近年では企業が世に問う商品やサービス、事業は成熟して精度が高いものが多くて差別化が難しい時代になっています。そのため、マーケティング戦略やコンサルティングに力を入れている企業が増加傾向にあります。
コンサルティングとマーケティングは、いずれも企業経営や業績を左右する重責を担う仕事です。とはいえ、その違いは何なのかがよくわからないという声も多く聞かれます。
今回の記事では転職先としてコンサルやマーケティングに興味があるみなさんに向けて、転職活動の方向性を検討する参考になるよう、その違いを紐解きそれぞれに向いている人のタイプやおすすめの本なども紹介します。
目次
コンサルとマーケティングの違いとは
混同されることも多いコンサルとマーケティングについて、違いを明らかにしておきましょう。
コンサルとマーケティングは目指すものが違う
コンサル、つまりコンサルティングとは企業の経営課題の解決や業務効率の改善などの依頼を受け、企業を取り巻く環境や企業の内部要因を調査分析し、専門的な見地から有効な施策を提案及び実行をサポートすることです。
コンサルティング職(コンサルタント)は主にコンサルティングファームに所属し、コンサルタントとしてクライアント企業の依頼に応じてコンサルティングサービスを提供します。
マーケティングとは商品やサービスの開発、もしくは販売実績を伸ばすために市場のニーズや顧客層を調査分析し、ターゲット設定やプロモーション戦略の立案、実行を行う「売れる仕組み」を作る活動全般です。
マーケティング職(マーケター)は主に事業会社に所属し、社内のマーケティング部門として、自社商品・サービスを対象にマーケティング活動を行います。
コンサルティングとマーケティングは、どちらも調査分析をベースに施策を立案し実行する点は共通していますが、役割および目的が違います。
コンサルティングは経営課題にフォーカスしてその解決を目指しますが、マーケティングは経営そのものではなく成果物である商品やサービスの開発・改善、販売拡大を目指します。
ゴールが「経営課題の解決」と「商材の開発・拡販」なので、分析などで同じ手法を使うこともありますが、ミッションそのものが違うといえるでしょう。
マーケティングコンサルティングとは
コンサルティングとマーケティングを組み合わせたような名称の「マーケティングコンサルティング」という分野があります。
これはコンサルティングとマーケティングの両方の要素を持った、ハイブリッドな仕事です。ひと言でいえば、クライアント企業の商品・サービスの「マーケティング」に関して「コンサルティング」サービスを提供するものです。
コンサルティングとはいえ、方法論のアドバイスだけでなく実際のマーケティングプロセスをそのままアウトソーシングするようなイメージが近いでしょう。
広告代理店が広告主に対して行うことが多いですが、コンサルティングファームがマーケティング案件として行う場合もあります。また、マーケティングコンサルティングに特化したマーケティング支援企業もあります。
コンサルとマーケティング、どっちに向いている?
コンサルティングとマーケティングのどちらの方向に進むべきか迷っている人のために、参考にそれぞれに向いている人の特徴を紹介します。
コンサルとマーケティングに共通して向いている人
共通項が多いコンサルティングとマーケティングなので、どちらにも向いているタイプが存在します。
そこで、まずはコンサルティングとマーケティングに共通して向いている人の特徴を紹介します。
【数字に強い人】
コンサルティングもマーケティングも、ともに数字と深く関係した業務です。さまざまなデータを集め、綿密に分析し、施策に反映しなければなりません。そのため、数字に強い人がどちらの仕事にも向いています。
【ロジカルな人】
コンサルティングもマーケティングも、成果を出すためには論理的に仮説を立てて検証する作業を繰り返し行い、常に合理性がある答えを探し求める仕事です。そのため、論理的思考(ロジカルシンキング)ができるロジカルな人がどちらの仕事にも向いています。
【ストイックな人】
コンサルティングもマーケティングも、答えが出るまで常に地道な情報収集・分析・検証・改善という作業をコツコツと繰り返します。そのため、ストイックな人はどちらの仕事にも向いています。
コンサルに向いている人
次にコンサルティング職、コンサルタントに向いている人の特徴を紹介します。
【心身ともにタフな人】
コンサルタントはフィールドワークによる実地調査や、膨大なデータを抱えるクライアントの分析、多忙な中でのプレゼン資料の作成などのハードな業務をやり切る体力が必要不可欠です。
また、難問題にぶつかることも多いですが、コンサルティングを引き受けたからには、何があっても解決法を見つけ出す必要があります。その重圧に耐えるためのメンタルの強さも必要です。そのため、心身ともにタフな人がコンサルタントに向いています。
【集中力がある人】
クライアント企業の課題を解決するための試行錯誤に日々挑戦し、答えのない問題を延々と追求するためには、集中力が必要です。そのため、集中力に自信があればコンサルタントに向いています。
【コミュニケーション能力が高い人】
クライアントは企業であっても、直接相手をするのは人です。先方の複数の決裁権者を説得しなければならない場面が多いです。
また、社内外の多くのステークホルダー(利害関係者)との関係も良好に保たなければプロジェクトの成功の妨げとなります。そのため、コミュニケーション能力の高い人が、コンサルタントに向いています。
【ポジティブ思考の人】
コンサルティング案件は、ともすれば不可能とも思える難題や先のまったく見えない課題に向き合うことも多いです。その中で勝機を見出すミッションがある仕事なので、ネガティブな考え方では務まりません。ポジティブ思考の人こそ、コンサルタントに向いています。
マーケティングに向いている人
最後にマーケティング職、マーケターに向いている人の特徴を紹介します。
【トレンドに敏感な人】
市場のニーズを知るには、さまざまな物事のトレンドに敏感であることが求められます。常日頃からアンテナを全方位的に張っていて、ちょっとした違和感レベルの変化にも気づくくらいの人なら、マーケターに向いています。
【想像力が豊かな人】
マーケターは、ターゲットの目線に立って企画や戦略を考えなければ、有効な施策は生まれません。そのため、ターゲットがどういう気持ちで商材を選び、どういうことに価値を見出すかをイメージできるような豊かな想像力があると向いています。
【社会に影響を与えたい人】
マーケティングの仕事は商品・サービスの売れ行きに大きく関係し、マーケティングが成功して商材が広まると社会に影響を与えることも珍しくありません。そのため、仕事で社会に影響を与えたい人に、マーケターは向いています。
【環境の変化に柔軟に適応できる人】
最近重要になってきているデジタル系のマーケティングに関して、早いスピードで常に手法が進化しています。それを駆使するためには、日々キャッチアップする必要があるでしょう。そのため、環境の変化に柔軟に適応できる人はマーケターに向いています。
コンサルとマーケティングの志望別転職先
コンサルティングとマーケティングそれぞれの転職先となる企業タイプ、および代表的な大手企業を紹介します。
コンサル志望の転職先
コンサルティングの仕事を志望する場合の転職先の企業タイプは、基本的にコンサルティングファームです。
パンデミックが経済にマイナスの影響を与える中において、コンサルティングファームは成長率を伸ばし続けています。
その背景として、パンデミックで一旦落ち込んだ業績を積極的に回復するために、事業推進や事業投資のコンサルティングを依頼する企業が増えています。
また、リモートワーク導入の激化やDXに取り組む企業の増加によって、IT系のコンサルティング案件も急増中です。
経験者の引き合いはもちろん多いですが、異業界、異業種からの未経験者のポテンシャル採用も多く、転職志望者にとっては力強い売手市場といえるでしょう。
コンサルティングに興味がある転職志望者のみなさんには、転職エージェントに相談することで非公開求人なども選択肢に加えながら、コンサルティング業界を視野にいれるのがおすすめです。
個人でコンサルタント事務所を起業するという選択肢もありますが、未経験では顧客獲得も、実践自体も困難です。起業するにしても、できれば一度は大手のコンサルティングファームに勤務してキャリアを積むのが賢明でしょう。
また、最近ではコンサルティング部門を内製する考え方で、自社のための専属コンサルタントのような形で採用する場合もあるようです。
コンサルの大手企業
コンサルティング志望の転職先としておすすめの、大手コンサルティングファームを系統別で挙げておきます。
総合系コンサルティングファーム
- アクセンチュア株式会社
- PwCコンサルティング合同会社
- デロイト トーマツ コンサルティング合同会社
- 三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社
- 株式会社シグマクシス・ホールディングス
- KPMGコンサルティング株式会社
戦略系コンサルティングファーム
- マッキンゼー・アンド・カンパニー・インコーポレイテッド・ジャパン
- ベイン・アンド・カンパニー・ジャパン・インコーポレイテッド
- ボストン・コンサルティング・グループ合同会社
- A.T.カーニー株式会社
- 株式会社ドリームインキュベータ
IT系コンサルティングファーム
- 日本オラクル株式会社
- 日本IBM:GBS(グローバル・ビジネス・サービス – ビジネスコンサルティング)
- 株式会社エヌ・ティ・ティ・データ経営研究所
- 株式会社クニエ
- 株式会社日立コンサルティング
組織人事系コンサルティングファーム
- アビームコンサルティング株式会社
- EYジャパン合同会社
- マーサー ジャパン株式会社
財務アドバイザリー系コンサルティングファーム
- アドバンスト・ビジネス・ダイレクションズ株式会社/ABD
- デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社
- PwCアドバイザリー合同会社
- 株式会社 KPMG FAS
独立系コンサルティングファーム
- 株式会社船井総合研究所
- 株式会社タナベ経営
- 株式会社ビジネスブレイン太田昭和(BBS)
医療ヘルスケア系コンサルティングファーム
- 株式会社グローバルヘルスコンサルティング・ジャパン
- 株式会社CDIメディカル
- IQVIAソリューションズ ジャパン株式会社(旧:IMS Japan)
再生系コンサルティングファーム
- フロンティア・マネジメント株式会社
- 株式会社ジェネックスパートナーズ
- 株式会社経営共創基盤
マーケティング志望の転職先
マーケティングの仕事を志望する場合の転職先の企業タイプは、基本的に事業会社のマーケティング部門か、マーケティング支援企業になります。
マーケティングに関しても、コンサルティングと同様に業績を積極的に回復しようとする多くの企業から人材ニーズが旺盛です。
IT業界を筆頭に各業界の事業会社における、マーケティング部門の求人が増えています。経験者はもちろん、未経験でもポテンシャルのある人材の確保が積極的に行われています。
そのため、膨大な数の事業会社が転職先の選択肢になりえるでしょう。
マーケティングの大手企業
ここではマーケティング志望の転職先としておすすめの、他社へのマーケティングのサポートを行う大手マーケティング支援企業を挙げておきます。
- 株式会社タービン・インタラクティブ
- 株式会社MOLTS
- 株式会社ALUHA
- 株式会社リーディング・ソリューション
- イントリックス株式会社
- 2BC株式会社
- 株式会社LEAPT
- キオミル株式会社
- 株式会社Nexal
- ワンマーケティング株式会社
- ターゲットメディア株式会社
- テクロ株式会社
- 株式会社イノーバ
- 株式会社プリンシプル
- インパクトM株式会社
- 株式会社才流
- シンフォニーマーケティング株式会社
コンサルやマーケティングが学べる本
未経験からコンサルティングやマーケティングの仕事に転職することを目指す人のために、必要な要素を効率よく学べるおすすめの本を5冊ずつ紹介します。
コンサルティングが学べる本5選
コンサル一年目が学ぶこと
一流のコンサルティングファームで働き、独立してさまざまな分野で活躍している人たちへの取材から得られた、コンサルティングファームで培った中で現在も実践している重要な30スキルを紹介しています。
著者自身もコンサルタント経験者なので、わかりやすく解説されているところが本書の特徴です。
コンサル出身の百戦錬磨のビジネスパーソンが15〜20年実践し続けている厳選された普遍的なスキルなので、コンサルティング入門者にとっても大変役にたつ貴重な内容といえるでしょう。
戦略コンサルタント 仕事の本質と全技法: 「頭の知性」×「心の知性」×「プロフェッショナル・マインド」を鍛える最強のバイブル
トップコンサルタントであり、累計30万部のベストセラー『見える化』『現場力を鍛える』の著者による、30年間に培われた技術を集大成した本です。
「究極の思考法」「人を動かす極意」「脳を活かすマインドと習慣」の3つのテーマでそれぞれ技法を紹介しています。実際のコンサル事例も多数紹介されており、コンサルティング志望者にとって読む価値がある内容です。
図解即戦力 コンサルティング業界のしくみとビジネスがこれ1冊でしっかりわかる教科書
コンサルティング業界はグローバルな活躍ができる魅力的な業界です。異業種の経験が豊富な人材にとってもレベルアップをねらって転職することの多い業界でもあります。
とはいえ、具体的な仕事の内容がよくわからない人も多く、イメージだけが先行している面もあるようです。
この本では、コンサルティング業界の構造や仕事の内容、業界に必要とされる能力、キャリアパスなどが現場に即したリアルな内容で解説されています。
主要なコンサルティングファームの紹介も掲載されているので、コンサルへの転職を考える転職志望者にぴったりの一冊です。
新版コンサル業界大研究 (業界大研究シリーズ)
コンサルティング業界の仕事内容から業界の今後までを網羅して解説したコンサルティング業界入門書のコロナショック以降の最新版です。コロナ禍の影響を受けたコンサルティング業界の事情も踏まえて、書かれています。
ファームについても、大手外資系ファームから国内の注目ファームまで、採用プロセスも含めて幅広く解説しています。
コンサルティングの仕事の基礎知識および実務を解説し、有名ファームの特徴や優位性、最新の動向や業界の行方、選考対策やコンサルとして独立後のキャリアなど、さまざまな角度でコンサルについて詳しく書かれた内容の濃い本です。
世界一やさしいコンサルタントの説明書: 一生食いっぱぐれない最強の職業
近年転職先として人気が高まりつつある、コンサルティング業界志望のための入門書として、わかりやすく書かれた本です。
コンサルティングとはどんな仕事をしているのか、具体的にどのようなサービスを提供しているのか、年収事情やキャリアパス、資格について、向いている人について、やりがいや醍醐味など、志望者が抱く疑問を簡明に解説しています。
著者の持論「コンサルタントは一生食いっぱぐれがない最強の職業」である理由も語られています。
マーケティングが学べる本5選
グロービスMBAマーケティング
グロービス経営大学院によるベストセラーシリーズの最新版で、マーケティングリサーチやブランド戦略、ポジショニング、コミュニケーション戦略などのマーケティング理論の基礎から応用までが体系的に学べる一冊です。
即戦力として使える基礎知識がまとめてあり、とりわけプロモーションを学びたい人におすすめです。プロモーションに直ちに使える施策が網羅的に解説されています。それに加えて、KPIの設定方法や組織作りについても、わかりやすく言及されています。
マーケティングリサーチとデータ分析の基本
国内のネットリサーチ最大手で実務を担当する著者によるマーケティングリサーチとデータ分析の入門書です。
マーケティングリサーチやデータ分析をこれから始めたいが、何から手をつければよいのかわからない人たちに向けて、その基本をわかりやすく解説しています。
テクノロジーの目覚ましい進化によって、私たちの生活の経済活動の履歴はデジタルデータとして蓄積され、可視化されているのが現状です。
この本では、それを活用してアウトプットの質を上げ、戦略的成果につなげるための、データリテラシーとマーケティングリサーチの基本がわかります。
マーケティングの新しい基本 顧客とつながる時代の4P×エンゲージメント
この本はデジタル革命がもたらすマーケティング手法の変化に目を向け、マーケティングの現場が取り組むべき課題について書かれています。
暮らしのデジタルシフトが進む中で、プロモーションやチャネルのデジタル化という次元を超え、マーケティングの発想自体がデジタルを前提としたものに変化してきました。
マーケティング思考の基本とも言える4Pをベースにして進化させ、デジタル時代の「マーケティングの新しい基本」を解説しています。
事例としてニトリやカインズ、ナイキ、ウォルマート、アマゾンフレッシュ、ウォルグリーンなどの企業のマーケティング事例を具体的に分析し、デジタルを前提とした戦略を説いている内容も秀逸です。
現場のプロが教える! BtoBマーケティングの基礎知識
BtoBビジネスの現場で活躍する著者たちが、培ってきた知識を整理・編集してBtoBマーケティングの入門書としました。本書ではBtoBマーケティングを、ゼロから学ぶことができます。
効果的な施策の作り方や、KPIの設定の仕方なども解説されています。経営視点からのマーケティングの概念や、施策ごとの細やかな注意点など、BtoBの現場に必要な考え方が詳しく紹介された一書です。
【ダウンロード特典付き】The Art of Marketingマーケティングの技法 ―パーセプションフロー・モデル全解説
デジタル化が進んでメディアやマーケティング手法の多様化・細分化が進んでいます。マーケティング活動を単体の施策で成功に導くことは困難な時代になりました。
複雑になっていく環境下で的確な意思決定のために必要なのは、マーケティング活動全体を俯瞰した「全体最適」の実現であると本書は説いています。
「パーセプションフロー・モデル」というマーケティング活動全体の設計図である考え方を紹介し、作り方や使い方、検証の仕方までを丁寧に解説しています。
このモデルは、マーケティング活動の目的とすべてのプロセスを1枚にまとめた「全体設計図」で、その進行過程を消費者の認識の変化とともに記しているのが特徴です。
マーケティングにパーセプションフロー・モデルを活用することで「全体最適」を実現し、的確な意思決定ができると著者は主張します。
まとめ
コンサルティングとマーケティングは、いずれも企業にとって重要な仕事で共通点も多いですが、目的と役割が違います。
クライアントの経営課題を解決するコンサルティングと、自社あるいはクライアントの商材の開発や販売拡大戦略を担うマーケターの違いです。
これらを転職先として目指すみなさんは、ここで紹介した情報を参考にどちらに向いているかをよく検討して、納得のいく転職ビジョンを構築してください。