転職する職業としてコンサルタントは、仕事の面白さややりがい、高収入などから人気が高い職種です。それだけに求められるものも多く、選考の難易度が高いのも事実です。
コンサルティングファームは選考にもケース面接が含まれたり、面接回数も異業種よりも多めであったりします。内定獲得には、それなりの準備と努力が必要でしょう。そんなコンサルタントに転職したいのであればぜひ読むべき、12冊の本があります。
今回の記事ではそれぞれの本の核となるポイントを紹介しましょう。転職活動のための書籍選びの参考にしてください。
目次
コンサルティング業界と採用の傾向
コンサルティング業界とは、企業などの組織が抱える種々の課題に対して解決や改善を図る提案やサポートを行なう業界です。ひとくちにコンサルティング業界と言っても、専門とするジャンルによって細かく分かれています。現在のコンサルティングファームの、主な系統は以下のとおりです。
- 戦略系
- 総合系
- IT系
- 組織人事系
- 財務アドバイザリー系
- 国内独立系
- 監査法人系
- 医療/ヘルスケア系
- 企業再生/事業再生系
- シンクタンク系
ここからは、このコンサルティング業界の、コロナ禍以降から現在までの採用活動の傾向について触れておきましょう。
2020年のコロナ禍以降の採用傾向
コロナ禍の2020年は全国に緊急事態宣言が発令された3月を境に、ほとんどすべてのコンサルティングファームがリモート勤務に切り替わりました。採用活動においても、オンラインが中心になりました。
緊急事態宣言が解除された6月以降も、出勤規制が厳しい外資系ファームを中心に全体の80%を超えるコンサルティングファームが、オンラインでの採用活動を継続しています。最終段階を含めてすべての選考プロセスがオンラインで行われ、Web面接のみで内定に到ることがデフォルトとなったのです。
候補者にとっては、訪問ができないために働く環境がつかみにくいというデメリットがあるのは否めません。しかしその一方で、遠方の地域からでも同条件で選考が受けられたり、面接日程も組みやすかったりなどのメリットがあります。一時的に制限された感がある求人数も、同年の8月以降は積極採用に転じるファームが徐々に増え始めたため、復調しました。
その理由のひとつは、3月の緊急事態宣言で一旦ストップしたプロジェクトが再稼働したことでしょう。また、コロナによって企業活動全般に大きな変化が生じ、それに対応する案件を受注したファームは現場の稼働率が急激に上がりました。そのため人材の確保が急務になり、採用ニーズの総量が高まったのです。
現在の採用傾向
2021年8月現在において、コンサルティング業界全体としての求人は安定しています。
多くの企業が依然として、オンラインで採用活動を推進中です。遠方の候補者や平日昼間の面接が困難な候補者も、支障なく選考を進められるケースが増えています。一部のファームでは採用縮小の動きがある中で、むしろ人材確保の機会と捉えて積極的に優秀な人材層を募るファームも増えています。
特に人材ニーズが旺盛なのは、デジタル推進領域です。この領域は、コロナの影響のもとで急ピッチに進む企業のリモートワーク導入と業務のオンライン化の対応に、底堅い需要がこの先も見込めます。
また、マネジメントができるシニアコンサルタント以上の人材ニーズも高まっています。他にも、コンサルタントは未経験でも必要とされる業界や業務の知見を持ち、業務改善経験のある人材のニーズも旺盛です。コンサルティング業界は、景気に陰りが出てくると採用枠が縮小する懸念があります。よって、この業界への転職を検討しているみなさんは、現在のように積極的な採用が続いているうちにアクションを起こすのが賢明です。
さて、コンサルティング業界の2020年から現在までの採用傾向を解説したところで、ここからはコンサルタントに転職したいなら読むべき本を12冊、紹介していきます。「コンサルに必要な思考力を鍛える本6冊」「コンサルに必要なコミュニケーション能力を鍛える本3冊」「コンサルのケース面接に備える本3冊」の3つのタイプに分けて、順に見ていきましょう。
コンサルタントに必要な思考力を鍛える本6冊
まず、コンサルに必要な思考力である「地頭」を鍛える本として、6冊を紹介します。
考える技術・書く技術―問題解決力を伸ばすピラミッド原則―
コンサルタントはファクトをベースに、情報を論理的に構造化していくことが求められます。この本は、「MECE」や「ピラミッドストラクチャー」などのフレームワークを活用した、構造化の基本的な考え方を理解するのに役立ちます。
また、何かを誰かに向けて説明する際の基本スキームについても学ぶことが可能です。この本を理解すれば、資料づくりやプレゼンのスキル向上にも非常に役立つでしょう。コンサルタントを目指す人や、なりたての人が最初に読むのにおすすめです。
仮説思考 BCG流 問題発見・解決の発想法
ボストンコンサルティンググループの日本代表を歴任した著者による名著で仮説思考を行う必要性や仮説思考の具体的な方法が簡明な事例とともに解説されています。
仮説思考はロジカルシンキングと並ぶ、コンサルタントの重要な思考方法です。コンサルタントにとって、あらゆる可能性をすべて調べて答えを出すという仕事のやり方は、決して現実的ではありません。仮の答えを常に持ちながら、全体を俯瞰する思考法が仮説思考です。
コンサルタントを続けていると、必ず直面する壁のひとつが仮説思考であると言われています。仕事が速くて優れた成果をもたらすコンサルタントは、必ず仮説思考で仕事に取り組んでいると著者は訴えています。一からコンサルティングを学ぼうという人に、おすすめです。
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論点思考 BCG流 問題設定の技術
先の「仮説思考」の著者によって、優れたコンサルタントの頭の中で行われる問題設定の技術を、わかりやすく分解して説明した本です。「仮説思考」と合わせて読めば、コンサルタントに必要な問題解決に関する思考を学べます。
コンサルタントは制限がある時間の中で、最大の成果を出すことが求められます。この本ではそれを実現するために、どの問題の解決を最優先すべきかを明確にする方法論が説かれています。
コンサルティングの基礎を理解した人に、おすすめです。日々の業務の中で、上司の指示に疑問を持ちながら仕事をしている人や、部下に課題を与える立場にあるマネージャー職の人にとっても読む価値があるでしょう。
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ロジカル・シンキング: 論理的な思考と構成のスキル
マッキンゼーでロジカルシンキングのアドバイザーを長年務めた著者による「ロジカル・コミュニケーション」の新しい手法についての本です。コンサルタントの代名詞とも言えるロジカルシンキングが深く学べます。
本書の核となるのは抜け漏れをなくす技術「MECE」と話の飛びをなくす技術「So What?/Why So?」です。前者は、全体集合を漏れも重なりもない部分集合に分けて考える、集合の概念です。後者は、複雑な内容の話でも結論と根拠を相手にすんなり理解させるための技術です。これらの技術を習慣づけることによって、ロジカルシンキングは飛躍的に向上すると本書は主張しています。
また、実践に即した問題も掲載されており、楽しみならロジカル・コミュニケーションを身につけられます。ロジカルシンキングを鍛えたい人に、おすすめです。
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新版 問題解決プロフェッショナル 思考と技術
ゼロベース思考や仮説思考、MECE、ロジックツリーなどを駆使して、実際のビジネス上の問題の解決法を分かりやすく解説している本です。本書の旧版で展開されていた、シンプルかつ明快な問題解決理論はそのままに、この新版では企業事例や演習課題を加えて内容を充実させています。
コンサルタントを目指す人はもちろん、仕事上で解決したい課題を抱えたすべての人におすすめです。
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コンサルタントに必要なコミュニケーション能力を鍛える本3冊
次に、コンサルタントに必要なコミュニケーション能力を鍛えるための本を3冊紹介します。
人を動かす
多くの成功者が必読の書に上げる、世界的名著です。読みやすさやわかりやすさ、実践のしやすさとその効果性で、この本の右に出るものはそうそう見当たりません。実践での事例をふんだんに盛り込みつつ強い説得力で説かれており、人間への深い洞察とヒューマニズムが底流に流れています。
コンサルティングの現場では、ロジカルシンキングや仮説思考などが必要となりますが、その前提として何よりもコミュニケーション力が大切となります。クライアントはコンサルタントと立場も価値観も異なる人たちです。彼らを動かすには、人間力が欠かせません。スピーチや対人スキルに関する研修方法の開発者でもあるデール・カーネギーが自身の知恵の宝庫を惜しみなく公開した、コンサルタントはもとよりすべてのビジネスパーソンにとっておすすめできる人間関係の軸となる一冊です。
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伝え方が9割
本書はコンサルタントではなく博報堂のコピーライターが著した、どう伝えれば「NO」を主張する相手に「YES」と言わせることができるかが書かれた本です。依頼あるいは誘いの内容は同じでも、伝え方によって相手の返事は「NO」にも「YES」にもなるというテーマが展開されます。
著者がコピーライターとして膨大な時間と回数を費やした、言葉のトライ&エラーから導き出した方法論が体系化されています。コンサルタントはロジックを重視する論理思考型の人が多いですが、日本人は全般的に共感を重視する感情型の人が多いです。本書が教える伝え方は、コンサルタントが感情型の人たちを向き合う場合に有効なスキルとなります。コンサルタントを目指す人だけでなく、コミュニケーションスキルを伸ばしたい人におすすめです。
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1分で話せ 世界のトップが絶賛した大事なことだけシンプルに伝える技術
時代のトレンドをわかりやすく解説することで定評のある著者による、伝えたい大事なことを1分で伝えるテクニックを紹介した本です。プレゼンや面接に、そのまま応用できる内容です。
ひとつの結論と複数の根拠から成るピラミッドがしっかり構築できていれば、説得力が生まれるという考え方を根本として論旨が展開されています。混同しやすい結論と根拠の峻別の仕方の説明も秀逸です。例えば(企画の説明をするときに)「こんな企画です」と「この企画が当たります」のどちらが結論か、と聞かれたらすぐわからないかもしれません。
しかし、この場合は後者が結論です。なぜなら、結論には「相手を動かす方向が示されている」からです。このように、コミュニケーションが得意な人でも、読んでみればさらに新たな気づきが得られそうな良書と言えるでしょう。面接を含む対話の力を磨きたい人に、おすすめです。
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コンサルタントのケース面接に備える本3冊
続いて、コンサルタントの選考過程でのケース面接への備えとなる本を3冊紹介します。
地頭力を鍛える 問題解決に活かす フェルミ推定
日本に「フェルミ推定」の言葉を広めた本とも言われる、文字通り地頭を鍛えるための一書です。
「日本にある信号機の数は?」「世界中のテニス人口は?」などの質問に対して、資料を使わずに仮説に基づいて概算を導き出すのがフェルミ推定で、コンサルティングファームの面接での必須課題です。仮説思考を展開するのに必要なのが地頭力で、前出の「仮説思考」と併用すると相乗効果が期待できるでしょう。地頭力の本質は「結論から考える」「全体から考える」「単純に考える」の3つの思考力とし、それを鍛えるための強力なツールがフェルミ推定だと著者は訴えます。地頭力を訓練によって鍛えたい人に、おすすめです。
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東大生が書いた 問題を解く力を鍛えるケース問題ノート
どんなケース問題でも「3ジャンル」「5ステップ」で解けることを教える、新しい思考形式を解説したケース問題対策本です。
本書では、多くの問題に共通する「型」があるとしています。そして、その「型」に合う「基本動作」さえつかめば、知らない英単語を含む英文でも文法知識で読めるように、問題と向き合えると教えています。あらゆるケース問題をシステマティックに解くための、基本的な「思考のオペレーティングシステム」を身につけなさいというのが著者のメッセージです。ケース面接の対応力を磨きたい人に、おすすめです。
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現役東大生が書いた 地頭を鍛えるフェルミ推定ノート
千問以上のフェルミ推定問題を解き、外資系トップ企業に内定した東大生たちが、フェルミ推定の「パターン」と「解法ステップ」をわかりやすく説明した本です。誰も書かなかった切り口で、厳選された30の良問を題材に解き方を詳しく解説しています。
特筆すべきは、難易度が最も高いとされる「解答のとっかかり」を体系化して、誰もがフェルミ推定問題を気軽に取り組めるような工夫が凝らされていることです。フェルミ推定に苦手意識を持っている人に、おすすめです。
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コンサルタント向けの本を読んだ後にやるべきこと
最後に、コンサルタントを目指す人のためのおすすめ本を読んだ後に何をすればよいかについて、コンサル未経験者と経験者に分けて紹介します。
あなたが未経験者の場合にやるべきこと
あなたが未経験者の場合には、実際の転職活動で直面する選考面接について備える行動を起こしましょう。
まず、コンサルタントの基本中の基本であるロジカルシンキングが、意識しなくとも常にできるくらいまで訓練することです。ここで紹介したロジカルシンキングに関する本は、大いに参考になります。その上で、具体的な選考への対策に取り組んでいきましょう。
志望動機を強化
まずは、コンサルタントとしての仕事にチャレンジする決意に至った動機を明確にしておきましょう。
志望動機は、深い業界研究と企業研究を基にして、合理性がある内容にしなければなりません。そして面接の場で入社意欲がしっかり伝わるように、強い熱意を込めてその志望動機をアピールする訓練も必要です。なぜなら、採用コストと手間を掛けて募集している応募先企業は、採用した人材にすぐにやめてもらっては大きなロスになるからです。そのため、入社後は迷うことなく意欲的に仕事に向き合ってくれる人材を採用したい傾向があります。
特に未経験者においては、採否のポイントとして入社意欲の比重は大きいです。それを理解して、「入社後は必ず貢献します」という決意が伝わる気迫で面接に臨めるように準備しましょう。
ケース面接対策を徹底
未経験者の最大の難関とも言える、ケース面接の対策を周到に行いましょう。ここで紹介した対策本を充分に読み込んだ上で、普段の生活の中で自ら問題を作り、フェルミ推定やケース問題を解くことがおすすめです。身近なものや広告で目に触れるものなど、手当たり次第に問題にして解きましょう。
例えば電車の吊り広告で「ワイン」に関するものを見たとしましょう。すかさず「国内のワインの市場規模は?」「年間のワイン売上高を20%上げるには?」などのフェルミ推定やケース問題を想定して解くことを習慣づけるのです。
そういった繰り返しの中で、ケース問題への対応力が必ず鍛えられます。それと同時に地頭が鍛えられるので、訓練する価値が大きいと言えるでしょう。なお、コンサルタント志望者のロジカルシンキングとケース面接への対策については、以下の記事で詳しく触れているので、ぜひご覧ください。
あなたがすでにコンサルタントである場合にやるべきこと
コンサルタント経験者が紹介した本を読んだ後に、選考に向けてやるべきことは2点に集約できます。
ひとつは「コンサルタントとして欠けているもの」を自覚して身につける決意および努力のプロセスを積極的にアピールできるようにすることです。もうひとつは、「プラスアルファのスキルをブラッシュアップ」によって、スキルの掛け算を目指しましょう。この2点について、以下で詳しく触れておきます。
コンサルタントとして欠けているものの自覚と克服への実践
徹底的に自己分析を行い、コンサルタントとして欠けている面があれば素直に認識しましょう。それを克服する決意をもとに、身につけるためのアプローチを真摯に実践し、そのプロセスを面接でアピールすることが大切です。
自分の弱みに気づいていない人もいるかもしれません。一方、自分に向き合い弱みに気づいて、克服しようと努力している人もいます。人を見るプロである選考担当者にとって、どちらを評価するかは明白ですよね。
プラスアルファのスキルをブラッシュアップ
コンサルティングスキルと合わせてITの知見やマネジメントスキル、特定の分野の高い専門性などがあると、それは足し算ではなく掛け算として人材価値を増やしてくれます。そのため、そういうスキルがあればさらに磨きをかけ、なければ今すぐにでも身につけるプロセスに入りましょう。
特に英語スキルとデジタルリテラシー、そしてマネジメントスキルなどが強みとなります。
コンサルティング業界は外資系も多く、日系であっても案件に英語話者が関係することが増えています。そのため、英語スキルに関して高いレベルであれば、選考に有利となるでしょう。英語スキルに自信がなければ、鍛えるために英会話スクールやオンラインレッスン、TOEICのトライアルなどのアクションを起こし、そのプロセスをアピールしましょう。
また、この業界では、コロナの影響もあってデジタル推進領域の人材が強く求められています。すでに身につけたコンサルタントとしての資質に加えてITの知見を磨くことで、対応できる求人の選択肢は広がります。ぜひ、身につけているデジタルリテラシーのスキルマップを作ってみましょう。物足りない感がある場合は目標を設定してチャレンジし、そのプロセスをアピールしましょう。
さらには、マネジメントができるハイクラス人材を求めているファームが多いので、マネジメント経験やマネジメントスキルがあれば有利です。マネジメント経験があればそれを面接で充分に伝えられるよう、数値や規模の裏付けがある実績やエピソード、第三者の評価などを整理して語る準備に注力しましょう。経験がないとしても、マネジメントスキルを磨くと決意した上での、実践のプロセスを伝えることもアピールとして有効です。
まとめ
コンサルティング業界のコロナ禍以降の採用傾向を解説し、コンサルタントに転職したいなら読むべき厳選12冊を紹介しました。
この12冊は「思考力」「コミュニケーション」「ケース面接」というそれぞれがコンサルタントにとって重要なテーマについて書かれています。これらを熟読した上で、選考に向けた具体的なアクションを起こし、コンサルタントとしての転職を成功させましょう。