転職先としての金融業界の魅力とは?市場の現況とポイントも解説

転職先としての金融業界の魅力とは?市場の現況とポイントも解説

金融業界は市場スケールも大きく、転職市場の中で人気が集まる魅力ある業界です。コロナ禍において一時期は、金融業界内でも採用意欲が低下していた企業も多いですが、徐々に求人数も回復傾向です。

しかしひとくちに金融といってもさまざまな分野が存在あり、共通した魅力と個別の魅力があります。この記事では、金融業界への転職を検討しているみなさんに向けて、金融業界の魅力や向いている人材像、転職活動のポイントなどをわかりやすく解説していきましょう。

金融業界とは?

まずはそもそも金融業界とは、どのような企業群を指すのかを確認しておきましょう。

「金融」の意味とは、お「金」を「融」通することです。端的にいえば、お金が必要な人に融資して利息を受け取る商売といえるでしょう。

そして、金融にも「間接金融」と「直接金融」があります。間接金融は人びとからお金を預かって、必要としている企業や事業主に融資し、融資先から得る利息と預金者に支払う利息の差が利益となります。このように間接的に利益を上げるのが、間接金融と呼ばれる由来です。

直接金融は、企業などが発行する社債や株式などの有価証券を販売して資金調達をすることを指します。投資家が企業に直接出資することから、直接金融と呼ばれます。直接とはいえ証券会社が間に入り、仲介の手数料で利益を得るのが証券会社のスキームです。

もちろん、銀行と証券会社のほかにも金融業界には多くの分野が存在します。銀行と近い業態では信用金庫や信託銀行などがあります。ほかには生命保険会社や損害保険会社、信販会社やクレジットカード会社、リース会社、資産運用会社、政府系金融機関、不動産金融、消費者金融、ファンド、外資系投資銀行などです。新しい流れとしては、フィンテックやキャッシュレスなどの金融とITを結びつけたサービスを展開するIT系金融企業が台頭してきました。

従来の金融業大手も彼らに影響を受けて、新しいビジネスモデルにトライし始めています。そういう背景のもとで、金融業界に求められる人材も多様化しているのです。

転職志望者にとっての金融業界の魅力

転職志望者にとっての、金業界全般の魅力として挙げられるものは「年収・福利厚生」と「専門性」です。個々の項目を掘り下げてみましょう。

年収・福利厚生

金融業界の第一の魅力は、何といっても高水準の年収が得られることや福利厚生などの待遇面ではないでしょうか。
一般的な事業会社の年収相場は400〜600万円といわれていますが、金融業界の場合は500〜800万円といわれており、他業界と比べて高い年収が期待できます。

なぜ、この業界の年収は高い傾向にあるのでしょうか。金融業界が高収入である理由としては、まず、金融は規制業種なので、競争環境はほかの分野と比べると、比較的穏やかであることが挙げられます。

一般的に、参入障壁が高い業種ほど、高年収になる傾向があるのです。なぜなら、競争が激しいほど商材やサービスの価格降下圧力が働き、人件費が抑えられることになります。一方、競争があるにしても比較的緩やかである分野は、高い利益率を保つことができます。結果として、そういう業界は競争が激しい業界よりも相対的に年収が高くなるということです。金融以外では、参入障壁が高い製薬業界や、規制業種のテレビ業界、地域独占性が高い電力およびガス業界などは、いずれも高年収です。

また、金融関連の業務は専門性が高いので、優秀な人材を確保するためにも通常の事業会社よりも良い条件を提示する必要があることも、業界の高年収に一役買っているでしょう。

金融業界内でも、メガバンクや外資系投資銀行、PEファンドなどであれば年収はさらに高くなり、企業単位の平均年収で1千万円を超えるところも珍しくありません。やはり安定的に毎月高額収入が得られるということは、大きな魅力だといえます。

また、金融業界にはさまざまな手当や福利厚生などの社員待遇が良い企業が多くみられます。事業会社に比べると、残業や休日出勤なども、はるかに少ないのではないでしょうか。

さらに産休や育休も取りやすいと傾向にあります。退職金制度も充実しているようで、年収の高さとともに福利厚生面でも魅力的でしょう。

専門性

第二の魅力は専門性です。金融知識をはじめ、さまざまな専門知識が身につくことを意味しています。例えば、一般の企業ではなかなか磨けない会計や運用、投資だけ出なく、経営や財務などの知識やスキルをブラッシュアップできます。

このスキルを身につけることで、経済の流れを推測するスキルや営業のノウハウなど、さまざまな系統の知見を深められるでしょう。

銀行であれば、昇格試験やさまざまな資格のために学ぶ機会も多いです。もちろん、仕事の中で金融商品を扱うので、知識をしっかり身につけなくてはなりません。つまり、働きながら生きた知識を得て磨けます。これは大きな魅力ですよね。

オフの時間にも勉強をしなくては、ついていけない部分もあるかもしれません。そういう大変な面も多いですが、お金に関するスペシャリストになれば、将来の転職や起業、自身の人生設計にも役に立ちます。

以上があくまで、金融業界全体としてのほぼ共通した魅力です。業界内の各分野においてはもちろん、さまざまに異なる部分があります。ここから先は、金融業界の中でも分野別の魅力について目を向けてみましょう。

銀行の魅力

銀行の魅力は、前述の金融業界の基本的な魅力である年収や福利厚生、専門性などに大変優れていますが、そのほかにも以下のような魅力があります。

  • 中小企業を支援できる
  • 個人の夢を応援できる
  • 多くの経営者と接することができる
  • 地域社会に貢献できる
  • グローバルな仕事に携わるチャンス
  • それぞれの項目を、詳しく解説していきましょう。

    中小企業を支援できる

    国内の企業は99%以上が中小企業です。そして、中小企業の活躍を資金面でサポートしている立役者は銀行です。

    融資担当者は、その中小企業の過去の業績や将来の構想、経営者の人間性などから融資を行うかどうかを総合的に判断します。規模の小さな企業でも、急成長の可能性は高いことが調査によって判明すれば、そこに将来性を見出して高額の融資を決めることもあります。

    もちろん単に融資だけではなく、銀行の持つノウハウから戦略の助言や良質な関連業者を紹介するなども含めてのバックアップをすることも珍しくありません。そういった、銀行の英断ともいえるバックアップによって、小さい企業が飛躍的に業績を伸ばし、優良企業の仲間入りを果たすこともあるのです。

    個人の夢を応援できる

    銀行は、融資という業務を通してさまざまな個人の夢を実現するお手伝いをすることができます。脱サラして長年の夢である起業をしたい、マイホームを建てたい、お店を開きたい、社会人留学がしたい、マイカーを手に入れたい、不動産投資をしたいなど夢の種類や規模はさまざまですよね。

    しかし共通することとして、手元に資金がなければ叶いません。銀行は個人の夢が資金的に実現できない場合に、返済能力さえ確認できればそのためのお金を融資します。 このように、前向きに資金が必要な人にそれを提供する仕事は、個人の夢を応援できる魅力ある仕事と感じる人も多いのです。

    多くの経営者と接することができる

    融資担当者は、企業経営者と直接話すことができる機会が多いのも魅力です。融資を行うにあたって担保を取ったり、経営者の人となりを確認したりしなければならないので、若手社員であっても経営者と直接向き合う機会は多いのです。その企業の成功の秘訣や将来のビジョン、独創的な考え方やビジネス哲学などを経営者から直接聞けるのは、金融業界においてさえ他分野ではそうそうありません。まさに、銀行員ならではの役得です。

    実際にたくさんの優秀な経営者に出会って刺激を受け、経営のヒントを学び、視野が広がって自ら起業する銀行員もいます。

    地域社会に貢献できる

    銀行の融資が功を奏して成長した企業が、ご当地のヒット商品を生み出したり観光資源を増やしたりなどで地域を活性化し、新たな雇用を生み出すことがあります。銀行の英断による地域経済の盛り上がりが重なって、日本全体の景気に少なからず影響を与えることもあります。地域社会に貢献したい人は、そういった銀行の仕事に大きな魅力を感じることができるでしょう。

    グローバルな仕事に携わるチャンスがある

    メガバンクの場合は日本だけに留まらず、海外拠点を有しているため、グローバルな仕事に携わるチャンスがあります。

    海外拠点に赴任すれば、現地に進出した日本企業のサポートや、現地企業に対してのアプローチが可能です。もちろん国内勤務であっても、海外戦略を視野に入れる企業があれば海外拠点と連携して、現地での法人立ち上げやビジネス展開、外国為替に関するサポートを行うなどの仕事ができます。

    いずれにしても、国内案件よりもスケール感がある仕事に取り組めます。特に現在の日本ではマイナス金利の影響もあり、国内で融資をしても収益が少ないため、メガバンクは海外案件に注目しています。海外で活躍したい人は、メガバンクにおいてチャンスがあるといえるでしょう。ただしそのためには、ビジネスレベル以上の英語力を持つ必要があります。

    保険会社の魅力

    保険会社の魅力を挙げると、年収や福利厚生、専門性は金融業界の中でもより魅力的です。それにプラスして、以下のような魅力があります。

  • 安定している
  • 離職率が低いため落ち着いて働ける環境である
  • 業界自体絶対になくならないビジネスである
  • コンサバなイメージを持たれがちな業界だが、実は新しくデジタル化を進めているため、潤沢な予算の中でいろいろと新しい施策ができる
  • 組織がしっかりしている
  • ワークライフバランスがとりやすい
  • 面白い保険の商品を世の中に広めたい
  • 社会貢献をしている保険会社が多い
  • 自分が何かしらのタイミングで保険に助けられたことがあるので、保険会社で働きたい
  • 証券会社の魅力

    証券会社ならではといってよい、大きな魅力は以下の2点です。

  • 成果が報酬に直結する
  • 多様なキャリアの方向性がある
  • 個別に触れておきましょう。

    成果が報酬に直結する

    証券会社は基本給と別の部分で、個人の営業成績がストレートに反映されるインセンティブ形式、あるいは完全歩合(フルコミッション)制などを採用しているところが多く見られます。

    努力して成果を勝ち取った分だけ自身の収入が増えるので、20代でも高い年収をもらう場合も多々あります。それがすべてではないにせよ、ストレートな成果報酬が仕事に向き合うモチベーションを高められる魅力となっているに違いありません。そのために経済や金融そのほか必要な勉強に励み、結果を出して顧客に喜んでもらう結果が出れば、自分に大きく返ってくるのです。その結果、顧客がまた金融商品を購入したり、新規客を紹介してくれたりして、さらなる営業成績の向上につながったりすることがあります。

    そのようなポジティブなスパイラルが仕事の楽しさを増し、自身の成長の糧ともなるでしょう。

    多様なキャリアの方向性がある

    証券会社のキャリアはさまざまです。営業職以外にも株価チャートや為替の変動などの分析スキルを身につけて、ディーラーやトレーダーになる道もあります。また、株価推移や経済動向を資料としてまとめ、社内外に情報を発信するアナリストのキャリアパスもあるでしょう。

    どの選択肢も、相当な努力が必要になることは間違いありません。しかし、自身の興味や適性に応じてキャリアを柔軟に選べるのは、証券会社の魅力といえるでしょう。

    外資系投資銀行の魅力

    転職希望者に非常に人気が高い外資系投資銀行は、激務ともよくいわれますが、それを押してでも頑張れる魅力としては、以下の3点が挙げられます。

  • ずば抜けた高収入
  • スケール感がある仕事
  • 卓越した専門性
  • 個々の内容を見ていきましょう。

    ずば抜けた高収入

    比較的高収入である金融業界の中でも、とりわけ外資系投資銀行のそれはずば抜けています。正確な公開資料はないにせよ、若くして1千万円超えのビジネスパーソンが珍しくありません。

    インセンティブの高さも外資系の中でもトップクラスで、場合によっては年間のベースサラリーに匹敵するほどの高いインセンティブが支給されるケースもあります。また、外資系の御多分に漏れず同業内での転職も多く、同じ役職クラスもしくは上の役職で、年俸が高いところに移っていくような転職がデフォルトです。

    スケール感がある仕事

    有名企業のM&Aや投資のアドバイザーになるため、動かすお金も大きく、なかなか体験できない大きいスケールを感じて仕事ができます。

    たとえばある企業が別の優良企業のM&Aを検討している場合に、対象企業の企業価値の調査や、社債の発行などのM&Aの資金調達を含めた包括的なサポートを行います。また、仕事の環境や取引先関係もグローバルであるというスケールの大きさもあるでしょう。

    卓越した専門性

    扱う案件の内容から、M&Aや資金調達、財務や税務、投資やその周辺の領域に関して、卓越した専門性が身につくでしょう。
    ほかにはプレゼンスキルも磨かれ、またオフィスワークの代表的なツールであるワード、パワーポイント、エクセルなどは激務の中でプロ並みのスキルが身につきます。このようなスキルが磨かれることで、転職の際にアドバンテージが増すでしょう。

    金融業界に向いている人材とは?

    転職先として人気の金融業界ですが、当然向いている人とそうでない人がいます。

    分野ごとで例を挙げると、証券会社の営業の場合であればリスクがつきものの金融商品というものを販売するからには、時として強引に押し切る胆力が求められるでしょう。また、時には顧客に損を与えるかもしれませんが、いちいち気にやむような線の細さはネックになります。人を説得する能力がある人や、度胸が座った人に適性があるでしょう。

    また、保険会社の営業の場合、保険は万が一の備えとしての性質が強いものです。顧客のフォローをきめ細やかにおこなって関係性を強固にしたり、商品研究や社会の動きについて学び、顧客に有益な情報を提供したりする勤勉さが求められます。
    地道に努力を積み上げる、忍耐力や継続力のある人が向いているといえるでしょう。

    さらに、以下に挙げる3つの特徴を持つ人は、金融業界のどの分野においても活躍できるといえるでしょう。

  • 他者との交流が得意
  • 情報収集力に長けている
  • 数字に強く金銭感覚が鋭い
  • それぞれを詳しく解説しましょう。

    他者との交流が得意

    信頼関係が生命線となるのが金融業界です。投資をしたりお金を預けたりするなら、窓口となる人が信頼できるかどうかにかかってくる場合も多いものです。外向的で交流することが上手な人は、縁を持った知り合いがどんどん顧客になること珍しくありません。そういう人はコミュニケーションスキルやヒューマンスキルが高く金融業界に向いているといえるでしょう。

    情報収集力に長けている

    日頃から日経新聞や関係する地方新聞、ネット情報などを日々チェックしてまめに情報収集をしている人がいるでしょう。そういう人は、社会の動向や経済の推移の底流を自分なりに敏感に感じることができます。多くの情報の裏付けられた推測や判断には説得力が加わるものです。そういう人は金融業界に適性があります。

    数字に強く金銭感覚が鋭い

    金融業界で働く以上は、どの企業のどんな職種においても、数字やお金を扱うことになります。数字に強い人でなければ、良いパフォーマンスは期待できません。また、お金に関して日頃からどうすれば得か、どのように損を避けるかという視点を持っている人がいます。彼らは金融業界の営業や、ファイナンシャルプランナーなどの専門職にも向いているといえるでしょう。

    金融業界へ転職する際のポイント

    最後に金融業界に転職する際に気をつけておきたいポイントを紹介しておきましょう。まずは、金融業界の転職市場の現況について触れておきます。

    コロナ禍を通しての金融業界転職市場の現況

    金融業界全体の転職市場の状況は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響によって、一時は大幅に減少しました。しかし、徐々に持ち直して求人数も回復傾向にあり、企業の採用意欲も戻ってきています。とりわけ金融業界の中でもフィンテックおよびキャッシュレス関連の企業は、いち早くWeb面接の導入に踏み切って優秀な人材を確保しつつあります。

    またコロナ禍の不安定な状況において保険の見直しニーズが増加し、保険業界の採用意欲も回復しました。証券会社や銀行においても、本来の採用活動に戻りつつある状況です。

    金融業界の特徴を踏まえた転職活動のポイント

    従来は他業界に比べて、新卒採用を重視してきたのが金融業界です。しかし、ビジネスモデルの多様化が反映して、変化が訪れています。特に保険業界をはじめとして、最近では他業界のスキルをもった金融業界未経験者の中途採用を積極的かつ戦略的に行っている企業が増えています。

    また、マネージャークラスの人材やITに関しての知見がある人材を求める企業が多いのも事実です。そのためITスキルを持っていることも、今後のデジタル化がすすむ業務の変化に対応できる人材としての価値をアピールできるでしょう。マネジメントの経験があれば有利ですが、なくてもマネジメントを志向し、スキルをスクールや独学で学んでいる最中であれば、アピールポイントに挙げられます。

    ほかには、英語力に磨きをかけておくことも、グローバル化する経済では有利に働くでしょう。TOEIC800超えのビジネスクラスの英語力があれば、活躍の舞台は多少なりとも広くなるでしょう。

    さらに、金融業界への転職を想定した場合に、応募先企業があなたの現職の業界と関わっているのであれば、現職で深めた専門性や知見が強みになります。ちなみに、金融業界からの転職先としては、コンサルティングファームやメーカーなど、他業界に転職するケースも多いようです。

    それだけ金融業界で磨いた知見やスキルは、他業界でも活かせるということの証しといえるでしょう。そういう意味では、一社に止まらずにキャリアアップしていく外資系的な考え方を持つ人にも、金融業界は転職先として大きい魅力があるといえます。

    まとめ

    金融業界への転職という前提で、業界の魅力や分野ごとの魅力を紹介し、転職活動のための参考情報を解説しました。
    デジタル化の波で変わりゆく金融業界では、業務やビジネスモデル、戦略が多様化しているので、転職志望者にとって現職のスキルがアドバンテージになりえる環境です。

    そこに加えて、ITやマネジメントの知見やスキル、あるいはそれらの習得の意欲を具体的にアピールすることが、転職活動にプラスとなるでしょう。

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