面接においては、しばしばあなたの長所と短所について尋ねられます。
新卒の面接でも尋ねられますが、中途採用の転職面接ならすでに社会人という背景があるので、なおさら重要な質問に位置付けられるのです。
長所は自己の魅力のアピールなので答えやすいともいえますが、これも「自分を過大評価しているとおもわれるのでは」と気になることもあるでしょう。
また、短所はそもそもネガティブになりがちなので、どう答えるのがよいか戸惑う人も多いのではないでしょうか。
面接の本番で答えに窮することがないように、志望動機や自己PRと同様に長所と短所の質問に対する回答も準備しておくことが大切です。
この記事では面接担当者が長所と短所を尋ねる理由を紐解き、それぞれにベストな回答を準備するための考え方とテクニックを紹介していきます。
目次
面接担当者が長所と短所を尋ねる理由とは?
まずは、選考面接において面接担当者が長所と短所を尋ねてくる理由について、詳しく解説しておきます。それによって、適切な対応の方向性が理解できるでしょう。
面接担当者が長所と短所を尋ねたい主な理由は以下の2点に集約されます。
●自社の企業風土と合うのかを見る
●自己評価の客観性を見る
それぞれについて、掘り下げていきましょう。
自社の企業風土と合うのかを見る
長所と短所を知ることは、その人が自社で積極的に活躍することができる人材かどうかを判断するのに役立ちます。企業の中で活躍するには、その企業に求められる能力が必要です。
長所と短所を知ることは、あなたが企業理念やビジョン、目指す方向性、ならびに人材を求める部門や部署に適しているかどうかを判断する重要な手掛かりになります。ひらたくいえば企業との「お互いが栄えるための相性」ともいえるでしょう。
過去のキャリアがどれほど華々しくとも、その企業風土と合わなければあなたの実力を発揮できなかったり、他者との連携や円滑な業務遂行が行えなかったりして、悪くすると早期退職につながりかねません。そうなるとお互いにデメリットしか残らなくなります。
面接担当者はそういうリスクを避けるために、長所と短所を尋ねることで、あなたの自社に対する向き不向きを確認したいのです。
自己評価の客観性を見る
面接担当者は、長所と短所について質問し、あなたが自分自身を客観的に見て、冷静な自己評価ができるかどうかを判断します。自分の長所と短所を理解できない人は、長所を伸ばしたり、短所を改善したりができません。
入社後の活躍と成長を測る上で、重要な項目だといえるでしょう。
あなたが自分の長所を的確に理解することは、あなたにとってどのような仕事が向いているのか、さらにはあなたの可能性を最大限に引き出すために何ができるのかを知ることにつながります。
また、短所を客観的に分析できれば、自分の得意ではない領域を克服するために、どういう対応策が打てるかを考えられるでしょう。
後に詳しく解説しますが、短所を語る際には克服策や対応策、そして「長所に置き換え」た内容を盛り込むことが面接の勝利につながります。
長所を答える際の三段論法テクニック
長所を尋ねられた際に答えるテクニックとして、わかりやすく伝えるために以下のような三段論法の流れを意識してください。
第1段階:まず結論から入る
第2段階:エピソードで裏打ちする
第3段階:仕事に活かす意志を伝える
流れを詳しく解説していきましょう。
第1段階:まず結論から入る
回答の冒頭において、論理的で明快な話し方のコツでもある「まず結論から入る」方法を用いましょう。
「私の長所は、物事に対する集中力を人より持ち合わせているところです」
「私の長所は、未経験の領域に挑戦するチャレンジ精神が旺盛です」
「私の長所は、気持ちの切り替えが早い面です」
などと冒頭に結論を述べるのです。
第2段階:エピソードで裏打ちする
第2段階では、実際のエピソードでその結論に対する客観性を裏打ち、つまり補強をしましょう。
それによって、あなたの長所は、自分が勝手にそう思い込んでいるというものではなく、客観的にそういう傾向があるということを伝えることができます。つまり、「過大評価」ではないことを証明しておくわけです。
「現在の職場では集中力を買われて、手間がかかる込み入った案件はほとんど私に任されることが多いのです」
「以前の職場ではそのチャレンジ精神を見込まれて、新事業部立ち上げのメンバーに選ばれることが3回ありました」
「先日退職した職場では、気持ちの切り替えの早さが評価されて、目標未達成のチームにリーダーとして配属されることが何度かありました」
このように、客観性が裏打ちされるようなエピソードを挿入しましょう。面接担当者からすれば、あなたの長所が仕事に活かされてきた印象が鮮明になってくるはずです。
この段階の注意点としては、エピソードを挿入するために話が冗長になるのは、逆に印象を下げるおそれがあります。
ポイントを押さえて語れるように、事前に語るべきショートストーリーを準備しておかなくてはなりません。
第3段階:仕事に活かす意欲を伝える
最終段階では、その長所を仕事において活かす意欲を必ず伝えましょう。それによって初めて、自分と企業がつながり、長所を述べる意味が生まれます。
具体性があるほうがよいので、たとえば以下のように語るのがよいでしょう。
「もしご縁があって御社に採用いただき、幸いにも〇〇関連の業務を任せられることがあれば、私自身のそういう面を最大限に活かして御社の業績拡大に私なりに貢献し、自己実現を目指したいと考えております」
ここでのポイントは、企業への貢献が自分自身の目的や成長と合致していることを伝える表現です。
ひと昔前の「滅私奉公」ではなく、企業と個人が「ウィンウィン」になる考え方こそが健全とされる時代です。自分の希望や意志を語ることは、それが企業の目指す方向性と相容れるのであれば、何もはばかる必要はありません。
短所を長所に置き換える三段論法テクニックとは?
さて、長所を尋ねられた際のベストな対応の仕方を解説したところで、いよいよ難度が高い「短所」を尋ねられた場合の答え方のテクニックについて見ていきましょう。
短所を尋ねられた時は絶好のアピールチャンス
まず肝心なことですが、短所を尋ねられる時は、決してネガティブな場面ではなく、自己アピールを行う絶好のチャンスであると認識しましょう。
なぜなら、「短所を語りながら実は長所をアピールすることができる」からです。ちょっとややこしい表現をしましたが、順を追って説明しましょう。
長所を答える際の三段論法と似ていますが、少し違いがあります。なぜなら、長所のようにエピソードで裏打ちすると、短所は余計ネガティブな印象を与えるからです。
以下の三段論法の流れが望ましいでしょう。
第1段階:まず結論から入る
第2段階:分析からの置き換え
第3段階:「短所改善」と「置き換えた長所」を活かす意欲
各段階を詳しく解説しましょう。
第1段階:まず結論から入る
第一段階は長所とまったく同じで、回答の冒頭において、結論から入る方法を用いるのがよいでしょう。
「私の短所は、飽き性なところです」
「私の短所は、神経質なところです」
「私の短所は、失敗をいつまでも引きずるところです」
などと、冒頭に短所をひと言で述べます。
第2段階:分析からの置き換え
第二段階は最も重要です。ここで自然に短所を長所に置き換えてしまう必要があります。
「飽き性なのは、色々なものに興味があってあれもこれも追求したくなってしまうからなのです」
ここで「飽き性」が「好奇心旺盛」に置き換えられています。
「神経質であるのは、何事も周到な準備をして臨みたいからだと思っています」
ここで「神経質」が「慎重さ」に置き換えられています。
「失敗を引きずってしまうのは、二度と同じ間違いを犯して職場に迷惑をかけたくないので、原因を深く探ってしまうからです」
ここで「失敗を引きずる」が「責任感」「探究心」に置き換えられています。
第3段階:「短所改善」と「置き換えた長所」を活かす意欲
いよいよ最終段階の「締め」の部分です。ここでは2つのポイントを織り込むのが理想的といえます。
ひとつは、そもそもその短所を克服しようという意志です。もうひとつは長所に置き換えた部分を仕事に活かす意欲となります。
「すぐに飽きないように何事も興味を持って当たるとともに、仕事ではさまざまな分野にトライする方向に活かしたいと思います」
「神経質になり過ぎないよう、おおらかに考えていくとともに、仕事には周到さを極める部分を活かしたいと考えております」
「失敗を必要以上に引きずらないように心がけつつ、同じ失敗のないように仕事の精度を高めるために活かしたいと思っています」
このように、短所部分も置換えた長所の部分もともにプラスに持っていける回答を準備しておきましょう。
長所・短所の回答における要注意点
長所と短所の回答を準備するための考え方とテクニックを解説しましたが、最後にどちらにも共通する要注意点を紹介しておきましょう。
それは要約すると以下の4点です。
●企業が求める人材像を意識
●長所と短所が矛盾しないように
●業務と関連が薄いことは避けよう
●複数の回答を持っておこう
個々の項目を詳しく説明していきます。
企業が求める人材像を意識
どんなに素晴らしい長所があっても、応募先企業の人材ニーズに合わなければ、採用されることは難しいのが当然です。
面接担当者は、自社が求めている人材とあなたに大きなミスマッチがあった場合、良好な関係を築くことが難しいとジャッジします。
なぜなら、職場であなたが能力を発揮できずに、辞めていくおそれがあると考えられるからです。
求人情報や企業の公式サイトなどをしっかりとチェックし、その企業が求めている人材像とつながる回答を用意しておく必要があります。
ちなみに、回答の準備に相当無理があるなら、そもそもその企業への応募自体を考え直すべき場合もあるでしょう。
長所と短所が矛盾しないように
次に、あなた自身が語る長所と短所が矛盾していないことが大切です。そこに矛盾が見られるなら、あなたの発言全体に一貫性を疑われかねません。また、自分自身を客観視できていないと思われるおそれもあります。
極端な例でいえば「気持ちの切り替えが早い」長所を答えながら「失敗を引きずる」短所を挙げるようなものです。相容れない要素が、同じ人の中に存在することになります。
自分を美化しようとするあまり、答えが実際と異なるものになった場合に起こり得るミスなので、注意が必要です。長所はストレートに、短所も飾らずに選択しましょう。そうすれば矛盾は生じにくいはずです。
業務と関連が薄いことは避けよう
応募先の企業や業界、あるいはあなたが希望する職種に関連が薄い長所短所は、発言しても意味がないので避けましょう。
たとえば、求人内容が営業職である場合に、細かい作業が得意であるという長所をアピールしたり、事務系の求人に、行動力があるとアピールしたりというミスマッチです。
そういったケースはその求人に不向きと判断されます。もしくは理解不足だと思われかねません。
長所も短所も、入社後の業務をイメージして、それに沿った内容で語るべきです。
複数の回答を持っておこう
自分自身は長所短所がひとつずつしか思い浮かばないこともあるでしょう。しかし面接においては、「他には何がありますか」と尋ねられることがあります。
深く自己分析をすれば、誰しも長所や短所はそれぞれ複数あってあたりまえです。できれば長所短所それぞれに、念のため2〜3の回答を用意しておきましょう。
短所を長所に!置き換え例文集
具体的な短所を長所に置き換える例を、参考までに挙げておきます。
【器用貧乏】
「私の短所は器用貧乏なところです。どうしても興味を持ったことに関して、基礎的なことは理解したくなってしまう性分なのです。今後はあれもこれもとはならず地に足をつけたスタンスを心がけつつ、関わったことはすべてプロとして本格的にこなせる人材になりたいと思います」
【いきあたりばったり】
「私の短所はいきあたりばったりな面です。できるかどうかよりも、やってみたい気持ちが先走ってしまうからのようです。これからは踏み出す前に冷静に考えてみる姿勢を意識しながら、踏み出したことには真摯に向き合って、成果を上げられる人間を目指します」
【意地っ張り】
「私は昔から意地っ張りなところがあって、それはよくないと分かっています。自分が決めたことには、どうしても結果を出したいからだと思います。しかし、できるだけ妙なこだわりは捨てながら、大切な部分にはこだわって、望ましい結果を出せる人になりたいと思います」
【せっかち】
「私の短所は恥ずかしながらせっかちなところです。時間を無駄にしたくない気持ちがそうさせるのだと考えています。これからは何もかも早急に判断することは避けながら、合理的に効率よく仕事を進められる人材を目指します。
【八方美人】
「私の短所は八方美人なところです。どの人とも良好な関係を築きたいあまり、そうなってしまうようです。今後は決して軽く関係を作ろうとはせず、どの人とも誠実に向き合って多くの人と良質なコミュニケーションがとれる人間になりたく思っています」
まとめ
転職の面接において、面接担当者が長所と短所を尋ねる理由を紐解き、それぞれにできるかぎり良好な回答を準備するための考え方、およびテクニックを紹介しました。
長所も短所もそれぞれの三段論法テクニックに当てはめつつ、それぞれが矛盾しない回答をしっかり準備しておきたいものです。
特に短所を見事に長所に置き換えて仕事への意欲に結びつけることで、長所のアピールと合間ってあなたの好印象の度合いをアップできる期待は大きいといえるでしょう。
転職活動に励むみなさんは、ここでの情報をぜひとも参考にして、長所と短所の質問への入念な回答を準備して面接に臨んでください。