転職活動の面接の中で、成功体験を尋ねられることがありますよね。新卒の就職活動においても同じ質問がありますが、実は転職面接の場合だと意味が少し異なります。
新卒では学生時代の体験を答えるのに対して、転職面接では社会人としての生活の中での、主に仕事での成功体験を問われていると考えてよいでしょう。その際に「どこまでが成功体験なのだろう?」「成功を感じた体験はないのでどうしたらいいのかな」と悩む方もいるかもしれません。
この記事では、面接担当者が成功体験を訊く意図を紐解き、有効な答え方を回答例も交えて解説します。転職活動中、あるいは転職を視野に入れているみなさんはぜひ参考にしてください。
目次
面接担当者が成功体験を訊く3つの意図
中途採用の面接において、面接担当者が成功体験を訊く主な意図としては、以下の3つがあります。
- 成功の価値観を知るため
- 成功の目標を知るため
- 成功へのプロセスを知るため
それぞれを詳しく見ていきましょう。
成功についての価値観を知るため
面接担当者が候補者に成功体験を訊く意図は、成功した内容を知りたいのではありません。主な意図のひとつとして、候補者の「成功」というものに対する価値観を知りたいためです。
成功体験をそれぞれの候補者に語ってもらうことで、人それぞれの成功に対する考えや感じ方が見えてきます。そもそも成功の定義は人によって異なります。同じような体験でもそれを成功と捉える人も、そうでない人もいますよね。面接官が知りたいことは、候補者が何をもって成功と考えるかという価値観です。面接官は、その価値観の優劣ではなく、候補者と企業の価値観の親和性を見ています。それは価値観の優劣を見るのではなく、その候補者の価値観と企業の価値観との親和性を見たいのです。
つまり価値観としての正解はありませんが、真剣に合格を望むのであれば企業研究によってその企業の価値観をあなた自身が見極めておきましょう。その上で、共鳴する部分を成功体験の答えに反映させることをおすすめします。
成功の目標を知るため
次に、面接担当者はあなたの成功体験を足掛かりにして、あなたが目標達成のために努力できる人材かどうかを見ようとします。
そもそも目標がぼんやりしている人は、成功という節目もまたぼんやりとして答えられないかもしれません。一方、成功体験を迷わずに答えられる人であれば、明確な目標に向けて仕事に向き合い、努力してきたと見られます。いかなる仕事でも、明確な目標を掲げて進めていく必要がありますよね。目標を持ってそれに向かう前向きな姿勢の人材であれば、企業にとっても戦力になると評価されやすいでしょう。
よって成功体験を語る際には、その際に目標としたものを盛り込んで語りましょう。
成功へのプロセスを知るため
最後に、最も重要な意図として、あなたの成功へのプロセスを知るためがあります。具体的には、成功に向けての工夫や具体的なアクションが語れるかどうかを見ています。
面接官は、候補者が成功に向けて戦略を立てたり、改善の工夫をしたりができる人かどうかを見極めています。プロセスが抽象的であれば、あまり考えて仕事をしない人、工夫をしない人だと思われかねません。できるだけ具体的な分析や施策、改善などのエピソードを短い言葉で伝えられるような準備が必要です。
成功体験の答え方のポイントと回答例
転職の面接で成功体験を訊かれた場合の、答え方のポイントと回答例を紹介します。
まず概要を述べる
まずはできるだけ語りたい成功の顛末をあらかじめ要約しておき、手短に述べられるようにしましょう。それがだらだらと長ければ、興味を持ってもらいにくくなります。
短くてもポイントを抑えて、面接担当者の興味を惹くような要約を準備しましょう。どんな目標を掲げて取り組んだかを添えることで、その体験がより具体性を帯びてきます。
次にプロセスを工夫とともに述べる
要約で興味を惹くことができれば、そのあとの補足部分であるプロセスの説明が活きてきます。成功に至るまでに講じた手段や、などを、上手に盛り込みましょう。そのような成功に至るプロセスの詳細が伝えられれば良い評価を得やすくなります。
逆に、素晴らしい成功体験を持っていても、プロセスの内容が薄っぺらな場合には評価の対象ならない場合もあるでしょう。プロセスは結果以上に重要なので、この部分の発言は特に注意が必要です。
何を学んだかを盛り込む
プロセスを説明して、それで終わってはいけません。長くなり過ぎないように気をつけながら、後日談的に「何を学んだか」を盛り込みましょう。それによって「この人は成功に満足せず学んでさらに上を目指す人だ」という印象を与えます。
成功体験は「成長体験」と言い換えてもよいでしょう。成功によって学びがあってこそ、体験の価値が輝きます。成功してもそれだけなら、ひとつの事実でしかありません。その後の生き方に反映されて初めて成功は普遍性を持ちます。極論でいえば経験から得たものがなく、成長が感じられない話の場合は、かえってマイナス評価になるおそれもあると心しておきましょう。
学びを志望意欲に紐づけて締めくくる
発言の締めくくりとして、「学び」をその企業への志望意欲に紐づけてしまいましょう。
選考過程で行なうすべての自己PRは、応募先企業でいかに活躍できるかに紐づく必要があります。成功体験においても経験から学んだことを、その企業でのこれからの仕事にどのように役立てるかという部分をアピールしなくてはなりません。
企業が求めるのは能力が高いだけの人材ではなく、自社で活躍して貢献してくれる人材です。それが伝わるように学びを以下のように、志望意欲に紐づけましょう。
「この体験で学んだ〇〇〇〇〇〇を御社の発展にぜひ役立てたいと考えております」
「縁あって御社で働くことになれば、この体験で理解した〇〇〇〇ということを最大限に役立てたいと思います」
以上のように、結ぶとよいでしょう。
成功体験の回答例
【苦手と思った業務にチャレンジして結果が出せたケース】
「私の成功体験は、もともと事務系であった私が現職で4年前に営業部門に移動になって、向いていないと思っていた営業が好きになり、営業力も身に付けられたことです。
もちろん、成約にいたるまでの苦労は思っていた以上に大変でしたが、成約できた時の喜びはそれまで味わったことのないものでした。それがモチベーションとなり、営業手法をさらに研究を重ねました。
成約のために何度も見込み客を訪れ、ヒアリングと提案を繰り返す日々の中で、営業初挑戦の年度ながら多くの見込み客から成約を頂きました。
私の営業2年目は先輩社員に迫る成果を出し、部署としては昨年実績を25%もアップするという記録的な実績がでました。
営業3年目の昨年は部署内のトップ成績で社長賞を頂戴し、営業部の課長を任されるに至りました。
この経験を御社に入社したあかつきには、営業部門で思う存分に活かして業績向上に貢献したいと考えております」
【新規事業立ち上げを任されたケース】
「私の成功体験として紹介させて頂きたいのは、現職においての3年前に始まった〇〇部門の新規事業開発プロジェクトです。
競合との関係上、新規事業の開発は喫緊の課題でした。当時、〇〇部門にいた私が抜擢され、プロジェクトリーダーに任命されました。
私を含む5名のプロジェクトメンバーで市場調査から始め、半年がかりで確固たる新事業の企画案を完成しました。それが採用されることになり、実行においても陣頭指揮を任されて、15名の精鋭メンバーのリーダーとして取り組み、昨年の春に事業を立ち上げるに至りました。
初年度目標は期待されて高めの設定がされていましたが、それを15%上回る業績が出ました。
2年目はさらにその実績を20%アップする成果を上げ、社内で表彰を受けました。
軌道に乗ったので3年目以降の運営は他のチームにバトンタッチしましたが、この成功体験で得たことは、個々の力を結束させた時のパワーの凄さを知ったことです。
そして、そのパワーを最大限に活かすために、一人ひとりの個性や考え方を尊重し能力を深く理解した、信頼をベースとしたプロジェクトの進め方です。
私一人の力では到底できないことを、優秀なメンバーたちの能力と個性を尊重してチームの勝利を成し遂げられたことは得難い経験です。
この経験は次々と新しい分野に挑戦する御社において、私が未開の領域にトライする際に役立てられると確信しております」
【初めての仕事に妥協せず完遂したケース】
「私の成功体験は社会人になってまだ2年目に、社内報の記事を担当することにより、与えられた仕事に妥協しないことの大切さを知ったことです。
数多い取引先の紹介記事を、社内報にシリーズとして載せる役割を与えられ、初めて記事を作成するという経験をしました。取引先を訪問して取材をさせて頂き、記事に落とし込むのですが、なかなか思うような文章が書けず苦しみました。
これはいけないと思い、文章作成に関する書物を短期間で読み漁り、知り合いの新聞社で記者を務める人やライターの人などに会ってアドバイスをもらいました。
集中して取り組むことにより、最後まで妥協せずにやり遂げることができました。
おかげで社内報の中のそのシリーズは好評で、終わる時ももっと読みたかったという多くの労いの声を頂きました。
妥協せず仕事をやり遂げる良い意味での執着が、自分の強みになっていると感じました。
御社で仕事をすることが叶った場合も、自分が担当した仕事は一切妥協することなく、真摯に取り組みたいと決意しております」
成功(失敗)体験を訊かれた場合の注意点
成功体験や失敗体験を訊かれた場合の、答え方の注意点について詳しく触れておきましょう。
成功体験の作り話はNG
自分をよく見せようとして作り話を用意する人がまれにいますが、これはNGです。同様に、本当の話であってもよく見せようとするあまりに誇張し過ぎるのもNGと考えましょう。
面接担当者には、候補者が嘘をついていないかを面接でのやり取りで見破ろうとする意識があります。違和感がある回答は、見過ごされることがほとんどありません。作り話であればリアリティに欠けたり出来過ぎだったりするので、担当者は必ず突っ込んだ質問をしてきます。
深掘りされると、嘘はすぐに露呈してしまうでしょう。そうなると大変厳しい評価を下されるのは確実です。成功体験は、くれぐれも作り話や誇張のし過ぎのないように準備しましょう。
単なる失敗談ではなく、それをバネにした成長ストーリーにする
失敗体験を訊かれると、ネガティブなイメージを感じてしまって、話すのがはばかられると感じる人もいいますよね。しかし、そんなことはありません。失敗体験は内容を適切に選びさえすれば、面接担当者にむしろポジティブな情報と印象を提供できます。
そもそも面接担当者が失敗体験を通じて知ろうとしているのは、その失敗や挫折をどう乗り越えたのか、失敗から何を学んだのかという点です。失敗そのものは単に学びや気づき、成長のきっかけであり、その後の話がメインである必要があります。
つまり、失敗という機会をバネにして始まる自己の成長のストーリーが語れるようなエピソードを探し、わかりやすく語れるようにしておきましょう。
失敗体験の回答例
「5年前の前職でのことですが、新規取引先との仕事で、チームリーダーとして提案をするプレゼンを準備しました。
それまでの経験とヒアリングから多分ニーズはこういうことだろうと思われるものを決めつけてしまって、メンバーと深く議論せずに方向性を決めて進めたのです。
ところがその予測は見事に外れていて先方の望むものとは程遠く、企画の抜本的な見直しを余儀なくされました。
それ以来、どんな企画に取り組むときも経験値だけで判断せずに、ヒアリングを周到に行なうのはもちろんとして、徹底したクライアント情報の分析や多くの各メンバーの意見も尊重して真摯に取り組むようになりました。
その結果、ニーズに合致する精度を上げていくことができたのです。現在では、新規クライアントをリサーチしてからの初のヒアリング段階で、クライアントとある程度共鳴できるような対話が交わせるようになったと感じています」
「現職において3年前のことですが、新人研修の進行管理を任された折のことです。会場の設営や資料の準備に手間取って、開始時間が大幅に遅れてしまいました。
その一件で、業務を具体的に想定して何が必要で何がネックになりそうかをあらかじめシミュレーションしておくことの大切さを痛感しました。
それ以来、どのような仕事に対しても事前に手順について詳細にシミュレーションを行なうよう心がけることで、スケジュール管理がスムーズにできるようになり、上司からの信頼も得ることができております。
その結果、最近では何か社内の行事がある場合に、『君は計画性がある』ということで進行役を抜擢されることが増えました。」
「現職に就いたばかりの頃ですが、ある任務を同期社員と2人で担当した折に、彼の仕事のスタンスにいまひとつ積極性を感じられなかったのです。そのためあまり相談する気持ちになれず、業務の重要な項目は自分の判断で進めるということがありました。
結果的にその仕事の出来栄えはあまりよくなかったのです。
後からわかったのは、実は彼は内気な性格のために私に意見を発信するのが苦手だったので、ほぼ独断で業務を進める私に声を掛けづらかったということでした。
しかも、私が取った方法以外のアイデアを持っていて、実はそれで取り組んでいれば結果はもっと良かったかもしれないというものでした。
私は猛省致しました。先入観だけで人を判断し、協調する雰囲気を作る努力もせずに進めたことを大いに恥じました。
真摯なコミュニケーションの大切さを痛感した私は、それ以来はどのような人に対しても先入観で判断せず、自らは心を開いて接するのを常としています。
その経験は、社内、社外を問わず良好な人間関係を構築するために役立っていると考えております」
これといって成功(失敗)体験がない場合の対処法
成功体験を訊かれた場合には、「ありません」という答えは極力やめておきましょう。どういう答えであれ、何かないと面接担当者は判断材料を失くしてしまいます。
必ずしも大それた話をする必要はありません。仕事に対して真剣に向き合い、工夫をこらしながら行動した結果として良好な成果に至ったこと自体が成功です。そういう観点で探せば、エピソードはきっとあるでしょう。華やかでなくとも、仕事を真摯に進める姿勢を伝えることが重要です。また、失敗体験を訊かれる場合もまれにありますが、これも同じく「ありません」は避けてください。
明確な失敗でなくとも「思ったほどうまくいかなかった」経験はきっとあるはずです。それを取り上げ、次なる目標に向かって努力と工夫をして、パフォーマンスを向上させたことを示すエピソードなどが立派な答えになります。
転職エージェントも味方につけよう
転職エージェントは転職に関するプロフェッショナルなので、成功体験に答える準備に苦労しているなら相談してみるのもおすすめです。
もちろん、困っていないとしてもエージェントのサポートによって、より効果的な準備ができるのは間違いありません。企業にはエージェントの方からも応募先企業にプッシュしてもらえることもあるので、利用しない手はないといえるでしょう。
私たちタリスマンも転職エージェントとして、転職に関するあらゆる悩みに対してサポートできます。ぜひお気軽にご相談ください。
まとめ
面接担当者が成功体験を訊く意図を説明し、有効な答え方を回答例も交えて解説しました。成功体験はその内容そのものよりも、成功の「価値観」「目標」「プロセス」を伝えることが大切です。
その3点が伝わるように答えるとともに、さらにそこで得た「学び」も加えて答えましょう。そしてそれを応募先企業に活かす決意を語れば、良い評価が与
えられる可能性が高くなります。
ここで紹介した答え方のポイントや回答例も参考に、成功体験を答える準備を入念に行なってください。