職場で外国人とコミュニケーショントラブル?主な要因と避ける方法

日本の労働市場は人手不足に対応するために、外国人労働者の受け入れが進んでいます。その中で労働条件や機会の不均等さなど、改善すべき点が数多い状況です。またコミュニケーションの難しさから職場内でトラブルが発生することもあります。
このようなトラブルで悩まれる方も多いことでしょう。ここでは職場内での外国人とのコミュニケーショントラブルの主な要因と対応策、そして一歩進んでコミュニケーションを良好にする方法などについて解説します。

外国人が職場で不満に感じる理由

外国人労働者が職場において不満を感じる主な理由は、以下の3種類です。
• 国籍による機会不均等
• 男女間の不平等
• 文化・習慣の違い
多くの外国人にとって日本で働こうとする背景には、仕事を通しての学びへの期待があります。しかし実際に日本を訪れて働いてみると、国籍や文化などの多様性に関わる不満があるようです。
また、彼らは期待していた成長につながる機会を与えてくれないとなると、はたして日本で働く意味があるのかという疑問を持ちます。
また、外国人は文化や習慣の違いから、コミュニケーションの取り方にも大きい戸惑いを感じることでしょう。「阿吽の呼吸」などの日本的なコミュニケーションが理解できず、遠回しな言い方や忖度などにも馴染みがなくてストレスを感じやすいのです。

トラブルを誘いがちな5つの要因と対応策

価値観が異なることはやむを得ないにせよ、根底にはコミュニケーション不足が大きい問題として横たわっているようです。ここからは、職場でのトラブルにつながりやすい代表的な要因と、その対応策について触れておきましょう。

外国人同士で固まる

外国人社員を複数名抱える職場で、外国人同士が親密になるのには必然性があります。しかしながら、極端になると彼らが社内で孤立をし、日本語以外の共通言語でコミュニケーションを取り合うことになるのです。
そうなると同僚の日本人は理解できず話に加われなくなり、上司もアドバイスがしづらくなります。
また、外国人たちが雑談をしながら、日本人の同僚や上司をちらちら見ながら笑うという状況も生まれるのです。日本人にしてみれば悪口を言われているようで、たとえ勘違いであっても不愉快になってしまいます。
このような状況から、外国人社員と日本人社員の関係が悪化し、職場として機能しにくくなる事態も実際に発生しているのです。

社内公用語を設定する

対応策としては、社内公用語を日本語とし、特に必要な理由がない場合は社内公用語でコミュニケーションを取るなどのルールを設けましょう。トラブルを避けやすくなるうえに、彼らの日本語力を向上させることにも役立ちます。

海外の内戦や国際問題が職場に飛び火

海外ではいたるところで、内戦や紛争が絶えず起こっています。外国人が在籍する職場では、海外の内戦や国際事情が職場に飛び火することもまれにあるのです。
関係が悪化している国の当事者同士が同じ職場にいるような場合、二人の関係に影響することもあるでしょう。民族同士の紛争の当事者である外国人同士がそのことで口論になり、つかみ合いのケンカに発展することもあるのです。

職場もひとつの社会という価値観を説明する

国や民族間の問題は、企業としては介入しにくい問題ではあります。しかし本来職場とは、同じ目的に向かって切磋琢磨する同志が集う場所です。
対応策としては、個々の事情があるにしても職場ではお互いに力を合わせるべきという視点を、企業の考え方として説いていくことが効果的でしょう。
職場という限定された社会で、異邦人たちが同じ職場で目的を同じくして仕事に励むこと自体は、世界平和の縮図でもあるのですから。

個人の給与情報の共有

日本人の感覚では、同じ職場の人たちの給与に関してオープンに話をすることはあまりありません。しかし、中国語圏では同僚とお互いの給与について、普通に話をします。
彼らは入って間もない同胞の社員に、給与がいくらかを平気で尋ねるのです。給料日に給与明細を見せ合うことさえあります。ボーナスの額についても、当然お互いに教え合うのです。
このように、個人の給与に関してオープンな外国人が複数名いる職場では、彼らはお互いの給料を把握しています。昇給額やボーナス査定に差がある場合は厄介です。
「私の方が先に入社したのに、なぜ彼よりボーナスの額が低いのか」「どうして同じ仕事をしているのに、私のほうが低いのか」「彼女より私の方が多くの言語を話せるのに、なぜ給料が同じなのか」などと上司が詰問される場面が頻繁に見られます。
上司が懸命に理由を説明しても、ちょっとでも矛盾があればそこを追求されるのです。さらには、瞬く間に同じ文化圏の外国人の知るところとなり、各人から説明を求められるという事態につながります。
悪くするとそれがきっかけで、彼らに組織への不信感が生まれて大挙して離職をするということも珍しくはありません。

問われる覚悟をして説明ができるようにしておく

対応策としては、給与基準やボーナスの査定基準をできるだけ明確にしておき、現場責任者が常に「一点の曇りもない説明」ができるようにしておくこと以外にありません。なぜなら給与の情報は他人と共有しないようにと頼んでも、守られることはないからです。

コンプライアンス感覚の差

コンプライアンス、つまり法令を遵守するということについても国によって感覚の違いがあります。それは著作物の複製や職権濫用などに関して顕著に現れるのです。
著作物の複製に関して寛容な文化の中で育った人や、職権濫用が横行する国で育った人は、そういうことに対しての善悪の感覚がまったく異なります。
法的にはNGと知っていても、著作物の複製を平気で不正に販売することや職権を濫用して私腹を肥やすことがあたりまえという国も珍しくはありません。
実際に外国人が社員割引制度を利用して自社製品を大量に購入し、定価で友人たちに転売して不正に儲けていた事例があります。当人は悪いことをしている自覚は皆無なのです。

社内のルールとして浸透させる

対応策としては社内で仕事をするうえで、何がルール違反になるのかを明確に示すことです。たとえば、「機密情報を社外に漏らさない」というルールであれば、機密情報とは何を指すのかを明確に定義します。
あらゆるルールを、誰がみても明らかな状態にしておきましょう。そのうえでルール違反には厳しいペナリティが待っていることも明示すれば、さすがに行動を制限できる効果が見込めます。
違法行為を防ぐのは会社や社員を護るためなので、しっかり整備をしておく必要があるのです。また、そこまではいかなくとも、嘘やごまかし、約束の不履行などの行為も、ビジネス上では信用問題にかかわります。
取引関係にも反映するので、外国人社員にはしっかりレクチャーをしてビジネスマナーとして浸透させることが必要不可欠です。これに関してもルール違反のペナルティのように、どんなデメリットがあるのかをしっかり伝えることが効果的でしょう。

転職に対する価値観の違い

転職に対する認識が、日本人とは大きく異なる外国人は少なくありません。日本はひとつのことを長く続けることを評価する傾向があります。転職回数が多いと、その人に何か問題があるのではないかなどと考える人が多いのも事実です。
一方、海外の多くの国では転職をすることは日常茶飯事で、場合によっては転職をしない人は「キャリアアップに興味がない」とか「「人脈がない」などと、マイナスに捉えることがあります。
日本人が思う以上に、多くの外国人にとって転職はポジティブなもので、その決断から実行はスピーディーです。
外国人は日本の一般的な企業の、ゆっくりとした昇進や希望していない配属の意味が理解できません。それが原因で転職を決意することもよくあります。
また、会社への不満などなく愛着があったとしても、それは彼ら自身のキャリアアップとは別ものです。「もっと成長したい」「能力が活かせない」と感じれば、さっさと転職してしまうということが起こります。
つい先日「ここの仕事は楽しい」と言って言っていたにも関わらず、突然離職をすることもあるのです。

期待していることを伝えておく

対応策としては、現在携わっている仕事の意義や、将来にどんな役割を期待していて、そのためにどんなスキルを磨いて欲しいのかという構想をきちんと伝えることです。
ジョブローテーションなどの人事制度の意味合いについても、レクチャーをする機会を設けるのが望ましいでしょう。
ここなら成長できるとか期待されていると思える組織は、外国人はもとより日本人にとっても魅力があります。雇用側の思いを知らなかったがゆえの残念な離職を防ぐために、やはりコミュニケーションを積極的に取ることが肝要なのです。

コミュニケーションを良好にする4つの方法

ここまではコミュニケーショントラブルの背景や要因、それぞれの対応策を見てきました。最後に、一歩進んでこちらから働きかけてコミュニケーションを良好にする方法をご紹介します。

ダイレクトな表現を心がける

外国人とともに働くにあたって、言葉の壁が大きいのは誰しも自覚しています。日本語で基本的な会話はできたとしても、重要なことが正確に伝わるとは限りません。当初は比較的やさしい単語を使い、比喩的な表現を使わないように意識することが賢明です。
そのうえで、遠まわしな言い方や忖度を強いるようなことは避けましょう。あいまいな語り口では、外国人に誤解を与えたり、混乱させたりするおそれがあるのです。意識的にダイレクトな表現を心がけましょう。

ボディランゲージや翻訳ツールを活用

少し込み入った内容などを伝えたいときに、日本語だけではうまくいかない場合もあって当然です。そんなときには表情を豊かにしたりジェスチャーを交えたりなど、ボディランゲージで補足することによってうまく伝わる可能性があります。
何かを指導するときにも、言葉の説明だけではなく自ら実演しながら教えるということも有効な方法です。

また、微妙なニュアンスを伝えたいときには日本語に固執せず、電子辞書、翻訳ツールなどを使って意味を説明するやり方も有効でしょう。

日本語でのレポート提出を課して添削する

外国人の日本語力を向上させる方法として、時には日本語でのレポート提出の課題を出してみるのもよいでしょう。書かれた文章を丁寧に添削してあげることは、学習機会を求めている多くの外国人労働者にとっては喜ばしいことです。
彼らが独力で調べて文章を書き、それを添削してあげるという事を繰り返していくと、彼らの日本語力、とりわけ文章作成スキルの向上が図れます。
そして何より添削を通して日本語を教える中で、真摯かつ緊密なコミュニケーションがとれるため、一石二鳥といってよいでしょう。

文化の違いを企業の理念に置き換えて伝える

外国人との価値観の違いについては、日本人としては理解したうえで自社の価値観を説明することが重要です。ここは日本だからと「郷に入れば郷に従え」的な指示を与えると、外国人は自国の文化を否定されたと受け取るおそれがあります。
「日本ではこうなのだ」ではなく「私たちの会社はこういう理念のもとで仕事をしている」という説明の仕方がよいでしょう。なぜなら、彼らが自分自身もその一員であるとして捉えることができるからです。

まとめ

外国人との職場でのコミュニケーショントラブルについてさまざまな角度から光を当て、対応策や改善するための働きかけ方などを解説しました。異文化との良好なコミュニケーションは、今後ますます重要なテーマとなってくることは間違いありません。
お互いの文化や習慣を尊重し、そのうえで共通のルールを守ることで、各人が心地よく仕事ができるというコンセプトを全員が共有することこそ大切です。
職場で外国人とのコミュニケーションに苦労しているみなさんが、ここで紹介した方法なども参考にして、彼らと良好な関係を築けることを望んでいます。

Talisman編集部

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