退職時になすべきことや煩雑な手続きにはチェックリストがお役立ち!

転職活動が成功した場合に必ず訪れるのは、現在の会社からの退職というプロセスです。退職にはさまざまな手続きが伴い、返却するものや受領しておくべきものがあります。
特に、次の転職先が決まっていない場合や、勤務開始日まで日数が開いている場合には退職後に行うべき手続きをよく理解し自分で行わなければなりません。
退職が未経験の場合は、「何をいつまでにどうすべきなのか」分からなくても無理はないでしょう。しかし、順序よく手続きを進めないとスムーズな転職ができません。
この記事では、退職の意向を伝える時期から、勤務の最終日までにやっておくべきこと、退職後の手続きなどを詳しく紹介します。
円満退職と新しいスタートのためにも、抜かりない準備で退職のプロセスに臨みましょう。

退職までの流れを俯瞰して把握しておこう

退職手続きは、あくまで法律(労働基準法)に照らせば、申し出から2週間で退職したことになります。
社内規定で1〜2ヶ月前に申し出ることが定められている場合もありますが、社内法規に優先するのが国法です。
とはいえ、社会人の常識あるいは良識として、退職の申し出は1~2ヶ月前が妥当でしょう。
少なくとも、2週間前では人員補充も間に合わず、業務の引き継ぎも満足にできないものです。
それを承知で強行すれば円満退職は望むべくもなく、転職後の仕事にどんなかたちで悪影響が出てこないともかぎりません。
また、引き止めによって思うように進まない場合もあり、いずれにしても早めに伝えておくのが賢明と言えます。
円満退職のためには、2ヶ月前を目安として申し出るのがおすすめです。
その場合の退職までのプロセス全体を掴んでおくために、流れを俯瞰しておきましょう。

●第1段階/残り2ヶ月:退職の意向伝達・退職予定日の決定
●第2段階/残り1ヶ月:退職届の提出・業務の引き継ぎ
●第3段階/残り2週間:取引先への挨拶・引き継ぎ
●最終段階/退職当日:社内挨拶・貸与品の返却・必要書類の受領
段階ごとにポイントを解説していきましょう。

第1段階/残り2ヶ月:退職の意向伝達・退職予定日の決定

退職の意向が決定したら、できるだけ早めに直属の上司に伝えておきましょう。そして、退職日や引き継ぎなどを上司と相談するのです。
引き止めを受けることも想定できますが、自分の意志を貫くことが大切となります。退職届を出すのは退職予定日が決まったあとが一般的です。
決定する前に先輩や同僚に相談するのは、トラブルの原因になりかねません。つまり、本人以外から上司に伝わってしまうリスクがあるからです。
円満に送り出してもらうためには周囲への配慮が不可欠となります。引き継ぎや有給休暇の消化などを含め、会社側に配慮した上でスケジュールを組みましょう。

第2段階/残り1ヶ月:退職届の提出・業務の引き継ぎ

退職願を提出して受理されたら、業務の引き継ぎに注力しましょう。誰が担当であれスムーズに引き継げるように、資料を準備しておくのが賢明です。
担当していた業務の段取りや、流れている案件の進捗状況などの詳細を、分かりやすく書いておきましょう。
営業職の場合は、顧客リストに先方の担当者のパーソナルな情報を記載しておくのが望ましく、書面として丁寧に残すことで、辞めていく会社への誠意を伝えることが円満退職を助けます。

第3段階/残り2週間:取引先への挨拶・引き継ぎ

担当取引先への挨拶は、会社の意向に沿って進めましょう。後任者にも同行してもらって引き継ぐのが、取引先にとっても印象がよいはずです。
取引先に後任者を紹介する際は、その人を「信頼できる人」「私よりもしっかりしています」などと立てておきましょう。
それにより、取引先は安心できる上に後任者もその後の取引がやりやすくなるはずです。
会社によっては取引先に「部署異動」という扱いにするなどの、対外的な配慮を依頼されることもあります。その場合も、よほど不自然なかたちでないかぎり会社の意向に沿いましょう。
また、取引先で退職理由を尋ねられても、あまり具体的な理由までは言わずに、ぼかしておくのが適切です。

最終段階/退職当日:社内挨拶・貸与品の返却・必要書類の受領

最終日は社内の人たちへの挨拶と、会社から貸与された備品を返却し、退職後にいろいろな手続きに使う書類を受け取る必要があります。
「雇用保険被保険者証」や「年金手帳」は、社員が手元で保管している場合と会社が預かっている場合のどちらもあるので、事前に確認しておきましょう。
また、「離職票」は失業給付を受けるための手続きに必要で、次が決まっているなら、一応は不要です。しかし、直前の内定取り消しや不測の事態で転職予定が変わる場合もないとは言えません。
次の就職まで多少期間が空く場合は、大事をとって申請しておくのが得策です。
最終日には社内へのあいさつだけでなく、貸与されていた備品(PCやタブレットの端末・携帯電話・制服・社員証・社章・名刺等)があれば、返却を忘れないようにしましょう。
過去に作成した企画書や資料などの書類も、原則としては会社の備品になるので、注意が必要です。

スムーズな退職手続きのための心得とは?

退職手続きをスムーズに進めるために大切なことがふたつあります。スケジュール、すなわち退職の工程表を立てることとチェックリストを作っておくことです。
自分と会社のお互いのために、退職するときには計画性が必要となります。スムーズに退職するためには、2ヶ月前からの大まかな退職の工程表を立てておくことがおすすめです。
どのタイミングでどの工程を行なうのか、前もってよく把握しておきましょう。やるべきことが多数あるので、抜けがないようにしなくてはなりません。
必要な何かが抜けていると、前の会社だけでなく次の会社にも迷惑をかけてしまったり、受けられる失業給付を受けることができなかったりするおそれがあります。
そんな事態を避けるためにチェックリストを作って、絶えず確認しながら、退職の工程を進めていきましょう。
ここからは一般的な「退職時に返却するもの一式」と「退職時に受け取るもの一式」、そして「退職時に必要な手続き」を網羅しておきますので、参考にしてください。

退職時に返却するもの一式

【健康保険被保険者証】
社員は会社を通じて健康保険に加入しているので、退職と同時に無効となります。保険証は返却しなければなりません。

【身分証明書(社員証・社章)】
その会社の一員であることを証明するものは、すべて返却します。

【名刺】
自分の名刺ともらった名刺を返却しなければなりません。

【通勤定期券】
会社への通勤のための定期券なので、原則として返却します。

【社費で購入した備品全般】
社費で購入したものは、すべてです。

【業務上で作成した書類やデータ】
業務に関わるものは紙の情報もデジタルデータも、すべて返却します。

退職時に受け取るもの一式

【離職票】
失業給付を受ける場合に必要な書類ですが、受け取るまでに結構時間がかかります。場合によっては、郵送してもらうこともあるでしょう。

【雇用保険被保険者証(会社が保管している場合)】
雇用保険の被保険者であることを示すもので、転職先企業に提出する必要があります。
入社時に交付されているはずですが、万が一紛失していた場合はハローワークで再発行が可能です。その場合「被保険者番号」が必要ですが、会社に尋ねれば確認できます。

【源泉徴収票】
所得税の年末調整に必要な書類です。

次の転職先の勤務開始日まで日数がある場合に何をすべき?

すぐに次の転職先へ就職しない場合は、公的な手続きがいろいろと必要になります。なぜなら、会社を退職すると一連の社会保険の被保険者資格を失うからです。
退職後には、それに変わる国民健康保険の加入、もしくは年金の種別変更を行なう必要があります。
手続きの詳細に触れておきましょう。

雇用保険の失業給付金を申請

提出期間日:離職票が交付されれば極力速やかに
場所:居住地にあるハローワーク
*あらかじめハローワークで求職の申請した上で、条件を満たさないと受給はできません。

健康保険の変更手続き

健康保険に関しては、選択肢が3種類あります。いずれも医療費の一部負担の割合は3割です。
保険料や手続きの仕方、場所や提出書類などがそれぞれ異なるので注意を要します。

1:退職前に加入していた健康保険の「任意継続被保険者制度」を利用

退職してから20日以内に、健康保険組合で手続きします。
任意継続被保険者になるには、健康保険の被保険者期間が退職の日までに2ヶ月以上継続してあることが必要で、しかも加入は最長で2年間までです。
退職日から20日以内に、健康保険に加入していた保険者へ届け出をしなければなりません。

2:国民健康保険に加入

退職してから2週間以内に、居住地の市区町村役所の健康保険窓口で手続きします。
国民健康保険は、地方自治体が運営する健康保険制度です。多くの自営業者が加入するのがこの保険となります。
退職証明書や離職票等の提出を求められることがあるので事前に確認しておく方がよいでしょう。

3:家族の扶養に入る

家族が加入する健康保険の被扶養者になる条件は、その家族の3親等以内の親族で年収が130万円未満(60歳以上や一定の障害者は180万円未満)であることなどが決められています。
加入手続きは、扶養に入る家族の会社を経由して保険者に届出をするパターンです。

年金の種別変更手続

在職中は会社の給与から年金の保険料が天引きされますが、失業すれば自ら国民年金へ加入して保険料を支払うことになるのです。
国民年金の被保険者には、第1号から第3号まで3種類あります。勤務していると第2号被保険者ですが、退職すると第1号か第3号被保険者に種別変更をしなければなりません。
通常は「第1号被保険者」になりますが、条件を満たせば保険料の支払いが不要な「第3号被保険者」になれます。

住民税の支払い手続きは退職した月がポイント

転職先が決まっている場合は、その会社で特別徴収を継続できます。ただし、次の転職先が決まっていない、もしくは勤務開始日まで日数が開く場合には退職した月で扱いが異なります。

6~12月退職は原則として退職月分の住民税が天引き

原則として退職月分の住民税は天引きされ、それ以降は自分で納めること(普通徴収)になります。退職する会社に「退職に伴う普通徴収への切り替え」の手続きを行なってもらいましょう。
納付方法として一括か分割かを選ぶことができます。
ただし現在の会社に希望すれば、退職月から翌年5月支払い分までの住民税を退職時の給与や退職金から一括で支払えますので、必要に応じて退職前にどうしたいのか連絡しましょう。

1~5月退職は前々年の住民税が一括天引き

前々年の住民税(5月までの分)を一括で天引きされます。3月に退職した場合は3~5月分が、1月に退職した場合は1~5月分が一括で天引きになるのです。
そのせいで手取りの給与額が通常より少なくなることがあるので、注意が必要となります。額が心配であれば会社に確認すれば分かるでしょう。

実用可能な退職時チェックリスト!

最後に、実際に活用できるチェックリストを載せておきます。

提出・返却を行なうもの 提出日・返却日
退職願または退職届
健康保険者証(本人・家族分  枚)
通勤定期券
社員証(セキュリティカード・社章など)
社費で購入した文具や書籍
書類やデータ
名刺
制服
PC
社用携帯等端末
退職時に受け取るもの 提出日・返却日
源泉徴収票
雇用保険被保険者証
雇用保険被保険者離職証明書(離職票)
健康保険被保険者資格喪失確認通知書
退職時の手続き 提出日・返却日
健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届
健康保険任意継続被保険者資格取得届
健康保険被保険者証回収不能・紛失届
雇用保険被保険者離職証明書(離職票)

まとめ

円満かつスムーズに退職するためには退職の工程表を作っておくことと、チェックリストを作って確認しながら進めることが大切です。
会社の都合にも配慮して、引き継ぎ期間や有給休暇の消化期間などを考慮し、上司と相談の上で退職予定日を設定しましょう。

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