になる人
- 配偶者の両親や叔父や叔母など上記以外の三親等内の親族
- 内縁関係の配偶者の両親や連れ子
内縁関係の配偶者が亡くなった後でも、その両親や連れ子は扶養家族になれます。
条件2:他の健康保険組合に入っていないこと
被扶養者が、就職先で他の健康保険組合に加入していると扶養家族の対象外です。就職している場合、収入によっては扶養対象外になるケースがあるので注意しましょう。
条件3:所定の年収未満であること
被扶養者の年齢によって、収入面の条件が異なります。60歳未満の人は、年収が130万円未満(月収にすると10万8334円未満が目安)、60歳以上および障がい者の場合、年収が180万円未満、19歳以上23歳未満の場合は150万円未満であることが条件です。被扶養者と同居している場合、被保険者の年収の2分の1未満で被扶養者の対象になります。
一方別居の場合は、被扶養者の年収が被保険者の仕送りより少ないことが条件です。
条件4:後期高齢者医療制度の被保険者ではないこと
後期高齢者医療制度とは、75歳以上の人が加入できる医療制度です。寝たきり状態の場合、65歳以上が対象となります。被扶養者の対象者は、後期高齢者医療制度の被保険者ではないことが条件です。
そのため、高齢の両親を被扶養者としたい人は、両親の年齢に注意しましょう。
税法上の扶養家族について
税法上、扶養家族は「扶養親族」と呼びます。健康保険制度と税法上の扶養家族の定義には、さまざまな違いがあるため、混同しないようにしましょう。
「生計が同一」である条件は、同居している場合だけではありません。親からの仕送りで生活している別居中の子どもも含みます。年間の合計所得金額は、給与年収とは異なるため注意しましょう。給与年収だと年間103万円以下が扶養内の条件です。たとえば、アルバイトで得た収入は給与収入になるため、子どもがアルバイトをして年間収入が103万円(※2025年以降は150万円)を超えると扶養対象外になります。
【項目別】扶養家族欄・配偶者欄の基本的な書き方
それでは、具体的な項目別に書き方を見ていきましょう。履歴書には、「配偶者の有無」と「配偶者の扶養義務」を記載するケースが多いです。
たとえば、以下のような項目が設置されています。
扶養義務欄の書き方は、基本的に空欄にしないことです。たとえば、扶養家族がいない場合は「0」と数字を記載し、有無には必ず〇を付けましょう。
- 扶養家族数(配偶者を除く)
扶養している家族のうち、配偶者を除いた人数を記入します。例えば、配偶者と子供2人(いずれも扶養内)を扶養している場合、ここには「2人」と書きます。誰も扶養していなければ「0人」です。 - 配偶者
履歴書の配偶者欄は、法律上の婚姻関係の有無で記載することが一般的ですが、内縁関係や事実婚の相手がいる場合、社会保険上は被扶養者と認められることがあるので、後々トラブルにならないように企業側に確認のうえ記載するか、但し書きをしておくと良いでしょう。 - 配偶者の扶養義務
あなたの収入で配偶者の生計を立てている(配偶者が社会保険の扶養に入っている)場合は「有」、配偶者自身が働いており扶養に入っていない場合は「無」に丸をします。配偶者がいない場合も「無」にします。
ここでは、履歴書の扶養家族欄の書き方について、家族構成ごとに書き方の見本とともに解説します。
家族構成 | 扶養家族数 |
独身で一人暮らし | 0人 |
配偶者あり(配偶者の年収が130万円以上) | 0人(配偶者の扶養義務は有) |
配偶者あり(配偶者の年収が130万円未満) | 0人(配偶者の扶養義務は無) |
配偶者と子ども1人(配偶者と子どもの年収が130万円未満) | 1人(配偶者の扶養義務は有) |
配偶者と子ども1人(配偶者と子どもの年収が130万円以上) | 0人(配偶者の扶養義務は無) |
74歳以下の両親と同居または別居(親の年収は180万円未満) | 2人 |
75歳以上の両親と同居または別居(親の年収は180万円以上) | 0人 |
配偶者を除くと特記があるケースでは、配偶者が扶養対象であっても扶養家族数は「0人」です。配偶者が扶養家族の対象になる場合、配偶者の扶養義務欄の「有」を〇で囲みます。
それでは、それぞれの家族構成ごとに扶養家族の数と書き方を解説しましょう。
独身で一人暮らしの場合
独身で配偶者も同居家族がおらず仕送りもしていないケースでは、扶養家族0人となります。配偶者と配偶者の扶養義務は、無を〇で囲みましょう。
独身で親と同居している場合
74歳以下の両親と同居しており、両親の年収が110万円のケースの場合、扶養家族は2人となり、独身のため配偶者は無に〇をつけましょう。同居ではなく、別居の場合も扶養家族になります。ただし、親の年齢が75歳以上または年収が180万円以上であれば、扶養対象外となるため注意しましょう。
事実婚・内縁の場合
法律上の婚姻関係ではないため、履歴書上は「配偶者:無」とするのが一般的ですが、健康保険制度上では、入籍していない事実婚や内縁関係でも配偶者として扱われるケースがあります。ここでは事実婚を証明でき、配偶者として記載したい意向がある場合についての書き方を説明します。子どもがおらず、配偶者が130万円以上の収入を得ている場合は、扶養家族は0人。配偶者には有を〇で囲み、扶養義務は無に印をつけます。その際、履歴書の備考欄にはその旨記載をしておくと良いでしょう。
配偶者がおり子供がいない場合
配偶者がいる場合、同居の有無にかかわらず、配偶者の年収によって扶養義務が異なります。たとえば、妻が年収130万円未満の場合です。配偶者以外の扶養家族がいないため、扶養家族は0人。配偶者と配偶者の扶養義務は有となります。
配偶者と子供がいる場合
配偶者がおり子どもがいる場合、子どもの年収で扶養家族数が異なります。たとえば、専業主婦の妻と小学生の子ども1人がいる場合です。
扶養家族には、子どもの1人だけを記載。専業主婦の妻は、配偶者と配偶者の扶養義務に有を付けることで申告します。実際には、専業主婦の妻と小学生の子ども1人を合わせた2人を扶養していますが、「配偶者を除く」と但し書きがあるため、扶養家族数は子ども1人だけです。
もう迷わない!履歴書の扶養家族に関するQ&A
- 内縁の妻(夫)や事実婚の場合はどう書きますか?
- 法律上の婚姻関係ではないため、履歴書上は「配偶者:無」とするのが一般的です。ただし、生計を同一にしており、健康保険の扶養に入れている場合は、入社後の手続きでその旨を伝える必要があります。面接などで質問された際に、事実関係を説明できるようにしておくと良いでしょう。配偶者として記載したい場合は、前述した「扶養家族欄・配偶者欄の基本的な書き方」の「事実婚・内縁の場合」を参照してください。
- 別居している親を扶養している場合、扶養家族に含めますか?
- 別居していても、定期的に仕送りをするなどして、その親の生-計を主に立てている場合は「扶養家族」に含めます。健康保険の扶養に入っているかどうかが一つの判断基準になります。
- 子供がアルバイトをしていますが、扶養家族になりますか?
- お子様のアルバイト収入が年間130万円未満であれば、扶養家族に含めて問題ありません。なお2025年以降は年間150万円未満に改正されています。
- 間違えて提出してしまったら、どうすればよいですか?
- 気づいた時点で、速やかに採用担当者に連絡し、訂正の旨を伝えましょう。面接の機会があれば、その冒頭で「履歴書の記載に誤りがございましたので、訂正させていただけますでしょうか」と丁寧に申し出るのがスマートです。悪意のある間違いでなければ、問題になることはありません。
扶養家族が選考に影響する可能性
扶養家族の記載は、応募者の情報を把握するためなので、選考に影響することはほぼありません。しかし、扶養家族の情報から介護や育児で業務に支障が出ないか確認するケースもあります。
そこで介護や育児など懸念事項がある場合、業務に支障が出ないように他の家族や保育施設のサポートが得られることをアピールすると良いでしょう。意図的に扶養家族の情報を隠して入社してはいけません。
まとめ
履歴書の扶養家族欄は、選考そのものを左右する項目ではありませんが、あなたの社会的な信頼性を示す一部分であり、入社後の大切な手続きに関わる情報です。この記事を参考に、ご自身の状況を正しく把握し、正確な情報を記入してください。自信を持って履歴書を提出し、転職活動を成功させましょう。
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