本来デザイナーが自身のスキルを企業や顧客に紹介するためのポートフォリオは、最近ではエンジニアも提出を求められるケースが増え、作成にあたり内容や質に悩む人も多いことでしょう。
ともあれ、質の高いポートフォリオを作成すれば、転職活動を有利に進めることも可能です。この記事ではエンジニアが転職時の武器にできるポートフォリオに関しての情報と、作成時の注意点について解説していきます。
目次
ポートフォリオとは何か
エンジニアのポートフォリオについて解説する前に、まずはポートフォリオそのものについて確認しておきましょう。
ポートフォリオはスキルをアピールする作品
ポートフォリオの言葉の意味は「書類入れ」です。そこから転じて、クライアント企業にとって、主にグラフィックデザイナーなどの実績や力量をわかりやすくまとめた、いわゆる「作品集」的な資料として定着してきました。
さらにはそれがクリエイター系の職種にとって、就職・転職の選考の際にも資料として扱われるようになったのです。Webデザイナーなどの選考には、重要な判断材料として位置付けされるようになってきました。
かつてグラフィックデザイナーは、過去にデザインしたポスターパンフレット、書籍の表紙などのデザインをプリントアウトしてまとめ、クライアントへの資料として使っていたものです。それがポートフォリオのプロトタイプといえるでしょう。
近年のWebデザイナーは、Web上で作品を紹介するWebポートフォリオ=ポートフォリオサイトを作成するようになりました。現在の「ポートフォリオ」は、主にこの形態を指すのです。
最近では多くのクリエイター系のワーカーがポートフォリオを公開しています。自身への連絡先やSNSアカウントのリンクを配置しておいて、ポートフォリオから直接案件の受注につながるケースがあるわけです。
また、Web上のポートフォリオを就職の選考での資料として提出したりする流れも定着してきました。この中にエンジニアも含まれるようになってきているのです。
エンジニアがポートフォリオを作成する4つのメリット
エンジニアがポートフォリオを作成するメリットを整理すると、主に以下の4項目となります。
●技術力の証明
●積極的な姿勢を誇示
●書類選考で有利になる
●ミスマッチのリスクを低減
項目ごとに掘り下げてみましょう。
技術力の証明
ポートフォリオを作成するにはある程度のスキルが必要です。作成したポートフォリオはその人の技術力の証明としてわかりやすく、培ったスキルを的確に伝えることができます。
企業がエンジニアの選考で重視するポイントは、自社が求めているスキルを持っているかどうかという点なので、ポートフォリオは有効な評価材料となるわけです。作品の構成はもとより、表示速度やコードの質も見られます。
実務経験が豊富なエンジニアは、成果物をポートフォリオに掲載することで実力をアピールすることができるのです。
ポートフォリオを提出すれば、企業側はその人の技術力を把握しやすく、履歴書や職務経歴書だけではわからない技術力も評価しやすくなります。ある意味、ポートフォリオはエンジニアにとって、プレゼン資料の意味合いを持つといえるでしょう。
積極的な姿勢を誇示
ポートフォリオの作成には、多少なりとも時間と努力が必要です。作成すること自体が、エンジニアとしてスキルアップの努力を重ねている姿勢を示します。
エンジニアの求人には、いろいろな人が応募してくるので、中には「やる気だけは誰にも負けません」と主張するわりに、エンジニアとしての努力をあまりしていない人もいるようです。
そういう人とポートフォリオを提出する人を比べた場合、どちらが積極性を評価されるのかは明白でしょう。
書類選考や面接で有利になる
企業の採用担当者は多くの応募書類を、常日頃から目にしています。膨大な応募書類から「この人は他と違う」という印象を与えるには、職務履歴書だけでは不充分です。
そこで魅力的なポートフォリオを提出していれば、提出していない応募者よりも、多少なりとも有利に選考を進めやすくなります。
企業は仕事ができる人を採用したいのです。選考担当者は事前にあなたのポートフォリオを見ているわけなので、その評価が高ければ面接においてポートフォリオに関して質問をしてくることでしょう。
それは、あなたにとってそれだけ答えにくい質問が減ることをも意味します。企業が求める技術力があれば、口下手であってもエンジニアは評価されるのです。言葉足らずの部分を、ポートフォリオが補ってくれる期待ができるでしょう。
ミスマッチのリスクを低減
ポートフォリオによってあなた自身のスキルを示すことには、選考に有利という以外にも意味があります。入社後のミスマッチを避けることができるという面です。
ポートフォリオを提示することで、応募先企業はどのプログラミング言語を習得しているか、どのレベルのスキルを持っているかを把握できます。
それがあれば、企業側は採否の決定や入社後の配属について、客観的な情報をもとに決めることが可能です。もしあなたの活躍が見込めるのであれば、自信をもって採用できるでしょう。
残念ながらその企業が求めている人材でないなら、不採用となります。つまり、入社してから「悪いけど君はうちには合わない」などといわれて、早期で退職するようなミスマッチの事態を避けることができるのです。
ある意味、ポートフォリオを提出したがゆえに合わないと判断されて不採用となるかもしれません。しかしそれは後の不本意な事態を避けるという意味では、むしろ歓迎されるべきものです。
フリーランスにとってのポートフォリオ
フリーランスエンジニアの場合は、これまでの実績などが伝わりやすいようにポートフォリオを構成することが大切になります。
携わってきたプロジェクトの規模や自身が担当した内容、問題発生時に手を打った対処方法などを合わせて記載しておくと、どんな経験をしてきたのかが伝わりやすくなるでしょう。
それ以外にも、自分が作成したアプリやWebサービス、利用ユーザー数などの実績も記載できるのです。開発ができることだけでなく、携わってきたサービスがどんな規模でどう展開したのかも併記することで強くアピールができます。
エンジニア未経験者にとってのポートフォリオ
未経験者がエンジニアを目指す場合、履歴書や職務経歴書だけではスキルのレベルを理解してもらえないので、経験者と比較された場合は不利になりがちです。
選考に勝ち抜くためにポートフォリオを用意して、自らのスキルを示すことが大切となります。ただし、実績がないためにアピールする材料が不足しているのも否めません。
そこで、学習中あるいはスクールなどに通っている段階で作成したデモや成果物などを、ポートフォリオに盛り込むのが賢明です。自作のアプリやツールなどがあれば、スキルの証明になります。
ここから先に述べる、ポートフォリオ作成に関する注意点をよく認識して準備をすることが、未経験や現役、フリーランスを問わず重要となるでしょう。
ポートフォリオ作成に関する6つのポイント
エンジニアのポートフォリオ作成に関して、注意しておきたい点は以下の6項目です。
●背景にある意図が明確か
●使いやすい仕様になっているか
●シンプルかつ統一性があるか?
●技術スタックは明確になっているか
●体裁だけでなくコードも整っているか
●サンプルコードに手を加えただけになっていないか
それぞれを詳しく解説しましょう。
背景にある意図が明確か
エンジニアに求められるのは、ユーザーのニーズを的確に捉えたものを創り出す能力です。よって、ポートフォリオであっても明確な意図を持って作成することが大切といえます。
ユーザーが使用するときのイメージを持って、どういう意図で使用してもらうために作ったのかが説明できるようにしておく必要があるのです。企業側からの「意図」に関する質問に、胸を張って答えられれば好印象を与えられるでしょう。
使いやすい仕様になっているか
ポートフォリオを作成していると、ともすればデザインを凝りたくなりがちです。しかし見栄えを意識するあまり、使いにくい仕様になってしまうと、いくら時間をかけて作っても評価を得ることはできません。
例えば、デザインがよくても動作が重いと、ユーザー目線ではイマイチになります。ポートフォリオを作成する際は、ユーザーにとって使いやすいかを第一に考えなければなりません。
アニメーションを多用するなどの凝った演出は不要です。それよりも、サクサクと動く点にポイントを置くとよいでしょう。
同じ意味で、トップページに動画を配置するならスキップボタンを用意し、ユーザーの手間をショートカットする配慮なども評価されるポイントです。
シンプルかつ統一性があるか?
企業の採用担当者は、他の仕事もこなしつつ多くの応募者のポートフォリオを見なければなりません。つまり、ひとりに掛けられる時間は短いと考えるべきでしょう。
そのため、ポートフォリオは短時間でも良さが伝わるように、シンプルさを重視すべきです。せっかくポートフォリオ作成しても、採用担当者にきちんと見てもらえなければ何の意味もありません。
載せたいものをすべては載せるのではなく、特にアピールしたいものに絞ることが賢明です。
必要な情報に速やかにアクセスでき、内容を確認できるものが望ましいといえます。レイアウトが整然としていることも大切なので、全体的にデザインの統一性も必要です。
技術スタックは明確になっているか
「技術スタック
とは、開発にあたって利用した環境を明らかにする意味で使われる言葉です。フロントエンドからバックエンドまでの技術スタックを、ポートフォリオに記載しておくのがポイントとなります。
技術スタックを明記することによって、その専門分野に精通しているというアピールになるので、記載できるものはしておきましょう。もちろん、それに関して面談時に質問があれば答えられるようにしておくことが必要です。
全力でオリジナリティあるソースコードを!
ソースコードもきちんと整えおくことが必要です。企業ではチームで開発をおこなうことが多いので、ソースコードが整理されていないと、他のメンバーに迷惑がかかる場合もあります。チームでの作業に不向きと判断されてしまうとマイナスです。
そのうえで、自分自身のスキルやオリジナリティをアピールするために全力で良いソースコードをポートフォリオに載せましょう。
サンプルコードに手を加えただけになっていないか
また、CMSを使って自作テーマを作成する場合に、既存の有名なテーマなどからサンプルコードやUIのデザインを流用し、少し加工するだけのようなやり方は絶対に避けたほうがよいでしょう。
採用担当者は、日頃から多くのポートフォリオを目にしているそもそも知見のある人たちを甘く見てはいけません。お手軽に作った手抜きのポートフォリオなど一目で見抜かれる可能性が高く、ネガティブな印象を与えかねないのです。
「一見レベルが高そうにみえる」お手軽な作品よりも、多少荒削りでもオリジナリティを感じさせるものの方が、多くを見慣れている採用担当者を惹きつけられる可能性があります。
まとめ
エンジニアが転職の選考で武器にできる、ポートフォリオに関しての情報や作成時の注意点について解説しました。これを作ると作らないで大きい違いがあることも説明した通りです。
作るからには自分の培ったスキルとともに、個性を織り込んで作るのが懸命といえるでしょう。
転職を考えているエンジニアのみなさんや、これからエンジニアとしての転職にトライするみなさんは、ここで紹介した情報も参考に、素敵なポートフォリオを作成してください。