この記事の要点
- 人手不足と人員削減は、必要な人材と現在の配置にずれがある場合、同時に起こることがあります。
- 年齢や人数だけで判断せず、事業ごとの業務量、必要なスキル、配置転換や学び直しの可能性を確認します。
- 人数を減らして業務を残すと、負担の集中や離職につながるおそれがあります。業務の見直しと退職者への支援をあわせて考えることが重要です。
人手不足が課題となる一方で、希望退職募集や人員体制の見直しを行う企業もあります。一見矛盾する動きですが、社会全体の人手不足と、個々の企業・部門で必要となる人材は、同じ問題ではありません。
本記事では、人手不足の中で人員削減が行われる背景と、業務負担や離職の悪循環を防ぐために確認したいポイントを解説します。
目次
人手不足と人員削減が同時に起こる背景
人材の不足は職種・地域・スキルによって異なる
ある職種で採用が難しくても、別の職種や事業では仕事の量が減ることがあります。同じ企業の中でも、成長分野での採用と、縮小分野での人員体制の見直しが並行する場合があります。
内閣府の令和7年度年次経済財政報告でも、職種ごとに人手不足の度合いが異なり、労働需給のミスマッチが生じていることが示されています。企業内の配置を考える際にも、総人数だけでなく、仕事内容と必要な能力を分けて確認する視点が役立ちます。
人口の変化と労働力人口の動きは区別する
少子高齢化による生産年齢人口の減少は、長期的な人材確保を考えるうえで重要な背景です。ただし、働く人や仕事を探す人を合わせた労働力人口が、同じように減り続けているわけではありません。
同報告では、女性や高齢者の労働参加によって、労働力人口は2013年以降、2024年まで増加傾向にあったと整理しています。「人口減少だから、どの企業でも一律に人が足りない」と捉えず、職務、勤務地、労働条件などを具体的に確認することが大切です。
企業が人員体制を見直す主な理由
事業の縮小・撤退や組織再編
需要の減少、拠点の統廃合、事業の売却・撤退などによって、必要な業務や役割が変わる場合があります。社会全体で人手が不足していても、個々の事業では従来と同じ人数・配置を維持できるとは限りません。
成長分野と既存部門の間で必要なスキルが異なる
新しい事業で人材が必要になっても、既存部門の社員がすぐに担当できるとは限りません。専門知識や経験、勤務地、本人の希望などによって、配置転換に時間や支援が必要になることがあります。
このような場面では、採用と人員削減を個別に検討する前に、社内異動や学び直しで対応できる範囲を整理する必要があります。
収益構造や業務の進め方の見直し
収益性の低下や業務の重複を背景に、組織を見直す場合もあります。ただし、年齢や給与額だけで人材の必要性を判断すると、顧客との関係や専門知識など、事業に必要な力を失うおそれがあります。
デジタル化や自動化によって変わるのも、まずは業務の内容です。ツールを導入すれば直ちに人員を減らせるとは限らず、導入・教育・運用に必要な仕事も含めて検討することが大切です。
企業の募集動向は、大企業のリストラ事情と早期・希望退職の動向で紹介しています。
人員削減で起こり得る悪循環
業務が減らず、残る社員に負担が集中する
人数だけを減らし、業務量や納期、承認手続きを変えなければ、残る社員の負担が増えます。残業や手戻りが増え、改善や育成の時間を確保しにくくなる可能性があります。
知識の引き継ぎが不足し、品質や対応力が落ちる
特定の社員にしか分からない業務や、文書化されていない顧客対応がある場合、退職によって仕事が滞るおそれがあります。その結果、問い合わせやミスへの対応が増え、さらに業務が圧迫されることも考えられます。
先行きへの不安や負担から、追加の離職が起こる
再編の目的や今後の体制が伝わらず、負担の大きい状態が続けば、残る社員の不安につながります。予定していなかった離職が起きると、採用や教育の負担が増え、人手不足が深まる可能性があります。
悪循環を防ぐために確認したいこと
必要な仕事と人材の組み合わせを整理する
人材ポートフォリオとは、事業に必要な人材の構成を考えるものです。職種、スキル、経験、人数などを整理し、現在の配置と今後必要な体制の差を確認します。
経済産業省の人材版伊藤レポート2.0でも、経営戦略と人材戦略の連動や、動的な人材ポートフォリオ、リスキル・学び直しが取り上げられています。自社でも、将来の事業に必要な役割から採用・育成・配置を検討しましょう。
参考:経済産業省「人的資本経営~人材の価値を最大限に引き出す~」
配置転換・学び直しの可能性を確認する
社員の経験を活かせる部門がないか、必要な研修や実務経験を積む機会を用意できないかを確認します。異動先の受入体制、習得に必要な時間、本人の希望や事情を踏まえ、実行できる計画にすることが重要です。
業務を減らす・変える計画を先に作る
重複する報告、目的が不明確な会議、二重入力などを洗い出し、廃止・簡素化・自動化を検討します。削減できる時間だけでなく、新しい手順の教育や移行中の負担も見込んでおきましょう。
再編後の体制と負担を継続して確認する
誰が何を担当するのかを明確にし、引き継ぎ期間や業務の優先順位を設定します。実施後も残業時間、未処理の業務、品質上の問題、社員の相談内容などを確認し、必要に応じて配置や業務量を修正します。
退職する社員には次のキャリアへの支援を
希望退職募集などを行う場合は、対象社員が条件を理解して判断できる説明と、退職後に向けた準備の支援を整えることが大切です。規程や手続きについては、早期退職制度の規定と運用の注意点もご覧ください。
再就職支援サービスでは、経験や強みの整理、希望する働き方の検討、求人の紹介、応募書類の作成支援、面接対策などを通じて、次のキャリアに向けた活動を支えます。
ただし、再就職支援を導入すれば、退職をめぐる問題や残る社員の負担がすべて解消するわけではありません。企業内の業務・体制の見直しと、退職者のキャリア支援をあわせて進めることが重要です。
タリスマンの再就職支援サービスmutualyでは、キャリアコンサルティングや求人の紹介、応募準備などを通じて、対象社員の新たなキャリア形成を支援します。詳しくは再就職支援サービスmutualyをご覧ください。
費用の考え方は、再就職支援サービスの費用と利用の流れで紹介しています。


