仕事の依頼をする度に、部下からの突き上げが激しく胃が痛いという経験はありませんか。もしくは、部下の待遇やキャリアに対する不満を感じすぎて、お互いにストレスになっている。仕事の話をしていても、通じていないような気がする。相手も自分を理解してくれていないような気がして仕事に行くのがつらくなるなどの経験はありませんか。放っておくとご自身のストレスも部下のストレスも大きくなり、チーム全体の仕事の効率が悪くなります。逆に、ストレスの原因をよく観察し、お互いによりよい関係に持っていくことができれば、高いパフォーマンスをチームで達成でき、部下も成長します。
ここでは、ご自身と部下との関係に絞って、ストレスを軽減する対処法を紹介します。
部下の不満をやる気に変えてストレス軽減
ご自身から部下に対して仕事を依頼する場合にでる、さまざまな部下からのコメント、これらすべてを不満ととらえてもいいのでしょうか。彼らの言葉の内容が、「改善なのか」、「提案なのか」、「質問なのか」、「本当に愚痴だけなのか」をよく理解することが大事です。
もし、改善や提案をしたくて不満に聞こえる言い方をしているのであれば、上司のあなたが、内容を吟味し、いい改善提案なら支持していくことで前向きな対処になります。
たとえ、その提案の実施が、今、難しい場合でも、本当に良い事だと思えば、実施できる方法を部下と一緒に探ることもできます。もし物理的に難しい事情があれば、その事情をよく話をして、部下に理解してもらいましょう。
改善や提案を不満っぽく話す部下は、伝え方がうまくない場合もあります。であれば、伝え方についても上司から提案し、言い方を変えることによって、その社員を前向きな発言をするポテンシャルの高い部下へ育てることができます。
例えば、「その仕事は無駄だと思う」と部下が言ったとしましょう。「無駄って思うんですね。詳しく話してもらえますか」と聞けば、やりたくないからなのか、他に方法があるから無駄だと思うのかを話してくれるでしょう。
仕事に対して質問の多い部下については、原因がいくつかあります。質問の多い部下を時々、面倒くさいなと思うことがあるかもしれません。ですが、ここも分析と対処が必要です。一から十までよく理解していないと動けないタイプの部下や、新人の場合であれば、理解できてないところを辛抱強く伝える努力が必要です。
もし、あなたが、成長してほしくて、すべて説明せずに、あえて自分で考えてほしいから伝えていない部分がある場合は、その旨と、部下への期待をきちっと伝えた上で考えてもらいましょう。
ご自身と部下で仕事において大事にしている指標が違う場合に、部下からの質問が多くなります。例えば仕事の完成度が一番大事だと思っている人は、締め切りがギリギリでも、まだより良い方法を探っている場合もあります。反対に完成度を追求するよりも期日をしっかり守りたい人もいるでしょう。仕事に求める大事な指標が違うとそれだけでお互い、どこか相手の仕事に不満をおぼえる場合があります。その場合は、仕事の細かなゴールをできるだけお互いに見える形で共有することが有効になります。
本当に不満だけに聞こえる場合でも、その不満の中身を面談等でお互いに分析していくことも有効です。結果、単に愚痴で終わったとしても、時間を取って上司に話を聞いてもらったという気持は、部下から上司への信頼を強くします。
そして、彼らの不満や質問が会社の方針をよく理解できていないことから発せられている場合は、上司ができる範囲でしっかりと会社の方向性や現状を説明し、会社の方針やゴールを達成したいからこそ、今、この仕事が必要であると伝えなければなりません。
また、ご自身一人で頑張る必要はありません。実際行っている会社がありますが、会社が大きく方針転換する場合など、スキップレベルOne on One (本人の上司の上司との一対一の個人面談)を設定し、より大きなチームの中での部下の役割を理解してもらうという方法もあります。上司の上司でなくても、例えば、担当人事との面談を定期的に設けることでよく似た効果が期待できます。特別な個人面談は、社員が自分を会社が大事にしてくれているという気持にさせ、本人の会社に対する帰属意識を高めてくれます。
部下のゴールを明確にしてストレス軽減
給与やシフトなど物理的な不満のある部下もいるでしょう。もし、それらの不満を話してくれるのであれば、解決法はあります。
物理的な待遇は、彼らの会社の中でのゴールと大きく結びついています。「今よりももっと分析に近い仕事がしたい」「ボーナスを多くもらえるような仕事をしたい」「特許を申請できる部署に行きたい」「シフトの自由の利く部署にいきたい」。こういった希望を物理的にかなえるには、昇進、異動、役割の追加、より高い技術の取得というゴールを達成することで得られるからです。
であれば、上司は真摯に部下と面談をし、ゴール達成を明確にさだめ、そのために何が必要なのか、いつまでにどうすれば達成できるのかを決めて突き進むという解決法になります。
チーム力をアップしてストレス軽減
部下同士の折り合いが悪いと、上司へのストレスは何倍にもなります。
なぜなら、たいていの場合、折り合いの悪い部下達から、ほぼ同時に不満が上がるからです。もし、そうでなかった場合でも、気づかなければ、どちらかが会社を辞めてしまうという事態につながります。そうなると、物理的な戦力を失い、チームの中での仕事が膨れ上がり、新たな不満が生まれます。
先ずは面談の中で折り合いの悪い理由の分析をすることから始めましょう。本人がすでに分析してきている場合もあると思います。その結果、できることがあるなら、上司が助け舟を出してもいいでしょう。例えば、担当を明確に分ける。逆に折り合いの悪い人と一緒に仕事をする機会をふやして理解を深めてもらうなどです。
部下との関係の項目でも書いたように、仕事に対して追求したい指標が違うという場合もあると思います。基本、相手を変えることはできません。であれば、自分を変えるか、相手を受け入れるか、自分を受け入れてもらうしか方法はありません。そういう気持を持つことも解決の第一歩になります。
また、折り合いの悪さは仕事の効率やゴールの品質に影響します。上司は、常にゴールを明確にすることで、部下同士の足並みをそろえていく事も有効な対処法になります。
トラブルのほとんどは、トラブル自体の事象ではなく、相手の物の言い方にあると言われています。相手の言葉に無用に傷つかないというメンタルの強さを支えていくことも一つの対処法でしょう。
管理職のストレスを軽減する部下とのコミュニケーションの方法
ストレスの中身は正体不明なものではなく、案外細かく分析できるものです。そのためには、現状をしっかり把握することです。現状を把握するには、部下とのコミュニケーションが不可欠です。仕事の内容を伝えるだけのミーティングのみではなく、相手とじっくり話をする個人面談を設定することから始めて、部下が安心して仕事に打ち込めるようサポートします。
個人面談を設定した場合、なんとなく話をするのではなく、記録をつけていきましょう。できれば、部下と共有できるファイルを作ってもらい、面談の結果は部下につけてもらいます。そうすれば、お互いの仕事や個人のゴールの理解に齟齬がなくなります。
また、チームの中を安定させるには、ご自身が会社のゴールやご自身の上司が目指しているより大きいゴールを理解していることが不可欠です。ゴールの理解が不十分ならば、ご自身の上司と面談を持ちましょう。
まとめ
中間管理職を板挟みでストレスが多いポジションと感じるのか、部下とご自身、上司との一つのラインでチームとして機能していると感じるのかは、コミュニケーションの質の高さで変わってきます。
もし、それでも部下とのやり取りで過度のストレスを感じる場合は、人事や、同僚に相談するという手もあります。そして、会社の状況や役割で許されるなら、部下を持たない仕事、インディビジュアルコントリビューターとして活躍することで、一息入れるという方法もあります。
管理職のストレスは、その中身と向き合うことで軽減する方法が見つかります。一つ一つにより良い方向性を自らの意志で決めて、ストレスのコントロール感を手に入れてください。