元アマゾンジャパン合同会社に在籍していたプロコーチがお届けする、中途採用後の新人をどう成長させるか?全8回シリーズ第6回目。
前回、中途採用新人の篠原から出たアクションプランは無事実施されたようです。今回は、ミッションを通してなりたい自分の姿を追求するためのコーチングです。
背景
彼らはオミヤゲドットコムという会社のプロジェクト推進部の社員です。
プロジェクトマネージャーの佐久間はチームメンバーの成長のためにOne on Oneをコーチングで行っています。今回部下の菅沢に新しい中途採用者が入社しました。篠原のミッションはMade in Japan以外の製品をより分けるEXOシステムの改修案のとりまとめです。
主な登場人物:
佐久間省吾 35歳 プロジェクトマネージャー
菅沢莉子 32歳 プロジェクトリーダー 佐久間にレポート
東堂聡志 28歳 プロジェクトリーダー 菅沢にレポート
篠原大輝 29歳 プロジェクトメンバー 菅沢にレポート
第1回目はこちらから
<なりたい姿のビジョンを共有する>
※①等の番号が入った箇所については、セッションの後にコーチングのポイント解説をお読みいただけます。
「菅沢さん 今日は4回目のコーチングOne on Oneですね」
「ご自身から言ってくださってありがとうございます。そうですね。前回のサマリーから入りましょうか」
「はい、前回のアクションプランは『システムの改修案をマトリックス化して、部内で検討する』でした。マトリックスには緊急案件の指標も含めて整備することを前提としていました」
「先週は早速部内で検討会できましたね。一緒に参加はさせてもらっていましたが、篠原さん自身の感想はどうでしたか?」
「お客様視点の改修に関するマトリックス指標についてほぼ合意していただいたことは自信となりました。頂いた積極的な意見もとても参考になりました。特に東堂さんがあんなに同意してくれるとは思わなかったので、とても心強かったです」
「そうでしたね。自分にはとても整備しきれないと言ってました。東堂さんらしいリアクションでしたね」
「ポンポンいうけど、お手上げとか、参ったというのも早いのよ。素直というか、あけっぴろげというか。今までは篠原さんの前では、気を張っていたのかもしれないですね。先輩として頑張らないといけないとかって思って」
「①でも、みなの積極的な意見が出たことと、一回の会議でほぼ同意されたのは篠原さんが、どういう形のたたきをもっていけば、より良く部内会議で検討できるかを真摯に考えた結果だと思います」
「いえ、全部篠原さんが自身で考えて行動されたことですから。では、今日はこの時間どのように使いますか?」
「はい、前回のコーチングOne on Oneの際にお伝えした、自分の目標について考えたいです」
「それは『他部署に認められる人材となる』という目標についてですね」
「はい。プロジェクトを成功させることで達成させたい自分の目標です」
「はい。顧客優先のプロジェクトの成功というのも並行した目標でした。それは変わりません。ただ、心の中にあった本当に手に入れたい物は、『付加価値の高い仕事を残して自分の価値を証明したい』だったのだと思います」
「心の中にあった本当に手に入れたい物ですね。それは心の本質ですね。付加価値の高い仕事を達成できたら、あなたにとっていいことがあるのは、それが、他部署に対して価値ある人材だと証明できるからですね」
「もし、②他部署に対して価値ある人材だと証明できたら、どんないいことがあると思いますか」
「そうですね。転職してよかったと心底思えると思いますし、もっとたくさんのことが成し得るという自信につながると思います」
「転職してよかったと思えるし、もっとたくさんのことができると思うんですね。話してみてどうですか?」
「③いいですね。その目標は達成されたらどんな風に私にわかるでしょう」
「菅沢さんが、いい人雇いましたね。役に立っていますねと、誰かから言われたらですかね」
「ぜひ、言ってもらえるように頑張りましょう。では、いつまでにどんな風になればいいと思っていますか?」
「年内に新しいEXOのシステム改修を終わらせて、お客様の使い勝手のよいサイトに作り替えたいです。結果、売り上げが伸びて、来年ローンチの輸出計画時には国内で十分なシェアが確保できているくらいになれば、価値ある人材だと思ってもらえると思います」
「はい、あのシステム改修があったから売上が伸びたと言ってもらいたいです。そのためにはやはり、しっかりした改修の評価基準、マトリックス指標について、各部署合意を取ることから始めたいです」
「部内で検討が終ったマトリックス指標ですね。各部署集めて説明会のミーティングを開くということでしょうか」
「説明会を開くにあたって、気になっていることはありますか?」
「それほどありません。けれど、準備を万全にしたいです」
「準備を万全にしたいんですね。それってどんな感じですか?」
「あらかじめ質問が出そうなところは、こちらでも答えを考えておくなり、法務や予算の制約など、作った根拠をはっきりさせておくようにしたいです」
「それはFAQ(よく出る質問とその答え)を用意する、法務、予算の制約から作成経緯を説明できるようにしたいということですね」
「はい、FAQはすでに、部内で話し合った際にも多角面から佐久間さんも、菅沢さんも、東堂さんもしてくださったので、そのあたり重点的に用意します」
「もう手順が頭に浮かんでるようですね。用意するために何か障害はありますか」
「いえ、ありません。けれど、法務に聞いておきたいことがあるので、できれば菅沢さん、担当の方と一緒にミーティングする際に同席してもらえませんか」
「すみません。コーチングでしたね。でも、これは、コーチングしてもらってわかったことなんですが、自分一人で考えるべきところ、そうでないところをもう少し見極めて、いろんな方に助けてもらいたいと思うようになりました。例えばあまり接触のない部署には上司に同席してもらうようにお願いするとか、同僚に助けてもらうべきところはそうするとか」
「そうなんですね。もちろん。法務とのミーティングは一緒に参加しますよ」
「では、アクションプランは自分で書きだして、あとでメールします」
「それは、お互い確認しやすいので助かります。篠原さん、話してみてどうですか。『他部署に認められる人材となる』への道は」
「途絶えたり、回り道したり、失敗はあるかもしれませんが、向かってると思えます」
セッションのポイント
1、コーチは、そして上司であれば、特に承認はタイミングよく、具体的にフィードバックします。具体的なよい点をフィードバックすることはコーチされる側に、自分の事をよく見てくれていると感じさせ、やる気に引き出します。
2、なりたい姿がはっきりしたとき、コーチは『心の本質』を確認する質問をします。それが達成されたらどんないいことがあるか、達成されなかったどんな悪いことが起きるかをコーチされる側が想像をして話す形です。本質を確認することによって達成に向けての心を強くする事につながります。
3、なりたい姿は時として、コーチする側とコーチされる側が同じ姿を見ているとは限りません。そんなとき、コーチは、どういう現象があれば、達成できたとわかるかを聞きます。ダイエットや資格試験などであれば、目標体重、資格試験の合格などです。
コーチングのチェックポイント
コーチングの基礎は変わりません。傾聴、承認、質問です。
タイミングよく復唱し、相手の鏡になることに徹します。
まとめ
ミッションの遂行を通して、なりたい姿を見いだした中途採用新人の篠原、ずいぶん、コーチングOne on One になれてきた様子です。
アクションプランを実施できたこと、懸念していた部内での自分のプランの受け入れが成功したことが自信になったと言っています。
次回は、他部署へのプレゼンに不安になっている篠原に、菅沢がまた新たなコーチング方法を取り入れます。
最後までお読みいただきありがとうございます。
コーチングや今回のポイントのご質問など、ぜひFacebookやメールでメッセージください。お待ちしております。
*この物語に登場する人物名、団体名、システム等はすべて架空のものです。