コンサルティングファームでは、一般的な企業と異なる独自の役職(タイトル:職位)が使用されます。一般的に「アナリスト」「コンサルタント」「マネージャー」「パートナー」という4つの基本役職に分かれており、そこからさらに細分化している場合も多いです。
また、企業によってはその4つの呼称も異なる場合があります。今回の記事ではコンサルの役職の概要と、コンサルティングの系統別の年収との関係などを解説します。
目次
一般的なコンサルティングファームの役職(タイトル)と仕事内容
一般的なコンサルティングファームの、基本的な役職(タイトル)は以下の4つです。
- ●アナリスト
- ●コンサルタント
- ●マネージャー
- ●パートナー
それぞれの仕事内容と、求められるものを見ていきましょう。
アナリスト
アナリストはコンサルティングファームに入社した人材が、基本的に最初に就くタイトルです。特に新卒採用の場合は確実にこのタイトルからスタートします。呼称をリサーチャーやスタッフとしている企業もあります。
アナリストの仕事内容
上位タイトルであるコンサルタントをサポートする業務を担当します。コンサルティング業務のビギナーなので、研修を受けることもあるでしょう。
具体的にはリサーチや情報収集と分析、資料作成、プレゼンテーションの準備などの地道な業務を行います。
アナリストは任される作業量が多く、また学ぶべきことも多いので拘束時間が長くなり、自分の時間は少なくなります。それゆえに、効率的に仕事をこなすスキルが自然と磨かれるでしょう。
アナリストに求められるもの
上位タイトルのコンサルタントは、アナリストがリサーチして作成した資料に基づき、仮説を立案し、検証を進めていきます。そのためアナリストは資料作成に関して、情報の正確さや作業の迅速さが求められます。
アサインされたプロジェクトにおいて、アナリストは先輩のコンサルタントから指導を受けながら仕事を覚えていくのが一般的です。
コンサルタントへのキャリアアップは実力次第で、昇格までの期間に基準はありません。おおむね3~4年ほどアナリストを経験して実力をつけてきたと評価されれば、コンサルタントに昇格することが多いです。
コンサルタント
コンサルタントは、プロジェクトで実務を担当する重要なタイトルです。マネージャーから業務遂行の指示を受け、推進していきます。上司の指示に従って動くのではなく、ある程度の裁量を与えられるので、自らの考えで仕事を進めることができます。
コンサルタントの仕事内容
目的とするアウトプットや成果物の作成、課題の特定、仮説の設定、進捗管理をしながら業務を進め、クライアント側の関係者を動かすなど仕事はさまざまです。
また、アナリストに指示を与えながらリサーチや資料の整理や分析を行い、マネージャーが高度な判断を行うための材料を提供することも大切な仕事です。
仕事の進め方においてマネージャーの了解は必要ですが、収集する資料の内容や方向性の決定、インタビュー対象者の選定などはコンサルタントの裁量範囲です。
コンサルタントに求められるもの
コンサルタントにはアナリストに的確な指示を与え、自分自身のスケジュール管理も含めたマネジメントスキルや、クライアントと折衝を行うスキルが求められます。
コンサルタントの仕事を経験し、一定水準の能力を身につけたとファームから認められた場合に、マネージャーに昇格することが多いです。
その期間の目安としては3~5年です。ただしコンサルティング業界は実力主義が色濃いので、もっと短期間で実力を発揮してマネージャーに昇格するコンサルタントもいます。なお、中途採用の場合はコンサルタントからスタートする場合もあります。
マネージャー
マネージャーはプロジェクトの責任者です。アナリストやコンサルタントなどのアサインされたスタッフをマネジメントしつつ、クライアントが求めるアウトプットや成果物の作成をマネジメントする重要な役割を担います。
マネージャーの仕事内容
コンサルタントやアナリストが作成するアウトプットや成果物のクオリティコントロールが重要な仕事です。
アナリストによるプロジェクトに関する基礎情報や分析が間違っていれば、それをベースとしたコンサルタントによるアウトプットや成果物の方向性を誤るおそれがあります。
そうならないように、マネージャーはアナリストやコンサルタントを堅牢にマネジメントすることが重要です。
また、スケジュール管理も重要です。遅延やトラブルの発生がないかを把握し、必要に応じて適切な対処を行います。
マネージャーに求められるもの
マネージャーは人に対するマネジメントだけでなく、スケジュールやコスト、リスク、クオリティなどを包括的にマネジメントする能力が求められます。
案件の単価は最初に決まっている事が多いので、コスト管理や工数管理ができなければ、工数が予定より増えたり人件費が膨らんだりしてしまうなど、本来得られる利益を減らすことになりかねません。
そのため、見積もった工数や予定通りのスケジュールとコストで進んでいるかを、マネージャーは常に把握する必要があります。
また、水準以上のクオリティで成果物が仕上っているか、思わぬトラブルやリスクが発生していないかも含めて、プロジェクトを全方位的にマネジメントしなければなりません。
パートナー
パートナーはコンサルティングファームの最高職位です。ファームで働く者は、最終的にはこのタイトルを目指すことになります。
コンサルティングファームの経営を担うので責任は重いですが、その分見返りも大きいです。ファームが業績を上げられれば、多額の利益配分を得られます。億単位の報酬を得るパートナーも少なくありません。
30代で若くしてパートナーとなるケースもあり、上場企業の役員クラスを凌駕する大きな報酬が得られるポテンシャルを持つ、魅力あるタイトルです。
パートナーの仕事内容
パートナーはコンサルティングの案件を獲得する役割を担います。ファームの顔でもあり、主に大口のクライアントから受注を得るための活動を手がけます。
業界情報と培ってきたネットワークなどを駆使して、企業の経営陣や、政治家や官公庁の要職にある人物とつながりを作るのもパートナーの重要な仕事です。機会があれば、いつでも提案ができるようにするためです。
パートナーに求められるもの
パートナーになると個々のクライアント企業の課題よりも、マーケット全体の動きや、政治の動き、国際経済の流れなどに精通していることが大切です。
クライアント企業の経営者に対して、将来予測を示す眼力も求められます。また、多方面のステークホルダーから信頼される人望を持つことも必要です。
コンサル系統別・役職(タイトル)と年収の関係
コンサルティングファームの系統によって、役職(タイトル)の呼称が少し異なります。ここではコンサルティングファームの系統別の、タイトルの呼称および年収の目安をそれぞれ一覧表にして紹介しましょう。
もちろん実際はそれぞれの系統の中でも個々のファームで、役職の呼称も年収も微妙に異なってきます。あくまで平均的な目安として参考にしてください。
戦略系コンサルティングファームの役職(タイトル)と年収
戦略系コンサルティングファームは基本4役職(タイトル)に加えてプリンシパルが、マネージャーの上位職として存在します。年収においては戦略系が最も好条件のようです。
役職(タイトル) | 経験年数 | 年齢 | ベース給(年間) | 成果給率(対ベース給) |
アナリスト | 0〜3年 | 22~28歳 | 500~800万円 | 20% |
コンサルタント | 0~6年 | 25~35歳 | 900~1,300万円 | 20% |
マネージャー | 2~10年 | 28~40歳 | 1,400~2,000万円 | 30% |
プリンシパル | 5~15年 | 32~45歳 | 1,700~2,500万円 | 30% |
パートナー | 7年〜 | 35歳〜 | 2,500万円〜 | – |
総合・IT・組織人事系コンサルティングファームの役職(タイトル)と年収
総合・IT・組織人事系コンサルティングファームではアナリストではなく、コンサルタントから始まります。また、コンサルタントとマネージャーのそれぞれに「シニア」がつく上位職があります。
役職(タイトル) | 経験年数 | 年齢 | ベース給(年間) | 成果給率(対ベース給) |
コンサルタント | 0〜3年 | 22~30歳 | 500~700万円 | 10~20% |
シニアコンサルタント | 0~6年 | 25~35歳 | 700~900万円 | 10~20% |
マネージャー | 2~10年 | 28~40歳 | 900~1,400万円 | 10~20% |
シニアマネージャー | 5~15年 | 32~45歳 | 1,300~1,800万円 | 10~20% |
パートナー | 7年〜 | 35歳〜 | 2,000万円〜 | – |
財務系コンサルティングファームの役職(タイトル)と年収
財務系コンサルティングファームではコンサルタントという呼称の代わりにアソシエイトを使用し、「シニア」がつく上位職があります。またマネージャーの上位職に「ディレクター」が存在します。
役職(タイトル) | 経験年数 | 年齢 | ベース給(年間) | 成果給率(対ベース給) |
アナリスト | 0〜2年 | 22~25歳 | 500~600万円 | 0~30% |
アソシエイト | 0~3年 | 25~30歳 | 600~700万円 | 0~30% |
シニアアソシエイト | 2~6年 | 28~35歳 | 700~900万円 | 0~30% |
マネージャー | 3~10年 | 30~40歳 | 900~1400万円 | 0~30% |
ディレクター | 5~15年 | 32~45歳 | 1,300~1,800万円 | 0~30% |
パートナー | 7年〜 | 40歳〜 | 2,000万円〜 | – |
主要コンサルティングファーム別の役職(タイトル)一覧
国内の主要コンサルティングファームにおいての、役職(タイトル)の呼称を、基本4役職に相当するものを挙げる形式で一覧表にて紹介します。
ファーム名 | アナリスト | コンサルタント | マネージャー | パートナー |
アクセンチュア株式会社 | ・ビジネスアナリスト | ・コンサルタント | ・マネージャー
・シニアマネージャー |
・シニア・エグゼクティブ |
アーサー・ディ・リトル・ジャパン株式会社 | ・リサーチアナリスト | ・コンサルタント | ・マネージャー
・シニアマネージャー |
・アソシエイト・ディレクター
・ディレクター |
アビームコンサルティング株式会社 | ・コンサルタント | ・シニアコンサルタント | ・マネージャー
・シニアマネージャー |
・プリンシパル |
A.T. カーニー株式会社 | ・ビジネスアナリスト
・シニアビジネスアナリスト |
・アソシエイト | ・マネージャー | ・プリンシパル
・パートナー |
株式会社エヌ・ティ・ティ・データ経営研究所 | ・コンサルタント | ・シニアコンサルタント | ・マネージャー
・シニアマネージャー |
・アソシエイトパートナー
・パートナー |
PwCコンサルティング合同会社 | ・コンサルタント
・シニアコンサルタント |
・アソシエイト | ・シニアアソシエイト | ・プリンシパル
・ヴァイスプレジデント |
ベイン・アンド・カンパニー日本支社 | ・アソシエイトコンサルタント
・シニアアソシエイトコンサルタント |
・コンサルタント | ・マネージャー | ・パートナー |
ボストン・コンサルティング・グループ合同会社 | ・アソシエイト | ・コンサルタント | ・プロジェクトリーダー
・プリンシパル |
・パートナー&マネージングディレクター |
マッキンゼー・アンド・カンパニー・インコーポレイテッド・ジャパン | ・ビジネスアナリスト | ・アソシエイト | ・ンゲージメント・マネージャー | ・アソシエイト・プリンシパル
・ディレクター&プリンシパル |
三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社 | ・アソシエイト | ・コンサルタン | ・チーフコンサルタント | ・プリンシパル |
株式会社ローランド・ベルガー | ・ジュニアコンサルタント | ・コンサルタン
・シニアコンサルタント |
・プロジェクトマネージャー | ・プリンシパル
・パートナー |
代表的な5系統のコンサルティングファームの企業に関する記事をこちらでご紹介しています。ご参考にどうぞ。
コンサルティングファームで昇進を目指す際のポイント
コンサルティングファームで昇進を目指す際のポイントとして、目の前の仕事が何であれ戦略的に取り組み、実績を上げるのは大前提です。重要なのは、そのプロセスを上司に論理的に説明できることです。
ファームからの人事評価や昇進の判断に、最も影響を与えるのは直属上司からの報告とされています。だからこそ、実績を上げるためにも、工夫して効率とクオリティを追求しているプロセスを上司に説明しておくほうが、評価が安定したものになるでしょう。
また、早く昇進したいからといって、仕事に集中し過ぎて心身が疲弊してしまうと成長の妨げになりかねません。セルフマネジメントのつもりでオンとオフのバランスを取って、常にモチベーションを維持できるようにしましょう。
まとめ
コンサルティングファームの役職(タイトル)は基本的な4つは呼称の違いはあっても、仕事内容と役割に関しては各ファームにほぼ共通しています。ただしコンサルタントやマネージャーが2段階、つまり上位職があるケースが多いです。
これからコンサルティングファームへの転職を考えているみなさんは、ここで紹介した役職と年収の関係なども参考に、転職のビジョンを検討してください。