いま、採用代行のニーズが増えている理由とは?

近年、採用方法のひとつとして注目されている「採用代行」。文字どおり、企業の「採用」を「代行」するサービスです。それほど新しいサービスではありません。ところが、いま、この採用代行のニーズが増え、今後も増えていくとみられています。

なぜ採用代行のニーズが増えているのかというと、企業の抱えるさまざまな採用課題の解決策として期待されているからです。では、採用代行というサービスが改めて評価されているのはどうしてなのでしょうか。今回は、採用代行のニーズが増え続ける理由と今後の展望、採用代行で解決できる採用課題、採用代行の活用法を見ていきましょう。あなたの企業が、欲しい人材を獲得する一助になるかもしれません。

1. なぜ、いま採用代行なのか

日本でもすでに定着していた採用代行が、再び注目されているのはなぜなのでしょうか。ここでは、採用アウトソーシング市場の現状と今後の展望、採用代行が評価されている理由を見ていきます。

1.1. 市場における採用代行のニーズと今後の展望

ここ数年ほど、採用代行を含む、人事・採用関連業務のアウトソーシング市場は約8兆円で推移してきました。
このアウトソーシング市場が堅調な理由の一つとして、少子高齢化に伴う労働人口の減少による採用難のほか、コア業務に経営資源を集中させ、ノンコア業務のコストを削減することを目的とした大企業の増加が挙げられます。

また近年では、激化する人材の争奪戦を制するために採用方法の多様化の一環として「働き方改革」や「DX推進」といった政策もトレンドになってきており、採用代行をますます活発化させる動きが出始めました。
こうした中で採用代行は、採用の成否を握る手段としてますます存在感を高めていくと言われているのです。

1.2. 採用代行が現場で評価されている理由

採用代行のニーズが市場で増えている理由として、採用代行が採用課題の解決策として評価されていることを述べました。
その評価理由を、採用現場の実情に照らし合わせて見ていきましょう。

1.2.1用活動の長期化・通年化に伴う業務負担を軽減できるから

採用の現場では、人材の激しい争奪戦が繰り広げられています。
というのも、「売り手市場」の傾向が続いてきたからです。求職者が内定を得やすい状況は、企業にとっては内定辞退のリスクが高い状況ともいえます。人材を獲得できなければ採用活動は続くため、おのずと長期化・通年化していくのです。

また、新卒採用の就活ルールの形骸化、変更に伴い、通年採用を取り入れる企業が増えてきたこと、あるいは終身雇用制度が崩壊しつつある現代は転職が一般的になっていることなども、採用活動の長期化・通年化の要因となっています。
このような採用活動の長期化・通年化は、採用担当者の業務量を増やすことにほかなりません。その負担を軽減する方法として、採用代行が評価されているのです。

1.2.2採用方法の多様化に対応するための採用力を強化できるから

人材の争奪戦が激化しているいま、従来の「待ちの採用」——たとえば、ハローワークや求人広告、人材紹介の利用——だけでは勝ち抜きづらくなっています。そのため、リファラル採用(社員紹介採用)やSNS採用など、ダイレクトリクルーティングといわれる「攻めの採用」も増えてきました。

採用方法が多様化すれば、応募者数が増え、求める人材を獲得できる可能性が高まるでしょう。その反面、新しい採用方法を取り入れるためには、新しい知識やスキルを身につけなければならなかったり、効果測定の手間が発生したりと、採用担当者の負担が増えてしまいます。しかも、それが必ずしも実を結ぶとはかぎりません。

採用方法の多様化は、採用担当者の業務量を増やすだけではなく、コストや成果の面ではリスクともなり得ます。そのため、自社にはない採用ノウハウを取り入れ、求める人材を獲得する方法として、採用代行は期待されているのです。

2. 採用代行で採用課題を解決する!

前章では、採用代行のニーズが市場で集まってきている理由を見てきました。
この章では、採用代行の仕組みから、具体的な効果を探っていきましょう。

2.1. 採用代行とは何か

日本では90年代から、外部企業に業務を代行してもらうよう委託することがトレンドになり始めました。そのなかで、採用に特化したアウトソーシング会社が誕生したのをきっかけに、いまではすっかりお馴染みの採用方法として認知されるようになったのです。

その採用代行とは、企業の「採用」を「代行」するサービスです。正確には、ある企業の採用活動に関する業務の一部、または全部を、委託された企業が代行するサービスであり、採用アウトソーシングあるいはRPO(Recruitment Process Outsourcing)とも呼ばれています。

2.2. 採用代行に委託できる業務と期待できる効果

採用代行では、採用に関するノンコア業務あるいはコア業務を委託できます。

ノンコア業務(応募書類の受付・管理、面接日程の調整など)とコア業務(採用計画の策定、書類選考、面接など)を委託する場合、採用担当者は採用にまつわる煩雑な作業を手放せるため、「コア業務に集中できる」ようになるでしょう。

一方、コア業務を委託する場合、採用に関するスキルや経験を社内に導入できるわけですから、「自社にはないノウハウで採用力を強化できる」ので、欲しい人材を獲得できる可能性が高まります。あるいは、効果的な求人方法を提案してもらえば、採用にかかる「コストが削減できる」ようになります。

このように採用担当者の膨大な業務量を軽減できるうえに、採用コストの削減や採用力の強化が期待できます。そしてなにより、最大の効果は、求める人材の獲得という目標を効率的に達成できることです。

以下では、採用代行に委託できる業務の具体例と期待できる効果を、採用プロセスごとに確認しましょう。

採用プロセス①採用計画の策定

〜業務の具体例〜
●採用ターゲットの設定
●採用競合や市場の分析
●採用戦略の検討
●採用活動の予算案の作成
●面接官トレーニング など

〜期待できる効果〜
専任の採用担当者がいない場合、あるいは従来の採用計画を見直したい場合は、コンサルティングに強い採用代行会社がおすすめです。
経営の根幹に関わり、かつ採用活動の指針となる「採用計画」を改めて策定することで、求める人材を必要なだけ、効果的に獲得できるようになるかもしれません。

採用プロセス②母集団形成(集客)

〜業務の具体例〜
●求人掲載媒体の選定
●求人原稿(広告や求人票)の作成
●DM(ダイレクトメール)やスカウトメールの作成・配信
●企業説明会の企画・実施
●問い合わせ対応 など

〜期待できる効果〜
応募者が少ない、逆に多すぎる場合、自社の認知度を上げて応募者数を増やしたい場合、新たな採用チャネルを開拓したい場合は、集客が得意な採用代行会社を活用しましょう。
このプロセスは作業工数が多いため、業務を委託することで、採用担当者の負担を大幅に軽減できます。また、効果的な求人広告やDMを作成できれば、採用コストの削減にもなるでしょう。

採用プロセス③応募者対応

〜業務の具体例〜
●応募書類の受付・管理
●応募者のデータ管理
●応募者からの問い合わせ対応
●応募・選考に関する連絡業務
●面接日程の調整 など

〜期待できる効果〜
このプロセスは煩雑な事務作業が多く、採用担当者には大きな負担となってしまいます。だからこそ、採用代行を上手に活用して、負担軽減を図る必要があります。そうすれば、採用担当者は採用のコア業務である「採用計画の策定」や「選考」に専念できるようになり、採用の成功に近づけるでしょう。

採用プロセス④選考

〜業務の具体例〜
●応募者のスクリーニング(書類選考)
●適性検査や筆記試験の実施
●面接会場の設定
●面接会場での受付・案内
●面接官代行 など

〜期待できる効果〜
このプロセスは、まさに採用のコア業務といえます。書類選考や面接、合否決定はできるだけ自社で行いたいところ。とはいえ、求める人材を獲得できるか否かの大切な局面でもあります。
もし、採用後のミスマッチに悩んでいる場合、採用担当者のスキルアップを図りたい場合は、採用に関する高いスキルと豊富な経験を持ったプロに任せることで、理想の人材を採用できる可能性が高まるはずです。

採用プロセス⑤内定・入社

〜業務の具体例〜
●内定通知書の送付
●内定者への連絡
●内定辞退者へのヒアリング
●内定者の研修や懇談会などの企画・実施
●入社案内や入社書類の作成、入社日の調整 など

〜期待できる効果〜
求める人材を採用できた!と思っていたら、内定辞退……という事態は回避しなければなりません。そのためには、内定者フォローは非常に重要です。内定者は、これから共に働く仲間となるわけですから、このプロセスはやはり自社で行うべきところです。
とはいえ、研修の企画や実施など、ノウハウや経験が必要な業務もあるので、採用代行が頼りになります。もし内定辞退が続いている場合、採用代行の導入を検討しましょう。

3. 採用代行の活用法

採用代行は、確かに採用課題の解決策となり得ます。しかし、とにかく導入すればよいというものではありません。ここでは、「採用代行の活用法」のポイントを確認しましょう。

ポイント①自社の採用課題・採用ニーズを把握する
採用に関わる業務をすべて採用代行会社に委託するという選択肢はあり得ます。たとえば、中小企業で経営者が採用を担当している場合、ベンチャー企業やスタートアップ企業で専任の採用担当者を置いていない場合などは、活用する価値があるでしょう。また、従来の採用方法に限界を感じている場合も、活路が見出せるに違いありません。
ただ、いずれにしても自社の採用課題や採用ニーズは把握しておく必要があります。なぜなら、同じ採用の悩みでも、「マンパワー不足で採用活動に支障がある」と「応募者が少ない」では、解決策が異なるからです。もし、前者なら「採用のすべてを任せる」、後者なら「母集団形成に採用代行会社の力を借りる」などが考えられます。
まずは、【採用計画の策定】【母集団形成(集客)】【応募者対応】【選考】【内定・入社】の採用プロセスのうち、どこに課題があるのかをしっかりと見極めましょう。
もちろん、どのような人材を採用したいのかも明確にします。求める人物像・スキル・経験などがわからなければ、どれだけ優秀な採用代行会社でも、ふさわしい人材を獲得するのは困難です。

ポイント②採用代行会社ごとの強みを知る
自社の採用課題・採用ニーズを把握したら、次は、採用代行会社の特徴を調べましょう。なぜなら、ひとくちに採用代行会社といっても、それぞれに強みがあるからです。たとえば、タリスマンなら「専門分野に特化したバイリンガルのコンサルタントがそろっている」という強みがあります。

採用代行サービスは、おおまかに【総合型】と【特化型】に分類できます。総合型は、一連の採用活動をワンストップでサポートしてくれるタイプで、特化型は、「コンサルティング」「ダイレクトリクルーティング」「エンジニア採用」「アルバイト採用」「常駐型サービス」などの強みに特化しているタイプです。

ポイント③採用代行会社とのコミュニケーションを密に取る
自社にふさわしい採用代行会社を選んだら、しっかりとコミュニケーションを取るように心がけましょう。求めている人材、委託する業務範囲はもちろん、進捗状況などの情報共有は非常に重要で、採用の成否を握っていると言っても過言ではありません。
また、コミュニケーションの多寡は、「自社の人事チームの一員」として意識を持ってもらえるか否かにもつながります。

4. 激化する人材争奪戦を勝ち抜くために、採用代行のニーズが増えている!

人材の争奪戦が激しい採用の現場では、「採用活動の長期化・通年化」と「採用方法の多様化」が進んでいます。そのなかで、採用担当者の負荷を軽減して、かつ採用活動を成功させる方法として、「採用代行」が再び脚光を浴びているのです。
ただし、採用代行を導入すれば、採用課題が自動的に解決するわけではありません。採用代行の効果を最大化して、求める人材を獲得するためには、「自社の採用課題・採用ニーズを把握する」「採用代行会社ごとの強みを知る」「採用代行会社とのコミュニケションを密に取る」という3点が重要です。

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shinya iguchi