外資系広告代理店とは?転職を検討するなら知っておくべき基礎情報

外資系広告代理店とは?転職を検討するなら知っておくべき基礎情報

日本の広告業界においては、ミレニアム直前に起こった「広告ビッグバン」によって国際化が一挙に進みました。

とはいえ、広告代理店といえば「電通」や「博報堂」をイメージして、外資系広告代理店はピンとこない方も多いことでしょう。実は、広告代理店にも多くの外資系企業があります。今回の記事では、外資系広告代理店を転職先の選択肢として考えている方のために、外資系広告代理店の採用傾向や仕事内容を、日系広告代理店との違いを浮き彫りにしながら解説します。

外資系広告代理店とは

外資系広告代理店とは、海外からの資本が資本総額の1/3を超える広告代理店です。近年では世界規模を誇る日系大手企業の広告プロモーションを外資系広告代理店が担当し、目覚ましい成果を上げた事例もあります。

しかしながら新卒採用はほとんどなく、売上なども非公開の場合も多いので、日系広告代理店と比べて実態があまり知られていません。そんな外資系広告代理店の採用傾向および年収事情などを含めて、外資系広告代理店の概要を見ていきましょう。

外資系広告代理店の採用傾向

外資系広告代理店の求人は、新卒採用がメインの日系広告代理店とは対照的に、基本的に中途採用です。プロジェクト単位で不足する人材を急募するスタイルが多いです。外資系企業を志望して転職エージェントを活用した転職活動をしている場合には、一般的に求人ポストに対して紹介されます。

外資系広告代理店もそういうケースはもちろんありますが、あらかじめ候補者の情報をエージェントが代理店と共有しておいて、プロジェクトで不足人員が発生したら声がかかるパターンも多いです。ともあれ外資系広告代理店は常時求人があり、基本的には売り手市場となります。

募集が多いのは、アカウント系(営業部門)です。クリエイティブ系(制作部門)に関してはその代理店の状況によって求人の数もタイミングもまちまちであることが多いので、その方向性を目指す方はコンスタントに採用動向をチェックするのが賢明です。

外資系広告代理店の年収事情

あくまで目安になりますが、外資系広告代理店の平均年収はおよそ800~1500万円です。一方、日系広告代理店の平均年収は600~1500万円です。外資系ではアカウント系の営業職に就けば、かなり稼いでいる人もいます。

また、外資系は日系と違い、実績によってインセンティブが大きく年収を上げる場合もあり、2000万円クラスの人も珍しくありません。平均的に1.5倍以上の高額年収が得られる可能性があります。

外資系広告代理店の職種と仕事内容

外資系広告代理店の職種(職位:タイトル)の主なものは以下のとおりです。

  • アカウントエグゼクティブ
  • アカウントプランナー
  • メディアプランナー
  • アカウントスーパーバイザー(アカウントディレクター)
  • クリエイティブ部門

個別に仕事内容を見ていきましょう。

アカウントエグゼクティブ

アカウントエグゼクティブ(AE)の仕事は、広告を依頼するアカウント(広告主)から案件を受注する営業です。1人で複数のアカウントを担当する場合と、専属で大口のアカウントを担当する場合もあります。

アカウント側の広告宣伝担当者や広報担当者などとコミュニケーションを図り、直接案件を受注するのが基本ですが、コンペ形式の案件も少なくありません。アカウントが複数の代理店にプレゼンをさせ、発注先を決めるのがコンペ案件です。この場合、アカウントエグゼクティブは企業側のオリエンテーションに参加して情報を収集します。その情報をクリエイティブ部門やアカウントプランナー、メディアプランナーと共有し、コンペの企画をまとめます。アカウントの窓口であり、案件ごとに最初から最後まで関わるので、成果が上がった場合の喜びをアカウントとともに享受できるでしょう。

アカウントプランナー

アカウントプランナー(AP)の仕事は、アカウントエグゼクティブが獲得した案件を実行に移すための、アカウントと社内プロジェクトチームとの調整役であり企画営業です。主な仕事としては、アカウントの情報、予算、スケジュールを管理します。広告を展開した後の成果分析、アカウントへのフォローや社内各部署との連携やプロジェクトの進捗管理もアカウントプランナーの役割です。プロジェクトの規模によっては、多くのクリエイターとともに業務をこなすプロジェクトチームのまとめ役や、プロデューサー的な立ち位置になることもあります。

メディアプランナー

メディアプランナー(MP)の仕事は、アカウントエグゼクティブが獲得しアカウントプランナーが調整役を務める案件において、どういう媒体でどういう企画の広告を打つべきかという、メディア戦略を考えます。

かつての広告媒体はテレビ・新聞・雑誌がメインでしたが、近年ではWeb系の多くの媒体が増えました。そのため、商材に適したメディア戦略が重要です。メディアプランナーは、アカウントのニーズに最大限に応えるため、マーケットの分析に基づいたターゲティングと効果的なメディアプランニングを行います。

アカウントスーパーバイザー(アカウントディレクター)

アカウントスーパーバイザー(AS)は、アカウントエグゼクティブやアカウントプランナーの上級職にあたり、多くの場合に複数名のAEやAPを部下に持ちます。豊富な経験にもとづく広告の深い知識とノウハウ、マーケティングスキルなどを持つ、マネジメント職です。広告代理店によってはアカウントディレクター(AD)と呼ばれることもあります。

クリエイティブ部門

クリエイティブ部門は実際に広告物の制作を行う部門です。テレビCMやポスター、新聞雑誌広告、チラシ、Web広告などあらゆる形態の広告を、企画内容に応じて制作します。

個々の職種としては、クリエイティブディレクターを頂点にアートディレクターやデザイナー、コピーライター、CMプランナー、イラストレーター、カメラマン、動画オペレーターなど主にアート系の各分野のスペシャリストです。社内のリソースで不足する場合は、外部から補充を行います。

外資系広告代理店と日系の違い

外資系広告代理店と日系広告代理店では年収以外にも、さまざまな違いがあります。主なところでは「対アカウントの報酬体系」「採用の考え方」「働き方」です。それぞれを見ていきましょう。

対アカウントの報酬体系はコミッションならぬフィー

同じ広告業界でも、アカウントに対しての報酬体系には外資系と日系で大きな違いがあります。日系広告代理店は、使用するメディアの広告枠の販売手数料が、売上の大部分を占めます。販売枠に応じて手数料を請求するコミッション制が一般的です。

一方、外資系広告代理店の場合はフィー制(報酬制)です。広告の制作と発信に要するコストに利益を乗せた報酬額を最初に交渉して契約しておき、その中でマネジメントします。

採用は新卒ほぼゼロで中途採用が基本

採用活動に関して外資系広告代理店の場合は、中途採用が基本です。必要な時に即戦力の人材を調達する考え方が反映しています。日系広告代理店のように新卒を採用して育てていくことは、基本的にありません。これは外資系企業全般の傾向といってもよいでしょう。

個人に裁量がある柔軟な働き方

日系広告代理店は曜日や時間に関係なく、営業はアカウントへの対応に、クリエイティブは制作物の締め切りに追われるハードワークの傾向があります。プライベートの時間がままならない長時間の拘束に、嫌気がさして転職する人も多いです。

一方、外資系広告代理店は出勤の時間帯や仕事の進め方などで、日系広告代理店に比べて裁量範囲が広いのが特徴です。個人の考え方を反映した、柔軟な働き方を実現しやすいのは外資系広告代理店の方だといえるでしょう。

外資系広告代理店急増のトリガー「広告ビッグバン」

20世紀の最後の3年間に、広告業界のグローバル化が一挙に進み、外資系広告代理店が急増しました。この現象は「広告ビッグバン」と呼ばれています。その背景にあるものを紐解いてみましょう。

広告ビッグバン以前の国内広告業界の特殊性

「広告ビッグバン」が起きた背景には、広告業界の規模の大きさが深く関係しています。日本の広告業界は市場規模でそれまで世界第2位であったにもかかわらず、外資系広告代理店の進出は意外にも進んでいませんでした。

当時の日本では、いわば電通と博報堂の寡占状態です。一方の世界の広告代理店の動向として、単体の企業としてはそれほどの規模ではないものの、いくつもの国に支店や関連企業を持つことで、巨大な代理店グループを形成しています。そういう特殊性を持った広告マーケットの状況が、広告ビッグバンを起こす背景となりました。

金融ビッグバンの影響

金融ビッグバンの世界共通テーマは「規制緩和」です。日本でも小泉内閣が規制緩和を旗印に郵政改革に取り組んだのは、金融ビッグバンの影響でした。金融規制緩和を受けて、外資系企業群が続々と日本に大挙進出してきました。当然彼らは認知度を高めるために広告宣伝に取り組みます。

しかし外資系企業は自社の広告を依頼する代理店に、日系広告代理店を選ばない傾向がありました。その理由は、外資系企業が消費者に訴求したいポイントと大きく異なっていたからです。その結果外資系企業は、同類である外資系広告代理店を起用しました。外資系企業が急激に増加すれば、外資系が志向する広告のニーズも飛躍的に増え、合わせて外資系広告代理店の数も急増する結果となりました。

代表的な外資系広告代理店一覧

日本国内で活躍する代表的な外資系広告代理店は、以下のとおりです。

  • ジェイ・ウォルター・トンプソン・ジャパン合同会社
  • MMSコミュニケーションズ株式会社
  • 株式会社マッキャンエリクソン・ジャパン
  • ハヴァスジャパン株式会社
  • アライアンス・データ・システムズ株式会社

個々の代理店のプロフィールを見ていきましょう。

ジェイ・ウォルター・トンプソン・ジャパン合同会社

母体企業James Walter Thompsonは1864年にニューヨークにて、世界初の広告代理店として誕生しました。1956年には、日本で最初の外資系広告代理店として創業を開始します。日本においてはすでに64年の歴史を持ち、テレビ・新聞・雑誌・ラジオという主要4媒体すべてに太いパイプを持つ広告代理店です。

MMSコミュニケーションズ株式会社

世界40ヶ国に広がるMSLの一員として、MMSコミュニケーションズ株式会社は、アカウントの日本独自のキャンペーンやグローバルコミュニケーションのサポートを手がけています。また、広告代理店グループ「ピュブリシス・ワン・ジャパン」のメンバーとしてアカウントが抱えるさまざまなコミュニケーション上の課題解決にむけた活動も行っています。

株式会社マッキャンエリクソン・ジャパン

株式会社マッキャンエリクソン・ジャパンはインターパブリック・グループ・オブ・カンパニーズの一員として1960年に日本に進出しました。当初は博報堂と提携し、合弁会社としてスタートしましたが、1994年にインターパブリック・グループの中の、アメリカのマッキャンエリクソンの日本法人として分離独立しました。海外企業との取引が多い外資系総合代理店として、グローバルに営業を展開しています。

ハヴァスジャパン株式会社

世界中に67の拠点を展開するハヴァスの日本法人です。包括的な広告・コミュニケーション企業として知られています。メディア、データ分析、コンテンツ、クリエイティブなどあらゆる領域のスペシャリストが在籍し、緊密な協業で卓越した成果物をアカウントに提供しています。

アライアンス・データ・システムズ株式会社

アライアンス・データ・システムズ株式会社は、各業界のBtoCビジネスのブランディングをサポートする企業です。データ駆動型マーケティングや顧客ロイヤルティ、データベースマーケティング、ダイレクトマーケティング、エンドツーエンドマーケティングほか、さまざまな切り口からのブランディングを提案しています。

外資系広告代理店で求められるスキル

外資系広告代理店への転職を目指す場合に、求められる主なスキルは以下のとおりです。

  • 即戦力になれる業界スキル
  • 英語スキルとグローバル感覚
  • ITリテラシー・デジタルスキル

それぞれを見ていきましょう。

即戦力になれる業界スキル

外資系広告代理店への中途採用は、大前提として即戦力が求められます。そのため、広告業界での実務経験か、事業会社での広告宣伝部門で広告に携わった経験があることが望ましいです。

広告業界の実務経験で、特に有利になるのは営業経験です。ディレクターやプロデューサーなどのマネジメント系の求人にも、広告業界での営業経験は有利に働きます。広告営業で必要なコミュニケーションスキルや、交渉スキルなどが重宝されます。もちろん、実務経験があればOKというわけではなく、求人内容にマッチするキャリアとスキルがあるかどうかも大切です。

また、外資系広告代理店に転職する場合、以前の勤務先に事前チェックが入ることもあるといわれています。転職活動の前に退職する場合は、当然のことではありますが円満退職を心がけましょう。

英語スキルとグローバル感覚

基本的に外資系企業であって、さらにアカウントも外国籍企業が多いと考えられるので、英語スキルは重要です。読み書き以上に、実際に対話でコミュニケーションが取れるレベルが必要でしょう。

併せてグローバル感覚も見られます。これは異文化やダイバーシティに対する寛容さがあるかどうかや、ロジカルシンキングをベースとしたグローバルスタンダードな物の考え方ができるかどうかで評価されるでしょう。さらにいえば、日本のマーケットの動向だけでなく、海外マーケットの動向も常に把握している情報力が必要です。

ITリテラシー・デジタルスキル

以前の広告業界はアナログな紙媒体の広告がメインでしたが、現在ではデジタル広告やWebマーケティングが増えています。そのため、インターネットやデジタル技術に関して、素人では務まりません。スペシャリストになる必要はありませんが、ITツールを使いこなす必要があります。また、基礎的なIT知識も押さえておくべきでしょう。

まとめ

広告ビッグバン以降外資系広告代理店は増えており、転職先としては売り手市場です。アカウント系の営業職は常に求人があります。アカウントが外国籍企業であることも多いので、よりグローバル色が強い仕事ができる業界です。

広告営業の実務経験や英語スキル、ITスキルなど、求められるものは少なくありませんが、やりがいと年収が手に入る可能性が高い転職先として、選択肢に入れましょう。

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亀田和明

コンサルタント歴:15年以上

高校卒業後に渡豪。キャンベラ大学を卒業し、外資系大手リクルートメント会社に入社。人材紹介業界でのキャリアをスタート。ファイナンステクノロジー(金融IT)、不動産、サプライチェーン、また保険チームの立ち上げや、新規ビジネス開発などに多数従事。2012年に弊社タリスマン立ち上げから参画。Fintech領域のリクルートメントに携わり、現在はIT、金融・保険・コンサルティング・製造領域の人材紹介事業を管理しております。

国内の日系企業様はもちろん外資系企業様の、CxOレベルなどのエグゼクティブからジュニア(第二新卒)の求まで、多岐にわたる転職サポートを行っております。海外での募集要件なども常時取り揃え、日本語・英語での対応が可能です。培ってきた経験をもとに採用課題に対するソリューション提案を常に心がけております。

対応言語:日本語、英語

得意な業界:IT全般、金融、フィンテック、保険、コンサルティング

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