コンサルタントになるには?必要スキルと有利な資格、ケース対策も解説

コンサルタントになるには?必要スキルと有利な資格をケース対策に解説

コンサルティング業界は仕事の面白さややりがい、年収などの面から転職志願者に人気があります。外資系のファームも多く、また専門とする分野別に系統が別れています。

そんなコンサルティング業界に転職してコンサルタントになるには、何が必要でどんな対策をすればよいのかという情報を求めている方も多いでしょう。この記事ではコンサルティングの仕事内容を紹介した上で、コンサルタントになるためには必要なスキルや有利な資格、対策について解説します。コンサルティング業界に興味がある方は、ぜひ参考にしてください。

目次

コンサルティングの仕事内容とは

コンサルティング業界の仕事とは、基本的には経営や組織運営に関するアドバイスやサポートであり、ひと昔前はコンサルタント=経営コンサルタントでした。しかし産業が多様化するのに伴い、コンサルタントも分野が分かれてきました。

整理するとおおむね以下の5系統に分類できます。

  • 総合系
  • 戦略系
  • IT系
  • 経営
  • 人事

ただし、最近の傾向として分かれしたはずの分野の業務が多様化あるいは包括化しつつあって、複数の分野を横断するようなコンサルティングファームが増えてきていることも事実です。系統は分かれていますが、厳密にはそれぞれのファームの中でも部門が増えてきているので、何かひとつの系統しか扱わないというものではなくなっています。

よって、何々系というのは特にその分野が強いという程度に認識しておきましょう。そういう背景のもと、各系統のコンサルティングの仕事内容をわかりやすく紹介しておきます。

総合系コンサルティングの仕事

総合系コンサルティングは企業の経営戦略から業務改善、IT導入や人事財務まで幅広く行うのが特徴です。あらゆるサポートを包括して対応できるので「総合系」と呼ばれています。そのため、総合系に入った場合には経営戦略以外にもさまざまな領域に特化した仕事の方向性が存在します。というのも多くの案件がシステム導入に絡んだプロジェクトになるので、この系統は規模が大きな企業が目立つためです。

企業内では担当する「業界」と「機能」で部門を分けているところが多く、あらゆるテーマや分野のコンサルティングを手がけています。つまり総合系からITコンサルタントや業務コンサルタント、財務・会計コンサルタントなどに進むケースもあるということです。中途採用は、部門ごとに積極的におこないつつ、転職志望者は自分が特に興味がある分野や得意な分野に関するコンサルティングを担当できる可能性が高いでしょう。

この系統を目指すなら、よりいっそう得意分野に関する専門性を高めておくことが賢明です。

戦略系コンサルティングの仕事

戦略系コンサルティングは、経営戦略面でのサポートをメインにしています。主な仕事としては、企業の経営戦略の策定からび実行までを包括的にサポートすることです。

戦略系コンサルティングは、グローバルに展開している、欧米に拠点を持つ外資系が多いです。かつてあまり見られなかった、クライアント企業の懐に入り込んで、現場の内側から積極的にサポートするようなアプローチが増えています。

また最近の戦略系は、多くの企業にとって課題でもあるDX(デジタルトランスフォーメーション)推進などのコンサルテーションを遂行するため、デジタルコンサルティングにも手を出してきています。
マッキンゼーの「デジタルマッキンゼー」、BCGの「デジタルBCG」などの動きは、今後戦略系ファームの中で広がるでしょう。特にこの系統を目指す転職志望者にとって、コンサルタントとしてやりがいがある仕事を任されるチャンスがあるかもしれません。

IT系コンサルティングの仕事

IT系コンサルティングは、企業のさまざまな経営課題の解決を、ITテクノロジーの活用によって推進するコンサルティングを基本として行います。クライアントへの典型的な提案としては、顧客管理システムの導入や業務全般の最適化のためのサプライチェーンマネジメント、基幹業務を統合した「ERPパッケージソフト」の導入によるソリューションなどです。

また、データ分析やデータサイエンティスト、最先端技術開発などのニーズも加速する中で、IT系ファームとしても独自の部門やチームを作るためにポテンシャル採用が増えています。

経済環境の厳しさからIT導入によるコスト削減によって経営をスリム化しようと試みる企業が増えており、それをIT系コンサルティング企業が受注するので扱う業界も多岐にわたります。つまりIT系に転職すれば、さまざまな異なる業界の企業で、業務効率化や生産性の向上を目指す案件を手がけられる可能性が高いでしょう。

この系統を目指すなら、ITスキル以外にも普遍的なビジネスの知見を深めておくことが賢明です。

経営コンサルティングの仕事

戦略系に大きく通じるものがある系統が、経営コンサルティングです。

とはいえ、戦略系がほとんど外資系企業であるのに対し、経営コンサルティングの企業は日系企業が大半です。その理由としては、日系企業の長年の実績があります。実際に日本企業の持つ特性を知り尽くし、解決策を提案して多くの企業を発展させました。この能力は、文化背景が違う外資系企業ではできない部分とも言えるでしょう。

ただし、企業経営の多様化とデジタル化に従って、経営コンサルティングのカテゴリーもいくぶんか戦略系とクロスしつつあります。転職で経営コンサルティング企業に入れば、従来の日本型経営の枠を超えた経営スタンスをサポートするという、ドラスティックで魅力的な案件を担当できる可能性があります。

この系統を目指すなら、ITと経営の双方の知識を深く研鑽しましょう。

人事コンサルティングの仕事

企業の経営課題を人事面や組織、あるいは制度の改変などによる解決を提案するのが人事コンサルティングです。ただし、人事コンサルティングは人事だけでなく、戦略の立案やシステム導入などのソリューションで柔軟にクライアントのニーズに答えています。この辺りは、総合系や戦略系と同じ点と言えるでしょう。

人事コンサルティングファームに転職すれば、人事や組織にフォーカスした提案をメインとしつつも、幅広い案件が手がけられるのではないでしょうか。そのためにもこの系統を目指すなら、コンサルティングのさまざまな手法に関して精通しようというスタンスで臨みましょう。

コンサルタントになるために必要なスキル

ここでは、コンサルタントになるために必要なスキルと磨き方を紹介していきましょう。コンサルタントであれば分野を問わずに必要とされるのは、以下の2つのスキルです。

  • ロジカルシンキング
  • コミュニケーションスキル

それぞれを詳しく見ていきましょう。

ロジカルシンキング

ロジカルシンキング(論理的思考力)は感情に左右されずに、論理的に物事を突き詰めていく思考能力です。コンサルタントの持つべきスキルの基本中の基本であり、必要不可欠とされています。その理由は主に以下の2つです。

  • 効率的かつ抜本的に課題を解決するため
  • クライアントを説得するため

その背景をわかりやすく解説しましょう。

効率的かつ抜本的に課題を解決するため

コンサルティングはクライアントからリクエストされる答えのない課題に対して「解」を導かなければなりません。難解な課題に取り組むためには、経験や勘だけに頼っているだけでは不可能です。

徹底して論理的に考え抜いて、仮説と検証を行うことにのみが、複雑に入り組んでいる迷路のような課題の根本的な原因と、その解決法を見つけることを可能にします。さまざまな要素を場当たり的に考えるのではなく、きちんと優先順位をつけ、もれなくダブりなく考えることで効率よく答えに到達できます。だからこそ、ロジカルシンキングが基本でなければなりません。

クライアントを説得するため

コンサルタントの仕事は、何もクライアントの要求に対する解を導くだけで終わりません。それをクライアントに提案して納得してもらった上で実行してもらい、成果を挙げてもらうことが肝要です。

クライアントを説得する際にさまざまな質問を投げかけられて、もし明快に答えられなければ、説得力はなくなっていきます。クライアントを説得するためには、提案のどこを突かれても論理に隙がないように考えておくことが重要です。

コミュニケーションスキル

コンサルタントとしてクライアントから信頼を得るためや、相手の立場に立ってどこに問題があるのかを探るためにコミュニケーションスキルは重要です。また、前述のように最近の傾向としてコンサルティングが戦略の立案で終わらず、クライアントの懐に入り込んで実行をサポートする手法が増えてきています。

また、コンサルタントは単独でコンサルティングを行うことはほとんどありません。クライアント先の関係者はじめ、外部の協力会社のメンバーをも巻き込んで業務改善をします。ここでもチームメンバーと良好な関係を築きつつ、チームや外部で課題解決につなげるためのコミュニケーションスキルが必要になるでしょう。

ロジカルシンキングの磨き方

ロジカルシンキングは小手先の工夫では、そう簡単に体得できません。しかし、以下の方法を常日頃の習慣とすることで、ロジカルシンキングが磨かれます。

  • 結論から話すようにする
  • 考えを文字や図に書いて可視化する
  • 曖昧な言葉は避ける
  • 要素を分類する
  • 話し相手が理解できる表現を使う
  • 常に因果関係を考えながらニュースを追う
  • すべてに疑問を呈する

個々の項目を解説しましょう。

結論から話すようにする

結論から話すことは、話の終着点を明示しておくことでそこに至る内容が聞き手に伝わりやすい話し方です。話し手の方としては、そこに至る流れや論旨を頭の中で整理しながら話すことになるので、ロジカルシンキングが磨かれます。

慣れるまでは、途中の展開で迷うこともあるでしょうが、常に結論に向かう流れを意識して話しましょう。

考えを文字や図に書いて可視化する

論理的な思考は、文字や図にしてビジュアル化すると整理しやすくなります。関連することや足りない部分、余計な部分が一目でわかるからです。誰に見せるものでもないので、ラフな書き方で充分です。考えを可視化する訓練として、とにかく書いてみましょう。

曖昧な言葉は避ける

曖昧な言葉とは「やや」「ある程度」「いくぶん」「かなり」「結構」「相当」「しばらく」「ほどほど」などです。話に具体性を持たせるためには、数字や固有名詞をつけることが必要です。

例えば、「今月中にある程度納めます」ではなく「今月28日までに受注分の70%を納品します」の方が、聞いている相手に対して説得力があります。このように情報の送り手と受け手が共通認識を持つために、具体的で明確な言葉を使うことが大切です。

要素を分類する

ロジカルシンキングを実現するためには、物事の要素の分類がきちんとなされていないとなりません。分類がされていると全体の構造も理解できます。

分類のポイントは、もれやダブりがないように網羅することです。日常の身近なものを、要素で分類する訓練をしましょう。慣れてくると情報を分類するロジカルシンキングに役立ちます。

話し相手が理解できる表現を使う

どんなに立派な考えでも、話している相手に理解してもらえなくてはまったく意味がありません。専門用語や業界用語を使わず、相手に通じる平易な言葉で伝えようとして表現を考えましょう。

専門用語はそれ自体で意味を表しますが、平易な言葉で伝えるためには表現の工夫や例えなどが的確でないと伝わらないので、よい訓練になります。日頃から読書などを通して、語彙や表現の引き出しを増やしておきましょう。それらが潤沢であれば、それだけ多くの人を説得できる力を持つことになります。

常に因果関係を考えながらニュースを追う

新聞やテレビ、ネットのニュースなどの情報を追う際に、その出来事の直接の原因や誘因、遠因は何だろうと常に考えながら追っていきましょう。物事を点ではなく連続する線で捉えることができます。それを習慣づけると、何かを考える場合に前後や周囲との関係性などに考えが及びやすくなります。

すべてに疑問を呈する

子供は何もかもに対して「どうして?」を延々繰り返しますよね。実はこれこそロジカルシンキングを磨く方法です。答えを見つけるためというよりも、常に「なぜそうなのだろう?」と自分に問いかける姿勢を身につけることが大事です。

コミュニケーションスキルの磨き方

コミュニケーションは、相手との共通項を話題にすることが基本です。自分の言いたいことを一方的に言うような、双方向性がない対話はコミュニケーションではありません。
周りの人たちの言葉に傾聴することから、コミュニケーションスキルは磨かれます。その姿勢を基本として、具体的な磨き方として以下のテクニックを日常で実践しましょう。

  • 話しやすい雰囲気づくり
  • 相手の存在を認める
  • 相手をほっとさせる

それぞれについて、解説します。

話しやすい雰囲気を作る

コミュニケーションには大きく2種類あり、ひとつは言葉そのものによる「バーバル・コミュニケーション」で、もうひとつは言葉の周辺情報による「ノンバーバル・コミュニケーション」です。

ノンバーバルは具体的には話の内容ではなく、抑揚や表情、仕草あるいはボディランゲージなどです。このノンバーバルは言葉以上のメッセージ性を帯びることがあるにもかかわらず、多くの人は意識しません。ぜひ、適切な相槌や、傾聴するときの眼差し、自然な頷き、感嘆したときの表情や仕草などを意識しましょう。そういったノンバーバルの要素を意識すると、コミュニケーションは深くなるに違いありません。

相手の存在を認める

人には誰しも承認欲求があります。これは「マズローの欲求5段階説」の中で、最も高次の自己実現欲求に次ぐ「他者から自分を価値ある存在として認められたい」という欲求です。相手の存在を認め、感謝や評価を言語化して伝えることで、相手の承認欲求を満たして信頼関係が深まります。

相手をほっとさせる

人は相手との違いに警戒心を抱来がちですが、それは孤立や対立を心配して防衛意識が働くからです。裏返せば相手と「同じ」であることに人はほっとします。

たとえば声の調子や会話のリズム、用いる表現や話題の系統などを相手に寄せたり、同じ飲み物や食べ物をオーダーしたりすることにより、相手をほっとさせて緊張を和らげることができます。このような安心感を持たせると対話が深まり、より理解し合える方向に進むでしょう。

コンサルタントになるために有利な資格

コンサルタントになるために、必ずしも資格は必要ではありません。それでも、持っていると転職活動や案件のアサインに有利な資格も存在します。ここでは、そういった資格を紹介しておきましょう。

中小企業診断士

中小企業は日本の企業の大半を占めます。その中小企業の経営者が、適切な経営診断やアドバイスができるレベルの能力を持った人材を登録する制度が中小企業診断士制度です。中小企業診断士は経営課題をサポートするための診断をアドバイスのスペシャリストで国家資格になります。公的支援事業に限定されず、民間でも活躍できる経営コンサルタントです。

IT系国家資格

現代の経営戦略のコンサルティングでは、ITの要素を切り離して考えることができないほどです。そのため総合系や戦略系のコンサルタントは、ITスキルを持つことが重要になってきています。そのような背景があるので、IT系の国家資格である「ITサービスマネージャ試験」や「ITストラテジスト試験」、「プロジェクトマネージャ試験」などの資格を持っていると、転職活動の選考の際に有利になる可能性があります。

それぞれの資格を、簡潔に紹介しておきましょう。

ITサービスマネージャ試験

IT導入の効果を最大化できる人材であることを裏付ける資格です。ハイクラスのIT人材としての知見を持ち、サービスの計画立案から稼働、改善に至るまでの活動やリソースをマネジメントするスキルを測る試験です。

ITストラテジスト試験

IT戦略をベースに経営の方向づけができる人材のための資格です。ITを活用して事業を最適化するための戦略の策定によって、新しい価値を創出するスキルを測る試験です。

プロジェクトマネージャ試験

ITプロジェクトの全体を管理する、マネジメント能力を裏付ける資格です。プロジェクト計画を作成してリソースを調達し、限られた時間と予算で求められる品質を確保するべくマネジメントするスキルを測る試験です。

TOEIC

主に外資系コンサルティングでは、英語力も求められます。グローバル案件に携わる場合には欠かせないスキルです。マネージャークラスになると海外本社との連絡や海外支社との連携においても、英語力がないと果たせません。

目安として、TOEICで少なくともカンバセーションレベルの700以上や、ビジネスレベルの800以上のスコアを持っていると、転職活動での選考に有利になるでしょう。

コンサルタント選考の関門「ケース面接」対策

コンサルティング企業の選考には、「ケース面接」と呼ばれるものがあります。これはコンサルティング業界以外ではあまり見られないものの、選考の50~60%の比重を占める重要な項目です。つまり、コンサルタントになるためには、ケース面接を制することが必要となります。そのためにはケース面接のポイントを理解し、繰り返し練習を行うことが肝要です。

まずはケース面接とは何かを、わかりやすく解説しましょう。

そもそもケース面接とは?

ケース面接とはひと言でいえば、明確な解答は不可能な課題に対して合理性がある仮説を組み立てて論理的に解答を導き出し、その後面接官とディスカッションをする特殊な面接です。
一般的な流れは以下のように進みます。

  • 出題
  • 解答作成 (個室あるいは面接官の前で)
  • 面接官とのディスカッション

紙やホワイトボードを用いたり口頭で行われたりします。
また、ケース面接の課題は大きく以下の2種類があります。

  • フェルミ推定
  • ケース問題

フェルミ推定とは、「日本の信号機の数は?」 などの、未知なる数字を手元に情報がない状態で論理的に推定する面接試験です。一方、ケース問題はビジネスケースとも呼ばれ、フェルミ推定の応用編です。ケース問題は、実際にコンサルティングで取り組む経営課題に対して、解決の方法を考えます。例えば「新宿のケンタッキーフライドチキンの売り上げを伸ばすには?」のような問題です。これによって、論理的な思考や合理性のある問題解決能力を見ることができます。

主に1次面接で難度が低い方のフェルミ推定、2次面接で難度が高まるケース問題への移行というパターンが多いです。ケース面接で心がけたい最も大切なことは、解答そのものよりも論理的に解答を導き出す思考プロセスを辿っているかどうかです。これを念頭に置いて対策に取り組みましょう。

フェルミ推定の出題パターン

まず、1次面接において通称「趣味フェルミ」と呼ばれるパターンの出題がされることがあります。それを想定して練習をするのは、実践的なよい訓練になるでしょう。「趣味フェルミ」とは面接官に趣味を尋ねられ、答えた趣味から即興で設問を作られるフェルミ推定です。

とりわけ「アクセンチュア株式会社」「A.T.カーニー株式会社」「株式会社ボストン・コンサルティング・グループ」においてはかなりの確率で趣味フェルミが出されるので、対策をしましょう。
趣味フェルミは、例えば以下のような流れです。

面接官「あなたの趣味は何ですか?」
あなた「私の趣味は釣りです。釣り堀によく通います」
面接官「それでは日本の釣り堀の市場規模を推定してください。5分でやりましょう」

あるいは「日本の釣りの趣味を持つ人口」や「釣り堀の年間売上」などもありえます。あなた自身の趣味に置き換えて問題を作り、あなたなりの解答を出してみることは可能でしょう。

次に、趣味以外のフェルミ推定でよく出題されるパターンは、例えば以下のようなものです。

  • スタバ1店舗の1日の売上
  • マクドナルド1店舗の1日の売上
  • コンビニ1店舗の1日の売上
  • スポーツジムの年間の市場規模
  • 野球を趣味とする人口

これらの問題で練習を積んでおけば、きっと役に立つに違いありません。もちろん、答え方を暗記するということではなく、あくまでも論理的に思考プロセスを辿って合理性がある解答を出す訓練として行いましょう。

ちなみに「A.T.カーニー株式会社」や「ベイン・アンド・カンパニー・ジャパン・インコーポレイテッド」では 「国とは何か?」 などの抽象的な問題も出題されることがあります。念のために、そういった抽象テーマでも練習を積んでおくと心強いでしょう。

フェルミ推定の解き方の手順

ここで仮に「駅構内の立ち食いうどん店の1日の売上を推定してください」という質問が出たとしましょう。知りえない数字を求めるフェルミ推定を解く手順は以下の流れです。

フェーズ1:前提確認
フェーズ2:因数分解

詳しく見ていきましょう。

フェーズ1:前提確認

売上の推定を行う前提を決めておくことが必要です。「駅構内の立ち食いうどん店」とは、どこの店舗の売上を想定して考えるかによって、客層や営業時間、需要が増える時間帯などのあらゆる要素が変わってきます。

フェーズ2:因数分解

感覚的に検討がつけられるレベルまで分解しましょう。

実際問題として「駅構内の立ち食いうどん店の1日の売上」の数値を直感でわかる人などほとんどいません。これを推定するために、売上の成り立ちを以下のように分解しましょう。

売上=客数×平均単価

まず、平均単価は感覚的に想定することができるでしょう。

客数は感覚ではわからないですよね。そこでさらに客数を分解します。立ち食いうどんなので席はないですが、ひとり当たりのスペースを1席とします。

客数=席数×満席率×回転率

このやって分解していくと、席数や満席率、回転率は感覚でつかめるでしょう。

この式に、想定した駅のイメージから個々の因数に見当をつけて当てはめると客数が出ます。そして平均単価を掛けると、1日の売上が推定できます。

このように一見難しそうな数値も、あなたの知識や感覚、常識で見当がつくレベルまで分解すれば、論理的に合理性がある数値を導き出すことが可能です。いろいろなパターンがあるにせよ、基本的にはこのような手順と考え方で解答を導き出せるので、練習の数をこなしておきましょう。

ケース問題の出題パターン

ケース問題はおおむね、以下の6つの問題パターンに集約されます。

  • 売上・市場規模増加系問題
  • 利益増加系問題
  • 公共系問題
  • 論点系問題
  • 二者択一系問題
  • 新規事業系問題

それぞれの系統で、出題の主旨を見ていきましょう。

売上・市場規模増加系問題

最もベーシックな問題形式であり、企業の売上や商品・サービスの市場規模を伸ばす策を考えるものです。極めてよく出題されるパターンです。フェルミ推定で出した解答の売上額を、2倍にする方法を問われるパターンも非常によくあります。

例A)電気自動車の市場規模を拡大させてください
例B)(フェルミ推定で回答した)ミスタードーナッツの1日の売上を2倍に増やすには?

利益増加系問題

利益は売上からコストを差し引いたものと認識して、その両面から解いていく頻出問題です。ポイントとして、コストをさらに分解して「固定費と変動費」に分けて組み立てると評価されやすいでしょう。

例A)JR東日本の利益を増加させるには?
例B)ビル賃貸業の利益率を向上させてください

公共系問題

社会的な課題を解決する問題で、誰の視点から考えるか、どれくらいのスパンで考えるかが重要です。これも多くの企業で出題される問題の系統です。

例A)新型コロナ感染症拡大下でマスクを付けない人を減らすには?
例B)オークション詐欺被害をなくすためには?

論点系問題

これは具体的な数値の解答ではなく、「論点」を問う問題です。先の3系統ほどではないですが、よく出題されます。

例A)ユニフォーム業界が改善すべき課題を教えてください
例B)流通系企業はどのような局面で「選択と集中」を選び、またどのような局面なら「多角化」を選ぶべきでしょうか?

二者択一系問題

ある課題を「実行すべきか否か」を判断するような問題です。意思決定を左右するファクターを見つけて特定することが重要です。
出題頻度は比較的少なめですが、「マッキンゼー・アンド・カンパニー・インコーポレイテッド・ジャパン」をはじめいくつかの企業で出題されています。

例A)リニア中央新幹線に賛成か反対か、理由を含めて答えてください
例B)スーパーコンピューター「富嶽」への継続的な投資は必要か?

新規事業系問題

新規事業のアイデアを考える問題です。ポイントは、なぜその新規事業なのか、何年計画なのかを合理的に定義することです。出題頻度は少ないですが、出る可能性がある限り想定した練習をしておきましょう。

例A)楽天証券の新規事業を考えてください
例B)高齢者向けの資産運用アプリを考えてください

ケース問題の解き方の手順

最後に、ケース面接の解き方の手順を解説します。ケース面接の問題を解いていく、基本的な手順は以下のような流れです。

フェーズ1:前提確認
フェーズ2:問題の構造化
フェーズ3:ボトルネックの特定
フェーズ4:施策の立案
フェーズ5:施策の評価

フェーズごとに解説しましょう。

フェーズ1:前提確認

フェルミ推定と同様に、解答の方向性を決定する上で重要な部分です。間違った解釈で問題を解くことを避けるためにも、「何が問題か」「誰の問題か」などの本質を掘り下げて、この段階で面接官と共有しておきましょう。

フェーズ2:問題の構造化

ここでは現状を把握した上で問題を構造化し、要素をさらに分類しましょう。

フェーズ3:ボトルネックの特定

分類した要素のうち、どこに課題が潜んでいるのかを考えます。

フェーズ4:施策の立案

その課題に対して有効と考えられるだけの施策を立案します。

フェーズ5:施策の評価

最後に、立てられたすべての施策の評価をします。期待できる効果やそれに要するコストなどで総合判断してあきらかに劣るものは排除し、残ったものが解答です。

これらはあくまで一般的な出題に対する解き方であり、実際のさまざまな出題すべてに有効とは限りませんが、ケース問題を解くための手法の雛形として参考にしてください。企業によって出やすい問題の傾向は異なります。応募先企業の出題傾向を調べて、それにあわせて練習問題を積極的に解くことをおすすめします。

実際の企業の過去問や対策の書籍もたくさん出ています。書籍の解説を理解しながら練習することも、ロジカルシンキングを磨く役に立ちます。また、過去問はネット上でも情報を得ることは可能ですので、練習問題には事欠かないでしょう。

日頃から趣味フェルミのように、身の回りのことから発想してフェルミ推定やケース問題を自分で作り、思考する訓練を習慣にしましょう。そうすれば、本番でも冷静に思考を展開できるようになるでしょう。
参考におすすめの書籍を3選紹介しておきます。

過去問で鍛える地頭力 外資系コンサルの面接試験問題

現役東大生が書いた 地頭を鍛えるフェルミ推定ノート

東大生が書いた 問題を解く力を鍛えるケース問題ノート

ケース面接の本番に臨む際の心がけ

ケース面接に関する情報をさまざまな角度で紹介しましたが、最後にケース面接の本番に臨む際の心得についても触れておきましょう。
ケース面接において面接官が見ているのは、主に以下の4つのポイントです。

  • ロジカルシンキング
  • コミュニケーションスキル
  • 思考の柔軟性
  • 物事を楽しむスタンス

最初のふたつは、前出の「コンサルタントになるために必要なスキル」そのままです。先に紹介した、日常でそれぞれを磨く習慣によって体得する必要があります。ケース面接の場でロジカルシンキングができることをアピールするコツとしては、常に結論とその根拠を簡潔に示して周辺情報は削ぎ落とした話し方をしましょう。

質問を受けたらはじめて、周辺情報について答えるという流れが有効です。コミュニケーションスキルをケース面接の場で体現するためには、一方的に話すことのないように気をつけ、相手の立場を常に配慮しつつ言うべき局面でしっかり意見を言えるように心がけましょう。

また、いくら優秀であっても素直さに欠けると成長の余地がないと見られます。面接官の指摘が自分の考えと違う場合でも、柔軟に受け入れることで素直さと伸びしろがあることを示しましょう。それに加えて、いかに目の前の課題を楽しんでトライしているかが、活き活きとした表情や張りのある声で伝わるとなお評価は上がるでしょう。

まとめ

コンサルティング業界に転職してコンサルタントになるには、何が必要でどんな対策をすればよいのかを解説しました。ロジカルシンキングとコミュニケーションはとりわけ重要なので、日頃から磨いておきましょう。

資格に関しては必須ではなく、また取得に期間も要します。それでも興味がある資格に挑戦するなら、転職活動中に取得が間に合わなくとも、進行中であること自体がアピールの材料になります。また、ケース面接の対策は解き方のポイントを理解した上で、思考する練習を繰り返すことに尽きるでしょう。転職してコンサルタントになりたいと考えているみなさんは、ここでの情報を参考にして、転職活動のビジョンを描いてください。

ところで、この業界に進む人の多くは、さらに先の目標に至るための通過点と割り切って、3年から5年ぐらいで次のキャリアに向かう人も多く見られます。独立起業したり事業会社にスペシャリストとして入ったり、同業他社で年収アップの道を選んだりなどのキャリアパスも視野に入れながら、コンサルティング業界への転職を検討することをおすすめします。私たちタリスマンは経験豊富でコンサルティング業界に精通したスタッフが、さまざまな角度から転職志望者のビジョンを実現するためのサポートを行っております。どうぞ、お気軽にご相談ください。

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亀田和明

コンサルタント歴:15年以上

高校卒業後に渡豪。キャンベラ大学を卒業し、外資系大手リクルートメント会社に入社。人材紹介業界でのキャリアをスタート。ファイナンステクノロジー(金融IT)、不動産、サプライチェーン、また保険チームの立ち上げや、新規ビジネス開発などに多数従事。2012年に弊社タリスマン立ち上げから参画。Fintech領域のリクルートメントに携わり、現在はIT、金融・保険・コンサルティング・製造領域の人材紹介事業を管理しております。

国内の日系企業様はもちろん外資系企業様の、CxOレベルなどのエグゼクティブからジュニア(第二新卒)の求まで、多岐にわたる転職サポートを行っております。海外での募集要件なども常時取り揃え、日本語・英語での対応が可能です。培ってきた経験をもとに採用課題に対するソリューション提案を常に心がけております。

対応言語:日本語、英語

得意な業界:IT全般、金融、フィンテック、保険、コンサルティング

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