部下から突然退職の意思が表明された場合、それをいかに引き止めるかはマネージャーや、人事担当者が直面しなければならない重要な問題です。
残留を成功させる鍵は、従業員とのコミュニケーションです。今回の記事では、退職する部下の効果的な引き止め方について解説します。
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目次
退職の効果的な引き止め方の手順とは?
退職の意思を、強く固めている部下を引き止めるのは困難です。しかし、まだ迷っている部分を残している場合は残留に成功する可能性があります。ここでは、そんな場合に効果的な引き止め方を紹介します。
退職を希望者する社員に寄り添って理解を示す
何よりも優先すべきは、退職の意向を告げてきた部下の話を本人が納得するまで傾聴することです。この段階では意見や助言を差し挟まずに、ひたすら話を聴くことに徹します。それが相手に寄り添うスタンスをストレートに表現できるからです。誰しも悩みを抱えているときは、精神的に寄り添ってくれる人に話を聞いてもらいたいものです。
注意点としては、傾聴していることを示そうとして相槌を打ち過ぎることです。言葉ごとに相槌を打つと、相手に「あなたに私の苦しみがそんな簡単にわかるのか?」という懐疑的な気持ちを起こさせてしまいます。
相手を真剣な眼差しで仰ぎ、ひたすら耳を傾け、話の一区切りごとに控えめに相槌を打つくらいが賢明です。
これまでの功績を評価し感謝する
部下の退職理由の中で、自分の評価に対して不満を持っている場合が多いです。よって、本人のこれまでの功績を思い出し、口先ではなく心から評価して感謝する態度を見せましょう。
それだけで直ちに引き止められるわけではありませんが、少なくとも真摯な言葉によって部下の態度が軟化する可能性は生まれます。
本人の希望を尊重する
退職の話の場合、相手が望んでいることを簡単に否定されると、余計に頑なになるおそれがあります。そのため否定ありきではなく、最初の段階は希望を「尊重」しましょう。「肯定」すると退職希望を認めたことになるので、あくまで「尊重」です。
自社で提案できる解決策のオプションを伝える
本人の話をじっくり聞いた上で、問題を解決する可能性があるオプションを考えましょう。なにか、実行可能な解決策の糸口があるなら、退職を考え直すためのオプションとして、伝えてみます。
納得できるオプションがあれば改善すると誓う
提案したオプションの中で、本人が納得できるものがある場合は、しめたものです。それを実現できれば、やめる必要はなくなることを意味します。
そこで、部下にはそのオプションの方向性で、問題や課題を解決することを誓いましょう。誓うからには責任を持って実現する覚悟も必要ですが、引き止められる可能性は高まります。
退職を引き止める際の注意点
部下の退職を引き止める際に、注意すべき点が以下のように5つあります。
- 議論にならないように心掛ける
- 秘密裏に進めて普段どおりに接する
- ネガティブな表現は控える
- 後々の社内への影響に配慮する
- 引き止めが叶わない場合も誠実に接する
個別に見ていきましょう。
議論にならないように心掛ける
まず、絶対に議論にならないようにしましょう。感情的にさせてしまうと、本来じっくりと説得すれば考え直す可能性がある場合でも、態度を硬化させてしまうことになります。
あくまでも意見を尊重し、むやみに反論をせず向き合う、辛抱強い姿勢が大切です。
秘密裏に進めて普段どおりに接する
引き止めの説得は、成否にかかわらず一日だけで決着がつくものではなく、数日間や場合によっては数週間に及びます。その間は絶対に秘密裏に進め、本人にも普段どおりに接することが必要です。
なぜなら、本人が周囲にもそれを伝えたり、あなたの接し方で周りが何かを感じたりすることが、引き止めの道を閉ざしかねないからです。
仮に、説得が成功しそうであっても、周りが退職の意向を知っていた場合、本人は退職の意思を翻すことに対して恥ずかしく思いがちです。そして、引くに引けなくなるおそれがあります。
そういう事態を避けるために、最初に退職意向を聞いた際には、前述のように真摯に傾聴するとともに、話の最後に退職意向をまだ誰にも伝えないようにお願いしましょう。
本人がうっかり誰かに打ち明けると、そこから広まってしまいかねません。そうなると、考え直す環境から遠ざかり、退職に向かう流れができるので、注意が必要です。
ネガティブな表現は控える
退職意向を伝える部下に対して、ネガティブな表現は控えましょう。「辞めるとろくなことはない」「必ず後悔する」などの、脅すような言い方や不安を煽る言葉は控えてください。
後ろ向きな説得による引き止めは、めったに成功しません。仮に引き止めできたとしても、そういう場合は本人のエンゲージメントが低くなり、その後の仕事にもネガティブなトーンがつきまといます。
会社がとった対応や積もる不満を周りにも共有し、職場全体のエンゲージメントを下げる要因となりかねません。
後々の社内への影響に配慮する
引き止めのために、待遇面の改善をオプションとして提示することがあります。この場合には、後々の社内への影響に配慮する必要があります。
退職意向の申し出をきっかけとして、社内の環境や課題の改善に取り組むことはもちろん大切です。しかし、それが偏ったオプションだった場合、不公平性を周囲に感じさせかねません。
そうなると職場の雰囲気に悪影響を与え、既存社員のエンゲージメントを低下させてしまいます。
引き止めが叶わない場合も誠実に接する
引き止めが叶わない場合も、当然ながらあります。むしろ、そちらのほうが実際は多いでしょう。その際の大切なことは、正式に退職するまでの期間も誠実に接することです。
「どうせ辞めるから」と業務を与えなかったり、やってきた仕事を取り上げたりしてはいけません。最終出勤日まで誠実に接し、基本的にはこれまでどおりの仕事を続けてもらいましょう。
誠実に接しておかなければ、転職先やそこでの客先などに、良くない評判を伝えられるおそれがあります。
まとめ
上司としては部下が退職の意向を切り出したとき、辛いものがあります。それでも、真摯に対応する責務がある立場です。誠実に接することで相手の気持を落ち着け、できれば思いとどまらせたいものです。
そのためには、ここで紹介した手順およびいくつかの注意点を普段から認識しておき、いざというときに適切な対応ができるようにしておきましょう。