採用ブランディング

いまこそ、「採用ブランディング」を取り入れ、ほしい人材を獲得する!

いま、企業の採用担当者たちに注目されている「採用ブランディング」。近年ますます激化する人材獲得競争に勝ち抜く方法として期待されています。もし、現在の採用活動に限界を感じているとしたら、あらためて「採用ブランディング」について考えるべき機会かもしれません。
今回は、採用ブランディングとは何かという基礎知識から、その効果と留意点、採用ブランディングの進め方までを解説します。

採用ブランディングの基礎知識

「採用」は言うまでもなく、「ブランディング」もすっかりおなじみの言葉です。最近では「採用ブランディング」もよく見聞きするようになりました。
ところが、いざ実践するとなると、何から手をつけていいのやら……と戸惑ってしまうかもしれません。そこで、まずは採用ブランディングの基礎知識を押さえておきましょう。

採用ブランディングとは

採用ブランディングとは、求職者に「この企業で働きたい!」と思ってもらうためのブランドづくりのこと。この場合のブランドづくりは、組織づくり、あるいは会社の“らしさ”づくりと言い換えてもよいでしょう。
いずれにせよ、求職者が履歴書に書くような志望理由———「御社は◎◎◎だから、ぜひ働きたい」「御社の◎◎◎に私の経験が生かせる」などの◎◎◎にあてはまる自社の個性や強みを見つけ、育て、伝えていく一連の活動が、採用ブランディングです。

そもそもブランディングとは

採用ブランディングをさらに深く理解するために、そもそもブランディングとは何かを確認しましょう。
まず、おおまかにいうと、ブランディングはブランドの構築や管理を行うことです。
たとえば、ある人が企業に対して「チョコレートといえばA社」「時短家電ならB社のロボット掃除機」「C社は若手が活躍できるらしい」といった印象を抱いているとしましょう。それが正解でも誤解でも、誰かの心の中に湧いてくる心象を「ブランドイメージ」といいます。一方、ある企業が消費者や求職者に対して「A社といえばフェアトレードチョコレート」「A社は従業員満足度が高い」と認識してほしいとしましょう。その知られたい企業の姿を「ブランドアイデンティティ」といいます。そして、ブランドアイデンティティとブランドイメージを一致させ続ける活動が「ブランディング」なのです。

採用ブランディングが注目されている背景

なぜ、採用ブランディングが注目されているのでしょうか。
その背景にあるのは、少子高齢化に伴う労働力人口の減少です。
多くの企業が激しい人材獲得競争にさらされ、そのなかでさまざまな採用課題を抱えています。求人を出しているのに「応募者が少ない」「求める人材からの応募がない」、採用したのに「内定辞退が多い」「ミスマッチが起きる」……。
これらの解決策となるのが、採用ブランディングなのです。

ちょっと思い出してみてください。
ブランディングとは、ある企業が認識してほしい自らの姿と、ある人が思い浮かべる企業の姿を一致させることでした。
採用ブランディングにあてはめると、企業の「私たちは◎◎◎な会社である」というブランドアイデンティティと、求職者の「あの会社は◎◎◎のイメージである」というブランドイメージを一致させるわけです。

たとえば、求職者がそのイメージゆえに企業によい印象を持っていたとしたら、求人に目を止めてくれるかもしれません。
もし、社風や労働条件が希望と合致し、自分が企業の求める人物像に近ければ、応募を検討するはずです。
さらに、自分のイメージどおりの会社だとわかれば、内定辞退や退職は考えないでしょう。つまり、採用ブランディングは、ほしい人材を獲得する方法として期待できるというわけです。

採用ブランディングの効果と留意点

では、採用ブランディングを取り入れると、具体的にはどのような効果が得られるのでしょうか。
また、どのような点に留意すべきなのでしょうか。

前章で確認した「採用ブランディング」「ブランディング」を念頭において、効果と留意点を確認していきましょう。

採用ブランディングの4つの効果

まず、採用ブランディングには4つの効果が期待できます。それは、「企業の認知度が向上する」「採用マッチング率が向上する」「採用コストを削減できる」「社員のモチベーションを上げられる」。その理由を説明します。

企業の認知度が向上する

1つ目の効果が、「企業の認知度が向上する」。
前章で説明したとおり、採用ブランディングは、自社の個性や強みを見つけ、育て、伝えていく一連の活動です。そして、その個性や強みが求職者に知られている度合いを認知度といいます。それならば、「私たちは◎◎◎な会社である」という自社の実像を、自社をよく知ってほしい相手に、適切な方法で伝えていけば、必然的に企業の認知度が向上することは想像に難くないでしょう。
また、発信するべき自社の個性や強みは、他社にはない魅力です。それならば、正しい情報発信により、他社との差別化が図れます。それは、自社に共感する応募者の増加へとつながるはずです。

採用マッチング率が向上する

2つ目の効果は、「採用マッチング率が向上する」。
採用ブランディングは、企業と求職者の継続的なコミュニケーションにほかなりません。適切なコミュニケーションを重ねることで、求職者の企業への理解や共感が深まっていきます。その結果として、企業理念やビジネスをよく理解し納得した候補者が残るため、内定辞退率や離職率は下がり、定着率が上がるのです。それは、「働きやすい会社」「従業員満足度の高いよい会社」というよい評価につながるでしょう。

採用コストを削減できる

3つ目の効果は、「採用コストを削減できる」。
目に見えるコストでは、求人広告費を減らせます。採用ブランディングによって企業の認知度が上がれば、当然ながら、自社の動きに注目してくれる求職者が増えるわけです。ホームページやSNSでの告知で応募者を集められるようになるでしょう。

また、クチコミの効果も侮れません。「採用担当者が親切だった」「面接に行ったら、社内の雰囲気がよかった」などの評判により、企業の認知度や人気度がより高まれば、さらに応募者を集めやくなるはずです。

目に見えづらいコストでは、採用業務の負担を減らせます。前項のとおり、ミスマッチが防げると内定辞退や離職が減り、採用にかかる労力を無駄にしません。また、人材募集や選考を繰り返し行わなくてもよくなり、採用担当者の心身の負担が軽くなるでしょう。

社員のモチベーションを上げられる

4つ目の効果は、「社員のモチベーションを上げられる」。
採用ブランディングは、企業の個性や強みを見つけ、育て、伝えていく一連の活動です。それは、求職者に向けた活動でありながら、社員にとっては、自社を見つめ直し、魅力を再確認し、自分たちの言葉で社外の人たちに伝えていく活動になります。
採用ブランディングが、求職者から「この企業で働きたい!」という思いを引き出せるのだとしたら、社員から「この企業で働けてよかった!」という思いを引き出せても不思議はないでしょう。
自社や仕事に誇りを感じられると、モチベーションが上がり、それが成果の向上につながり、好循環が生まれるはずです。
採用ブランディングは、採用課題を解決するだけではなく、社内にもよい変化をもたらします。まさに、ブランドづくりは組織づくりといえるでしょう。

採用ブランディングの2つの留意点

採用ブランディングの留意点は、「全社で取り組まなければならない」「結果が出るまでに時間がかかる」の2つです。詳しく見ていきましょう。

全社で取り組まなければならない

1つ目の留意点は、「全社で取り組まなければならない」。
採用ブランディングは、人事部や採用担当者だけが取り組めばよいというものではありません。なぜなら、企業として求職者に発信する情報も、求職者が企業に抱く印象や期待する労働環境も、「人事部」「採用担当者」といった特定の部署や人物ではなく、「企業」全体を示しているからです。企業の思い(企業理念)や性格(社風)は、個々の経営者や社員によるものではないことからも納得しやすいのではないでしょうか。
もし、企業理念や社風に惹かれて入社したのに、実情はちょっと違っていたとしたら、誰もが多少なりとも不安を覚えます。そのまま会社になじめればよいのですが、そうでなければ、離職に至るかもしれません。
このように、求職者の思い描く会社像と、会社の実情が一致しないと、不幸な誤解やギャップが生まれます。それを避けるためにも、全社員が会社の一員としての自らのあり方を考えたり、求職者に向けて発信する内容を理解したりしておかなければなりません。採用ブランディングは、全社をあげて取り組んでこそ、効果が期待できるのです。

結果が出るまでに時間がかかる

2つ目の留意点は「結果が出るまでに時間がかかる」。
残念ながら、採用ブランディングには即効性がありません。世の中に認知され、会社の個性や強みを理解してもらい、企業理念や社風に共感してもらい、「この会社で働きたい!」と思ってもらうためには、それなりの時間が必要です。まして、応募者が増えた、内定辞退や離職が減った、社員の定着率がよくなったという変化を実感し、採用の悩みが解消したと思えるようになるのは、早くても数年はかかります。
すぐに効果が現れないからといって諦めてはいけません。採用ブランディングの成否の鍵を握るのは「継続」。長期目標を掲げ、PDCAサイクル(採用計画→募集・選考→採用活動の振り返り→改善)を回しながら、情報発信を続けていきましょう。

採用ブランディングの進め方

採用ブランディングは、労力も時間もかかるもの。それでも、取り組む価値はあります。前章で見てきたとおり、採用活動そのものにはもちろん、社内にもよい効果が期待できるからです。
とはいえ、何から手をつければよいのかわからないという人も少なくないでしょう。そこで、採用ブランディングの進め方を説明します。

採用ブランディングの手順

重要なことなので繰り返しますが、採用ブランディングは一朝一夕にできるものではありません。しかし、その手順はわりとシンプルです。5つのステップを踏むだけ。具体的に見ていきましょう。

プロセス

ステップ1:自社を知る

採用ブランディングは、「自社を知る」ところから始まります。
いま一度、企業理念や社風、事業内容、働き方、福利厚生などを見つめ直し、個性や強みを確認しましょう。
そのためには、採用市場の動向、業界内での自社の立ち位置、競合他社の動きなど、外部の状況を把握しておかなければなりません。
自分たちが個性や強みととらえていることが、他社と比べてそれほど個性的でも優位でもなかったり、自分たちがあたりまえと思っていることが、じつは他社にはない魅力だったりするからです。

また、あらためて採用課題を洗い出します。
「応募がない」「応募者の中に求める人材がいない」「内定辞退が多い」「入社してもすぐに辞めてしまう」……。いずれも悩ましい問題ですが、原因はそれぞれ異なります。効果的な対策を講じるためにも、自分たちのいちばんの困りごとをしっかりと把握しておきましょう。

ステップ2:求める人物像を明確にする

採用ブランディングの次のステップは、「求める人物像を明確にする」こと。
自社を知れば、自ずと自社にふさわしい人物像が見えてくるはずです。求める経験やスキルなど、人材要件を定義したら、コンピテンシーモデル(優れた成果を発揮する行動特性を類型化したもの)やペルソナ(採用したい人物像)を設定しましょう。
ポイントは、実在の人物と思えるほどにパーソナリティーを具体化すること。
つまり、「簿記検定2級以上の人」「向上心のある人」といった仕事に欠かせない条件だけではなく、ライフスタイルや行動パターン、人間関係、好みなどまで思い描くのです。

ステップ3:採用コンセプトをつくる

3つ目のステップは、「採用コンセプトをつくる」。
採用コンセプトとは、採用活動の方針です。求職者に向けて自社をアピールする方針と言い換えてもいいでしょう。
つまり、ステップ2で設定したペルソナに「この会社で働きたい!」と思ってもらうために、ステップ1で整理した自社について、どのように見せていくべきなのかを考えるというわけです。
このとき、よく見せたいからといって誇張してはいけません。
取り返しのつかない誤解を生む原因となってしまいます。もともと備わっている魅力を、ペルソナの心に響くように伝える方法を模索しましょう。

ステップ4:発信内容・方法を決める

4つ目のステップは、「発信内容・方法を決める」。
ステップ3でつくった採用コンセプトに沿って、何を、どのように言うのかを決めていきます。自社の魅力であっても、求職者の、とりわけ採用したい人材の心に響かないのであれば、その魅力を発信してもあまり意味がありません。それどころか、求める人物像とはかけ離れた人ばかりが集まってしまうおそれがあります。
お互いにとって不幸な事態を避けるためにも、発信内容はしっかり絞り込みましょう。
また、発信方法も精査しなければなりません。自社のホームページ、SNS、求人サイト、ハローワーク、会社説明会、セミナーなど、情報発信の方法はいろいろあります。

しかし、やみくもに発信を続けても効果は薄いでしょう。採用したい人物の目に止まらなければ、どれだけ適切な発信内容も届かないからです。
ポイントは、ステップ2のペルソナが共感してくれそうな発信内容を、ペルソナの心に響く言葉にして、ペルソナが見たり参加したりしそうな発信方法を選ぶこと。
それを突き詰めていけば、最もふさわしい発信内容と発信方法を決められるはずです。

ステップ5:運用・検証・改善を繰り返す

最後のステップは、「運用・検証・改善を繰り返す」。
前述のとおり、採用ブランディングは、結果が出るまでに時間がかかるものです。成否の鍵は継続にあります。
まずは、ステップ1〜4にしっかり取り組んでください。そして、採用活動をしっかりと検証し、その結果に応じて改善を図る———という流れを繰り返し、発信内容や発信方法をどんどんブラッシュアップしていきましょう。

採用のプロに任せるという選択

採用ブランディングの基礎知識、効果と留意点から、その進め方までを紹介してきましたが、いかがでしょうか。
さっそく明日から取り組もう!と思った人も、取り組みたいけれど自信がない、あるいは手が回らないと思った人もいるでしょう。

もし、採用ブランディングは手に余ると感じたなら、プロに任せるという手があります。

たとえば、ブランディング会社やデザイン会社、広告代理店は、採用ブランディングはもちろん、さまざまなブランディングの知見やノウハウを持っています。
採用ブランディングのステップのなかでも「採用コンセプトをつくる」「発信内容・方法を決める」がうまくできなかったり、あるいは、自社ホームページのリニューアルや広告出稿を検討したりしている場合は、非常に頼りになるでしょう。

また、人材業界にも採用ブランディングを得意とする会社があります。採用課題の洗い出しから、求める人物像の明確化、ふさわしい求人媒体の選定、採用選考のノウハウまで知り尽くしているわけですから、採用に関するお悩みを相談する相手としてはぴったりです。

タリスマンで採用ブランディングを!

人材紹介や人材シェアサービスを提供しているタリスマンもまた、採用ブランディングを手がけています。
RPO(採用代行)サービスの一環として、採用ブランディングをサポートしているのです。
タリスマンには人材業界での経験が豊かなベテランスタッフがそろい、担当する企業に寄り添い、伴走しながら、採用業務全般を支援しています。

そもそも専任の採用担当者がいない、採用業務に不慣れな採用担当者しかいない、人事部の人手不足により思うような採用活動ができていないなど、採用担当者の経験やマンパワーに課題があるのだとしたら、採用ブランディングを含めてRPOの導入を検討してみる価値はあるでしょう。

採用ブランディングで会社の魅力が広まれば、もう採用に困らない

採用ブランディングは、近年ますます激化する人材獲得競争を勝ち抜く方法として期待されています。
やや曖昧な概念ですが、求める人材に「この会社で働きたい!」と思ってもらうための“らしさ”づくり、組織づくりです。
採用課題がひとつでもある場合はもちろん、いまのところは順調に採用できているものの採用活動に限界を感じている場合も、採用ブランディングを検討してみましょう。時間は多少なりかかる一方、一度成果を挙げれば応募者集めに苦しむこともミスマッチに泣くこともぐっと減るはずです。