プロジェクトマネージャーを目指すなら持つべきスキルと資格まとめ

プロジェクトマネージャーを目指すなら持つべきスキルと資格まとめ

IT業界で働くエンジニアの方々の中には、現状のプログラマーやSEから「プロジェクトマネージャー」にキャリアアップして活躍の舞台を広げたいと望む方もたくさんいることでしょう。そのためには、プロジェクトマネジメントという仕事をこなすためのスキルが必要です。

また、必須ではなくともそのスキルを裏付ける資格があります。合否は別として資格試験に向けた学習を通して、必要なスキルが磨かれる場合もあるでしょう。それらの資格を取得できれば、仕事に必要なスキルを客観的に裏付ける事ができて、転職活動の際の選考や入社後のアサインなどで有利になります。ではプロジェクトマネージャーになるなら、一体どのようなスキルが必要でどういう資格を持つ事が有利になるのでしょうか?

この記事ではIT業界でプロジェクトマネージャーのキャリアを目指すエンジニアにとって、求められるスキルやそれを裏付ける有利なプロジェクトマネジメント資格(「プロジェクトマネージャ試験」「PMP」「PM2」「ITコーディネータ試験」「ITストラテジスト」)について、詳しく解説します。プロジェクトマネージャーへのキャリアパスを考えているみなさんは、ぜひ参考にしてください。

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エンジニアのキャリアパスとしてのプロジェクトマネージャーとは

プロジェクトマネージャーは、開発すべきシステム機能や構造に応じて、開発に必要な人員や機材などのリソースを想定し、予算やスケジュールを立てて開発チームを編成し、プロジェクトを遂行する中心人物です。

ITシステムの開発は、クライアントの要望に耳を傾け、それをどのようなシステムによって実現するかを決めるところから始まります。クライアントに求められた成果物を完成させ、納期通りに納品するところまでがプロジェクトマネージャーの仕事の範囲です。

また、成果物が稼働し始めれば、運用は別のチームに引き継ぎますが、その運用のサイクルさえもあらかじめ見越したプロジェクトにするのも、プロジェクトマネージャーに求められます。
このように、プロジェクトマネージャーの仕事の内容は非常に多岐にわたりますが、大きく分類すると次の5です。

【開発計画の立案】

クライアントへのヒアリングを通して、どのようなシステムを開発するか決定します。主要な機能やシステムの構造を決め、必要なリソースをはじき出して予算規模やスケジュールを決定します。

【プロジェクトチームの編成】

必要なスキルを持った人材を必要な人数だけ集め、プロジェクトチームを編成します。

【プロジェクトの進捗管理】

プロジェクトの意味やゴール、スケジュールなどをチーム全体で共有できるようにします。セクションごとの進行状況を常にチェックし、予定どおりプロジェクトが進んでいくように管理します。また、顧客の要望に変更が生じた場合はスタッフに伝える、何かトラブルが発生した場合は、クライアントと交渉してスケジュール調整の交渉を行います。

【チーム間の連携をサポート】

複数のチーム間の調整役を担い、情報の同期や連携をサポートしてプロジェクトを円滑に進めます。
チーム内の管理は各チームのプロジェクトリーダーが担当しますが、規模が小さいプロジェクトの場合はプロジェクトマネージャーが兼任することもあります。

【レビュー】

プロジェクト終了後に工程を振り返り、今後のために問題点や改善点を検証します。

このようにプロジェクトマネージャーは、ITの知見やコミュニケーション能力だけでなく、プロジェクトを俯瞰できる経営者的な目線も持たなければなりません。

それでは、ここから先は具体的にどういうスキルが必要かに目を向けてみましょう。

プロジェクトマネージャーに必要な2つのスキル

エンジニアの段階では必要ではなかったけれど、プロジェクトマネージャーになる場合に必要なスキルとして欠かせないものは以下の2つです。
●マネジメントスキル
●コンサルティングスキル
それぞれを詳しく見ていきましょう。

マネジメントスキル

プロジェクトマネージャーという名の通り、プロジェクトマネジメントスキルは当然持ち合わせていなければなりません。しかも仕事柄、マネジメントする対象が多いのも特徴です。
主なものだけでも、以下のとおりです。

  • 品質:成果物の品質管理は、プロジェクトの生命線です。
  • 納期:納期を管理するためには、各チームの進捗を常に把握することも必要です。
  • コスト:予算の見積もりは収益に関係してくるので、責任重大な項目です。
  • 人的資源:スタッフの人選や適材適所の配置ができなければ、品質や納期、モチベーションの維持などに問題が出かねません。
  • リスク:主に納期遅延のリスクを防ぐ事が必要で、あらかじめリスク回避策やリスク発生時の軽減策を考えておく必要があります。

このような個々のマネジメントをしながら、プロジェクト全体として統括するマネジメントスキルが必要なのです。

コンサルティングスキル

プロジェクトマネージャーとITコンサルタントはよく比較されますが、ITコンサルタントはプロジェクトマネージャーがさらにキャリアアップする場合の選択肢の代表的な仕事です。そのことからも、プロジェクトマネージャーの仕事にはコンサルタントに通じるものがあるでしょう。では、プロジェクトマネージャーとITコンサルタントの最も大きな違いは何でしょうか。

プロジェクトマネージャーの場合はあくまで開発企業の一員なので、自社のリソースや手法を用いるという制約の中で(もちろん外注する部分はあるでしょうが)、より良い成果物をプロデュースするのが仕事です。一方、コンサルティングファームに所属、もしくは個人で独立起業してコンサルティングを行うITコンサルタントは、基本的にリソースの制約を持ちません

つまり、クライアントの要望に可能な限り近づけるために、広い選択肢からリソースや手法を選べるのです。それだけに幅広い知識と深い見識が求められる、ハイクラスな仕事といえるでしょう。それを除けば、クライアントの要望を満たすための提案をし、納得させてこそ開発に着手できるという点で共通しています。

そのため、プロジェクトマネージャーにはITの知見とマネジメントスキルに加えて、コンサルティングスキルが必要だといえるでしょう。

ITのマネジメントスキルを裏付けする3つの資格

プロジェクトマネジメントスキルを客観的に裏付けする資格として「プロジェクトマネージャ試験」「PMP」「PM2資格試験」が挙げられます。個別に紹介しましょう。

プロジェクトマネージャ試験

国家試験である情報処理技術者試験の一区分であり、実施をしているのはIPA(情報処理推進機構)です。詳細を見ていきましょう。

最高難易度の高度情報技術者試験

プロジェクトの責任者として必要なスキルや知識を問われる資格で、計画立案から予算・納期・品質の管理やリソースや作業環境の確保と整備、リスクマネジメントや進捗管理、そして組織運営などについての問題が出題されます。4段階ある情報処理技術者試験のスキルレベルにおいて、最高難度の4に設定されている「高度情報技術者試験」に含まれます。IT関連の技術や知識だけでなく、経営戦略の関する知見も必要です。

合格者は国家資格を持ち、プロジェクトマネジメントスキルを保有しているという確かな評価を得ることができます。一般的には、エンジニアの実務経験を10年程度経験し、なおかつプロジェクトリーダーなどでプロジェクトに関与した経験がある人が対象とされる試験です。

プロジェクトマネージャ試験の難易度とメリット

2021年の実績では14.4%の合格率で、合格者の平均年齢は37.8歳です。その結果からも、難易度の高い試験であることは分かるでしょう。この資格は、取得することでプロジェクトマネジメントスキルを証明できることはもちろんですが、国家資格であることから民間資格以上に高い評価がされる場合もあります。

PMP

PMP(Project Management Professional)はプロジェクトマネジメントのグローバルスタンダードである知識体系「PMBOK」に基づき、アメリカに本部がある団体PMI(Project Management Institute)が認定する国際資格です。まずはPMBOKについて触れておきます。

PMBOKとは

PMBOKとはQCD(品質・費用・納期)の管理のための知識体系です。

PMBOKではプロジェクトマネジメントにおける49個のプロセスが、5つの基本プロセスグループと9つの知識エリアで整理され体系立てられています。

5つの基本プロセスグループとは、プロジェクトの開始から終結までの一連の流れを5つのプロセスに分割・定義したもので、以下のとおりです。

立上げプロセスグループ

計画プロセスグループ

実行プロセスグループ

監視・コントロール・プロセスグループ

終結プロセスグループ

9つの知識エリアはプロジェクトマネジメントを行う上で必要な知識を、9つに分割・定義したもので、以下のとおりです。

  • プロジェクト統合マネジメント
  • プロジェクト・スコープ・マネジメント
  • プロジェクト・タイム・マネジメント
  • プロジェクト・コスト・マネジメント
  • プロジェクト品質マネジメント
  • プロジェクト資源マネジメント
  • プロジェクト・コミュニケーション・マネジメント
  • プロジェクト・リスク・マネジメント
  • プロジェクト調達マネジメント

これらの知識エリアは5つのプロセスすべてに必要なものと、一部のプロセスにのみ必要なものがあります。成果物を可能なかぎり高品質かつ低コストで速やかに納品するために、5つのプロセスを9つの知識体系を駆使して実行することがPMBOKの目指すところです。

グローバルに通用する資格

PMPを取得すると、海外でも評価されます。もちろん、日本にもPMI支部があるので受験可能です。PMP試験においても、それらをベースとした問題が出題されます。受験資格が厳しく、以下の2パターンのどちらかに該当しなければなりません。

1:高校卒業もしくはそれに相当する資格を持っていて、プロジェクト業務を指揮監督する立場での7500時間の実務経験を有すること。ただしその中に60ヶ月間のプロジェクトマネジメント経験を含むこと。
2:大学卒業もしくはそれに相当する資格を持っていて、プロジェクト業務を指揮・監督する立場での4500時間の実務経験を有すること。ただし、その中に36ヶ月間のプロジェクトマネジメント経験を含むこと。

以上のような厳しい受験資格が必要ですが、プロジェクトマネージャーとしての経験は必要ありません。プロジェクトリーダーやSE職での見積もりや進捗管理、品質管理などのマネジメント経験などの、プロジェクトマネージャーの補佐的な仕事の経験があれば実務経験と見なされます。

PMP難易度とメリット

合格率はおよそ60%といわれています。4時間で200問の選択式問題で、うち25問はダミー問題なので実質175問です。また、15分はコンピューター操作のチュートリアルのための時間になっています。175問中106問以上正解が合格ラインです。非常に広範にわたるプロジェクトマネジメント体系が対象の試験で、なおかつ前述のような実務経験が求められるため、難易度は高いといわれています。

この資格を取得することで、グローバルスタンダードであるPMBOKをベースとしたプロジェクトマネジメントスキルを身につけていることを証明できます。なお、この資格は世界的に知名度が高いため、グローバル案件やオフショア開発などにアサインされる場合の後押しにもなります。

P2M資格試験

P2M資格試験は、日本プロジェクトマネジメント協会が主催するプロジェクトマネージャーに必要な知識やスキルを図る資格試験です。詳細を紹介しておきましょう。

IT業界以外の受験者も多い

P2Mはプログラム&プロジェクトマネジメントの略で、PMBOKで整理されたプロジェクトマネジメントにプログラムマネジメントを加えた日本発祥の考え方です。プログラムマネジメントとは、複数プロジェクトを統合管理する手法のことです。

PM2の考え方はIT企業にとどまらず、広く様々な業種に適用できます。そのため製造業や建設業でもこの試験が活用されており、多くの部門責任者やマネージャーが受験しています。

P2M資格試験の難易度とメリット

試験は以下の4種類に分かれています。

  • PMC:50問出題ですべて選択式なので、比較的平易な試験です。
  • PMS:100問出題ですべて選択式なので、比較的簡単な試験です。
  • PMR:論述式の一次試験と面接形式の二次試験に分かれていて、難易度の高い試験です。
  • PMA:未だ実施されていません。

P2M資格試験に合格すると、プロジェクトマネジメントに関して深い理解がある証明になります。また、複数プロジェクトを統合管理する手法であるプログラムマネジメントについて学べるので、複数プロジェクトを扱うプロジェクトマネージャーやその統括者である部門長などを志望する際に有利になります。

たとえば大規模開発においては、インフラ開発やアプリケーション開発、品質管理などの小規模のプロジェクトが並行して進みます。P2Mを学ぶことで、同時に並行して進む複数のプロジェクトの関連性を把握し、俯瞰して統括管理を行うスキルが身につくでしょう。

ITのコンサルティングスキルを裏付けする2つの資格

プロジェクトマネージャーとしてのコンサルティングスキルを裏付けできる資格として、「ITコーディネータ試験」と「ITストラテジスト試験」の2つがあります。個別に紹介しましょう。

ITコーディネータ試験

ITコーディネータ試験は経済産業省の推進資格です。IT企画の立案や経営戦略などのスキルを測るもので、ITを活用できる人材開発を目的とした資格です。詳しく見てみましょう。

実践的なスキルを習得しやすい試験構造

この試験ではIT技術を利用した企画の立案能力や経営戦略を構築する能力、企画の推進力などが問われます。資格が認定される2つの条件として、ペーパー試験に合格することおよび6日間の実務研修を受講し、修了することが必要です。そのため、実践的なスキルを習得しやすい試験の構造になっています。

ITコーディネータ試験の難易度とメリット

平均合格率はおよそ50%であり、それほど難易度は高くない試験といえます。IT戦略から経営戦略、資源調達やIT導入、IT運用までプロジェクトの一貫した工程を学べるので、実際の仕事でそれらをマネジメントするプロジェクトマネージャーの業務に役立つ学習領域です。また、実務研修であらゆる工程を擬似体験できるので、経験のプラスになるでしょう。

プロジェクトマネージャーからさらにキャリアアップを目指す場合の、CIO(最高情報責任者)やCTO(最高技術責任者)などのキャリアを目指す人にも有利になります。

ITストラテジスト試験

前出のプロジェクトマネージャ試験と同様に国家試験である情報処理技術者試験の一区分であり、実施をしているのはIPA(情報処理推進機構)です。システムの企画から要件定義、開発および保守運用におけるセキュリティ機能の実現や、システムの基盤整備ができるスペシャリストである証明ができる国家試験です。高難度ですが、持っていると一目置かれる資格です。

詳細を見ていきましょう。

コンサルティング要素も問われる最難関試験

情報処理技術者試験のスキルレベルが4である、最難関試験のひとつです。IT技術を利活用した経営戦略や企画能力、プロジェクトマネジメントスキル、コンサルティングスキルなどが問われます。プロジェクトマネージャーやITコンサルタント、CIOなどを目指す人に適している資格試験です。

2020年は新型コロナウイルス感染症拡大の影響で中止となり、2021年度以降は2019年までの秋期実施が春期実施(例年4月第3日曜日予定)に変更されています。

ITストラテジスト試験の難易度とメリット

2021年の合格率は15.3%でした。過去の平均合格率も15%程度であり、やはり難易度の高い試験といえるでしょう。IPAの情報によれば、受験者の平均年齢が約40歳であるとのことで、IPAの他の資格に比べて年齢層が高く、豊富な実務経験を持つ人たちが多く受験しています。そのため、実質的な難易度は合格率が示す以上に高いかもしれません。

だからこそ、資格が取得できればプロジェクトマネージャーとしてのスキルはもちろん、IT戦略の立案能力などのITコンサルタントに求められるコンサルティングスキルさえ証明できます。プロジェクトマネージャーからさらにキャリアアップを目指す場合の、ITコンサルタントなどのキャリアを目指す人にも有利になるでしょう。

資格取得におすすめの学習法

資格取得のための学習には、試験結果は別としても進みたい方向の知見を深めることができる利点があります。その上で、受けるからには合格を目指して意欲的に学びたいですよね。
ここではおすすめの学習法を紹介します。

オンライン講座

オンライン講座で各資格試験に特化したものが、豊富にあります。合格を目指す資格試験の名で検索して、詳細や費用を検討してトライしましょう。IT系資格試験に特化したものは、たとえば「Udemy」(世界最大級のオンライン学習プラットフォーム)でも、10,000件がヒットします。

1,000円台からというコスパの良い講座がたくさんあり、受験する対象の試験をピンポイントで教える講座がたくさんあります。ほかにも、サブスク制で講座は受け放題の「Schoo(スクー)」にも、IT系国家資格に向けた講座もあります。ほかにもオンライン講座はたくさんあるので、ぜひ探してみてください。

集合研修

集合研修や集合セミナーを、実際に受講するという選択肢もあります。ITの資格に特化した研修コースが多く存在します。費用はオンライン以上にかかりますが、参加すれば独学では得られなかったものを得られる場合があり、学習効果は期待できます。

IT系資格に特化した研修コースがあるのは、たとえば「トレノケート」「インターネット・アカデミー」です。それら以外も選択肢は豊富にあります。

学習書

試験ごとに特化した多くの書籍で出ています。電子書籍版ならスマホでも読めるので、日常生活のちょっとした空き時間も無駄にせずに学習できます。傾向としては問題集と教科書を兼ねたものが多く、真摯に取り組めば力が身につくでしょう。

おすすめの書籍を挙げておきます。
PMPパーフェクトマスター PMBOK第6版対応
情報処理教科書 プロジェクトマネージャ 2022年版
ALL IN ONE パーフェクトマスター ITストラテジスト 2022年度 (情報処理技術者試験)

まとめ

プロジェクトマネージャーのキャリアを目指すエンジニアに求められるスキルや、それを裏付ける有利な資格について解説しました。プロジェクトマネージャーを目指すならとっておくべきプロジェクトマネジメント資格として、「プロジェクトマネージャ試験」「PMP」「P2M」があり、ITコンサルティングスキルを裏付ける資格としては「ITコーディネータ試験」「ITストラテジスト試験」があります。

もちろん、資格の取得は必須ではありません。しかし合格して資格を持てば、それが客観的に証明される物差しともいえるので、受験の価値はあるでしょう。ITの知見を持ち、マネジメントスキルとコンサルティングスキルの両方を身につければ、スキルとしてはプロジェクトマネージャーを目指すには申し分ないです。プロジェクトマネージャーを目指すみなさんは、キャリアアップのための戦略を立てる参考にしてください。

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