製造業界の職種とは?仕事内容や転職するメリット、業界の動向を解説

製造業界の職種とは?仕事内容や転職するメリット、業界の動向を解説

製造業界とは人びとの生活に役立つ、さまざまな製品を世に送り出す「ものづくりの現場」です。そんな製造業の分野は多岐にわたりますが、職種や仕事の流れは共通部分もたくさんあります。
今回の記事では、製造業界への転職を視野に入れているみなさんに向けて、職種ごとの仕事内容や転職するメリット、動向や直面している課題などをわかりやすく解説します。

製造業界とは?

私たちの身のまわりを見れば、大小さまざまな製品という製品で溢れています。製造業界とは、それらの製品を製造するあらゆるメーカーで構成される業界です。
製品の分野ごとに、電機メーカーや自動車メーカー、アパレルメーカー、スポーツ用品メーカー、楽器メーカーなどに分類されます。

日本の製造業界

製造業は日本の基幹産業であり、GDP(国内総生産)のおよそ20%を占めています。日本人の勤勉さと器用さを反映したモノづくりが、産業と文化の発展につながっているといえるでしょう。
日本政府も「モノづくり日本」の盛り上がりを期して、​​さまざまな顕彰制度や政策でサポートしています。近年では生産機能を海外工場に移す一方で、本部機能を国内本社に集約するなど、海外拠点と国内拠点の役割分担の明確化を図る企業も多く見られます。
AIやIoT、DXなどにより日本産業界のモノづくりは、大きな変革期を迎えているといえるでしょう。大企業の中でもベンチャー企業との緊密な連携や、人材の多様化を推し進めて新時代に対応できる体制の構築を図る企業も増えています。

製造業界の動向

製造業界では、製品開発のサイクルが加速する傾向が見られ、新製品を市場に投入しても話題性や鮮度を保つのが難しくなっています。そのため、後継商品や追随商品の投入までの期間が短くなりつつあるのが現状です。
そのような環境下で製品そのもののスペック的な付加価値の向上はもちろん、付加サービスや「モノ」にまつわるストーリーなどの背景づけなど、製品周辺でもプラスアルファの価値を加える動きが出ています。製品のライフサイクル(寿命)の長期化をねらっての、差別化やブランディングの取り組みです。
また、従来の製造業は、製品をエンドユーザーに販売した時点で、アフターケアはともかくとしてビジネスの本筋は完結していました。ところが最近では、その後もエンドユーザーにさまざまな角度からのサービス需要を喚起する流れが定着しています。
1つの商材の販売によって、そこから長期継続的にサービスや周辺商材を提供することで、収益のチャネルを確保する仕組みづくりの模索が盛んです。
例を挙げてみましょう。ヘルスケア機器のメーカーであれば、ネットに接続されたIoTヘルスケア機器からユーザーの健康状態を示すデータを掌握し、適切なアドバイスや周辺商材の提案などを行う取り組みがなされています。
これは、極めて長期にわたる有効な顧客接点を持ち続ける試みであり、ほかの多くの分野のメーカーもそれぞれの専門性が生み出す顧客接点の開発に余念がありません。

製造業界の主な職種

製造業界は分野が極めて多岐にわたります。しかしいずれの分野も同じ「製造」というカテゴリーなので、その職種の分類や仕事の流れなどは共通する部分が多いといえるでしょう。
製造業界の主な職種(事務系などの全産業に共通する職種は除く)は以下のとおりです。

  • 商品企画
  • 研究開発
  • 設計
  • 生産技術
  • 製造
  • 生産管理
  • 品質管理
  • 営業
  • 広告宣伝・広報

それぞれの職種の内容を、見ていきましょう。

商品企画

商品企画は自社の新商品やその追随商品(普及版など)、あるいは現行商品を改良した後継商品などの企画を行う仕事です。基本的にはクリエイティビティ(創造性)の素養が求められます。
商品企画にあたっては、市場や競合他社の動向のリサーチや店舗の視察などをもとに、消費者の志向の変化や業界のトレンドを分析します。また、クレームを拠り所に商品の改善点を見出し、顧客の潜在ニーズを把握する必要があります。
別部門である商品開発やマーケティング、販売戦略などにも関わることが多く、仕事の幅が広いのも商品企画の特徴です。
そのようにさまざまな仕事を進めながら社内外との調整も担う役割なので、商品企画には高いコミュニケーション能力と柔軟な発想力が求められます。
企画した商品が技術的に実現可能か、採算が見込めるかなども並行して考える必要があるので、創造性に加えてビジネススキルやバランス感覚も必要な職種です。

研究開発

研究開発の仕事は、基本的に研究職と開発職に分かれます。
研究職はさらに基礎研究と応用研究に分けられます。基礎研究というのは5年あるいは10年後の実用化を目指して行う先見的な研究です。応用研究というのは基礎研究をもとに実現可能性や既存製品への応用の研究を行います。
開発職はさらに研究開発・技術開発・商品開発の3つに分かれます。研究開発は研究職の研究結果をもとにして商品化を行う仕事です。
技術開発は製造工程に活かせる技術面の開発を担う仕事で、その成果が特許を取得することもあります。商品開発は商品企画部門の提案をもとに、商品化を行う仕事です。

設計

製造業の設計は企画部門や開発部門で練られた構想を、実際の製品化につなげるための図面化を行う仕事です。単に図面に落とし込むだけでなく、指定された製造コスト内で指示されたスペックを実現できるように設計する必要がある、難易度が高い仕事です。

生産技術

生産技術は同一製品を大量生産に踏み切る際に、効率的に進められる生産体制を構築する仕事です。要求される製品のスペックの水準を維持しつつ、コストを抑えて効率よく生産する方法を模索する役割を与えられています。
生産技術の領域は幅広く、生産設備を新たに立ち上げる際には、設備の設計および製造の発注、使用する機器の選定のほか、作業の手順を決定します。また、既存設備の生産ライン改良や新しい生産技術の開発も手がけます。
商品のライフサイクルの短期化により、多品種少ロット生産も求められるようになったことから、生産技術の重要性が高まっています。

製造

製造は製品を実際に作り出す製造業の根幹の仕事です。製造現場の仕事内容は分野によってさまざまに異なります。
自動車工場であればプレス加工や溶接、塗装、組立や検査などの工程があり、それぞれの工程の中で作業が分担されます。製造現場の作業自体は、担当者ごとに決まった作業をこなすルーティンワークが中心です。

生産管理

生産管理は営業部門の販売目標をもとに生産計画を立てて、生産の進捗を管理する仕事です。製造に必要な原料や部品の調達先の決定や価格交渉、納期や在庫の管理も担います。
単一商品よりも複数の商品の製造を並行して手がけることが多く、納期や納入先、在庫の状態によって、優先順位を設定して生産計画を進めます。そのため営業や製造との調整も必要です。
生産ラインを常に正常稼働させるための設備の保守管理も生産管理の役割です。

品質管理

品質管理は製品の品質基準を設定し、製造される製品がそれをクリアするように管理する仕事です。製品に不具合が発生すれば速やかに要因の分析を行います。
工程や作業順序の見直しなどの再発防止策を立て、製造マニュアルの変更を行って製造プロセスの包括的な改善を図ります。

営業

営業は自社が製造した商品を市場に出すために、欠かせない販売の仕事です。製造業の営業部門はその製品群を扱う商社や卸売業者、チェーン展開している大手小売業者などに対する法人営業が中心です。
一般的に営業は既存顧客に対するルート営業と新規開拓営業がありますが、製造業はルート営業がメインとなります。これは自社と取引関係にある企業との関係を保ち、既存商品の追加受注や新商品の提案などを行います。
サブとはいえ新規開拓営業も重要な仕事です。取引のなかった企業に営業アプローチをかけ、自社製品を長期継続的に扱ってもらえるチャネルを作る重要な役割です。
また、営業はアフターフォローも担当することもあれば、取引先のハウスブランドによるオリジナル商品の開発をサポートし、自社で受注することもあります。

広告宣伝・広報

広告宣伝と広報はどちらも自社製品に関する情報を世間に発信する役割ですが、目的が異なるので部門を分けることが多いです。
広告宣伝は直接セールスにつなげるプロモーション活動を、さまざまな媒体を利用して行います。
従来のTVラジオ・新聞や看板、ポスターなどのアナログなものから最近はデジタルなWeb広告やSNSなどを利用した活動、オウンドメディアを活用したコンテンツマーケティングなどにシフトしつつあります。
広報は新製品情報や企業情報の公式発表の記者会見やプレスリリース制作、取材への対応など、広告でカバーできない部分の公的なスポークスマンとして機能します。直接セールスにはつながらないブランドイメージの維持、向上に携わる仕事です。

製造業界への転職のメリット

製造業への転職のメリットとして主に挙げられる、以下の3つについて見ていきましょう。

  • 手に職がつく(技術資格)
  • サプライチェーンマネジメントを学べる
  • 転職しやすい

<手に職がつく(技術・資格)>
製造業の中でも、技術関係の職種は専門的な知識やスキルが求められるので、キャリアを通して培ったものが、分野は変わっても製品づくりにも役立つことは大いにあります。
また、技能職に携わった人材は文字通り手に職をつけたことになり、人材価値が上がってキャリアアップの糧となります。資格取得を奨励されることもあり、働きながらの資格取得を企業がサポートしてくれる場合も少なくありません。
<サプライチェーン・マネジメントを学べる>
製造業である程度の上位職を経験すればサプライチェーン・マネジメント(以下SCM)を学ぶ機会となるでしょう。現在のようにグローバル化とIT導入が進みゆく産業界では、SCMは重要な戦略的スキルとなります。
SCMとは原材料の調達から最終成果物の納品(配送)まで、製品がエンドユーザーに渡るまでに関連する商品・データ・財務の流れの包括的なマネジメントです。
具体的には製品のライフサイクル管理、生産ラインの保守、リソースの管理、在庫計画、注文管理、そして物流面でのロジスティクスを含む多岐に渡る領域のトータルマネジメントになります。
難易度が高い仕事のカテゴリーですが、多国籍生産プロセスやグローバルサプライヤーの管理などを経験できるので、グローバルマーケットに関連する活動にもそのスキルを応用できます。
<転職しやすい>
現代の製造業は製造工程のマニュアル化や自動化が進んでいるので、何かひとつの分野の製造業を経験すれば、未経験分野でも比較的転職しやすい業界と言えるでしょう。
しかしながら、転職活動で求人企業の分野の経験者と選考で競合すれば、経験者が優遇されることが多いため、対象企業の分野の基本知識やスキルを身に付けておくことが賢明です。

製造業界の課題

製造業はほかの業界と同様に、いくつもの課題を抱えています。もっとも大きな課題は少子高齢化による労働人口の減少からくる深刻な人材不足です。
多くの製造現場で人材の確保が喫緊の課題となっています。人びとの暮らしの基盤を支える製造業の労働人口が減ることは、社会問題ともいえるでしょう。
生産拠点の海外移転や外国籍労働者の採用で対応する企業はあるものの、それで不足分をカバーできるわけではありません。
理想的には、あらゆる製造業者がIT導入やDX(Digital Transformation)推進によって製造の効率化や省力化が進み、人材不足が解消することです。しかしながら現実は、なかなかそうもいきません。
IT導入やDX推進にはコストがかかるので、活用して成果を上げているのはまだ一部の大企業にとどまります。
海外では小規模工場でも先端技術を積極的に導入し、生産の効率化を図っています。今後は海外の高品質の製品が安価で製造され、脅威となる可能性があります。時代の変化に対応して国際競争力を高めていくことが、これからの製造業の大きな課題です。

まとめ

製造業は私たちの文化的生活を支える産業なので、その時代によって注目される分野は移り変わりますが、決して廃れることのない業界といえるでしょう。
製造業界への転職を考えるみなさんは、ここで紹介したように多くの職種があるので、自身のキャリアと適性を考え合わせて検討してください。

製造業界からコンサル転職へ興味のある方はこちらの記事もどうぞ!

 

 

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