エンジニアの目標設定はキャリア・パスを描いて具体的に立てる

企業の給与体系が、年功序列から成果主義に代わるなかで、人事評価と関連して、目標設定と言う言葉が頻繁に使われるようになりました。企業として人材を最大限に活かし、企業の利益に結び付けたり、企業価値を高めたりするためには、個人の成果を明確に反映する目標設定をしなければなりません。

毎年実施される業務評価のための目標設定や評価の方法は、企業ごとに異なりますが、実際その評価によって、多かれ少なかれ賞与額や、昇級や降級が決まります。エンジニアとして、企業で数年働いていると日々の仕事に追われ、結局は上司が設定する目標になってしまっている場合もあります。

自分が将来目指すキャリアを実現するために、今、目の前の目標設定が正しいのか悩むことはありませんか?

今回は企業に入社して数年経ち、次のキャリアアップを目指しているエンジニアに向けて、目の前の業務評価のための目標設定をどのように立てたらよいか、考慮すべき点を含めて紹介します。

個人と組織を成長させるSMARTの法則

SMARTの法則は発表されて40年近く経ち、時代遅れとも言われ、従業員のパフォーマンスをさらに発揮させる、新しい目標設定の法則を導入している企業もあります。しかしながら、現在でもこれを用いている会社は多く、個人の成長、企業の成長させるための目標設定には、この法則が効果的であることは変わらないと言えます。
具体的に、SMARTは、「Specific」「Measurable」「Achievable」「Relevant」「Time-bound」の頭文字を表しています。目標設定は、これら5点に注意して、具体的に目標設定しましょう。

1.Specific (具体的な)

目標は、明確で、具体的でなければなりません。例えば、「プロジェクト・マネージメントの資格をひとつ取得する。」という目標は「プロジェクト・マネージメントの資格」が明確ではありません。具体的な「資格名」を明記する必要があります。

2.Measurable (測定可能な)

目標は、数値で具体的に計測できるものなければなりません。例えば「xxxxの不良率を低減する。」という目標は、いくら低減するが、数値目標がなく計測できません。「不良率を5%以下にする」のように、明確に計測可能な数字を明記する必要があります。

3.Achievable (達成可能な)

目標は、(決められた評価期間内で)達成可能なものでなければなりません。実際には、達成できるかできないかの目標値(少し高い目標値)にするのがいいと思います。簡単に達成できる目標値や絶対に達成できない目標値を目標にしても意味がありません。

4.Relevant (関連のある)

目標は、関連性がなければなりません。例えば、企業の目標や、自分の属する部署の目標に関係している必要があります。

5.Time-bound (期限がある)

目標は、期限を定める必要があります。具体的には、「x年x月x日までに達成する。」のように、期限も明確にする必要があります。評価期間が1年であれば、その年(年度)の最終期限は、1年後になったり、プロジェクトであれば、そのプロジェクトの終了日が最終期限になったりするのですが、数カ月毎のサブ目標(少なくとも3カ月毎)を定めることをお勧めします。

将来のキャリア・パスを描いた目標設定

エンジニアであれば、将来、「スペシャリスト」として、専門分野を極めるのか、「ジェネラリスト」として、技術をベースにマネージメント(管理)に携わりたいのか、さらには、独立して経営者になりたいのか、3年~5年のスパンで目標設定をし、四半期、半年や1年の目標に落とし込んで目標を立てましょう。

実際、SMARTの法則で目標設定をしても、将来の目標が明確でなかったり、現状の問題分析が間違っていたりすると、間違った目標設定となり、将来の目標に近づけません。まずは、将来のビジョンや高い目標を描くことが、正しく目の前の短期的な目標をたてるのに重要です。
また、専門的なスキルやマネージメント・スキルは、極端に偏ること無くバランスよく目標を設定しましょう。

PM(プロジェクト・マネージャ)を例にして具体的な目標設定をしてみましょう

そのひとつの目標として、資格(PMP-Project Management Professional)取得を目標にします。(ここでは、外資系企業も含めて最も取得者が多いPMP資格を例に挙げます)

実際PMの資格取得には実務経験が必要なので、少なくとも3-5年の期間が必要です。現在、PMという次のステップを目指し、実務経験を積んで、PMP資格試験受験の必要条件(実務経験や必要なトレーニング)を満たしたところだとします。この状態での目標設定をいくつか具体的に記載してみます。

1.2020年12月末までに、PMPの資格(具体的な資格名)を取得する。
・3月末までに、PMテキスト(具体名を記載)と問題集(具体名を記載)を復習する。
・6月末までに、合格点が取得できるレベルまで復習し、1度受験する。
・不合格であれば、再度、不得意点を勉強し、再度受験する。

最終目標を達成するための計画も記載する。PMとしての知識レベルや実務経験が十分であることを外部資格で証明する。

2.ISO9000社内委員になり、部署内のコントロール文書(具体的な文書名をいくつか)を改定する。

スキル、実務経験の分析から、もっとも改善したい項目を定める。
この場合は、PMとして、品質管理の知識が欠けているので、品質の観点から文書管理を経験する目標を設定する。また、チームや部門にも貢献する目標を定める。

3.TOEIC を今年度最低3回受験し、2021年3月末までに700点以上を1回以上とる。

個人の目標として、将来は海外プロジェクトにもチャレンジしたいことを目標にする。

企業・部署の方針を目標に反映する際の注意点

企業によっては、目標設定の細かいルールが定められているところもあります。企業の目標設定ルールを踏まえつつ、将来のキャリア・パスを見失わないようにしましょう。
企業が規定している詳細なルールをいくつか紹介します。

・企業の業務成果に関するものが2つ以上、資格取得等個人のスキル・能力に関するものが1つなど、業務成果と個人スキル、両方の目標達成が求められるもの。
・評価方法は、目標値を達成すれば、B, 10%以上上回れば,A, 10%以上下回ればC等々個人ではなく、チームとしても目標を定め、それを達成するための各々チームメンバーの目標設定を行う。さらに、その目標をチーム内で共有して、お互いに協力できるようにするためのもの。

目標設定のルールは、企業・部署、年ごとに変わることもありますが、それに合わせて、自分の目標をたてるのではなく、自分のキャリア・パスの観点から、企業目標に貢献できる目標を設定しましょう。

目標は上司とのコミュニケーション・ツール

目標設定は、企業・部署の目標がカスケードで自分のレベルまで下りてきて、まず自分自身で目標をたてます。しかしながら、目の前の業務達成だけの目標設定ではなく、自分のキャリア・パスを考えた上で、今、自分で何ができるか、何をしなければならないか、どんな貢献がチームにできるかなどを考えましょう。

目標となる先輩や同僚、上司と目標を共有することによって、色々な人からアドバイスをもらうことができます。上司とキャリア・パスについて議論するコミュニケーション・ツールや、自分のキャリア・パス実現のためのツールとして利用しましょう。

まとめ

エンジニアとして成長するためには、適切に目標設定をすることが重要です。具体的な目標を定め、その結果を評価し、改善すべきは改善し、新たに挑戦する目標を定めましょう。

目標設定は、企業の方針や自分のキャリア・パスを考慮して、上司や目標となる先輩や同僚のアドバイスを参考に。自分の目標を誰が見ても分かるように、内容を明確・具体的に、数値や期限を定めて実行できる習慣をつければ、エンジニアとしての成長や成果も分かり、将来のビジョンも明確になります。

Talisman編集部

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