ITコンサルタントの転職志望者が知っておくべき6つの情報

ITコンサルタントの転職志望者が知っておくべき6つの情報

転職先を探しているみなさんは、人気があるITコンサルタントなどについて検索することもあるかもしれません。ITコンサルティングという職種は、クライアントの課題解決にあたってシステム開発の上流工程から提案するので、SIerの仕事と一見似ています。

しかし、実際のビジネスモデルや業務内容は大きく異なっています。また、同じコンサルティングでも、経営コンサルティングや戦略コンサルティングとはまったく違うアプローチです。やりがいがありそうで年収条件も良く、転職やキャリアアップの目標とする人も多いですが、仕事の実態がわかりにくいですよね。

今回の記事では、そんなITコンサルタントへの転職志望者にとって知っておくべき情報について解説します。

ITコンサルタントとは?

ITコンサルタントとは、ひと言でいえば「ITの活用による企業の経営課題の解決策を提案し実行を支援するスペシャリスト」です。クライアント企業の経営戦略に沿ってIT戦略を構築し、システム導入の提案やシステム活用法の最適化を通じて、企業経営をサポートします。業務内容は解決策としてのシステム開発プロジェクトのリソースの手配や進捗管理、運用テストなど多種多様です。

デジタル技術によって企業の課題解決に取り組むITコンサルタントは、ITに関する専門家であるだけではありません。その上でマーケティングによる環境分析なども求められ、ビジネスへの深い理解が必要です。また、企業の業務に関するパッケージソフト(ERPやCRMなど)の導入をサポートして、業務の基礎体力的な面を強化するのもITコンサルタントの役割です。そういう面を指してアプリケーションコンサルタントと呼ぶこともあります。

ここからは、戦略コンサルや経営コンサルとの違い、SIerとの違いについて触れておきましょう。

戦略コンサル・経営コンサルとの違い

もともと戦略コンサルタントとITコンサルタントは、外資系コンサルティングファームによって日本にもたらされました。その中で戦略コンサルタントは、企業の経営戦略そのものを対象としています。

例えばM&Aによる企業統合のような、経営のトップレベルの課題に取り組むような案件がメインです。クライアントは大企業が多く、複数のコンサルタントでチームを組んでプロジェクトを推進することが多いです。業務内容以外にも、財務や人事面まで企業の事情を把握し、細部に至るまで情報を収集・分析した上で、戦略を構築します。

ITコンサルティングは経営戦略そのものがコンサルティングの対象ではありません。あくまでも現行の経営戦略にもとづいて、経営課題や業務効率化などをITシステムの導入、活用で解決するアプローチを取ります。この点で、出発点が異なるでしょう。

次に、日本に従来から存在していた経営コンサルタントは、クライアント企業の経営上の問題を扱います。業績や財務状態、人事、組織などを含めた経営全般に渡って、各分野のスペシャリストと連携をとりながら全方位的に経営状態の改善を進めていきます。

特定のテーマにフォーカスしたプロジェクトによるコンサルティングではなく、経営顧問のような立場です。日常的に経営状態をチェックし、適宜アドバイスを行うようなスタイルが多いです。一方、ITコンサルティングは明確なテーマを掲げ、それをITの導入というプロジェクトで解決を目指すコンサルティングなので、方法論が大きく異なります。

SIerとの違い

SIer(エスアイヤー)とはSystem Integrater(システムインテグテーター)の略称です。クライアント企業からシステム開発の依頼を受けて、開発の実務を行う企業を指します。SIerとITコンサルタントは混同されることが多いですが、ビジネスモデルそのものが違います。SIerはクライアント企業のニーズに応じたシステム構築を行い、対価を得るビジネスモデルです。

一方ITコンサルタントはコンサルティングファームに所属し、クライアント企業の課題に対して、解決するためのIT導入の提案と実行支援に対して対価を得るビジネスモデルです。クライアントにリクエストされたシステムを開発するのと、クライアントの課題を分析して解決するためのシステムを提案・開発するという違いがあります。

また、報酬の計算方法も異なります。SIerは「人月単位」(何人が何ヶ月従事するか)で計算され、ITコンサルタントは「プロジェクト単位」で交渉し決定されます。業務内容についてはいずれも上流工程から関わりますが、その内容は同じではありません。SIerが行うのはクライアント企業からのRFP(Request for Proposal/提案依頼書)を受けてのシステム要件定義からです。ITコンサルタントはそれ以前の段階、つまりどういうシステムを導入して業務はどうすべきかまで掘り下げた課題解決の提案から入ります。

また、SIerはクライアント企業の、情報システム部門とのやりとりが中心です。一方、ITコンサルタントは情報システム部門以外にも、人事や営業、企画、製造など業務の現場とのやりとりも必要であり、カウンターパートが経営幹部となることも珍しくありません。SIerにおいてSE(システムエンジニア)としてスキルと経験を身につけ、ITコンサルタントに転職するケースも多いです。開発の現場を経験していると、課題やボトルネックを見極める能力が養われます。それはITコンサルタントとしての仕事でも、強みとして活かせるでしょう。

ただしITコンサルタントはクライアント企業の各部門の業務やソフトウェア、ハードウェアまで考慮して包括的に課題解決に取り組む必要があります。広範な知識と経営視点が求められる高度な仕事です。

ITコンサルの仕事内容一覧

ITコンサルタントの仕事内容は大変幅広いです。カテゴリで分けると、次のようになります。

  • IT戦略立案・導入支援(基本カテゴリー)
  • DXコンサルティング(最新カテゴリー)
  • パッケージアプリケーション導入支援(事業会社対象)
  • サプライチェーン・マネジメント(製造業対象)
  • ITデューデリジェンス(中小企業の事業再生支援)
  • サイバーセキュリティ(大企業・官公庁・地方自治体向け)

個別に見ていきましょう。

IT戦略立案・導入支援(基本カテゴリー)

IT戦略の立案はITコンサルティングにおける基本です。クライアント企業の経営戦略を大前提としてそれに則り、全方位的な観点から最も有効と考えられるIT投資を提案・挿入の支援を行う仕事です。IT戦略策定にあたっては、企業が置かれている環境分析や現状分析、課題の抽出を経て解決に有効なITの導入方法を検討します。

どういう技術を使い、どのような結果を導くかが固まっていなければ、重複した投資やシステムの見直しが必要になるなど、無駄なコストが発生するリスクがあります。システム化を計画的に進める中で、計画段階では見えなかったリスクの顕在化や、ステークホルダー間での利害の衝突などのトラブル発生も起こりがちです。その場合は、ITコンサルタントが対応します。

また、システムの導入に伴って必要となる、組織変革や業務プロセスの変更についても備えておかなければなりません。

DXコンサルティング(最新カテゴリー)

DX(Digital Transformation)は今や国を挙げての、産業界の一大ムーブメントとなっています。とはいえ、中小企業ではなかなか自社の力だけでは進めるのが困難なのも実情です。そういう企業のニーズにITコンサルティングファームが応えて、DXコンサルティングが生まれています。デジタルと経営改革の掛け算を、ITの知見とコンサルティング経験に基づきサポートする案件です。

具体的にはAIやIoT、RPA、場合によってはVRやAR、あるいはブロックチェーンなどの先端技術、デジタル技術を活用し、新しい時代に対応できるビジネスモデルの確立をサポートします。DXは、とりわけ中小企業にとってはまだ見通しがあり一巡するまでは相当な需要が期待できます。

パッケージアプリケーション導入支援(事業会社対象)

主に事業会社を対象に、パッケージアプリケーションの導入をサポートする仕事です。パッケージアプリケーションとは、文字通りパッケージ化されたアプリケーションを意味し、代表的なものはERP(Enterprise Resource Planning:統合基幹業務システム)やCRM(Customer Relationship Management:顧客管理システム)などがあります。

ITコンサルタントは、特定の業務や業種で汎用的に活用できるアプリケーションの中からクライアント企業に合うものを提案します。そして、導入によって生じるさまざまな変化に対する対処も含めてサポートを行います。

サプライチェーン・マネジメント(製造業対象)

主に製造業を対象に、サプライチェーンの効率化をアレンジ、サポートする仕事です。サプライチェーンとは製品の原料や部品調達から製造、在庫の管理や配送、販売、消費までの全体の一連の流れを指します。サプライチェーンは各プロセスが、別個に存在するのではありません。全体の効率化をねらい、一連の流れとしてマネジメントするのがサプライチェーン・マネジメント(Supply Chain Management:SCM)です。

サプライチェーン・マネジメントはサプライチェーンのボトルネックとなる要因を、在庫・コスト・リードタイムという3つの領域それぞれで見極めることがスタートラインとなります。ITコンサルタントはボトルネック箇所を特定し、具体的な改善目標を設定します。その上で現場の状況をリアルタイムで把握できるSCMシステムの構築をサポートし、生産性の向上を後押しします。

ITデューデリジェンス(中小企業の事業再生支援)

ITデューデリジェンスとはM&A(企業の合併・買収)を実行する際に行う、M&Aの対象となる企業が保有するIT資産の資産評価算定を意味します。システムをそのまま使用、または一部流用する場合と、リプレイスして新規システム導入を実行した場合との費用対効果の分析を行います。これは、主にM&A実行可否の判断や実行時の具体案の基礎的な判断の材料としての役割を果たします。

また、対象企業の情報システムやIT機器・設備について、M&A成立後の維持管理コストや、システムの適切な稼働のために必要となるコストを算出し、買収価格の決定に役立てます。ITデューデリジェンスには、システムの維持管理のコストも関係します。エンジニアとして保守運用に携わった経験があるコンサルタントは、その知見が活かせるでしょう。

サイバーセキュリティ(大企業・官公庁・地方自治体向け)

ITコンサルタントの仕事で近年重要になっているのは、情報セキュリティ対策(セキュリティコンサルタント)です。IPA(独立行政法人情報処理推進機構)の「サイバーセキュリティ経営ガイドライン」によれば、情報セキュリティの取り組みの中で、インシデント対応やサイバー攻撃対策は強化が必要とされています。

サイバーセキュリティは、企業の経営視点からセキュリティ対策を実施する提案をし、導入から継続的な稼働まで一貫して行うことが求められます。また刻々と変化・進化するサイバー攻撃の脅威は、折々の流行に合わせて傾向を知ることも必要です。インシデントに応じた対策の提案が求められ、最新のメソッドの把握やその技術的な効用をクライアントが理解できるように説明する能力も必要です。

ITコンサルタントのやりがいや年収事情

まず、ITコンサルタントの「やりがい」について解説します。ITコンサルタントは業務の範疇が広い上に専門性が高いために、普段の研鑽の努力が欠かせないことや、折に触れてハードワークになることもあります。それでも、多くのITコンサルタントが「やりがい」と感じるのは、主に以下のような点です。

  • 自身の提案が形になる
  • 知見を深められる
  • 企業の経営陣の考え方に触れられる

それぞれを見ていきましょう。

【自身の提案が形になる】
クライアント企業の事情は千差万別であり、ITコンサルタントの提案は前例のない解決策を提案することも珍しくありません。ゼロから考案した策が形になり、クライアントの課題の解決につながれば、コンサルタントとしての自信と喜びが得られるでしょう。

【知見を広げられる】
ITコンサルタントが案件で関係する業界、業種は多岐にわたるため、コンサルティングに取り組むにあたっては、各企業のビジネスモデルや業界の現状や問題点などを研究しなければなりません。その結果、未経験分野の案件をこなすごとに自身の知見も広がり、ノウハウが蓄積されていくことは、ビジネスパーソンとしての醍醐味になります。

【企業の経営陣の考え方に触れられる】
ITコンサルタントは経営陣がカウンターパートになることが多く、彼らの考え方や生の声に触れる機会が多く得られます。提案が良い成果を上げれば、彼らからの称賛の声を直接聞く機会もあるかもしれません。

常に高度な判断を迫られている人たちの、俯瞰的で大局的な発言や考え方に触れることができます。一般的な職種では、そういったハイクラスのエグゼクティブに近づく機会はあまりありません。日常的に、大変貴重な出会いを経験できるのも、ITコンサルタントならではの得難い喜びでしょう。

次に、ITコンサルタントの年収について見ていきましょう。公的なデータとして、経済産業省の「IT関連産業の給与等に関する実態調査結果」でIT人材の職種別の平均年収が発表されています。それによれば、ITコンサルタントの平均年収は928.5万円となっています。IT人材の職種別で第1位の高額年収です。

第2位はプロジェクトマネージャーの891.5万円、第3位はWeb関連のプロデューサー/ディレクターの792.9万円です。平均年収で928.5万円ということは、かなりの人数が年収1,000万円超えだと想像できます。仕事は高度であり、日々の研鑽とハードワークを辞さない決意は必要ですが、それに見合う報酬があるというのは魅力でしょう。
出典:IT関連産業の給与等に関する実態調査結果|経済産業省

主要なITコンサルティングファーム一覧

主要なITコンサルティングファームを、外資系と日系に分けて紹介します。

外資系ITコンサルティングファーム一覧

  • アクセンチュア株式会社
  • 日本アイ・ビー・エム株式会社
  • 日本オラクル株式会社
  • PwCコンサルティング合同会社
  • KPMGコンサルティング株式会社

<アクセンチュア株式会社>
アイルランドが本拠地である世界最大級コンサルティングファームの日本法人です。あらゆる産業を対象にITシステムの開発・導入・運用や業務改善、広告プロモーションなどのコンサルティングサービスを展開しています。

<日本アイ・ビー・エム株式会社>
アメリカの世界最大級IT企業の日本法人として、ITコンサルティング、ビジネスコンサルティング、アウトソーシングなどで経営をサポートします。近年はAIやクラウド、IoTなどの先端技術を駆使し、経営とITの融合を目指す先進的コンサルティングを展開しています。

<日本オラクル株式会社>
アメリカのオラクル・コーポレーションの日本法人です。1985年の日本上陸以来、マーケットにハードウェア製品とソフトウェア製品を送り出す事業と並行して、コンサルティングの分野でITシステム導入のサポートや経営課題の解決、教育事業などを展開しています。

<PwCコンサルティング合同会社>
世界的コンサルティンググループ、PwCグループの一翼を担う、日本最大規模のコンサルティングファームです。グローバルベースで蓄積されたデジタルノウハウで、クライアントが直面する経営課題の解決に取り組み、国際競争力を強化するサポートを展開します。

<KPMGコンサルティング株式会社>
オランダに本部を構えるKPMGインターナショナルの日本におけるメンバーファームのひとつです。デジタル技術をビジネス変革につなげるための、世界トップレベルのテクノロジーを武器に、予測されるリスクを見極めてクライアントの将来の企業価値を高めます。

日系ITコンサルティングファーム一覧

  • アビームコンサルティング株式会社
  • フューチャーアーキテクト株式会社
  • 株式会社エヌ・ティ・ティ・データ経営研究所
  • 株式会社クニエ
  • 株式会社日立コンサルティング

<アビームコンサルティング株式会社>
外資系と間違われることもありますが、日本発でアジア、アメリカ、ヨーロッパに支店や子会社を展開するグローバルコンサルティングファームです。ITコンサルティングとマネジメントコンサルティング、ビジネスプロセスコンサルティングの3つの柱を持っています。

<フューチャーアーキテクト株式会社>
中小企業から大企業まで、クライアントのビジネスの本質を理解した上で経営課題を共有し、ITコンサルティングを提供するファームです。先端技術を駆使したシステムを開発・導入することで、課題解決を行うコンサルティングサービスを提供しています。

<株式会社エヌ・ティ・ティ・データ経営研究所>
システム開発を担うNTTデータが母体で、そのブレインとしてIT戦略立案や新規事業の立ち上げ支援などのコンサルティングに特化したコンサルティングファームです。NTTデータの営業力で案件を獲得できるのが強みであり、プロジェクトを安定的にこなしています。

<株式会社クニエ>
NTTグループの中で専門性の高いITコンサルティングファームです。扱うプロジェクトの6割はグローバル案件といわれています。日本企業の海外進出を支援するプロジェクトや、新興国の成長を支援するプロジェクトを手がけています。

<株式会社日立コンサルティング>
日立製作所の完全子会社で、日立グループの技術力とコンサルティングによって培われたノウハウを駆使して、再現性が高いコンサルティングを展開します。同社はITコンサルティングとビジネスコンサルティングに特化し、システム構築は母体の日立製作所が担います。

ITコンサルタントになるには

ITコンサルタントになるために必要な資質や、考え方を紹介します。

ITコンサルタントに求められるスキル

ITコンサルタントには、多くのスキルが求められます。主要なものを挙げると以下のとおりです。

  • ヒアリングスキル
  • コミュニケーションスキル
  • 提案力
  • 論理的思考力
  • ITの全般的な知識

それぞれを補足します。

【ヒアリングスキル】
クライアントの課題の本質を見極めるのが、ITコンサルティングの出発点です。多くの場合クライアントが解決を望む課題は、表面的な結果レベルのものです。それらを解決するにはそれが起こる元、つまりボトルネックを特定する必要があります。そのために、クライアント企業のキーマンたちからのヒアリングによって、ボトルネックの可能性がある事象を絞り込み、調査と分析で特定しなければなりません。調査分析を活かすためには、前段階のヒアリングによる有効な情報の聞き出しが不可欠です。

【コミュニケーションスキル】
ITコンサルタントは多くのさまざまな立場の人たちとコミュニケーションを、日常的に取ります。社内の関係スタッフやクライアント企業の人たちはもちろん、パートナー企業の人たちも含めて多くのステークホルダーと良好な関係を維持することが、提案の説得や実施後の成功につながります。そのため、コミュニケーションスキルはなくてはならない能力です。

【提案力】
ITコンサルタントの仕事の真骨頂ともいえる部分が「提案」です。提案の精度の高さによって成果の良し悪しが決まってきます。そして、提案力とひとくちにいっても、良い提案をするためにはデジタル技術に対する造詣の深さ、最新の情報へのキャッチアップ、クライアント企業の現状に対する徹底した理解などの裏付けが必要です。

【論理的思考力】
ITコンサルタントに関して論理的思考力(ロジカルシンキング)は自身の考え方を整理し、他者に考え方を適切に伝えるために欠かせないスキルです。提案を生み出す段階と、その提案を社内関係者に周知させる段階、そしてクライアントに説明して納得を引き出す段階というように、常にキーポイントとなります。

【ITの全般的な知識】
ITコンサルタントは、自分が直接手を動かす作業は行いません。システム開発においてはプロデューサーの立場で関わります。そのため、特定の技術に関する深い専門知識まで身につける必要はありません。

とはいえITに関して全般的な知識を広く理解しておくほうが、仕事が進めやすいのは間違いないでしょう。自身が使えなくとも、どの技術はどういう機能を持ち、どういう環境で活かされるものかなど、ITの持つ力全体をマクロ的に把握しておくことがITコンサルティングに役立ちます。

ITコンサルタント志望者に有利な資格

ITコンサルタントになるための資格はありません。しかし、取得しておくと転職や案件をアサインされるのに有利になる、以下のような資格もあります。

  • ITストラテジスト試験
  • プロジェクトマネージャ試験
  • PMP
  • ITコーディネータ
  • 中小企業診断士

それぞれを見ていきましょう。

ITストラテジスト試験(ST)

ITストラテジスト試験(ST:Information Technology Strategist Examination)は、IPA(情報処理推進機:経済産業省所管の独立行政法人)が認定する国家資格で、情報処理技術者試験の1つです。これを取得すれば、経営とITを結びつける戦略家、つまりIT戦略のスペシャリストであることが認定されます。ITコンサルタントの資質を裏付けるのには最適な資格といえるでしょう。

プロジェクトマネージャ試験(PM)

プロジェクトマネージャ試験(PM:Project Manager Examination)もIPAが認定する国家資格です。ITストラテジストによる戦略を形にするプロジェクトの、指揮監督を行える人材であることを認定します。これを取得すればプロジェクトの全体計画を作成し、必要となるリソースを確保し、スケジュールや品質管理などのプロジェクト全体のマネジメントが行える証明となります。

PMP

PMP(Project Management Professional)は、プロジェクトマネジメントのスペシャリストであることを証明する国際資格です。アメリカのプロジェクトマネジメント協会PMIが、PMBOKガイドに基づいて認定します。受験者が問われるのはプロジェクトマネジメントの経験と知識はもちろん、マネジメントに対する理解や姿勢、実務的な内容まで問われます。また、取得すれば永久に有効な資格ではなく、更新が3年ごとに必要です。

ITコーディネータ

ITコーディネータは、国家プロジェクトとして設立された特定非営利活動法人ITコーディネータ協会が認定する民間資格です。「経営に役立つIT投資」のサポートを目指す人材が対象となります。この資格を取得すれば経営とITの両面に精通したプロフェッショナルとして、経営の視点でIT戦略の実現をサポートできる人材であることが認定されます。

中小企業診断士

中小企業診断士は、中小企業を対象とする経営コンサルティングにおいての能力を認定する国家資格です。試験もしくは登録養成機関の養成コースを修了することにより取得できます。ITに関する知見を持っている人材がこの資格を取得すれば、ITコンサルティングに関する能力を持つことを客観的に示すことが可能です。経営コンサルタントの唯一の国家資格なので、取得する価値はあります。

ITコンサルタントを目指すキャリアパス

ITコンサルタントを目指すための、具体的なキャリアパスについて、技術職から目指す場合と営業職から目指す場合に分けて解説します。

技術職からのキャリアパス

技術職では、SEからITコンサルタントへのキャリアパスに実現性があります。そしてSEよりもプロジェクトリーダー、さらにプロジェクトマネージャーとキャリアが上がるほど転職には有利です。

実際に、現在コンサルティング業界では、ITコンサルタント要員として、SIer出身の人材ニーズが増加傾向です。最近のITコンサルティングのニーズには、ある程度傾向があります。それは、スマートなIT戦略や垢抜けたグランドデザインを描くことではなく、もっと現場を熟知し、それを踏まえた再現性があるリアルな提案のニーズが高まっている点です。

体裁よりも実益を重視したリアルな提案は、開発段階での手戻りが少なく、納期も品質も願ったとおりに成果物が上がりやすいので、クライアントの満足度も高くなるでしょう。また、SIerとITコンサルティングではステークホルダーが異なるとはいえ進め方は共通項が多く、SIerでのプロジェクト経験や培ったスキルがITコンサルティングに活かされます。

そういう背景から、SEやプロジェクトリーダー、プロジェクトマネージャーの仕事を経験してそのスキルを身につけた人材が、ITコンサルティングにキャリアチェンジすることは親和性が高いです。ITコンサルティングには、SIerのノウハウに加えて経営視点や俯瞰力などが求められます。SIerの経験が豊富でビジネス感覚を持った人材なら、ITコンサルティングファームからのニーズが充分にあるでしょう。

営業職からのキャリアパス

営業職の場合は、一般営業よりも技術営業の方がITコンサルタントへのキャリアパスが見込めます。一般営業は扱う商材の商品知識は必要ですが、営業先の担当者も技術者ではないため、深い専門知識までは必要ありません。

しかし技術営業は、営業先の担当者も技術系の人であり、専門的な説明が必要とされる分野の営業職です。販売を担当する営業部門の技術的な説明やフォローを補佐するプリセールスなども、技術営業に含まれます。技術検証を行いつつ顧客に提案をする技術営業からのITコンサルタントは技術と営業力の双方に強みがあるため、キャリアパスとして実現性が高いといえます。

技術営業に就くには、エンジニアの知見がある程度必要です。そのため、技術職の未経験者の場合はまずプログラマーかエンジニアのロースキルの業務を一定期間行って、最低限の基礎を身につけることから始めます。そこから技術営業に移行するのはそれほど難しくありません。そのコースであれば、技術者としての専門性を極めていなくともITコンサルタントを目指すことができます。

ITコンサルタントへの転職で後悔しないための3つのポイント

ITコンサルタントへの転職で後悔しないためには、以下の3つのポイントを心得ておきましょう。

  • 華やかさだけを求めるとギャップを感じる
  • 技術の知見が浅いと苦労する
  • ハードワークをせざるを得ない状況もある

これら3つの項目に照らして転職に無理があると感じたら、よく検討したほうがよいサインと捉えるのが賢明です。個々の項目を見ていきましょう。

華やかさだけを求めるとギャップを感じる

外部から見るとITコンサルタントの仕事は、華やかなイメージがあります。実際には、意外とコツコツとこなしてゆく地味な作業が多いです。華やかな世界観に憧れて転職したものの、いざ働き始めると毎日地味な仕事が続くというギャップに後悔をする人も少なくないでしょう。

例えば、クライアントに説明する際の資料作成、資料作成に向けたリサーチ、システム利用手順書、マニュアルの作成、会議の議事録の作成などが日々取り組む仕事です。これらの書類は先端ツールで自動生成するのではなく、WordやExcel、パワーポイントなどで地道に取り組むことも多いです。そういう多くの作業を通してこそ華やかな部分があることを理解していなければ、ギャップを感じて離脱するリスクがあります。そういう失敗がないように、転職を考える際はこのギャップを把握して臨みましょう。

技術の知見が浅いと苦労する

精度の高い提案を生み出すためには、案件に応じて多くの知識を得て取り組む必要があります。例えばクライアント企業の現状、業界の動向、競合の情報、そしてなにより提案をより良くするための技術の研鑽と先端情報です。技術的な研鑽を怠ると技術の知見が浅いと見られてしまい、クライアントからの信頼や制作に関係するスタッフからの信頼を失くして苦労することになります。目の前の仕事は進めにくくなり、次にもつながりません。

しかも多くの場合にITコンサルタントは複数案件を抱えるので、それだけ必要な知識は膨れ上がります。それについていけるように、技術的な知見を深めましょう。

ハードワークをせざるを得ない状況もある

昔ほどではないにせよ、コンサルティング業界はハードワークが珍しくない面もあり、ITコンサルタントも例外ではありません。ITコンサルタントの場合にハードワークになる背景には、クライアントから常に質の高い提案を要求されることや、複数案件を同時進行での担当が多いこと、納期がきついことが挙げられます。

一つ一つはそうハードではなくとも、複数できつい納期で高いクオリティを求められるのが同時に起こるので、ハードワークになりがちです。それを覚悟していなければ、精神的にも肉体的に疲弊してギブアップするケースもあります。そのため心身ともにタフであることも、ITコンサルタントには必要です。

まとめ

最近ではシステム開発の経験がある人材や技術営業の経験者などに、ITコンサルタントとしての人材ニーズが増えています。そんなITコンサルタントは仕事としてのやりがいや年収が魅力的である一方、求められる技量や努力、覚悟もそれに見合うだけのものが必要です。

ITコンサルタントへの転職やキャリアアップを考えているみなさんは、ここで紹介した6つの情報を参考に準備をして、ITコンサルタントへの転職につなげましょう。

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