エンジニアが海外に転職するには?日本との違いやビザと英語力も解説

日本と海外ではエンジニアの地位に違いがあるということが、しばしば囁かれます。中でもアメリカにおけるエンジニアは、社会的地位がかなり高いことは有名です。
日本を出て、海外で腕試しをしてみたいと願っているエンジニアも多いのではないでしょうか。しかし、海外での仕事の経験がない人にとっては、さまざまな面で分からないことだらけなのも事実でしょう。
この記事では、エンジニアが海外に転職する場合に想定される課題について、の基本情報を紹介していきます。

海外と日本のエンジニア事情の違いとは?

海外と日本では、エンジニアの社会的地位や報酬などの違いがあり、これはさら国や地域によっても異なります。
ここではアメリカ、ヨーロッパ、アジア圏の3方面でのエンジニア事情に目を向けて日本との違いを確認しましょう。

アメリカの場合

前述の通り、アメリカにおけるエンジニアの地位は明らかに高いといえます。
そもそもアメリカでエンジニアになるためには、エンジニアを含む高度に専門化された職種に適用されるH-1Bビザを取得しなければなりません。
このH-1Bビザは、エンジニアの場合はコンピューターサイエンスの学士号あるいはそれと同等の学位と、その領域での充分な実務経験を持っていなければ下りにくといわれています。
誰でもが気軽になれる職種ではないのです。そういう事情もあって、社会的地位や報酬額が高くなっているといえます。
それだけではなく、VC(ベンチャーキャピタル)もエンジニアの社会的地位を上げることに一役買っているのです。
GoogleにせよAppleやFacebookにせよ、現在大きな影響力を持っているIT企業の大半がエンジニアによって起業されました。彼らは当初ベンチャー企業として、まず自己資金で起ち上げたのです。
そしてビジネスが軌道に乗り始めると、潤沢な資金をVCから調達して企業規模を拡大するという成長戦略を取りました。この際の投資額が、アメリカのVCの場合は驚くほど膨大な額となっています。
VCは安定した資産運用先ではなく、収益性の高いITベンチャーを選ぶものです。そのため、自ずと技術力のあるエンジニアのニーズが高まり、その社会的地位や報酬額が群を向いて抜いて上がっていくという理屈になります。
よって、アメリカでは技術力のあるエンジニアは確実に社会的地位や報酬額が上がるのです。日本のように、マネジメント職に就いたりITコンサルタントになったりしなければ報酬額が上がりにくいということはありません。

ヨーロッパの場合

ヨーロッパを視野に入れた場合も、エンジニアは高度な専門職であるという認識が一般的です。昇進で報酬額が大きく変化するわけではありません。
よって、プロジェクトリーダーやプロジェクトマネージャーといったマネジメント職を希望する人は、どうやら日本ほどは多くないようです。現場のエンジニアとして、高額報酬を得ながら仕事を続ける人が多いといえるでしょう。

アジア圏の場合

アジア圏のインド・シンガポール・タイ・マレーシア・フィリピン・ベトナムなどでは、近年の急速なデジタライゼーション(経済活動のデジタル化)の発展で、エンジニアのニーズが年々高まってきました。
すでに始まっているデジタルトランスフォーメーション(デジタル技術革新による社会の構造変革)の展開を考えれば、優秀な人材の確保に関してアジアはもちろん万国共通の課題となっています。

どの国も優秀なエンジニアを求めている

どの国の企業にとっても、外国人の雇用は手間とコストがかかります。それでも優秀なエンジニアを確保するためには、他国からの人材も進んで受け入れる企業が増えてきているのです。
エンジニアという職業は、仕事を通して取得したスキルを他の職場でも応用できます。さらに、プログラミング言語は世界共通です。そのため、日本のエンジニアが海外で活躍できる機会も増えつつあるといえるでしょう。

海外転職の生命線、ビザスポンサー獲得3つのアプローチ

海外転職をするにあたって生命線ともいえる重要なものはビザです。国によって細かいルールの違いはありますが、就労ビザが必要になります。つまりビザスポンサーとしての受入企業を見つけなければなりません。
アメリカに関してはコンピューターサイエンスの学位がなければ無理なので、ハードルは高いですが、それ以外の国であれば可能性はあります。
ただし、国によって難易度も違うので、どういう国で働きたいかによってビザを取る条件はどういうものかを調べましょう。エンジニアに特化した就労ビザがある国も存在します。
ともあれ、ビザスポンサー獲得方法として想定できるのは、基本的に以下の3つのアプローチです。
●現地企業に採用される
●日系企業の海外支社要員として採用される
●日系企業の海外法人に異動
それぞれを詳しく見てみましょう。

現地企業に採用される

外国の現地企業に、直接採用されるアプローチです。現地企業にスポンサーになってもらうには、相当高いレベルのスキルが必要になります。とはいえ、現地企業にとって真に欲しい人材であれば道も開けるでしょう。
社内に日本人が働いているケースはそう多くないので、やり取りに英語のコミュニケーション能力が必要です。転職の中では難度の高い方法といえるでしょう。

日系企業の海外支社要員として採用される

日系企業の海外法人に勤務する前提で、採用されるアプローチです。日系企業にスポンサーになってもらうのは、高過ぎるハードルではありません。比較的現実的なアプローチといえるでしょう。

日系企業の海外法人に異動

日本の企業で働いていて、海外支社勤務になるというアプローチです。辞令あるいは業務命令により海外勤務になるため、出向期間も仕事内容も個人では選べません。
業績やエンジニアとしての実力、言語スキルなどを会社にトータルで判断されて、まずは上司から打診を受けてから辞令が出るのが一般的です。
それを狙って海外支社がある企業に就職するというのは、やや現実味に欠けます。しかし、現在勤務している企業に海外支社がある場合は、希望を出すことで海外勤務への道を開く可能性はあるといえるでしょう。

エンジニアが海外で働くメリット&デメリット

エンジニアが海外で働くうえでのメリットも多いですが、当然デメリットも存在します。それぞれを見ておきましょう。

エンジニアが海外で働くメリット

海外転職となると、同僚や上司は基本的に外国人です。仕事をこなしていくためには、まわりのスタッフとの高度なコミュニケーションが重要となり苦労は多いでしょう。しかし、帰国した際にはグローバルなエンジニアとして歓迎されるのは間違いありません。
また、プログラミング言語は世界中のありとあらゆる国で使用されています。そのため、習得したプログラミング言語はまったく無駄にならず、海外での仕事にも活かせるのです。
さらに、システム開発自体が専門性の非常に高い仕事といえます。日本人同士でも良好なコミュニケーションを取って仕事をこなすことは難しいとされているのです。それだけに、海外でのシステム開発業務は貴重な経験となり、帰国後の職探しにおいても、大きいアドバンテージとなることでしょう。

エンジニアが海外で働くデメリット

海外での勤務は、仕事やコミュニケーションに対する意識のギャップに悩まされる場合もあります。海外の人は、個人の意見を明確に主張する傾向にあるのです。
時には与えられたミッションと矛盾する主張をするスタッフも、いるかもしれません。そんな場合、上手に折り合いをつける必要があります。
また、プログラミング言語の理解は問題なくても、チームでの仕事は会話が成り立たなければ進みません。言葉や文化の壁を感じることは多いでしょう。
これは、海外で働く人はもれなく直面する問題です。ある意味スキルアップの基礎的な部分と捉えて、果敢に立ち向かいましょう。

海外でエンジニアとして働くのに必要な英語力は?

海外でエンジニアとして仕事をする場合に、気になるのが英語力ではないでしょうか。これを日系企業の場合と外国企業の場合のそれぞれの観点から見てみましょう。

日系企業の海外法人で働く時に必要な英語力

海外の日系企業で働く場合、企業内にも日本人が多いので日本語で十分なコミュニケーションを取ることが可能です。よって、それほど高い英語力は必要とされません。
現地のエンジニアと技術的な話をする場合は、技術用語は世界共通なので基本的な英語力さえあれば話は通じます。また英語が公用語でない国に勤務する場合は、現地の人も英語ネイティブではないので、問題ないでしょう。

現地企業で働く時に必要な英語力

海外の企業で働く場合は、当然高い水準の英語力が必要とされます。一般的にいわれるのはビジネスレベル、つまりTOEICスコア800以上の英語力が目安とされているようです。
社内のコミュニケーションは当然英語になります。ミーティングも打ち合わせも、全部英語です。ドキュメントも英語で書く必要がありますし、プレゼンも英語で行います。
仕事をする中で自らの意見を述べるべき局面も多々あるので、それらを表現できるレベルが必要と考えましょう。
具体的には英語の面談で問題なく会話ができて、プログラミング関係のドキュメントが英語で読めるならOKでしょう。
英語力は短期間集中でどうにかなるものでもないので、継続的に磨いていくしかありません。

海外転職での選考の仕組み

選考の仕組みは国と企業規模によって変わりますが、参考までに、海外企業でのエンジニアの採用に関して、よく見受けられる基本的なものを紹介しておきましょう。
インタビュー自体は4〜5回行われることが多いようですが、その主旨は2つに大別されます。それは人物にフォーカスしたものと、技術にフォーカスしたものです。
前者では採用担当者による応募者の経歴および現在の仕事内容、ビザに関することなどを問われます。あるいは先方から会社の説明を受けるなどの基礎的なインタビューです。
後者では技術者が担当して、技術面での踏み込んだ質問や課題の実践などが含まれます。それをクリアすれば、最終段階においてCEOやCTOとのファイナルインタビューとなるのです。

志望候補企業をリストアップしてみよう

海外勤務先の求人情報を収集して興味がある企業をリストアップし、「その会社で求められているスキルはどういうものか」「ビザのスポンサーになってくれるのか」「給与はどれくらいなのか」などをまとめてみましょう。
それを整理すれば、今後において経験を積むべき領域が見えてくるのではないでしょうか。たとえ今すぐは応募ができなくても、将来に転職活動するときに役立つはずです。

エンジニア未経験からの海外就職は可能か?

未経験の人が、いきなり海外でエンジニアとして就職することは不可能ではないにせよ、現実的ではありません。なぜなら、海外では日系企業のように人材を育てるというよりは、即戦力として人材を求める傾向が強いのです。
また、就労ビザが発行される背景には、その国にその方面の人材が欠けているから国外か呼ぶという考え方があるのです。その国が切望する魅力ある知見を持つ人に対して与えられるのが就労ビザ本来の意味です。
そういう観点から言えば、エンジニア未経験の場合は、よほど突出した何かを持っていない限り採用される可能性は極めて低いと考えられます。
真剣に海外転職を望むのであれば、まずは国内でエンジニア職としてそれ相応の経験を積み、客観的に誇示できる立派なスキルを身につけてから応募するのが妥当であるといえるでしょう。

まとめ

エンジニアが海外に転職することを検討する場合に、想定される課題についてさまざまな角度で基本情報を紹介しました。簡単なことではないですが、実現すれば人とは違う得難いキャリアパスを経験できます。
いろいろな環境を考えたうえで取り組めそうであれば、またとないチャンスです。興味があるみなさんには、ここでの情報も参考としてぜひチャレンジしていただきたいものです。

Talisman編集部

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