今後、女性で管理職になるなら知っておくべき現状と必要なスキルとは

「管理職に抜擢されたけれど、家庭と仕事が両立できるのか不安」「管理職に求められているスキルを知りたい」といった悩みを抱えている方も多いでしょう。

女性の社会進出が活発になった現在でも、世界と比べると日本企業における女性管理職の割合は多くありません。しかし、女性管理職の登用に前向きな企業は増えており、女性管理職は今後さらに増加する見通しです。

そこで今回は、女性管理職の現状や必要なスキルについて解説します。これから管理職を目指す女性は、どのようなことが必要になるのか、しっかり把握しましょう。

世界の女性管理職の割合

まずは、世界における女性管理職の割合について解説します。日本とどの程度異なるのか、比較してみましょう。

世界と日本の女性管理職の割合を比較

ILO(国際労働機関)が、2019年3月に発表したレポートでは、2018年の世界の企業全体で女性管理職が占める割合は27.1%と報告されています。地域別の割合では、米州がもっとも高く39%、アジア太平洋は22.5%、アラブ諸国が11.1%ともっとも低い結果です。

日本の割合は12%で、G7の中で最下位。このデータから、女性管理職の少なさが目立っています。

女性管理職の割合の推移

ILO(国際労働機関)の報告では、1991年の世界全体の女性管理職の割合は24.8%。2018年の27.1%から考えると、27年間で2.3%上昇しています。

日本の女性管理職は、1991年時点では8.4%となっており、2018年の12%と比べると3.6%の増加です。女性管理職の割合は少ないものの、徐々に増加しており、女性の社会進出が盛んになってきています。

役員に占める女性の割合

ILO(国際労働機関)のレポートでは、世界の企業の役員に占める女性の割合は、平均で約23%です。G7では、フランスが37%ともっとも高く、一方で日本は3.4%と低い水準。
しかし、役員の中でもCEO(最高経営責任者)に関しては、いずれの国でも男性が大半を占めています。

女性管理職の割合について

日系企業における女性管理職の割合は、どのようになっているのか気になりますよね。ここでは、日系企業における女性管理職の割合について、深く掘り下げましょう。

日系企業に占める女性の割合

帝国データバンク『女性登用に対する企業の意識調査(2019年)』の報告では、日系企業の全従業員に占める女性の割合は、平均25.2%。前年より0.3%上昇しています。

また、課長級以上の管理職に占める女性の割合は平均7.7%、前年より0.5%上昇し、過去最高の割合です。さらに役員に占める女性の割合は平均9.8%、前年から0.1ポイント上昇しています。この結果から、少しずつではあるものの、女性従業員や女性管理職は増加傾向にあるといえるでしょう。

企業規模・業界別の女性管理職の割合

ここでは、企業の規模と業界別で、女性管理職の割合を比較します。

まず企業の規模で見ると、小規模企業は10.6%・中小企業は8.2%・大企業は5.5%です。小規模企業ほど女性管理職の割合が高いことが分かります。

次に業界別では、小売り13.9%・不動産12.9%・サービス業10.1%となり、小売業では女性の活躍が目立ちます。女性管理職が多い企業では、以下のような肯定的な意見が聞かれました。

  • 女性は複数の案件を並行して遂行・管理する能力が高い
  • 女性の能力は品質管理の業務にとても重要

一般的に女性は、物事全体の内容を把握しながら、細かな気配りが得意と言われています。
そこで、同時に複数の案件を管理する立場の管理職では、女性の特性が存分に活かせるでしょう。

一方、女性管理職が少ない企業では、以下のような否定的な意見が出ました。

  • 女性の登用をおこないたくても管理者として育成する人手の余裕がない
  • 重要性は分かるが運輸業ではじっくり時間をかけて変えていくしかない

人手不足の会社にとっては、教育するための人事が確保できないことも多く、新たに女性管理職を起用するのが難しい状況です。また管理職になるためには、長時間労働や頻繁な転勤などの激務に対応しなければならない業種もあります。
このような体制を変えるには時間がかかるため、女性管理職の起用が遅れている企業も少なくありません。

日系・外資系企業の女性管理職の比較

外資系企業は、日系企業と比べると女性の管理職は多い傾向にあります。たとえば、帝国データバンクの『女性登用に対する企業の意識調査(2019年)』によると、5,000人以上の企業で女性管理職の割合目標を達成しているのは、日本企業が4.0%、外資系企業が14.0%です。

また現在の女性管理職の割合で見ると、日本企業は「10%未満」が54.0%でもっとも多く、外資系企業は「10~29%」が40.0%で最多です。

この5年間で女性管理職の割合が増えた企業は、日本企業が約6割、外資系企業は約5割でした。この結果を見ると、女性管理職の割合が低い日本企業が、積極的に女性の登用を進めていることがわかるでしょう。

また日系企業と外資系企業では、女性管理職の登用方法に違いがあります。女性管理職が増加した企業の登用方法は、日系企業が「既存社員の昇格」で52%、外資系企業では「昇格と採用の両方」で50%です。日系企業では、女性管理職となる人材を社内で見つける傾向が強いため、社内に候補者がいないと女性管理職が増えません。一方で外資系企業は、社外からの登用も視野にいれているため、女性管理職の候補者を見つけやすいでしょう。

このような登用方法の違いが、女性管理職の比率に関係しています。

女性管理職の割合の見通し

今後、女性管理職は増える見通しです。帝国データバンクの『女性登用に対する企業の意識調査(2019年)』では、女性の「社内人材の活用・登用を進めている」と回答した企業は44.4%。また女性の登用を推進している企業は50.0%となっており、2社に1社が女性登用に積極的という結果です。

このように、女性管理職の登用に積極的な企業が増えることで、より多くの女性が昇進の機会を得られるでしょう。特に日系企業は、社内の人材から管理職を見つけるため、今の会社でしっかり実績を出すことが大切です。女性管理職の登用に前向きな企業が多いことを考えると、今後さらに女性管理職の割合は増えるでしょう。

女性管理職が少ない理由について

女性管理職の登用に前向きな日系企業が多い一方で、実際には女性管理職が少ないのが現状です。

ビースタイル ホールディングスが2021年7月19日に就労思考女性へ向けておこなったアンケート調査「女性の管理職比率」によると、女性管理職が少ない理由のトップ3は以下の通りでした。

1位「結婚や出産をすると、管理職として続けづらい雰囲気が職場にあるから」81.1%。
2位「前例となる女性管理職の数が少ないから」(45.1%)
3位「管理職志向の女性の数が少ないから」(32.1%)

1位の理由を見ると、いまだに女性の家庭での負担が大きいことが分かります。
育児や家事など家庭での役割が多いため、管理職として仕事をこなすことに不安を感じている女性が多いといえます。
また2位の理由にもあるように、管理職に男性が多い企業の場合、女性が管理職になるのは難しいケースもあるでしょう。これまでの慣例を変えるためには、時間が必要です。さらに3位の理由のように、管理職になるのを望まない女性も存在します。

管理職になると業務がハードになるため、家庭との両立ができないと感じるケースもあるでしょう。このような意見から、働くための環境が整っていないと感じている女性が多いことが分かります。また、帝国データバンクの『女性登用に対する企業の意識調査(2019年)』の調査結果でも、女性の活躍を促進するために必要なことは「妊娠・出産・子育て支援の充実」と回答した企業が60.5%でした。そこで、子どもを抱える女性でも仕事をしやすいように、働く環境や評価制度を変える企業もあります。たとえば、企業で子育て世帯を支援するためにベビーシッター制度を導入する会社や勤務時間の長さで社員を評価しないなどです。

以上の結果から、企業も働く女性も、家庭における女性の負担軽減が重要であると認識していることが分かります。

女性管理職に必要なスキル

ここでは、女性が管理職に就く際に必要なスキルを解説します。今後、女性管理職を目指す方は、身に付けておきましょう。

柔軟なコミュニケーションスキル

管理職としてリーダーシップを取る立場の場合、柔軟なコミュニケーションスキルが求められます。たとえば、相手の視点に立った接し方や考え方です。

部下がどういうことで悩み、つまずいているのかをしっかり聞き取り、分かるように伝えましょう。厳しい言い方だと委縮してしまう人もいるため、相手によって伝え方を変えることも重要です。

また一般的に男女で考え方が違うため、それぞれに合わせたコミュニケーションを取る必要があります。男性と女性、それぞれ特有の考え方があることを理解し、柔軟に対応しましょう。

適切に仕事を割り振るスキル

すべて自分で仕事をしようとせず、部下に仕事を割り振ることが、管理職には重要です。部下に仕事を与えなければ、部下の能力は育たず、いつまでも自分一人で多くの仕事をこなす必要があります。仕事量が増えるほど負担も増えるため、いずれ仕事が回せなくなり業務に支障が出るでしょう。

そうならないためにも、しっかり部下に仕事を振りチームとして取り組むことが大切です。どうしても仕事を他人に任せらない方は、部下の失敗に寛容になり、フォローすることを前提にすると任せやすくなります。完璧主義な人は、すべて自分でこなしてしまいがちなので、注意が必要です。

上手に叱るスキル

指導する立場では、上手に叱るスキルが求められます。相手を委縮させるような叱り方は、モチベーションの低下やミスを隠す体質の原因です。

うまく叱る際のポイントは、フィードバックを意識することです。相手を責めたり人間性を否定したりするのではなく、問題のある行動や考え方に焦点を当てましょう。自分の感情を入れずに、事実を確認しながら何が問題なのか叱ります。どうすれば良いのかフィードバックすると、相手の成長につながるでしょう。

またなるべく人目を避けて、その場で叱ることが大切です。他の社員がいる前で叱ると、相手のプライドを傷つけてしまい信頼関係が崩れるきっかけにもなります。

叱った後でもモチベーションが維持できるように、励ましの言葉でフォローすることを心がけましょう。

女性管理職に向いている人とは?

以下の特徴に当てはまる人は、女性管理職に向いているでしょう。

  • ロジカルに考えることが得意
  • 細かい部分まで気が配れる
  • さまざまな視点から物事を考えられる
  • コミュニケーションが得意
  • 感情をコントロールしやすい
  • ワークライフバランスの充実を目指している
  • メンバーとして実務を経験したことがある

管理職は、部下へ的確に指示を出すことが求められるため、物事を順序立ててロジカルに考える力が重要です。

また、トラブルを未然に防ぐために、進捗状況の確認や部下の体調面などへの細やかな気配りができることも必要。トラブルに直面した場合は、物事を多角的な視点から考えなくてはなりません。

さらに感情をしっかりコントロールして、コミュニケーションを取ることは、チーム内の人間関係をスムーズに保つために必要な能力です。管理職は、チームのメンバーが働きやすくなるように、ワークライフバランスを整えることも求められます。

生産性の高いチームを作るためにも、積極的にワークライフバランスを充実させることが重要です。実務経験のある管理職は、現場のことが分かっているため、部下から信頼を得やすいでしょう。

実際の現場に即したやり方を指示することも、管理職に求められることのひとつです。
管理職になると、さまざまな価値観を持つ部下に指導する必要があります。そのため、上記のように多様な視点から物事をとらえ、ロジカルに考えましょう。

まとめ

女性管理職は増加しているものの、世界と比べると日本はまだまだ少ないのが現実です。しかし、女性管理職の登用に前向きな企業が多いことから、今後はさらに女性管理職が増加するでしょう。女性管理職として登用されるためにも、必要なスキルを磨きアピールすることが大切です。

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