元アマゾンジャパン合同会社に在籍していたプロコーチがお届けする、中途採用後の新人をどう成長させるか?全8回シリーズ第4回目。
第1回目はこちらから
前回、菅沢は、篠原のなりたい姿を導き出し、現状把握までを行いました。今回は、続きのコーチングになります。
現状とのギャップを聞いて、障害、原因からアクションプランまでを導き出します。前回、同僚で先輩の東堂の事を気にしていましたが、どうやら、目標に対しても気になることがあるようです。
背景:
彼らはオミヤゲドットコムという会社のプロジェクト推進部の社員です。
プロジェクトマネージャーの佐久間はチームメンバーの成長のためにOne on Oneをコーチングで行っています。今回部下の菅沢に新しい中途採用者が入社しました。篠原のミッションはMade in Japan以外の製品をより分けるEXOシステムの改修案のとりまとめです。
主な登場人物:
佐久間省吾 35歳 プロジェクトマネージャー
菅沢莉子 32歳 プロジェクトリーダー 佐久間にレポート
東堂聡志 28歳 プロジェクトリーダー 菅沢にレポート
篠原大輝 29歳 プロジェクトメンバー 菅沢にレポート
<障害、原因からアクションプラン>
※①等の番号が入った箇所については、セッションの後にコーチングのポイント解説をお読みいただけます。
「今日はコーチングでのOne on One の2回目です。前回のサマリーから入りますね」
「はい、えっと自分でサマリー言ってもいいですか?」
「えっと、納得するシステム改修のために、改修ポイントをマトリックス化するということを目標として挙げていました。それにはたたきを作っているということで、達成度は5%くらいでした」
「よく整理して、サマリーしてくれています。この続きをしていきたいですが、その後進捗はありましたか」
「ええっと、たたきは出来上がってきたのですが、まだ、誰の意見も聞いていません」
「すごいですね。今、東堂さんの、①ジェイズグッズカンパニー商品の輸出の準備も手伝ってもらってますけど、時間作ってくれて頑張ってますね」
「ええ、東堂さんの仕事を手伝わせてもらえるのはすごく勉強になります。各種のミーティングにも一緒に入れてもらえることで、各部署の仕事や、各マネージャーさんの役割についてもよく見えるようになってきました」
「そうですか。よかったです。このまま、コーチングの続きをしても大丈夫ですか?」
「では、今日は現状と目標とのギャップについてお聞きしましょうか」
「はい、マトリックスのたたきを部内の皆さんに見てもらえるようなものにして、来月には他部署の各プロジェクトマネージャーさんに説明して、改修内容に当てはめていく形。2ヶ月後にはインドの開発者への提出と交渉に入りたいです」
「わかりました。4週間でマトリックスを他部署に説明して、次の4週間で改修案を当てはめるですね。これについて障害はありますか」
「これって、②精神的なものも障害っていいますか?」
「万全な準備をすることで障害が払しょくするとは思うのですが、反対されたらどうしようかと、思ってます」
「反対されたらどうしようかって、どんな感じですか?」
「数値やデータであれば、みなが納得すると思うのですが、なんとなく怖いというか」
「うーん……。 話をしていて思ったのが、自分は東堂さんが怖いんだと思います」
「と、③東堂さんが怖いんですね。それってどんな感じですか?」
「あの、変な風に取らないでほしいんです。決して同僚の先輩で、メンターまでしてくださっている東堂さんの悪口を言いたいわけではなくて」
「大丈夫です。今、私は篠原さんの鏡であって、上司ではありません。私を鏡だと思って思っていることを話してください」
「お客さまのクレームが入って、急遽インドに改修をお願いした件ですね。確か、英語ではない言葉で『メイドイン他国』が入っていて、お客様に外国製を提供してしまった件」
「はい。商品がベストセラーに入ってしまったことで、SNSで騒ぎになって」
「あの時の対処の速さは助かりました。物流部もいったん、リコール扱いで出荷を止めてくれたし、顧客担当部のフォローも早かったです」
「はい、計画当初、開発側も読み取れない言語で入っていた時の対処を考えていなかったということで、今、インドで考えうる言語の検知方法を考えてもらっています」
「篠原さんのアクションも早かったし、助かりました」
「いえ、ただ、自分はできれば、あの場合もマトリックスに当てはめられる余裕があれば、良かったのにと思っていたんです。対処が遅れるのはよくないですが、なし崩し的な対処だったという気持ちもどこかにあって」
「あの件、まずは、東堂さんに話が行ったことも、ちょっと怖い理由のひとつです。そうだ、自分に情報が集まらないことが不安なんですね。話をしていてわかりました」
「緊急のことになると、東堂さんに話がいくことが不安なんですね」
「原因。うーん。話が戻ってしまうのですが、やはり、改修案の精査の指標がないことでしょうか。緊急であっても動くべきかどうかの指標があってほしい。あと、担当部署として受けるべきという認識が他の部署にはない」
「指標がないことと、担当部署の責任という認識がないことですね。どちらが気になってますか」
「いま、指標は作ろうとしているので、やはり、担当部署の責任の認識ですかね」
「これに関して、篠原さんにできそうなことはありますか」
「そうですね。他部署へのアプローチはもう少し後にして、当面、もし緊急の話がきても、一度私に話をしてくれるように東堂さんに頼む事ですかね」
「⑤東堂さんと話をするということが、アクションプランでいいでしょうか」
「はい、では、次のOne on Oneまでに話をしてみます」
セッションのポイント
1、コーチングは継続して行い、コーチされる側が前に進んでいる事が確認できれば、惜しまず承認の言葉をかけましょう。頑張っていますね。そこまで進んだんですね。などです。
2、障害や原因は、案外物理的な者よりも、精神的なもののほうが解決が難しい場合があります。行動や数字はすべてにおいて、その背景に感情が流れています。丁寧に聞いていきましょう。
3、一見、同僚が怖いというコメントはそれ以上解釈がないように思われがちですが、言葉を丁寧にひらって明かにしていくことがコーチングです。詳しく話をしてもらいます。
4、障害を聞くときには、すべて聞き出すようにしましょう。障害を口にするのは、難しいものなので、潜在意識から出てくる障害は最後に出てくる物が重要だったりします。障害に対する原因も複数聞きます。
5、アクションプランが出たと思ったら、要約して繰り返します。
コーチングのチェックポイント
◦ コーチはコーチを受ける側の前進を常に、タイミングよく、具体的に承認します。
◦ 障害と原因はすべて聞きます。
◦ 曖昧だと思えない言葉でも重要な言葉や文章は、復唱し、深掘りします。
◦ コーチは自分が鏡である事を常に伝え、相手の潜在意識からの言葉を引き出します。
まとめ
中途採用の新人社員にとって、同僚は先輩であっても自分の立ち位置を計る目安となり、時にその差に、自分を追い詰める場合があります。
ただ、そこで、貴方は貴方、気にするなと上司が言ってしまっても解決にはなりません。根気よく自分の内面と向き合う事をコーチングで実施し、やるべき事に邁進できるようにサポートしましょう。
次回はアクションプランの実施確認からになります。篠原は東堂と話しができたでしょうか。
最後までお読みいただきありがとうございます。
コーチングや今回のポイントのご質問など、ぜひFacebookやメールでメッセージください。お待ちしております。
*この物語に登場する人物名、団体名、システム等はすべて架空のものです。