「管理職になりたくない」に隠された真実

管理職になりたくない本当の理由 ― 日本人だけ?

初めまして。ニューヨークでコーチをしている齋藤恵子です。

日本では管理職になりたくない中堅社員が増えているということですが、アメリカ(NY)ではどうだと思いますか? 

職種や人それぞれの考え方による部分ももちろんあります。例えばIT業界などでは、人を管理するより技術の腕や知識を極めて専門性を高めたいという人達もいます。ですが、アメリカではキャリアを積んで早く昇進したいという人が大半です。特にNYは全米の中でもfast pace(何でもペースが速い環境)なので、出世も少し急ぎ過ぎる感もありますが、、、
彼らはキャリアが進んでいけば管理職に上がっていくのが当然だと思っていますし、それに伴う責任や仕事量もついてきますが、管理職への昇進を自分に対する報酬だと捉えています。管理職と言う新しいステータスを誇りに感じ、新たなモチベーションを持って仕事に取り組みます。

管理職に対する捉え方―日本人になくてアメリカ人にあるもの ―

この日本人とアメリカ人の昇進に対する考え方の違いは何処から来るのでしょうか?アメリカ人にあって日本人に足りないものとは何なのでしょうか?
チャレンジ精神もその一つかもしれませんが、これは日本人でも持っている人は沢山いますよね。

日本人とアメリカ人で違うものとはズバリ、「自信」「行動力」です。

私はある企業で人事の部門長もしており、日本人やアメリ人を含めた何百人という数の入社面接や、社員との面談をしてきましたが、この違いは顕著です。アメリカ人はあまり詳細を考え過ぎずに、「取り敢えず」行動します。取り敢えず「やってみる」のです。

何故アメリカ人は管理職にチャレンジするのか?

アメリカ人は自分にやって来たチャンスを逃しません。その時の自分にとって多少能力的に無理があってもチャレンジしていきます。それは何故でしょうか?その理由は二つあります。

1.まだやってもいないことを最初から勝手に色々決めつけない (judgement free)
2.自分のComfort Zone(楽で簡単で結果が分かっている範囲)から出ない限り成長はない

もちろん、全員が当てはまるわけではありません。現状に不満を言うだけで何も行動しない人達もいますが、それは自信がないからです。
皆さんも思い当たることがありませんか?管理職への道が見えて来た時や、管理職へ昇進する機会がやって来た時には、この2点についてよく考えてみてください。

自分の勝手なイメージで「管理職とはこういうものだ」と決めつけていないか?

あなたの今までの人生経験を振り返ってみましょう。「想像していたものと違った」「思っていた印象と全く違う人だった」ということが沢山あったはずです。
コーチングをしていてよく感じるのは、まだ始まってもいないこと、起こってもないこと、起こらないかもしれないことについて、シナリオをAからZまで頭の中で考えて時間を無駄にしている人が多いということです。
これは日本人に本当に多い傾向です。様々なケースを考えて、全てのケースに万全に備えることで、効率的に対処しようと思っているのかもしれませんが、これは効率的になろうとして、非効率的に行動している典型的なパターンです。
読んでいて、あなたもドキッとしませんでしたか?悩むのは物事が始まって何かが起こってからにしましょう。人生は予測を立て過ぎると身動きができなくなり、それだけ不自由になります。

管理職に進むか、平社員のままでいるか、結果が分からない方を選ぶ

コーチングのクライアントさんに、「結果が分からないことをする時、人生が一番楽しくなります。結果が分かり切っていることを続けていても人生にワクワク感は得られません。自分が『怖い』と感じることをしてみてください」と、よく言います。
さらに、「やってみるのが怖いリスト」を作ってもらうこともあります。そして突然「ではそのリストを順番に行動してみてください」とコーチングし、チャレンジを促します。
すると「マジック」が起こります。そう、突然人生が楽しくなって毎日がワクワクしてきます。
それは、成功するかしないか結果が分からない、未知の世界に挑戦するからです。
皆さんにとって結果が分からないのはどちらでしょうか?管理職になることでしょうか?それとも、平社員のままでいることでしょうか?

怖い = 楽しい ?

「楽=楽しい」ではありません。実は「怖い=楽しい」が正解です。
ジェットコースターは何故人気があるのでしょうか?多少「怖い」と思ってなかったらきっと楽しめませんよね?
人生での新しい挑戦も実は同じです。皆さんも身近なところから試しに「怖い」と思うことを体験してみてください。女性だったらもしかしたら「長い髪を切る」というのも怖いかもしれません。一人で行ったことのないお店で食事をするのも少し勇気がいるでしょう。全く今まで着たことのない色の服を着て会社に行くのはどうでしょう? 同僚からの評判が「怖い」かもしれませんよね。
その他にも色々あるでしょう。「今まで話したことがなかった同僚に話しかけてみる」、「ある人に聞きたかったけど、聞けなかった質問をしてみる」、「知人に思い切って頼みごとをしてみる」、「平日のルーティーンを変えてみる」、「一人でpartyに参加してみる」等々。
こうして「怖い」体験を積み重ねていってみてください。やがて大きなチャンレンジが目の前に現れた時、あなたは思った以上に「準備」ができているはずです。
自分が見慣れた景色の中にずっといる限り成長は訪れません。

管理職のオファーがあなたにやって来た意味

人生には自分がすでに”ready”(準備完了)であることしか実は巡って来ません。管理職をオファーされたということは、あなたはそのステージに移る準備ができているということなのです。

管理職の道を選ぶべきか否かの見分け方

もし、管理職になることが「怖い」のであれば、それはあなたが “on the right path”(正しい道)にいるということです。何故なら「怖い」イコール成長のサインだからです。管理職になる選択肢がある時、「怖い」のか、単純に「全く興味がない」のか問いかけてみてください。そしてなりたくない理由は自分の”judgement”(イメージでの決めつけ)ではないか、をもう一度よく考えてみましょう。

部下と関わる上で最も重要なこと

管理職になると部下もできます。私は管理職向けのコーチング・プログラムを企業内で開発・デザインしたことがありますが、全米で、または世界中で部下が上司に求める一番の資質は何だと思いますか?
これは意外に感じるかもしれませんが、”authenticity”なんです。日本語に訳すとぴったりする言葉が難しいですが、「自然体」、「本物」、「飾らない」、「嘘や芝居や建前がない」というところでしょうか。
ということは、つまりあなたはあなた自身のままでいいのです。変に始めから全て何でも知っていて、何でもできるように見せたりする必要や完璧である必要はないのです。自然体でいることで部下から尊敬され、愛され、信頼関係を築くための土台となります。
“authenticity”のない人は、誰からも真の信用をされることはありません。もちろん”authenticity”だけでなく、今まで培ってきた仕事の経験や知識、ある程度のリーダーシップも、部下から尊敬されるためには必要ですが、仕事はまず「人柄」で動きます。

部下のモチベーションを上げ、成長させるコツ

さて、”authenticity”の他に、部下の人達は何を上司に求めるのでしょう? そしてどうやったら、部下が長くあなたに付いてきてくれるでしょうか?
最近ミレニアム世代と言われる人達を、沢山面接したり、面談したりしていますが、彼らが共通して求めるものは二つです。

1.上司からの頻繁なフィードバック
2.成長の機会

世代によって、また人種によっては、1のフィードバックについての考え方、重要度が大分異なっているように感じます。
日本人は特に「褒める」フィードバックが苦手です。はっきり言ってしまうと、「下手」です。アメリカ人や、日本人でも今の世代の人達は褒められて育った人も多いのでしょう。褒められないと途端にモチベーションを失くします。
また、これはソーシャルメディア世代の特徴かもしれません。要は「いいね」がもらえないと不安なわけです。
もちろん、上手くできていない部分を褒める必要はありません。ただ、「部下を呼び出すのは、ミスや上手くできていない部分を指摘する時だけ」にならないように注意しましょう。
そしてこのフィードバックを与える場所についても効果的なやり方があります。

•間違いを指摘する時は他の人がいないところで
•褒める時は、皆の前で

ということです。部下も人間です。プライドがあります。前者については、プライドを守ってあげることができますし、後者については、プライドをくすぐることができます。
2の、「成長の機会」についてですが、やはり若い世代は何でも素早く手に入るテクノロジーと共に育ったせいか、成長がすぐに見えない、測れないと満足できないのでしょう。
また、同じことを繰り返し何年も行いながら、そこに毎回新しい学びと成長を見出す、ということに美意識を持っていません。部下の”learning curve”(学びの速度)に合わせて、さらに成長できるように任せる仕事に変化をつけていきましょう。
部下と一緒に「ゲームをしていく」という感覚です。つまり、一緒に「怖い」と思うことを楽しみながら実験していくということです。部下が「怖い」と思うことは何か、彼らのスイート・スポット(“Comfort Zone”の少し外側)を探して、そこで戦わせることが、常に部下を飽きさせずに成長させていけるコツです。

まとめ

いかがでしたでしょうか?怖くてワクワクしてきたのではないでしょうか?
そう感じたなら、是非、「管理職へのチャレンジ」を受けてみてください。きっとあなたは1年後、今では考えられないような大きな景色の中に自分を発見するでしょう。

Talisman編集部

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